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どうしてこうなるんだ!  作者: みずきなな
【エピローグ】
109/120

エピローグっぽいもの

 12月25日 午前11時


「何で行幸みゆきすみれも来ないんだ!? 携帯も繋がらないじゃないか!」


 パソコンショップでは店長が一人で泡蓋あわふたしていた。

 まさかの行幸みゆきすみれのダブル無断欠勤。混まない店だが、流石に一人では無理ゲーすぎる。


「昨日の行幸みゆきが言ってた今日が最後ってこれの事だったのか? バイトを辞めるって事だったのか?」


 大量の荷物の搬入と開店してすぐ予約品を取りに来るお客様のレジとで本気で限界の店長。

 しかし、流石は店長。真っ赤な顔でなんとかすべての業務をこなしている。


「く、くそ…流石にこれは厳しいな…すみれでも来てくれれば…」

「ちわー」


 入口から若い男性の声が聞こえる。

 店長がレジを打っている間にヤマソの配達員が店内に荷物を持って来たのだ。


「こんにちは! ヤマソです!」

「ああ、ちょっと待って! 今、俺一人しかいないんだ…」

「ヤマソさん、おはようございます! ここに荷物をお願いします」


 後ろから聞こえた聞き覚えのある女性の声。

 店長はハッとして声のする方を見た。するとそこには行幸みゆきの姿が。


「み、行幸みゆき?」

「遅くなってすみません。携帯の電池が切れてて連絡できませんでした」


 なんだ、辞めたんじゃなかったのか…

 ほっと胸をなで下ろす店長。


「まったく! 行幸みゆきは何で十時になってたのに気が付かなかったのよ!」


 今度はすみれの声が聞こえた。


すみれ?」

「店長、遅くなってすみませんでした…」


 行幸みゆきと同時に入ってすみれにちょっと動揺する店長。


 何ですみれ行幸みゆきが同時刻に来たんだ?

 ま、まさか一緒に来たのかよ?

 もしかして行幸みゆきの昨日の用事って…すみれとの約束なのか?


「ここがお兄ちゃんの働いてるお店なんだね」


 入口から女性が入って来た。ふと見ればそれは見覚えのある顔。

 店長は首を傾けて眉間にしわをよせる。

 あれは確か…行幸みゆきの妹?


「え、えっと? 君は確か行幸みゆきの妹さんだっけ?」

「はい、高坂幸桜こうさかこはるです!」


 行幸みゆきすみれと妹まで一緒の時間に現れただと?

 更に頭を悩ます店長。


『うーむ…ごちゃごちゃしてるな…行幸みゆきよ、お前はこんな汚い店で働いているのか?』


 そして知らない女性の声が聞こえた。


「いらっしゃいませ…」


 一応は対お客様モードで対応する店長。しかし、何か空気が違う。お客の匂いがしない。


 こいつは誰だ?


 声の主は青い瞳でエメラルドグリーンの髪の綺麗な女性だった。


 な、何だこのアニメから出て来たみたいな女は!? コスプレか?


「シャルテさん、なんで貴方まで付いて来るのよ」


 すると、そのコスプレ女にすみれがちょっと不機嫌そうに声をかけた。

 シャルテだと? 外人なのか? という事は…その青い瞳はカラコンじゃなくって本物? その髪も地毛なのか?

 いや…流石にそれは無いだろ? その色の髪はありえない。


すみれ、そこの女性はすみれのコスプレ友達なのか?」


 店長はすみれに質問すると、いきなりすみれが不機嫌そうな表情になる。そして…


「違います!」


 キッパリ言い切った。


「でもお前を知ってるみたいじゃないか? 知り合いじゃないのか?」

「シャルテは私の恋のライバルです!」

「は、はぁ?」


 店長の目が点になる。


 恋のライバル? だと? どういう意味だ?


「聞いて下さい! 行幸みゆきが先週のデートで私の告白を受けてくれたのに、気が付いたら幸桜こはるちゃんとも付き合ってたんですよ?」

「はっ!? 何だそれは? いや、ちょっと待て! 取りあえずレジを終わらせるから」


 店長の頭は大パニックになった。


 すみれ行幸みゆきの彼女になっただと? いつの間にそうなったんだ?

 おまけに幸桜こはるちゃんにまで手をだしただと? 妹じゃないのか!?

 そして、そこのシャルテっていう子にも手を出したのか?

 …シャルテ? あれ? シャルテという名前はどこかで聞いた記憶が…


 店長は瞼を閉じて眉間にしわを寄せて腕を組む。


 確か…えっと…そうだ! 行幸みゆきを一緒に探した女性と同じ名前じゃないか!


 店長はシャルテという女性の容姿を思い浮かべる。そして、目の前にいる女性を見る。


 でも…容姿が全然違うじゃないか? 同じ名前の他人?


 どうも納得がゆかない店長。

 店長は険しい表情でレジを済ませると行幸みゆきの横に寄って小声で聞いた。


「おい行幸みゆき、どうなってるんだ? いつすみれがおまえの彼女になったんだよ? あと、幸桜こはるちゃんも彼女なのか? あと、シャルテって子はなんなんだ?」


 行幸みゆきはチラリと店長を見ると小声で言った。


「俺の言う事、信じて貰えますか?」

「あたり前だろ?」


 店長が即答すると、行幸みゆきはキョロキョロと周囲を確認してから店長に小声で話し始めた。


「ええとですね、色々あっていつの間にかすみれが彼女って設定になってたんです。あと、幸桜こはるも彼女の設定になってました。シャルテなんて愛人の設定になってました」

「いや待て、何だそれ? 一体何があったんだ? 天使と関係があるのか?」


 ここで行幸みゆきはハッと店長の顔を見る。


「店長? もしかして覚えてるんですか? 俺が女になった理由とか天使の事とか」

「何だ? 覚えてるも何も忘れる訳ないだろ? お前を探した事も覚えてるし、あそこのシャルテっていう女の名前がお前を一緒に探した女の名前と同じ事も覚えてる」


 行幸みゆきは口をぽかーんと開けると店長の顔を見た。


「覚えてる? 本当に? マジで? 嘘じゃない?」

「覚えるって言ってるだろ? だから驚いてるんじゃないか」


「店長さん!」


 幸桜こはるが会話中の二人にとつぜん声をかけた。


「んっ?」


 店長は幸桜こはるの方を向く。すると幸桜こはるが真剣な顔をしている。


「私もここでバイトしたいです! アルバイト募集中ですよね? 高校姓でもOKですよね? だったらここで働きたいです!」


 唐突にバイトをしたいと申し出た幸桜こはるに店長はちょっと驚いた。

 そしてなぜか幸桜こはるすみれを睨んでいる。


 …確かに恋のライバルっぽい感じだな。

 そう感じつつも店長は幸桜こはるにバイトの意志を確認する。


「いや…えっと? 本気でなのかな?」

「本気です!」

「そうか…じゃあまずは履歴書を持ってきてもらって…」


『店長さん!』


 幸桜こはると店長の間に突然シャルテが割り込む。


「ちょっと! シャルテさん! 割り込まない出下さい!」


 怒る幸桜こはる。しかしシャルテはそんな幸桜こはるをガン無視。


『僕もここで働いてやる! 但し、行幸みゆきと一緒の時間だけだ!』


 強気で鼻息を荒くしながら言いきるシャルテ。

 店長は思った。ぶっちゃけこつは面倒だからバイトして欲しくない。

 しかし、店長は自分勝手に決めつける事はしない。そう、大人だから。


「ええと? 君もアルバイトをしたいのか?」

『…したくない。だけどしてやる』


 うわぁ…マジでバイトして欲しくないな。

 苦笑を浮かべる店長。

 そして、それを聞いていた行幸みゆきが会話に割り込んできた。


「おい待て! 何で俺と同じ店で幸桜こはるもシャルテも働くと言い出すんだ! おかしいだろ!」

「だって、行幸みゆきと一緒にいたいし、行幸みゆきを監視したいから」

「待て! 幸桜こはるが監視したいのは俺じゃなくってシャルテとすみれじゃないのか!?」


 幸桜こはるは「何でわかったの?」と言わんがばかりの表情をした。

 なんて解りやすい奴なんだ…


『僕は行幸みゆきのそばから離れると発作が起きるから仕方ないだろ』

「それは初耳だ…で、それはなんて発作だ?」

『…わからない』

「何だそれ」

『わからないけど、行幸みゆきがいないと…心配で胸がドキドキする病かな…』


 そう言ったシャルテは胸を押さえて顔を赤らめた。


『シャルテ、それは発作じゃない。あと、そういうのはちょっと恥ずかしいからやめてくれ…』


 店長が苦笑を浮かべながら行幸みゆきに一言。


「何か、前より大変そうだな…」


 行幸みゆきは小さく頷きながら深い溜息をついた。



 ☆★☆★☆★☆★



『天使長様…』

『うむ…』

『一人、記憶操作を忘れていました…』

『ううむ、完全に忘れておったな…』

『…ええと……ほっておいて良いのですか?』

『まぁ…いいんじゃないの?』

『……』《軽っ》




 To be continued!


 次回、マルチエンディング(幸桜こはる)です。

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