表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【どうしてこうなるんだ!】
12/120

第十一話 【俺の目の前にいた小悪魔①】・

「ねぇねぇみゆきぃ? もしかして変な事でも想像してるんじゃないの?」


 すみれは怪しい笑みを浮かべてながら言った。

 そんな言葉に誘導されるかのように、行幸みゆきの視線は勝手にすみれの【無い】胸をロックオンしてしまった。


 あれ? よく見れば少しはあるのか?

 なんで膨らんでるんだ? もしかして…あんまん? って待て! そうじゃないだろ? こんなのすみれに見られたら…

 行幸みゆきは「やばい」と思いすぐに視線を戻した。


「何を言ってるんだ。何で俺が変な事を想像しないといけないんだよ」


 そして冷静を装った対応でその場を凌ごうとする。

 さっきの動作はすみれには察知されていないはず。

 大丈夫だ心配ない。


「ふーん…やっぱりそっかぁ、見た目は女でも中身は男なのね」


 ニヤリと笑みを浮かべるすみれを見てビクンと体を震わす行幸みゆき。手には変な汗が滲んできた。

 おかしい…こいつには見られてなかったはずなのに。


「おい、何だよそれ? 俺がお前を見て変な想像なんてするはずないだろ!」

「ふふふ…行幸みゆき? ムキになった時点で肯定と同じだって知ってる?」


 しまった! 俺とした事が冷静さを失ってた…


「そっか、体が女になっても中身は男なのねって事よね」


 腕組みをしたすみれは首を小さく縦にふりながら勝手に納得している。

 というか何だこいつ…こいつは小悪魔か! こうなったら…


「当たり前だろう、俺は男だ! だけどな? お前を見て変な想像をしてると思うなんてお門違いもいいとこだ」


 しかし、行幸みゆきの言葉はすみれには効果が薄いのか、いくら怒鳴ってもすみれの表情に変化は見えない。それどころか更に楽しげな表情に変化している。


「でもね、いくら変な事を想像なんてしてないって言われてもそんなに真っ赤な顔をしてると何の説得力もないんですけど?」


 すみれは楽しげに、そして勝ち誇ったようにそう言った。

 くそ…すみれに言われなくっても自分が赤面していると気が付いるって言うんだ。顔がものすごく熱くなっているし。でもな…


「これは…こ、この部屋が暑いからだ!」


 いい訳を言わせてもらうじゃないか! こんな奴に負けたくない!


「ふーん…別に私は暑くないけど?」

「俺は暑いんだよ!」

「へぇ…」

「その目…信じてないだろ?」

「そりゃそうでしょ? さっきまで暑いなんて一言も言ってなかったじゃん。それにさっきまでそんなに顔も赤くなかったし」


 くっ…確かにその通りだ。


 すみれは自分が優位に立った時に変に洞察力が働くようになる。

 しかし逆に追い込まれると冷静さを失うという特徴も持っている。

 え? どうしてそんな事が解るのかって?

 それはな…実はすみれのプレイするMMOのアカウントを持っているんだ。そしてちゃんとキャラもいる。

 俺はすみれのキャラ名を知っている。そして、以前にすみれのプレイを見た事があった。

 PvPと言われる対人対戦を観戦した時、たまたますみれ仲間が全員死んでしまった。しかし圧倒的な火力を誇るすみれのキャラであればそこからでも勝てたはずだった。それにもかかわらずすみれは簡単なミスを繰り返して死んだ。ようするに動揺していた訳だ。

 まあ一言加えると、俺のキャラはそれ以来そのMMOにはINしていない。

 よってすみれに言い負けない為には、俺がすみれより優位に立たないといけないという事だ。

 朝の店長の様に圧倒的に優位な立場になれば、俺はすみれには言い争っても勝てる。

 しかし、今の状況的に優位に立つのは不可能に近い。だいたい俺はもう見下されている…


「何? 行幸みゆき? 何を考え込んでるのよ」


 とりあえず、ここは優位に立つのは無理だからこの場を凌ぐほうが先決か…


「別に…もう一度言っとくけどな、俺は本当に変な事なんて想像してないからな」


 すみれは腕組みをやめて今度は腰に手をやった。


「まぁいいわよ…別にみゆきが何を考えてようが私には関係ないもの。でもね」

「でも何だよ…」

「よく考えてみてよ。今まで私がここで服を脱いだ事なんてある? 着替えるって言ってもお店のエプロンを取ってロッカーに入れるだけだよ?」


 俺はその一言でハっとした。


「そ、そうだ…そうだった」


 自分の顔がさらに熱くなるのがわかる。頭から湯気が出るかと思う程に熱く汗が滲み出てきている。

 今の俺は相当顔が真っ赤になっているのだろう…しくじった…俺の方が冷静さを失っていた…

 俺がメイド服を脱がないといけないからついすみれも服を脱ぐのかと勝手に思ってしまった。

 そしてさっきすみれの胸を見た時、下着姿も思いっきり妄想してしまった。

 そうだよな、俺だってそうじゃないか…ここのお店は私服にエプロンでOKなんだよ。


「きっと私の胸でも見て下着姿でも妄想してたんでしょ?」


 すみれはニヤリと薄笑いを浮かべている。

 こ、こいつはニュータイプか? ってないない…こいつはニュータイプなんかじゃない。って何でここでガンダ○ネタ!?


 すみれめ…いきなり俺の心を読んだかの様な質問をしてきやがって…なんか悔しいな。

 よし、ここは冷静にだ、冷静に返すんだ…


「………え、な、な、何で俺がお前のし、下着姿とか…」


 うごぁぁあ! 全然冷静に対応出来てないジャマイカ!


「…えっと…あまりにも解りやすい反応で驚いた」


 俺もだよ…


「…でもまぁ…あれよね、行幸みゆきだって男なんだから当たり前よね?」


 くそ、正直男と付き合った事すらないすみれにそう言われるとかなり悔しい。お前に男の何か解るんだと言ってやりたい。


「でもね?」

「でも?」

「私…えっと…」


 何だ? 先ほどまで勝ち誇っていたすみれの態度がいきなり一変しただと?

 今は驚く程に顔を赤くして体をくねらせている。まるで照れている女じゃないか…あ…女か。 


「…私は…み、行幸みゆきになら…し、下着姿くらいなら見られても平気だもん」

「は、はい?」


 すみれは両手を前で組むとすこしもじもじしながら照れていた。

 え? な、何を言い出すんだこいつは!?


「もしかして…本当に見たい? 私の下着姿……」


 すみれは少し照れた表情でゆっくりエプロンを取ると机の上に置いた。


 な!? ば、馬鹿かこいつは! 何でそういう事を平気で言えるんだよ! 俺はは男だぞ?……体は女だけど…

 すみれ、いくら女らしさが見えないお前でも一応は女なんだぞ?

 女の下着姿に興味が無いない男なんて居るじゃず無いジャマイカ! っていうか、興味の無いやつは男じゃないだろ!?

 いや待て! これじゃ俺がすみれの下着姿が見たいって思ってるようなもんだぞ? どうしたんだ行幸みゆき、しっかりしろよ…

 ダメだ…今の俺は完全に翻弄されている…駄目だ、流されるな! 言い返せ! 否定しろ!


「な、何を言い出すんだ! 何で俺がお前の下着姿なんかに! 俺はまったく興味は無い!」


 と強気に言いつつも行幸みゆきの視線は無意識にすみれの胸をロックオン完了。

 ハッとそれに気が付く行幸みゆき

 やばい、これじゃまったく説得力がない…


行幸みゆき? そう言いながら私の胸…見てるじゃん…いやらしいなぁ…」

「い、いやらしいとか言うな! だいたいお前が変な事を言うからだろうが! これは男子として健全な反応だ!」


 行幸みゆきは開き直った言い訳を言ってみた。


「何? もしかして…それって私を女として見てくれてるって事なのかな?」

「馬鹿か? お前は元から女だろうが…」 

「そう意味じゃなくって、一人の女性として見てくれてるの?」 

「だから、前からお前は女性だろうが、それ以上でもそれ以下でもない」


 行幸みゆきがそう言うとすみれさげすんだ目に変化する。


「な、何だよ…」

「何よ…顔も耳もすっごく真っ赤にしちゃってさ。たかが下着くらいで真っ赤になるとかばっかじゃないの?」


 冷たくそう言ったすみれは先ほどとは一転してかなり機嫌が悪くなっている。


「俺は馬鹿じゃない! じゃあどうするんだよ? 俺がもしもお前の下着姿を見たいとか平然と言い出したら」

「え? な、何を言ってるの? 私がみゆきに下着姿なんて見せるはずないじゃん。さっきの話は冗談よ、冗談だってわかんなかったの?」

「わ、わかってて言ったんだよ!」

「へぇ…顔がまた真っ赤だよ? 行幸みゆきって本当に面白いわね!」


 すみれはそう言うといきなり声を出して笑いだした。


 な、何だよこいつ…何でいきなり笑うか!? なんかもう怒る気にもならなくなった……

 しかし何なんだこいつは…二重人格なのか? いや三重人格? それとも女という生き物は全員がこんなもんなのか? だとすると、泣いたり、怒ったり、笑ったりと喜怒哀楽に忙しい生き物なんだな…

 しかしホントに何で態度をコロコロと変化出来るんだ? 今までのすみれからは想像つかないし、意味わかんねぇ…

 待てよ…そういえば幸桜こはるも似たような感じだったかも…

 あーマジで女って生き物は不可解だ!


「あははは、ひぃ…お腹痛いよ…」


 何がそこまで面白いのか理解出来ないが、行幸みゆきの目の前ではすみれがお腹を抱えで大笑いをしている。


「おい…そんなに笑わなくってもいいだろ…」

「あははは…ふうふう…あー苦しい」

「何がそんなに面白いんだよ?」

「あはは、だって…あははは」

「…」 

「あはは…はぁはぁ…ふう…」


 ちょっと落ち着いたのか?


「おい…」

「「おい」だって!ぷっ!あははは」


 な、何だこいつ! ムカツク!


 しばらくしてすみれはやっと笑うのを止めた。


「あー面白かった」

「俺はまったく面白くなかった…」

「ちなみにね、コスプレだと、普通に着ても下着姿に近いものだってあるんだよ?」

「何でそんな話を今更する…」

「一応、報告をしないとね」

「そんな報告なんて必要ない…」

「え? でも興味あるでしょ?」

「ない!」


 とは言ったものの…実際はどうなんだ? 俺はすみれの下着姿もコスプレ姿も興味は……多分ない…のか? と考えつつまたもやすみれの全身を上から下を流して見ている。

 見た感じすみれは寸胴に見えた。しかし、午前中ここですみれは「貧疎だって出てるとこはそれなにに出てるのよ!」とか言っていた。そして、さきい…こいつの胸が膨らんでいた。

 もしかしてこいつ…本当はスタイルいいのだろうか? マジで出てる所は出てるのだろうか? しかし確認するには…

 そうか! こいつの下着姿に近いコスプレを見ればわかるって事だよな。

 じゃあお願いすればいいんだ。その下着姿に近いコスプレの写真見せてと! わーい! 俺って頭いいぜ! って違うだろ! 俺は何を考えてるんだ! 危ない…そんな事を言ったらまた変人扱いだ…今日の俺はおかしい。


行幸みゆき?」

「何だよ」

行幸みゆきも女の子になったんだし、記念にコスプレでもする?」


 こいつはまた変な事を唐突に言い出しやがった。


「何で俺がコスプレなんだ? やらない。絶対やらない!」

「えー? 勿体ないなぁ素材は抜群なのに…って! あ! ごめん! 今の格好がすでにコスプレだったね!」

「待て待て、違う! これはコスプレじゃない! 単なるメイド姿だ! 店長に無理矢理やらせられただけだ!」

「え? 何を言ってるのよ? ハッキリ言ってその格好はコスプレでしょ? 行幸みゆきだって解ってるでしょ?」


「う…それは…えっと…」


 確かにそうかも…

 今の俺はメイドでごめんなさいだか何だか忘れたが、そのアニメのキャラに似てて、そのメイドの格好が今の俺の格好に似てるんだよな。


「うん、やっぱりどう見ても『神無月みゆき』のコスプレだね」

「…やっぱりそうなるのか?」

「うん。そうなると思う」


 行幸みゆきはがっくりと肩を落とした。

 するとそんな行幸みゆきを無視して、すみれが鞄から何かを取り出し机の上に置く。


「よし…」


 すみれはガチャガチャとそれを弄ると行幸みゆきの横まで小走りで来て肩を無理矢理に組んできた。


「す、すみれ? 何をする気なんだ?」

「記念写真撮影だよ?」

「え…記念写真? 何だそれ?」

「だから記念写真を撮るの。デジカメはセルフタイマーでもうそこにセットしてあるから」


 すみれはそう言うと机の上を指差した。机の上を見るとそこにはデジカメがちゃっかり設置されている。


「ちょっと待て! 俺は写真を撮ってもいいなんて言った記憶はないぞ!」

「え? ダメ? 別にいいでしょ? 減るもんじゃあるまいし。あ! ほら、笑って!」

「え? あ! え? 基本的人権の尊重だ!」

「意味わかんない。そんなのいいから笑ってよ!」

「あ、はい」


 うばい、素直に笑ってしまった…俺って押しに弱いのか?


 行幸みゆきすみれの言葉に圧倒されて俺はカメラに向かって笑顔をつくる。そして同時にカシャリと音が聞こえた。


 どうやら写真を撮られてしまったらしい。しかし、俺はマジで押しに弱いな…こんなんじゃ駄目だろ? 男たるものもっと強く、自己主張の出来る奴じゃないと…駄目だよなぁ。

 落ち込む行幸みゆきのそんな残念な気持ちを知るはずもなく、すみれはデジカメの確認をしている。


「ほら見て! よく撮れてるよ!」

「はいはい、そうですか…」

「結構いい感じだよ? これ今度プリンターで印刷してきてあげるね!」

「いや…いらないし」


 まったく…何を言ってるんだ。自分が女だった時の写真なんて欲しくもない…


「え? いらないの? 記念に持っておいたほうがいいんじゃない?」

「おい…どこの世界に男だった自分が女になってしまった時の写真を記念に持っている人間がいるんだ?」


 すみれは首を傾げてすこし考えた。


「そうよね…だいたい女になった事がある人間なんてみゆき以外に居るとは思えないし…だから写真なんて持ってる人はいないよね…っていう事は…やっぱり記念に持っておいたほうがいいと思うよ? いいえ、持っておかないとダメだよ!」

「おい、何でそうなるんだよ」


 こいつは頭がいいのやら悪いやら…考えてる事がわからない…やっぱりこいつは苦手だ…


「大丈夫だから! 光沢用紙だから綺麗よ!」

「違う! 俺はそんな回答を求める質問はした記憶はない!」 

「安心して。私の家はエプ○ンじゃなくってキ○ノンなの」

「聞いてるのか? そんなのどうでもいいんだよ」

「わかった…特別に二枚あげる」

「ストップ! ちょっと待て!」


 何だこの会話の不成立具合は!


「もう…欲張りね…何枚いるのよ?」

「だから、一枚もいらねーって言ってるだろうが!」

「もしかして、さっきのポーズが気に入ってないの? 何ならもう一枚撮り直す?」

「いや、いい…そして、もうどうでもいい…ふぅ…」


 何だよこの会話は…すみれがマジで自己中心的すぎるだろ…


行幸みゆきはいつまでメイド服を着てるの? もしかして気に入ったとか?」 

「えっ? こ、これはお前が写真を撮ったりしてたからだろ! こんな格好を気に入ってるはずない! 今すぐ脱ぐとこだ!」

「あっそう」


 すみれはそっけないくそう言うとデジカメを大事そうに鞄に仕舞いこんだ。


「…おいすみれ。このメイド服はここで脱いで放置してもいいと思うか?」


 そういえばメイド服の扱いを店長に聞いてなかった。


「別にいいんじゃない? そこに置いておけば店長がどうにかすると思うよ。それより早くいつものダボダボのダサい服に着替えれば?」

「ダボダボのダサい服…」


 行幸みゆきはメイド服を脱いですみれの言う所の「ダボダボのダサい服」へ着替えた。

 ふと横を見ると着替え終わったすみれがジロジロと行幸みゆきを見ている。


「どうしたんだよ?」

「メイド服を着ていないと、一目じゃ『神無月みゆき』に似てるなんて気づかれそうもないわね」 

「そうか? 俺はその方が助かる」

「うん、大丈夫そうね、そのダッサい服装が折角の可愛さを台無しにしてるから」

「それってどうなんだ…」


 そりゃ俺は服装はあまり気にしないし、格好をつけようなんて思った事もない。

 しかしここまでダサいと連呼されると少し傷つく…これからは少しは服装も気にしたほうがいいのか?


「おいすみれ、ちょっと聞くが、男の時の俺はダサいって事か?」

「え? えっと…ほら! えっと…人は格好じゃないって言うじゃない」

「おい…何だよそれ? それってまさか俺をフォローしたつもりなのか?」

「え? う、うん…」


 素直なのはいいが、うんって言った時点でフォローになってないだろ…


「……そうか」

「えっと…着替え終わったみたいだし、そろそろお店を出ようか?」


 すみれはそう言うと鞄を肩に掛けた。 

 あ、そうだ…俺は一つひかかる事があったんだ。ちょっとすみれに質問してみようかな…


「おい、すみれ


 すみれは丁度扉の鍵を開けようとしている所だった。しかし俺の声に反応してすみれはこちらに振り返った。


「え? 何? どうしたの?」

「あのさ、何で俺は『神無月みゆき』っていうアニメのキャラそっくりの女にされたんだと思う?」

「え? 何でって…」

「俺がやっているMMOとまったく関連がないだろ?」

「うーん…関連が完全に無いかどうかはネットで調べればすぐに解ると思うけど…」

「でもな、多少は関連があったとしてもわざわざ俺をアニメキャラにする必要はないだろ?」

「そうね…もしかすると、みゆきを女にした人の趣味なのかもしれないわね」

「趣味? という事は俺を女にした奴はマニア系なのか?」

「わかんない、でもそこもちゃんと調べてみるから。今日はもう帰ろうよ」

「あ、ああ…そうだな…」


 そいいやこいつは帰ってネット検索で調べるとか言ってたな…

 こいつは何でもググれば解るとでも思ってるのか? わかんねーだろ…俺を女にしたのがマニアなのかとか…


 行幸みゆきすみれは事務所の電気を消して通路に出た。

 こっそりお店の方を覗くと先ほどまで居なかったお客だが今は店内に五、六人おり、店長ともう一人のバイトの男の子は忙しそうに動いているのが見えた。

 ここで声を掛けるとまた何か言われそうだし、行幸みゆきは無言で帰る事に決めた。そしてすみれと一緒に裏口から店の外に出る。

 お店から出た行幸みゆきは少し離れた場所に駐めてある自転車がある場所まで歩き始める。

 数十メートル歩いた所で後ろから人の気配を感じる。振り返ると何故かすみれがついて来てるじゃないか?


「おい何だよ? すみれは電車だろ? 反対方向じゃないのか?」

「え…えっと…あれよ…あれ」

「あれ? あれって何だよ?」

「み、行幸みゆきは明日は暇…かな?」

「え? 何をいきなり?」

「あれよ、あ、明日はお店が休みでしょ?」

「え? ああ、休みだけど」

「どうせあれでしょ? 水曜日だから行幸みゆきのやってるMMOも私のやってる奴も十時から十六時までメンテナンスなんだし…行幸みゆきには彼女も居ない訳で、他に趣味もないんだし…」

「それで…何が言いたいんだよ…」

「だから…一緒に行幸みゆきの服を買いに行ってあげてもいいわよ?」

「何だそれ? 俺の服? それってもしかして女物って事なのか?」

「そうだよ? そんなガボガボのダサ服じゃ駄目だと思うし。下着だって買わないと駄目だし」

「し、下着だと? 俺はそんなもんいらない!」

「いらないじゃないの! 下着は必要なの! 今は女なんだよ? 下はどうでもいいけど、ブラはちゃんとつけなさいよ! 行幸みゆきは胸でっかいんだし。つけてないとすぐに乳が垂れるわよ?」


「お、おい! 乳とか言うな! お前女だろうが!」


 行幸みゆきは思わず大きな声ですみれに向かって怒鳴った。


「ちょ、ちょっと! みゆき声が大きいよ! ほら、みんなこっち見てるじゃん」


 すみれの一言でハッと我に返る。

 そうだ、ここは店の外だった! つい大きな声で乳とか言ってしまったぞ?

 周囲を確認すると人通りが少ない裏道にも関わらず数人が立ち止まって俺達の方を見ている。

 おいおい…怪しいオタク系男子ばかりじゃないか…すっごく危険な視線を感じる…それも俺の胸に集中しているじゃないか…何て奴らだ…


行幸みゆき…なんか視線が…」

すみれ、走るぞ!」


 行幸みゆきはそう言うとすみれの手を握り急いで自転車置き場まで走った。


 続く

パソコンショップのもう一人のバイト君

本題の中にもう一人のバイト君がいると表現がある。

名前は上尾孝二と言って、某都内大学二年生。

こっそりとこのお店で一番まとも?な男子です。

ああ、名前はあげおではなく、かみおです。かみおこうじ君ですのであしからず。

身長178センチで体重60キロ。中肉中背でちょっと童顔っぽい。髪は短髪で黒。パソコンもするけどスポーツもする。

決してマニアではなく、ちゃんとした彼女がいる。

ここで働いた理由は単にバイトを探してたらここを見つけたというつまらない理由。

あまりにも普通すぎて本来は本小説のもっと前の回に少し登場の予定でしたが、予定がなくなりました!

そのうち登場するような機会はあるのでしょうかね…


※ちょっと解説

PvPとは?プレーヤー対プレイヤーの略。プレイヤー同士で対戦をする時に使う。

ググるとは?ネット検索サイトの某サイトで検索する意味の略。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ