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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
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第一話 【俺は行幸だ!】

 某街の一角にあるパソコンショップの前に行幸みゆきの姿があった。

 行幸みゆきは裏口の前で腕を組んで考え込んでいる。


 とりあえずはバイトしてるパソコン店の裏口までは来てみたけど。


 ここにきてやけに冷静になる行幸。


 やっぱ、こんな姿で入ったら絶対に怪しまれるよな?

 まぁ普通に考えて怪しむしか選択肢はないし。

 俺が女になったなんて誰も知らない訳だしなぁ。


 行幸みゆきは入口のドアの前で腕を組み悩みまくった。唸りまくった。


 やっぱり今日は帰ろうかなぁ。

 いや待てよ、店長に高坂の野郎無断欠勤しやがって! と言われたくないよな。

 でも、女の格好のままじゃなぁ。


 いや、待てよ? 別に俺が女になった事実を人に隠す必要はないんじゃないか?

 こうなったのは俺のせいじゃないんだし、事実がばれたらゲームオーバーとかないだろうし。

 よし! こんな場所で悩んでても仕方ない。入るぞ入るぞ!


 行幸みゆきは意を決して裏口のドアへと手を伸ばした。

 

「あれ? 貴方は誰? バイトの面接か何かかな?」

 

 行幸が店の裏口のドアノブを持ち、店内に入ろうとした時だった。聞き覚えのある声が横から聞こえた。


 ん? この声は? 


 声のする方向を見ると、そこにはこの店で一緒にバイトしてる女性、永井菫ながいすみれが立っていた。


 永井菫ながいすみれ

 身長164センチ。いつもダボダボのパーカーを着ている女子。

 これはきっとペタンコ、要するには貧乳、ようするに凸がない胸を隠すためだと俺は予想している。

 という事でこいつは多分Aカップだ。ごめん、ちがった。絶対にAカップだ。

 そしていつもダサい赤縁の眼鏡をしている。そして茶色に染めた髪は後ろで纏めている。

 ただでさえ見た目がダサいのに、こいつが付けている眼鏡がさらにマニアっぽさを引き出していやがる。

 色気? 色気なんて無いな。こいつが化粧をしてたのを見た事もないし。

 ちなみに勝手な俺の考えだが、こいつは彼氏なんてメンドクサイ! っていうタイプだ。よって彼氏はいない。

 彼氏よりもゲーム(主にMMO)っていう奴だし。

 おまけだが、こいつは負けず嫌いで性格がきつくって俺はあまり好きじゃない。とは言っても悪い奴でも無い。たまーにはびっくりするほど女の子だったりする事もある。

 

すみれ、俺だよ行幸みゆきだよ」

「えっ?」

「俺だって行幸だって」


 すみれは首を傾げて行幸みゆきを疑い深く見た。


「はぁ? 何を言ってるの? もしかしてあなたって行幸の知り合いかなんか?」

「俺がその行幸だって言ってるんだよ」


 行幸みゆきがそう言っても、すみれの疑っている表情に変化は無い。

 

「え? 何なの? 貴方って女だよね? 貴方の言ってる行幸って、確かに名前は女っぽいけど男なのよ? わかってるのかな?」

 

 まぁこれが普通の反応だよな。

 だが、俺はお前に本人だと納得させる事の出来る情報を大量に持っている。

 見てろよ。認めさせてやるからな。

 

「じゃあ、今から俺が行幸みゆきだっていう事をお前に認めさせてやる」

「えっ? ちょと待ってよ? 何なの? 貴方本当に誰なのよ?」


 おもっきり行幸みゆきを怪しい人がいる的な目で見るすみれ

 そんなすみれに向かって行幸みゆきは大きな声で言った。

 

永井菫ながいすみれ二十歳、彼氏いない暦二十年。というかパソコンが彼氏! 好きなゲームの系列はMMOとアクションRPGで今やっているゲームは三つある。キャラ作製は男キャラが多く職業は戦士系が好み。三つやってるゲームの中でデビルスレジェンドというMMOで戦争同盟のガイアパワーに所属。ちなみにキャラレベルは七十二で最近の悩みは四次職を何にするかだ、そして…」

 

 行幸みゆきのマシンガントークが炸裂する度にすみれの顔色が変わってゆく。

 

「そして…すみれは某アニメが大好きで、家には某アニメのポスターが大量に張ってある。今月の二十四日にそのアニメのクリスマス限定ブルーレイBOXが発売される予定であり、既に予約済だ。予約特典の等身大ポスターが楽しみで仕方ない!」 

「ま、まって! わかった! もういいから! そんな大きな声で言わないでよー」

 

 すみれは顔を真っ赤にして行幸みゆきの口を塞ごうとした。がしかし、行幸みゆきはすばやく身をかわした!

 

「ふん、やっと認めたか? 俺が行幸みゆきだと!」 

「ちょ、ちょっと取り合えずこっちに来てよ!」

 

 すみれ行幸みゆきの手を持つと強引に店内に連れ込んだ。

 

「遅いぞすみれ! もうすぐ開店時間だぞ? 何をやってたんだ。行幸みゆきの馬鹿もきやしねーし、今日は午前中は俺とすみれ行幸みゆきしかいないんだぞ」

 

 店内に入ると突然大きな声が聞こえた。店長の声だ。

 声が聞こえてからすぐに奥から体格の良い男が出てきた。

 

 男は雇われ店長の茨木恋次郎いばらきれんじろう

 「いばらぎ」ではなく「いばらき」らしい。

 しかし俺は、そんなのはどうでもいい事だろと突っ込みたい。俺が気になるのは名前だ。何でれんじろうなんだよ! すっげー似合ってねーし!


 ちなみに店長は二十六歳で身長は184センチ。体重は九十キロもある。

 体格はいい。大学時代はアメフトをやっていたらしい。

 ちなみに色黒で角刈りだ。そしてパソコンよりは運動が好きらしい。

 だとすると何故にこのパソコンショップの店長をしているのかがまったくわからない。

 秋葉原のパソコンショップで運動能力は下がる事はあっても上がる事は無い。しいて言えば荷物運びで筋力がアップする位だ。

 おまけだが、店長の癖にパソコンに対する知識はこの店の従業員では最低レベルだ。

 

「違うの! 店長聞いてよ! この子が俺は行幸みゆきとか言っておかしいんだから! で、この子に裏口の前で捕まってて遅くなったの! 私はちゃんとお店に来てたんだから!」

「言い訳はそれだけか?」


 店長は腕組みをしながら二人を睨んだ。


「だから言い訳じゃないの! 本当なんだって! この子がおかしいの!」


 すみれは懸命に店長に言い訳をするが店長は聞く耳を持ってない。

 

「おい、俺はおかしくないぞ? 俺が行幸みゆきだって言ってるじゃないか!」 

「ほら! ほら聞いたでしょ? この子やっぱりおかしい! ねー店長!」

「そんな言い訳はいい。あと友達かなんだか知らないが、店員以外は裏口から店に入れるな。わかったか?」

 

 すみれが言った事はまったく信じて貰えないみたいだ。

 こいつがいつも遅刻の時に嘘つくからだ。自業自得だ。

 

「だって、この子が行幸みゆきから聞いたのか知らないけど、私の秘密とか色々知ってて……」

 

 店長はすみれの話を断ち切るかのように大声を出した。

 

「そうだ! 行幸みゆきだ! あいつ無断で休みやがって! 電話だ! 電話してやる!」

 

 店長はポケットから携帯電話を取り出して行幸みゆきに電話をかけた。

 そして行幸は店内の時計を確認する。


 おいおい、まだ十時三分だぞ? まだ遅刻かどうかってレベルだろ? なんでもう休み扱いになってんだよ? 俺ってそんなに信用ないのか?

 

行幸みゆきの野郎、まだ寝てるとかないよな」

 

 店長は携帯を耳に当てた。すると目の前の行幸みゆきのポケットの中の携帯が鳴り響く。

 その瞬間に『まさか』という表情で店長とすみれが固まった。行幸みゆきの方を見た。  

 行幸みゆきは平然とその携帯をポケットから取り出す。

 

「はい、高坂ですが?」

 

 店長は無言のまま電話を切った。

 

「あれ? 切れたぞ? おかしいな? 店長からだったけど何の用事だったんだ?」

 

 行幸みゆきはわざらしくと大きな声で言った。 

 すみれがまじまじと行幸みゆきの顔を見る。そして全身をべたべたと触りだした。

 

「おい、何すんだよ? 気持ち悪いな!」

 

 行幸みゆきを見ていたすみれが数歩後ろへと後ずさりする。

 

「う、嘘でしょ? マ、マジで行幸みゆきなの? ど、どう見ても女だよね?」

 

 横にいる店長は俺は信じないぞという表情で行幸みゆきに向かって言い放った。

 

「き、君は…行幸みゆきの友達なのかな?」 

「違う、俺が行幸みゆきだ」

「えっと、どこでその携帯を拾ったのかな?」 

「だから俺が行幸みゆきだって言ってるだろ。この携帯は俺のだ」 

「本人は今は何処にいるのかな?」 

「だ、か、ら、俺が行幸みゆきだって言ってるだろ!」

 

 店長は俺の目の前で苦笑しつつ再び固まった。

 だが、すぐにこれだダメだと首を振って立ち直る。

 

「だ、だけど、君は女の子だよな?」 

「ああ、俺は今は女だ。しかし俺が行幸みゆきだ!」


 店長が行幸みゆきに触れた時の感触を思い出してみる。

 あの体の柔らかさはどう考えても女の子。


「ちょ……ちょっと席をはずす」

 

 店長は頭を抱えて店の奥へと引っ込んでしまった。

 

「おい、どこいくんだよ店長! 俺が行幸みゆきだって言ってるのに信じないのかよ! おい!」 

「ね、ねえ、本当にあなたは行幸みゆきなの?」

 

 残ったすみれ行幸みゆきに話しかけた。

 

「そうだよ! 最初っからそうだって言ってるじゃないか」


 目をパチパチとした後にすみれはマジマジと行幸みゆきを見つめた。

 

「正直に言うけどまだ信じれない。もし、もしもそうだとしたら、どうして女になったの? もしかして性転換手術でもしたの? 女装じゃないわよね?」 

「あほか! 一日で性転換手術が出来るか!」 

「じゃ、じゃあ、元々女だったとか?」 

「馬鹿か? 俺が女だったとかありえるはずねーだろうが! だいたい体格も顔も違うだろうが!」 

「じゃあ何でよ! 何で女の子になってるのよ! 説明しなさいよ!」


 なぜかすみれが涙目で逆切れ。

 すみれとそんなやりとりをしているといつの間にか店長が戻って来ていた。

 

「君、ちょっと質問をしてもいいかな?」 

「俺に?」 

「ああ、そうだ」 

「いいけど? 何だ?」 

「今からいくつか質問をするから答えてもらえるか?」

 

 行幸みゆきは店長の用意した高坂行幸みゆきに関する質問にすべて即答した。もちろん全問正解。

 ついでに行幸みゆきは自分の知っている店長の秘密まで暴露した。

 すると店長はついに俺を行幸みゆきだと認めた。いや、認めざる得なかった。

 

「おい……行幸みゆき、どうしてそうなったんだ?」

 

 店長が青ざめた顔で行幸みゆきに向かって聞く。


 何でって聞かれても困る行幸。


 昨日のあの出来事を話せばいいのか? 話しても信じて貰えるのか?

 正直あの事は誰にでも信じれるような事じゃない。

 でも、言わないと他に原因がある訳じゃないし。


「今から話すから……本当に真剣に聞いてくださいね?」


 行幸みゆきは昨日の出来事を店長とすみれに説明した。

 

 

 ☆★☆★☆★☆★

 

   

「マジでそんな事あるの? じゃあ何? 女になったのって天罰って事?」


 すみれは嘘でしょ? という顔で行幸みゆきを見る。

 

「俺だってなんでそういう事になったのか、本当の本当の事はわかんねーよ」 

「私は行幸みゆきがネカマやってた事は知ってたし、正直きもい奴だと思ってたけど、でもまさかそれを利用して人を騙しちゃうなんて」 

「騙してない! まだ騙してないから!」

「でも、その時点ではまだ男だった訳でしょ? まさか女装してオフ会に行く気だったの?」 

「女装だと? そんな事出来るか! もし女装したとしても、オフ会に行ったらどうなると思う? 変な奴だと思われて誰も相手をしてくれなくなるだろうが! 世の中マンガみたくうまく女装ができる男なんてそんなにいねーんだからな?」

「じゃあ、行く気が無かったって事でしょ? じゃあ結局は嘘つきじゃん」

 「う……」

 

 確かに。


 すみれの正論に行幸みゆきは何も言い返せなかった。

 

「ちょっとお前ら、もうその話はいいだろ。それより、えっと、取り合えずはお前を行幸みゆきだと信じるとしてだ。で? そんな事になってるのにバイトはしたいのか?」


 何てそんな質問をしてくるんだ?

 俺がここに来てる理由が解ってないな。

 というか、もしかして女になった俺は働かせない気なのか!?

 

「おい、店長!」

「何だ?」

「俺はここをクビになったら路頭を迷う事になるんだ!」

「ふむ……で?」

「働きたいから今日も出勤して来てるんだろ?」 

「なるほどな。そんなになってまで働きたいとか、お前はすごいな。俺ならショックで立ち直れないぞ?」


 まるで行幸が女になった事にショックを受けていないかのような店長の対応。

 満面の笑みで行幸の肩を叩く。


「ま、待って! 俺だってショックなんだよ! まるで俺が何も感じてないみたいに言うなぁぁ!」

「まぁまぁ……落ち着け。しかし、その格好はちょっとあれだな」

「格好? なにか文句あるのか?」


 行幸みゆきは自分の格好を確認した。

 そして、なんとなく言われた意味がわかった。

 行幸の今の格好は男の服だった。そして、上も下も全てぶかぶかだ。

 

「この格好の事かぁ。でも仕方ないだろ、男物しか持ってないんだから」

 

 店長は少し考えるとポンと手を打った。

 

「よし、俺がなんとかしよう」

 

 何とかするって? 何するんだ? まぁそれはいいとして……。


 行幸みゆきは壁に掛けてある時計を見た。

 

「店長」

「何だ?」

「もう十一時四十分ですが、開店しなくていいのですか?」 

「うおしまった! すみれ、店をあけろ!」


 店長は慌てて菫にオープンの号令をかける。

 

「え? あ、はい!」

 

 まったく、でもまぁ取り合えずは俺だと信じて貰えたからいいのか?

 いや、よくないよな?


 こうして行幸みゆきの女としての第一日目がスタートした。

後書き人物紹介!①

高坂行幸【こうさかみゆき】

年齢二十四歳

髪の色 黒

身長173センチ(男)156センチ(女)

体重 65キロ(男)50キロ(女)

一応大学を出たがネットゲームに没頭しすぎて就職戦線から脱落した。

大学時代から働いていたパソコンショップにそこまま居座る。

ある日某MMOをプレイ中に謎の人物から「…罪深き奴め、天からの罰を受けろ!」と言われて女になってしまった。

元々ポジティブな性格で考えるよりは行動するタイプなのもあり、そのうちどうにかなると現在は女として生きている。

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[一言] 突然(異性に)変わることは罰になるかの知れないが、女性になることが罰と言ってほしくない。
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