第十四話 【俺の妹のターン!?って何で妹が登場するんだ】・
「いつ見ても汚いアパートね…」
高速道路の脇にある日も当たらないボロアパート。
何でこんなアパートに行幸住んでるんだろ?
金銭的に厳しい筈だし、自宅からでもアルバイトにも行けるし家賃だってかからないのに。
あれか…家にいるとパソコンが自由に出来ないし、両親にも煩く就職しろって言われるからか。
でも、わざわざ家を出ていかなくってもいいのに…
いつからだろ? 行幸がパソコンに熱中しだしたのって。
何だか知らないけどパソコンゲームを始めてから、行幸はパソコンの画面を眺めてニヤニヤしたり笑ったりするようになった。
私はそういう行幸を見ていると何だか腹が立ってイライラしてつい文句を言ってしまう。
両親にも私にもそういうゲームを止めろとか色々と言われて行幸も家を出て行っちゃったんだ。
出て行った時には居なくって清々したと思ったけ。だけど、やっぱり家に居なければ居ないでなんか寂しい気もする。
ううん…寂しい。
あーあ…馬鹿兄貴め…私をこんなに寂しい目にあわせて…
私の名前は高坂幸桜。高校三年生です。
名前を見て解るかと思うけど、私は高坂行幸の妹です。
ぶっちゃけて言うと私の名前は古風すぎるし、行幸もそうだけど、当て字すぎて名前を一発で読み当てられた事がありません。
いくら幸せになって欲しいからって名前に幸を入れたって言われても、私にすれば読みやすい名前にしてくれた方がよほど幸せになれた気がします。
おまけによく二人の読みだけを見た時は姉妹と勘違いされるんです。
漢字だけを見たら兄弟だと思われます。
あと、実は私達は本当の…っと…そんなの関係ないよね。
本題に戻らないと。
私は兄の住んでいるアパートの目の前まで来ている。
どうして平日の夜に行幸のアパートに来てるのか?
まぁ確かにそういう疑問は起こるわよね。
理由。それは、今日はたまたま錦糸町に寄る用事があったのと、明日が学校の創立記念日で休みだったのでたまには様子を見に立ち寄ろうと思っただけです。本当だよ?
両親にも様子を見て来いとか言われたんだけどね。うん、言われたんだよ?
えっと、確かお兄ちゃんの部屋は二階だよね…
幸桜はアパートの金属製の階段を一段一段上がって行った。
カツンカツン…
金属製の階段が軽い金属音を響かせる。
ええと…確か…ここかな?
幸桜は行幸の部屋の前に立った。
幸桜の目の前には茶色く汚れた木調のドア。幸桜はそのドアを見て周囲を見渡した。
このアパートのドアには呼鈴、ようするにピンポンチャイムが付いていない。
だからノックするか携帯をかけるかしか行幸に来たという事を伝える方法が無い。
それに、このドアはすごく汚れている。触ると何かの細菌が手に移りそうで怖い…
あとは、ここのアパートの住人って全員怪しい男だって情報を聞いてるから、こんな若い女子高生が訪ねて来てるってばれたら…まぁ何もないかな?
さっき携帯に電話したけど出なかったし…仕方ない…ノックするしかないか。
幸桜が恐る恐るドアをコンコンコンと三度ノックをした。しかし中からの反応が全く無い。
幸桜が横を見れば、キッチンの窓からは明かりが漏れている。
中にはきっといるはずだよね?
もう夜八時を過ぎてるし、きっとあのくだらないパソコンゲームにまた夢中になっているんだ。
幸桜はそう決め付けてバックの中から合鍵を取り出した。
そして何の躊躇も無くドアを合鍵で開ける。
ドアは『ギィィ』と怪しい音を立てて、ゆっくりと開いた。
アパートの中は電気が付いており明るい。
「行幸ぃ? いるの?」
幸桜は中に入るとドアを閉めた。そして靴を脱いで部屋の中へと入る。
すると部屋の中からすさまじいカップラーメン匂が漂ってきた。
「行幸、またカップラーメンとか食べてるの?」
幸桜はそう言いながら玄関を入りダイニングへと進む。するとダイニングの向こうの部屋に人が横たわっているのが見えた。
な、何? 行幸の足?
しかし、ダイニングテーブルや間仕切りの建具で足しか見えない。
行幸が寝てるの?
幸桜はそっと横になっている人に近寄ってゆく。
すると『トゥルルルル!』といきなりダイニングテーブルの上に置いてある携帯が鳴った。
携帯電話はどう見ても行幸の物だ。見覚えがある。
幸桜はそっと着信名を確認した。するとそこには『すみれ』と表示されている。
すみれ?
すみれって女性なのかな?
もしかして行幸に彼女が出来たとか?
眉間にしわを寄せて不快な表情になる幸桜。
いや…それは無いよね? 行幸に彼女なんて出来るはずない…
でもどうしよう…この電話…
幸桜がそんな事を考えていると電話は切れてしまった。
あら、切れちゃった…まぁ女性からの電話に私が出るのもね…うん…
幸桜は何気なくダイニングの横のベットとパソコンの置いてある部屋の方を向く。
良く見ればパソコンの横のカーペットのカップラーメンが散乱している。
そしてその横に人が横になっている。
幸桜は横になってい人の全身を見て思わず口を押さえた。
先ほどまで行幸だと思っていたけどよく見れば行幸じゃない!
え? な、何? 誰? この女性。
そっと体を屈めてその横になっている人の顔を確認すると女性だという事が解った。
何で女が行幸の部屋にいるのよ? 何で? えっ? 何?
幸桜は大パニックに陥った。
お、落ち着いて…幸桜。落ち着くのよ…
い、一応あれだよ。行幸だって男だし…恋人の一人や二人くらい…
………
無い…
考えられない…
あんなパソコンオタクの行幸を彼氏にしたい。とか思う女なんて余程の物好き以外にいるはずない!
待ってよ…じゃあこの女…もしかして物好き女なの?
いや違うよね? そんな女性がいるはずない!
じゃあ何? ちょっと待ってよ…もしかして拉致したとか?
パソコンゲームの影響を受けてついに犯罪者に?
行幸が女の子を拉致して監禁してしまったの?
そして行幸がこの子に言うのね『おまえは今日から俺の奴隷だ、食事はカップラーメンだ』なんて…
幸桜は両手で顔を覆った。
い、いやらしい!
やっぱり一人暮らしなんてするにはこういう理由があったのね!
…っていくら何でもそんな事はしないよね…
私…お兄ちゃんは…行幸はそんな事できないって知ってるもん。
だいたい行幸が部屋に居ない今の状況ならこんなボロアパートから何時でも逃げ出せるし、今も何か特別な事をされている様子も無いし。
きっとパソコンの電源はついているから、この女性が遊んでいる間に寝ちゃったのかな…
っていう事はこの女もゲームオタクなのかな?
それはありえるかも。類は友を呼ぶって言うしね…
まぁ起きたら解るかな…
寂しそうな表情を唇を噛みながら幸桜は女性を、いや行幸を見た。
それにしても行幸は何処にいったのかな…
『トゥルルルル!』
「うわぁ!」
幸桜が考え込んでいるとまた行幸の携帯電話が鳴った。
今度は誰? またさっきの女?
幸桜は再び携帯電話の着信名を覗き込む。するとそこには『店長』と表示されていた。
店長? って…行幸のアルバイト先の店長?
これってもしかして重要な電話なのかな?
で、出るべきかな…私は妹だし…出ても別におかしくないよね…
よし…行幸が留守だし…出てみよう…
「あ、はい、もしもし?」
「もしもし? 俺だ、ええと、今日の件だけどな…」
電話の相手は男性だった。
声は低く大人っぽい。やっぱりアルバイト先の店長かな?
でも今日の件って何だろう?
待って…もしかすると店長というのは偽名か何かで、実は普通のお友達とか?
うーん…わかんないから聞いてみようかな。
「えっと…あの? どちら様でしょうか?」
そう質問をすると電話の向こうでガサガサと音が聞こえる。
この音は携帯電話を弄ってるのかな? ってもしかして私が出たから誰だろう? とかそういう事になっちゃってるとか?
おかしいな? 私が行幸の妹だってわかんないのかな?
………
あっ! しまった! 妹だって言ってない! 言わなきゃ!
「え、えっと、また電話します…」
ガチャ! ツーツーツー
「えっ!? も、もしもし! もしもしー」
幸桜が妹だと伝える前に電話は切れた。
うーん…切れちゃったどうしよう…
またかかって来るかな? それとも行幸が戻ってくるのが先かな。
そして私はこの状態でどうすればいいの? うーん…
幸桜は部屋の横になっている女性を見ながらしばし考えた。
この女性を起こして行幸の行き先を聞くのはどうかな?
そうね考えてみよう…例えばここで女性を起こす…すると女性は私を見てびっくりする。
私は妹なのって言う…女性は信じてくれない。
行幸は戻って来ない。そして修羅場と化す。
あう…ダメな方向の想像をしてしまった…
そ、そうよね…例えば私が彼氏のアパートで寝てたとして、いきなり私が女に起こされたら、その女性が私は貴方の彼の妹なのよって言ったって、すぐには信じないよね?
そうだよね……って私には彼氏なんていないじゃん!
………
自分に突っ込んでどうするのよ…なんか虚しいよ…
ちょっと落ち着こうか私…
ほら、深呼吸して…
『トゥルルルル!』
「うわぁ!」
またびっくりした…電話だ…店長かな…
幸桜は着信名を確認する。するとそこには『すみれ』と表示されている。
さっき電話を掛けてきた女だ!
また掛けてきたのね…でもここは私が出るとダメだよね。
きっとすっごく勘違いされる…そうよ! 出たらダメ! うん!
『トゥルルルル! プチ…』
電話が切れた。
幸桜は携帯を覗き込むとどうやら留守電話になったようだ。
これでいいんだ…
あーもう! 早く行幸戻ってきてよ!
はぁ…溜息が出る…
行幸の様子を伺いに来ただけなのに、何でこんな変な事に巻き込まれないといけないのよ…
後でとっちめてやるから! ふう…
それにしても…よく寝てるわね…
こんな汚い部屋でよく眠れるわ…関心する…
『トゥルルルル!』
「うわぁ!」
またまたびっくりした私って何…
よし…今度こそ店長さんかな…
幸桜が着信名を確認する。すると『店長』と出ている。
店長だ! よし、ちゃんと妹です! って言わないと!
「もしもし! 高坂です!」
幸桜は電話に出ると真っ先に名前を名乗った。
「え? 高坂? それって行幸さんの携帯ですか?」
先ほどと同じ声だ。行幸の携帯電話なのか確認してきてる。
「はい、そうです」
幸桜は即答した。
「あの…どちら様でしょう?」
そっか、高坂とは出たけど姉とも妹ともまだ言ってないや。
「私、高坂行幸の妹です」
「え? 妹さんですか? あ、あの…行幸は?」
「えっと…今は外出中です。何か用事でも?」
「あ、大丈夫です。また電話しますので…それではまた」
あれ? 用事は何? 何だったの?
「あ、えっと…」
店長からの電話は切れた。
うーん…ちゃんと妹だとは伝えたし…これでよかったのかな…
携帯電話をダイニングテーブルに置くと幸桜はパソコンのある部屋へ顔を向けた。
幸桜の視界の中には部屋で寝ている女性が入る。
そうだ…まだこっちがあったんだよね…
そうだ! ここで私がこのまま帰るっていうのはどうかな?
形跡を残さないようにすればいいじゃないのよ!
………
って! 駄目じゃん! 私、さっき思いっきり行幸の携帯に出ちゃったじゃん!
あーもう…私がここに来たのってバレバレだよね…
もうこうなったらやっぱり行幸が戻って来るのを待つしかないかな…
幸桜はふぅと小さく溜息をつくとダイニングチェアに腰掛けた。そして部屋で横になっている女性をよく観察してみる。
この女…よく見ればスタイルいいじゃないの?
胸も大きいし…なんかかわいいし…
女の私が『ムラッ』ときちゃいそうなオーラが出てるし…
…え? いや違うわよ? 私はGL系の趣味はございませんよ! って誰に弁解してるのよ私…
でも何でこんなかわいい子が行幸の部屋にいるのかな?
まさか本当に彼女なのかな…
この子もやっぱりパソコンゲームオタクなのかな? それで行幸と知り合って同性する仲にまでなって…
無意識に溜息をつく幸桜。
世の中には私が理解出来ないような出来事って結構あるかもしれない。
だから…って、待って! という事は? この子と行幸は毎夜のようにあんな事やそんな事を…
まさか、あんなすっごい事までしてるって言うの?
イ、イヤラシイ!
もう…なによ! 私の知らない所で行幸は大人になったって事なの?
顔を真っ赤にして幸桜は座ったまま地団駄を踏んだ。
しかし、女性は。いや、行幸は起きる気配は無い。
か、帰ろう! もう帰ろう! 私がここにいちゃ駄目なんだ!
その瞬間だった!
リビングに横になっていた女性がいきなり痙攣を起こしたかのように震えだした。
「えっ!? えええぇ!?」
そして仰向けになり目をカッと開いたかと思うと、今度は死んだかのように目から生気が無くなってゆく。
幸桜は慌てて椅子から立ち上がった。
何? もしかして心臓発作とか? この子って死んじゃうの?
やだよ! 目の前で人が死ぬ所を見るなんてやだ!
幸桜の心臓は動揺してドキドキと鼓動した。手が震えだした。そして、まるで動物園の北極熊のようにうろうろと部屋の中をうろつき始める。
やだ…どうしよう…どうすればいいの?
そうだ、きゅ、救急車だよね? 呼ばなきゃ!
幸桜は慌てて行幸の携帯を手にとった。
その時、女性が一瞬だがぴくりと動いた。そして『うう…』と声を出す。
う、動いた? 声を出した? まだ生きてる!?
幸桜は携帯を一度ダイニングテーブルの上に戻すと急いで女性の状態を確認する為に女性の側まで寄った。
そしてしゃがみ込み女性に出を伸ばす。
「心臓は動いてるのかな…」
幸桜女性に触れたその瞬間、幸桜の体に電撃のようなものが走った。
「キャァァァア!」
部屋に響く幸桜の悲鳴。
ビリビリと凄まじい痛みが幸桜を襲う。
「な、何よこれ! 痛いよ! 痛い痛い!」
動けなくなる程に強いその痛みと衝撃が幸桜から意識を奪い取ってゆく。
やだ! こんな所で感電とか? 私、まだ死にたくないよ…
助けて…お母さん…お父さん…お兄ちゃん…
私…私はまだ…行幸…
幸桜の視界はぼやけてゆき、そして頭の中も真っ白になった…
☆★☆★☆★☆★☆
ここからは行幸のターンだぜっ!
「うーん…」
行幸が意識を取り戻した。
少し硬い床に横になっているのが行幸の背中から伝わる。
ここは何処だ? 部屋の中なのかな?
行幸はゆっくりと目を開いた。そして倒れたまま周囲を見渡す。
すると視界に天井まで二十メートルはあろうか大きな空間が広がった。
え? 何だここは? 俺は確か部屋の中で倒れたはずだぞ?
行幸は慌てて起き上がり周囲を確認する。
大きな石造りの建物の中…
赤い絨毯の敷き詰められている床。
奥行きのある大きな建造物の中ようだった。
「何だここは?」
行幸は数歩前へと前進する。
すると着ている服に違和感を感じた。
行幸は慌てて自分の格好を確認してみる。すると自分の格好が部屋の居た時とは違う事に気が付いた。
これって…俺が昼間に着ていたメイド服じゃないのか?
見覚えのある色彩、そしてデザイン…そしてひらひら…
これは昼間に俺が着せられていたメイド服に間違いない。
待て…おい…なんで俺の格好がメイド服なんだよ!
何だ? 俺はどうなったんだ? ここは何処なんだ?
おいおい…
気を失って気が付くと石造りの巨大な建物の中にメイド服姿で放置されていただと?
一瞬夢かと思ったが、凄まじく鮮明な周囲の景色や服のリアルな感覚からすると夢とも思えない。
俺が気を失った後に誰かがここに運んできたというのか?
そんな馬鹿な…どうやってこんな場所に?
俺の知る限りでは俺の住んでるアパートの近くにはこんな建物は無い。もしかしてこれは映画のセットか何かなのか?
まさかな…
行幸の頭の中を疑問符が埋め尽くす。
とりあえず探索してみるか。
行幸はゆっくりと赤い絨毯の上を歩き出した。
ふわりふわりと俺の足型で凹む赤い絨毯はいかにも高級だぞとアピールしているようにも感じる。
「誰か居ないのかよ!」
大声で叫んでみた。しかし返事などあるはずも無い。と思っていたら!
「はい! 居ます! ちょっと待ってて下さい!」
何処からともなく大人びた女性の声が聞こえた。
誰かいるのか?
行幸は取り合えずその場でしばらく待ってみる事にした。
そしてゆっくりと周囲を見渡す。
すると何処からともなく「きゃぁぁ!」という悲鳴が聞こえた。
先ほどとは違う子供っぽい女性の声だ。
行幸は周囲を確認した。前も後ろも右も左も人の気配などまったくない。
すると…ヒューン! という空気を切る音が真上から聞こえる。
行幸は慌てて上を向くと…
上から凄い勢いで何かが落ちてきているジャマイカ!
「うわぁああああ!」
行幸は慌ててその場からダッシュで離れた!
それとほぼ同時に『ズドーン!』という激しい音がしたかと思うと、先程俺が居た場所に女性が落ちてきて床に叩きつけられている。
落ちてきた女性はまったく動かない。
「おーい…生きてますか?」
行幸がゆっくりと女性に近寄る。
女性はうつ伏せで倒れており顔は確認出来ないが、銀色の長い髪で魔法使いの様な青ローブを身に纏っているのだけは解った。
よく見れば体が小さい?
体つきから見るとどうやら子供のような感じもする。
「ちょっと? 死んじゃったんですか?」
とは言っても、傍から見ただけでは外傷は見えないし、出血しているとか腕が曲がっているとかそういった外形変化もみられない。
しかし動かないのだけは確かだ。
行幸はは女性の背中を恐る恐る触ってみた。
『ぷにゅ』っとした柔らかい感触…そして横によるととても甘い香りがした。
女性という事は間違いないよな。でも動かないな…
もう一度そっと触ってみる。やはり動かない…
よし、今度はすこし強めに触ってみるか。
ギュウっと触る。しかし動かない。まるで屍の様だ…
やっぱ死んだのか?
いきなり目の前に女が落ちてきて動かないとか、俺はどうすればいいんだよ…
行幸は女性が落下してきた天井を見上げて見た。
何度見てもすごく高い天井だ。よく見れば、その一番高い天井部分に小さな窓らしきものが見えた。
さっきはあんな窓なかったよな? でも、まさかあそこから落ちたのか?
もしそうだとすると助かるはずねーよな…
その時、行幸の体が硬直する。見れば両胸が勢いよく背後から掴まれていた。
行幸が振り返って見ると、先ほど倒れていたはずの女性というか子供が行幸の腕を掴んでいる。
「うわああああ!」
行幸は思わず驚いてその場にへたりと座り込んだ。
その女の子はニヤリと不気味な笑みを浮かべると、手を放して行幸の正面にまわりこんだ。そして行幸の左頬に右手を伸ばす。
左頬に触れられた瞬間、ひやりとした感触が行幸に伝わる。
な、何なんだこつは!?
そしてその女の子はゆっくりと口を開いた。
後書き人物紹介!⑨
高坂幸桜【こうさかこはる】
年齢十八歳
髪の色 黒(肩にかからない程度・ストレート)
身長161センチ 体重52キロ B79 W62 H??
スリーサイズまでほぼ公開出来るこの小説では珍しいキャラ
某県立高校の三年生で受験を控えており現在目下勉強中。
小説にも書いてあるが、名前にコンプレックスを抱いている。
兄である行幸の事は行幸と呼び捨て。行幸も幸桜と呼び捨てにしている。
兄弟の関係は決して仲が悪いという事で無いが、行幸がパソコンに没頭し始めてから幸桜の態度が変化した。
行幸は妹に嫌われたと思っている様子だが、幸桜にしてみれば行幸は憧れの兄であった(勉学も結構昔は出来た)。しかしパソコンという機械に兄を取られてしまいかなり怒っている。結局は兄である行幸の予想を反して、兄が大好きな妹である。
何をするにも考えて行動をするが、その考えた結果が必ずしも正しいという事は無い。間違ってしまうとか考えすぎとか日常茶飯事である。
現在の目標は行幸を自宅に連れ戻す事とパソコンを辞めさせる事。