カッ素い宇宙転生3
補助記号:◎話数、○●天、□■地、△▲▽▼人神視点◇◆亜空間。 【最重要読書前注意&要覚悟事項】:本作には地の文が皆無で動きは重視しておらず、表現不可避部分は台詞に()等で無理矢理詰込んでます。許容して読める方のみお進み下さい。途中離脱か読後後悔で人生時間を奪った際はご宥恕賜りたく存じます。4部構成第3部です。タイトルは転生と読みます。それではどうぞご高覧下さい。
◎ 第26話 ショック編 ◎
◆ 宇宙の神々の亜空間 ◆
▲ カッ素宇宙の主神 ▲
「冬楠木千早を見事に無血で救出してみせましたね」
「いやー、めでたいの! 実にめでたい! 祝杯を挙げようぞ!!」
「何が見事だ。我が最後の一押しをしてやらねば今頃血が流れていたわな」
「まーだ素直になれんかカッ素神よ。困ったやつじゃのぉ(笑)(酔)」
「百合アンヌスとも心残りをある程度は解消しての別れが出来たようで、良かったですね」
「ふん。小娘は想定外の人物に職と名誉を失わせてしまったのが疚しいのだ、経緯はどうであれ結果だけ見ればな。それで私物の珍品をプレゼントして何とか埋め合わせしようとしたのだ、言葉にせずとも潜在意識の内側でな」
「なるほど。ある意味、大昨夏未来による変則的な形の贖罪、でしょうかね? あえて言葉にするなれば」
「そんな大仰なものではない」
「在職ではなくなった彼に使いかけのボールペンで贖罪し、都市全体には化粧品類で咎人の罪を代理で贖うとは。なかなかに侮れない行動力。アドレナリンが全開だったからこそ危機を乗り越えたと言っても強ち間違いではないでしょう」
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっ!! 言うてくれるの、おい盟主殿ぉ!! なかなかに畳み掛けて来るではないかお主! 実に愉快愉快(笑)(酔)」
「ぐぬぬぬぅ……普段は生真面目の若造のくせに(超小声)(悔)」
「こうなったら一晩中地球の銘酒を新しく開けて飲み明かそ~ぞいっ!! ホレホレ、遠慮するでない♪(酔)」
「では祝いとして遠慮なく」
「ふんっ!! 大体だなぁ、『贖罪』などという言葉は頭の片隅にも思い浮かべることなど出来んのだこの小娘は」
「それはそうじゃろうの」
「小娘にこの言葉を教えようとすればどうなるか? 『食材』だけ買ってきて自分では料理が出来ず普段料理してくれる人もいなければ生きていくことも出来ない己の出来なさ加減に『ショック・大』を受けるに違いないのだ! ブワァーッハハハハハハハハァ!!! これは傑作傑作ぅ!! 我ながらその光景を想像するだけで酒の肴だ! これでまた一段と酒が進むぞガハハハハ!!!!」
「…………」
「……一気に酔いが醒めたぞい(冷)」
◎ 第27話 過っ去編 ◎
● 別宇宙無期滞在刑35日目の昼過ぎ ●
■ ローマ京都ーから帰りの道中の馬車 ■
△ ちはや △
「…………」
「ちはやちゃん、そんなに後ろ気になる? もう大丈夫なんやで?」
「えぇ……でも……」
「でも?」
「反故にされるかもって思って……」
「保護? うちらがちはやちゃんを保護してるんやで?」
「違う……そうじゃないの……だって……こういう展開って、気が変わって軍隊が追ってくるっていうの、お約束みたいな展開じゃない……?」
「? そうなんかいな? カッさんどう思う?」
「うーんそうだね。可能性が全く無い、とまでは言い切れないね確かに」
「何や? カッさん。あの百合アンヌスさんが約束を破るって言いたいんか?」
「百合アンヌス当人がどれ程誠実で信義に厚かろうと、彼は既に政治権力を失っている」
「……(怒)」
「まぁまぁ聞いてよ(汗) 僕が言いたいのは、現時点の人一位の政治家達がどれぐらい軍勢の統制が出来ているのか分からないってことさ。それも支配の遠隔地になればなるほど統制を欠く可能性が高まるんだよ。独断専行する軍団が出てきても不思議じゃない」
「いやー、でもうちはローマ京都ーの人達はちゃんと統制とれてる思うけどな」
「こうしてプトレーマイ推ス以外の諸王と一緒に帰ってるのも、警戒態勢を敷いたままでいるという証なわけさ。ちょっとした人一位の属州残存部の弱小勢力が、暴走したり目先の欲に駆られたりする動機を抑制し、万が一実際に襲ってきてもいつでも迎撃出来るようにね」
「でもうちはローマ京都ーの兵隊さんはそんなことはしないと思う。規律に厳しくて、規則正しくて律儀な人達な感じするもん」
「そう願いたいもんだね」
「聞いた? 大丈夫なんやってちはやちゃん! 仮に追ってきてもカッさん達の軍隊の方が遥かに戦闘力が上やから全部撃退してくれるって!」
「はい……」
「元気出して!」
「うん……」
「ちはやちゃん、ここでは別の名前名乗ってたんだよね?」
「えぇ。偽名を使ってた」
「でも本業が巫女さんなのって事実やん」
「一応」
「その巫女服着たままここに飛ばされたって言っても、この世界の神殿の巫女ってその格好はしてへんよね? だってそれ和服やもん」
「……もちろん」
「ここに来てから、どういう経緯で自分は巫女だって言う流れになったのかって聞いてもえぇの?」
「…………」
「あ、まだちょっと早いかなぁ? その辺の事情聞くのって。ごめん。思い出したくないよね」
「いいえ」
「!」
「何があったか話すわ、簡潔にね」
「あれは私があの都市に飛ばされた次の日、過疎市場に人を集めて宣言したの」
『恐懼せよ!! 私はこの世界に新たな秩序を齎す聖女である!! 神託が下された!! 神々に叛きし現体制を打倒し、粛清し、一掃せよとのお告げである!! 全ての民衆は私に従い、忠誠を誓うがいい!! 戦える民衆は武装し革命の戦士として馳せ参ぜよ!! 元から兵士たる者はこれより私の配下となり忠実な僕となれ!! 私が大いなる神に遣わされし代理人としてこの世界の支配者となり、女王として正しく君臨し、全ての国家を統治する!! よいか!! これは最高神の御意思である!!』
「そして私は捕まったの」
「……(汗)」
「……(唖然)」
「…………」
「聖女って名乗って反乱起こそうとしてたのって、ほんまやったんや……」
「反乱じゃないわ。革命よ」
「…………」
「…………」
「えっ! 終わり?」
「そこから先はもう捕まってからの話しかないけど、聞く?」
「う、ん……」
「巫女を名乗った話だけど、調査する担当者に質問されたから、職業は巫女だって答えただけ。その後廃止された神殿の元巫女達が来て、私のことを偽者だって断定した。地下牢に入れられたけど、巫女の罪人は※刑にすることは出来ない。絶食※させられるのが掟だとか。でも私は本物の巫女だと認められてない。だからとりあえず水と食料は与えられ続けた。私をどうするかで上の人達が揉めてると兵士達の噂話も聞いた。だから私は言い続けたの。『私は巫女であると同時に、遥か遠き世界から最高神の御意思で導かれた聖女でもある。神の代理人を試す不信心者どもに災いあれ』ってね」
「…………」
「…………」
「上の人達から何度も聴取の為に呼ばれたわ。神殿の巫女達は私を偽者として巫女に準ずる扱いを止めさせ、※刑に処すように声高に主張してたけど、彼女達の見解もあまり信用されてないみたいだった。上の人達は神罰を極度に恐れてた。私が書く謎の文字を不気味がっていた。通訳しても理解出来ないであろう、私が発する言葉も彼等を不安がらせた。神から遣わされし者ではないという確証を欲しがっていた。もし私を傷つけたり死に至らしめた場合、最高神の怒りに触れる可能性をどうしても捨て切れなかったのね。だから恐れられて荷物も取り上げられなかった。といってもこの竹箒しか持って来てないけど、儀式に使う雰囲気出してたからね。あとこの腕輪は地味過ぎて奴※っぽいから私が身に着けてるのが相応しいと思われたみたい。よっぽど通訳腕輪の方を外して日本語を直接披露して神聖な雰囲気を出そうとかと思ったけど、彼等の興味が腕輪にいくとまずいから迷ってるうちに時が過ぎた。ズルズルと処遇が正式決定しないまま一ヶ月近く経ち、あなた達が助けに来てくれて解放された。これで全部よ」
「……なるほど、なぁ(困)」
「……(引)」
「……あのさ、ごめん。2つ新しく聞きたいことが出来ちゃったんだけどさ、無理ない範囲で答えてくれたら嬉しいなって」
「どうぞ、未来さん」
「『ちゃん』でえぇで! 『ちゃん』で!」
「未来ちゃん」
「1つ目なんやけどカッ素神様から神命課題受けてはるよね? ちはやちゃん」
「えぇ」
「課題っていつのタイミングで出されたんか覚えとる?」
「? 確かここに飛ばされてから、次の日の夜」
「初日じゃないんやね」
「最初着た時、気がついたら夕方だったから何も出来なかった。ブルブル震えながら近くの建物の影で縮こまって一晩過ごしたわ(青)」
「それはつらかってんな……」
「えぇそれはもう。初日から2日目にかけてが一番つらかったまであるわ」
「神命課題受けたの2日目の夜ってことは、捕まってからってことやな?」
「そうよ。筆記用具もノートも何も無いし、この状態じゃ何も出来ないって獄中で訴えたけど無駄だった」
「なるほど……時系列に情状酌量の余地、有りやで!!」
「情状酌量?」
「まぁ気にせんといて。2つ目が最重要なんや。動機って聞いていい?」
「動機? 私、強制的にここに飛ばされたのよ。動機なんてない」
「ちゃう。そこやない。何やっけ、聖女や! 何で聖女なんて名乗ったの?」
「神に仕える巫女は広い意味で聖女に含まれるでしょう」
「え? ……それはちょっと何か……拡大解釈のような?」
「そんなことないわ」
「でもさ、さっき言うてたあの革命? の宣言って、アレって……?」
「……認める。あれは暴走した。本当は神の御意思でもないのに、思い上がったのよ」
「何でそういう行動に至っちゃったのかって聞きたいなぁって。あの、良ければだけど」
「私……」
「私、てっきり何か特別な力が与えられたんだと思ってた」
「特別な力? 通訳機能のこれじゃなくて?」
「違う。この世界を思い通りに支配し自由自在に統治出来るような、個人の超越的な力のことよ」
「(汗)」
「神様方は言わないだけで、隠された力が既に与えられてるんだって思った。でも何をどうやっても超人的な力の片鱗も出てくる気配がない。それで閃いたのよ、自分一人では効果を発揮しない系統の力、つまり人間を操る力!! それも1人2人を操るんじゃなくて、大衆を扇動して操る力に違いないって!! それで最初の街を支配することから始めようって思い立った。でも……試してみたけど何もなかったの。結局、何の力も与えられてなかった。本当にただの神罰だったのね」
「う……ん……だってカッ素神様、そう言うてたでしょ? 神罰だって」
『…………』
「その特別な力が与えられるって話は一体全体どっから出て来たん?」
「どっからって……そういうもんでしょ、こういう世界に来たんだから普通」
「何が普通?? どこが普通???」
「普通こういう世界に来る意味っていったら特別な力をゲットしてそれを思う存分行使して、第2の人生を送ることでしょって普通!!(怒)」
「いやいやいやいや! 普通がゲシュタルト崩壊しとるって!! ちはやちゃん、動機の方は情状酌量の余地、無しやでこれぇ!!(笑)」
「なんですってぇ!? ちょっと未来ちゃんさっきからなにこれ、尋問???」
「待って待って(汗) カッさんはどう思う?」
「ん……? 僕かい?(引)」
「何かほら、今後のアドバイスとかないん?」
「……そうだねぇ……もし僕が何か助言するとしたら、この世界での事柄に限られるけど……まぁ、あえて言わせてもらうとするならばだけど……」
「民衆を惑わす類の言動は金輪際、止めておいた方がいいだろうね。命が幾つあっても足りないよ。人一位の都市はたまたま寛容の精神を美徳としているから助かったんだ。貴女はあの都市に飛ばされたこと、神に感謝すべきだよ。他国ならば巫女だろうと誰だろうと大衆扇動、内乱首謀、国家体制転覆目的の反乱未遂は、ただの拘禁では済まない。普通はね」
「……はい……(落)」
「まぁまぁまぁまぁ! カッさん! もうこっから先はさ、何かもっとこう気分がパァーッと明るくなるようなポジティブなこと言ってあげて!!」
「えー……う~ん……そーだねー……」
「良かったね! 首と胴が今も繋がってて!(ニコッ)」
◎ 第28話 過っ去編2 ◎
● 別宇宙無期滞在刑35日目の夕方 ●
■ 聖なる宿屋の前の街路 ■
▽ ちはや ▽
「ようそこいらっしゃいませ、カッサンドロップス様!!」
「すまないが予約通り、また世話になっていいか主人?」
「もちろんでございます、光栄なことですよ! 御予約も頂いているのに、何がすまないものでしょうか!」
「あの邪神の女神の件では未来を一時的に避難させてもらったし、大いに気苦労をかけたからな」
「いえいえいいんです! それどころか、あの一件があったにも関わらず、この聖なる宿屋の建物だけは破壊されなったわけですよ」
「結果的にな」
「奇跡ですよ! 『これはもう偶然ではない』『本物の最高神の加護だ』と、評判と共に予約が殺到してしまいまして! 嬉しい悲鳴なのです!!(喜) よって本日をもちまして当宿は単なる『聖なる宿屋』から『聖なる奇跡の宿屋』と改名致しました!! 今後とも知一位までの外遊の際には、どうぞ王の御用達に!!」
「商魂たくましいことだな(苦笑)」
「とはいえ当然ながら本日は王の御一行が御泊りなのですから、他の部屋にも誰も入れておりません」
「助かる、主人。今回も全額の三倍を前払いする。好きに使わせてくれ、頼む」
「かしこまりました! ご自由にどうぞ!」
「今回は巡回、警備を含めないと、人数は3人だ」
「はい。お伺いしております、ミライ様。またお会い出来ましたね!」
「一昨日ぶりですねご主人! 転んでもタダでは起きないその商売魂、実にえぇですね!」
「ありがとうございます! そしてそれから……えぇー……」
「…………」
「うちの友人で、巫女のちはやちゃん」
「ちはや様! えーと。ご職業は巫女さん、ですか……?(やや怪訝)」
「はい……」
「巫女は巫女でも、そんじょそこらのとは一味違うんですよ。神の声が聞こえなくて廃業させられたパチモン達とはね! うちのお母さんの方の故郷、つまり遥か東方出身の特別な巫女さんなんです」
「あぁなるほど! 通りでなかなかお見かけしない格好だと思いましたよ」
「そんでご主人も知ってはります通り、うちにも天然の巫女気質あるんですよ! 最高神と再交信したりなんちゃったりしてね! だから巫女の友人も自然いるってことですわ!」
「はっはっはっはっは!!(笑)」
『…………』
「…………」
「確かに一昨日、ミライ様の呼び掛けによって格の高い神様が来て、あの暴走女神を連れてったと聞きます。もっとも私は震えて縮こまってただけなんで実際にはどちらも見てないんですけどね(汗)」
「うちも女神はほぼほぼ姿見とりませんわ、ほとんど震えてたのも同じですよ同じ!」
「そうですな、そう言って頂けると有難いことです! わっはっはっは(笑)」
「あっはっはははははははぁ!!(笑)」
「……立ち話に花を咲かせるのもいいんだけどさ。そろそろ、部屋に荷物を置きに行ってもいいかな2人とも……?」
「はいぃただいまご案内します! どうぞどうぞ!」
■ 聖なる奇跡の宿屋の中 ■
「あ、女性二名様はお部屋ってどうなさいますか? 部屋は余ってますので、同室別室、どちらでも構いませんが」
「同室で!!」
「……(頷)」
「…………」
「かしこまりました!」
■ 聖なる奇跡の宿屋の共通スペース ■
「カッさん」
「なんだい? ミライ君、ずいぶんすぐ降りてきたね。夕食はまだ準備中みたいだが、気が早いんじゃないか(笑)」
「ちっがーう! 夕食の前に女子2人で、お風呂入りたいなーって思って。主に私がね!」
「あぁそういえばそうか、知一位では何かと慌しかったからな。だが主人、ここが所有してる浴場は確か……」
「えぇ、温泉噴出地点から程近いところにあります。この宿はやや高台なので引っ張ってこれないんです。ここから徒歩5分ぐらいですが」
「私、一昨日行ったからもう場所分かるよ!」
「分かった。いくら夏とはいえ日が落ちる前に行ってきた方がいいだろう」
「うん。でも風も穏やかやし、えぇ感じな時間帯の気がする」
「そうか。僕が常に守りたいところだが、私はプレースタイル濃イスと進路確認が必要になって、しかも諸王から連絡待ちのところなんだ」
「じゃ、2人で行ってくるよ! すぐ近くだし」
「そうはいかない。君達の外出時の警護は一瞬たりとも欠かせない。そうだな、護衛には隊長の二個乗ール、副隊長ペラペラ薄ッス」
「はい」
「ういっす!」
「それからプレースタイル濃イス、君の部下を2名程つけることは出来るか?」
「了解です、ちょうど我が隊で1、2の精鋭がいます。お前達頼む」
「は」
「はっ」
「助かるよ。じゃあ行ってきなさい、あまり暗くならないうちに戻るようにね」
「は~い!」
「……(頷)」
■ 聖なる奇跡の宿屋の専用浴場 ■
「いや~、一昨日ぶり~! ちはやちゃんどう?」
「……控えめに言ってこの世界に来て以来、最高の入浴ね」
「だよねー! ここの天然温泉があると思うから、昨日も安心してベッドにバタンキュー出来たところもあるんや。もっともその前から既に気絶してたっぽいけど。はぁ~湯加減も最高♪」
「それも素晴らしいんだけど私にとっては、自由に入れるってとこが大きなポイントね。必要最低限清潔にしろって口煩く強制されないところがね」
「そうやろな!」
「あの……未来ちゃん」
「んー?」
「私、まだ色々とよく分かってないんだけど……」
「うんー」
「あなたのことも、何で赤の他人を助ける気になったのかとか、未だに謎の根本的な疑問があるんだけど。あの時の説明、まだ私全っ然飲み込めてないし納得いってないから」
「うぅ~(汗)」
「でもいいの! それは聞き始めるとそれだけで話終わりそうだし、口論になりそうな予感もしてるから一旦、横に置いとく。もっと他の具体的なことからちょっと聞きたいんだけど」
「はいはい(笑)」
「カッサンドロップスさんって何者なの?」
「あれ、まだ話してなかったっけ」
「聞いてないよ。一応、周りの反応で大体どんな立場の人かは察してるけど」
「吟遊詩人なんやて」
「ぎんゆう……詩人???」
「らしいで?(笑)」
「……詩人の人が、屈強な兵士を何十人も引き連れて、他の国も巻き込んだ外交圧力を掛けて、私を解放しに来てくれたの?(怪訝)」
「せやで!」
「周囲の人達、呼びかける時『王』って言ってるみたいだけど……?」
「ついでにオマケで王様もしとるっちゅー話。兼業やな」
「……趣味で詩を嗜む国王、ってことだよね?」
「ま、普通はそう捉えるよね。普通はね」
「どこの国王なの?」
「大阪ギリシャ半島がほぼ領土なんやって」
「お……大阪ギリシャ???」
「せやで! うちが名付けて差し上げた誇り高き地名や!!」
「何か細川ガラシャみたい」
「あ? 何やて?(威嚇)」
「いや、響きがちょっとね。面白い語感だなって思って」
「せやろがい! 自信あんねん(満足気)」
「それで一国の国王のカッサンドロップスさんが自国民でもない、見も知らぬ私を助けてくれた理由は……」
「うちが助けてって頼み込んだからや」
「だよね。それはそうだろうなって感じてた。疑問なのは、何でカッサンドロップスさんは、国際問題を引き起こすのが目に見えてる頼み事について、OKする気になったの? ってことなんだけど」
「うーん、せやなぁ……出逢いから話すと長くなりそうやから超略して言うと」
「うん」
「個人的にうちとカッさんは性格相性がビックリするぐらいめっちゃえぇねん!! そんで、めっちゃ仲良くなっちゃったから、妹の王女設定にしてもろて、無理なお願いも聞いてもらっちゃったってこと!!(照)」
「…………」
「分かった。もうそれでいいわ」
「ようやく納得してくれたかぁ。ちはやちゃん♪」
「それに関係して、ちょっとどうでもいいことも思ったんだけど」
「なにー?」
「カッサンドロップスさんって女官は連れてきてないのかな?」
「じょかんって何?」
「女性の世話係。未来ちゃんが王女だっていうなら居てもおかしくない、というか居る方が普通じゃない」
「あぁ! そのことだったら何か奥さんの影響言うてたで」
「奥さん!?」
「そ。奥さんと別居してはるんやけど、女性の部下は一人残らず引き上げてるらしいんや。そんでカッサンは女性の部下を新しく雇うことも禁止させられてるて」
「そー……なの(汗)」
「もちろんカッさんは王様やねんから、そんなん無視しようと思えば無視出来るんやけど、離婚の危機があるからあえてそういう部分は触らんようにしてるって」
「なるほど(溜息) 大変なんだね、王ってのも」
「まぁだからうちらは女子2人組で気楽にやろ♪」
「そうね」
■ 聖なる奇跡の宿屋の専用浴場の建物の前の見張り場 ■
▼ ペラペラ薄ッス ▼
「ん……? 蹄の音……! 全員警戒態勢!!」
「……いや。あれはプレースタイル濃イス隊長です」
「二個乗ール隊長!!」
「どうされた?」
「襲撃だ! 後続の支ッ離ーア王セレブ狡ッスが裏切った!!」
「何ですと!?」
「我等が王が総指揮を執る! 遠方からも兵員を掻き集めるが今少しでも即戦力が欲しい、1人を残して後は来てくれ!!」
「だが王女達の警護が」
「緊急事態だ! ここは敵に知られてない、異母妹はここに居た方が安全だ」
「分かった。ペラペラ薄ッスお前が残れ! 彼女等が上がったら説明して、一先ずここに隠れててもらえ。いいな!」
「その役目、引き受けやした!」
「急ぐぞ!!」
「はっ」
「は!」
■ 聖なる奇跡の宿屋の専用浴場 ■
▽ ちはや ▽
「外少し騒がしくない?」
「何やろ。出歯亀でもひっ捕らえたんちゃうか?(笑)」
「そうかもね」
「なぁところでさぁ。うちらってまだお互い自己紹介してなかったよね」
「えぇ。だってそもそも私達、神社で会った参拝者と神職、それも巫女ってだけだもの。普通だったら別段、名乗り合う関係性でもないわ」
「じゃあ、あらためて。コッホン」
「大昨夏未来や! 大きいの大に、昨日、あのー昨日とかの昨と夏で、大昨夏! 大阪で生きることを運命付けられた苗字や思ってる!! そんで未来の未来な!! 以後よろしゅう頼むで♪(握手)」
「こちらこそ(握手)。ちはやです。漢字は、千に早い。速度の方じゃなくて、早起きとかの『はや』」
「りょーかい! 千早ちゃんね!」
「えぇ」
「……?」
「あのー。苗字は?」
「いや、それはちょっと……」
「は???(威圧)」
「だってほら、この世界って苗字の文化無いって言うじゃない。私達も郷に入っては郷に従え。いいんじゃないかな、苗字とかそういうのは。名乗らなくても」
「…………」
「そっちがその気ならうちにも考えがあんねんで?」
「え?(汗)」
「今日からあんたのあだ名は、そうやな……『過っ去』ちゃんや!!」
「カ……カッコ???」
「そう。但し漢字に気ぃつけや? 子供の子ぉは使わせへんで。未来の反対語の『過去』にちいさい『つ』ぅで、過っ去ちゃんや」
「……なんで過去かって聞いても?」
「ここって地球とちゃう星やけど、それでも共通点あるし平行世界の過去っぽい雰囲気だけは漂っとるやんか?」
『…………』
「はぁ」
「もちろん厳密には違うってのは分かってるで。雰囲気や。そんで、そこに囚われた女の子を未来から助けに来たのがうちってわけ! そのうちが『未来』なんやから、あんたは意地でも苗字名乗らんちゅーなら過っ去ちゃんで決まりや!」
「……百歩譲って過去でいいとして、いや全然良くないけどいいとして、何でわざわざちいさい『つ』入れるわけ?」
「ちいさい『つ』ぅ入れないでカコちゃんやと、何か宮廷みたいな優雅な響きあるやんか。そんなん勝手にさ、別の漢字に脳内変換されて受け取られてもかなわんもん。せやから過っ去ちゃんや。えぇどすな?」
「いや何一つとして良くないですけど」
「じゃ名前全部教えてよ。ぜーんぶ教えて!」
「……冬楠木です(憮然)。冬にクスノキの木の楠木で、冬楠木千早」
「オッケー! 今度こそ、以後よろしゅうな千早ちゃん♪」
「よろしく……」
「自己紹介もすんだし、心置きなく神命課題にも取り組めるな! 私の世界史のノートとペンもあるし、カッさんも地図持ってるし、後で一緒にやろ!」
「ありがとう」
「名付けの文化が無いここらの土地や街に名前を付けていけばえぇんよね?」
「えぇ」
「そんなら話は早いで! うちは大きいところには既に名付け完了しとるからな! 後は中小やで!!」
「助かるわ。それにしてもあなた日本でも旅行中だったって話だけど」
「せやで! っつっても小旅行やな、自分探しの旅や!」
「それでも世界史のノートを持ってきてるなんて、すごいわね」
「うぅん? 全然すごないで。うち選択科目で世界史と美術取ってんねんけど、入れっぱやってん。ズボラやからな」
「私、歴史って日本史も世界史も部分的には好きなんだけど、偏ってるのよ。ピンポイントで好きなことろは好きなんだけどね」
「へー? 歴史が好きなんて珍しい、さすが巫女さん! 感心するわぁ」
「え? えぇまぁ。どうも。あなたも好きなんでしょ……?」
「ん? いや、別に? フツー。好きでも嫌いでもない」
「世界史、選択してるんだよね?」
「いやうちは教科書とか参考資料に乗ってるギリシャ人とかローマ人のイケメンを描いてるだけやで。美術の延長ってとこやな。どーせ他の勉強も何選んだところで全部苦手やし、そんなら世界史にしとこって。資料に彫刻とかも載ってるし」
「…………」
■ 聖なる奇跡の宿屋の専用浴場の建物の前の見張り場 ■
▼ ペラペラ薄ッス ▼
「…………」
「……(ニィヤァ)」
「……ッ!?(突撃しようとした途端、後ろから取り押さえられる)」
■ 聖なる奇跡の宿屋の専用浴場 ■
▽ 冬楠木千早 ▽
「……だから基本、郊外の端にある地下牢で生活してたんだけど、定期的に外には出てたのよね。人一位の上の人達が聞き取り聴取する場所と結構な距離があって、往復するんだけど。それはもう延々歩かされるのよ」
「あの広いローマ京都ーを端っこからは疲れそうやなぁ」
「そうね、疲れるって言えば疲れるんだけど、出る度に偽巫女といはいえ清潔にしないといけないってことで女官つきで入浴が許されたし、自分のペースで歩いても構わなかった」
「急かされたりはせぇへんかったの?」
「なかったわ。典型的なイメージだと、手枷足枷をつけられて、それでいながら歩くペースが遅いと鞭打たれたりね?」
「イメージはそうやな」
「一切なかったわ。そういう扱いを私にすることを、人一位の兵士達は厳格に禁止されていたみたい。規律正しい上に尚武の気風がそうさせるのか、その厳命を破る者は誰一人としていなかったわ」
「さすがは勝負事が好きそうな(?)ローマ京都ーの兵士。丁重に扱うと決めたら丁重なんやな」
「それに外の空気も吸えて日の光も浴びて、意外と助かった面もあったの。少なくともずっと暗闇の牢屋に1ヶ月居続けるよりかは遥かにマシ」
「それなら少しは良かったけど」
「それから人一位での食事の面なんだけど、外に出た時だけじゃなくて、牢に居る時もかなり良かったわ」
「え! 意外。まぁローマ京都ーの人達なら、そんなひどい物は出したりしないとは思ったけど」
「昨日も話したけど人一位の上の人達は、私が万が一神々に遣わされし本物の聖女だった可能性を想定してた。そうなると出獄させなければならないけど、待遇が悪過ぎた場合、最高神に咎められることを危惧してたのね」
「な~るほど。いかにもローマ京都ーの人達らしいな。そっか! だから会った時少しだけ違和感があったんや」
「違和感?」
「きっと衰弱してるって思ってたんや。それで話するのも難しい状態だったらどうしようって。でも千早ちゃんボーッとしてる感じなだけで、ちゃんと立ってたし痩せ衰えてるようにも見えんかった。でも元々細いから違和感も薄っすらやったんやな。良かった、ずっとちゃんとしたご飯食べてたんやな」
「そうなの。心配してもらってたのに、何かごめんなさい」
「えぇんよそんなんわっ(グゥ~) ……あうぅっ」
「ん?」
「エヘヘ……食事の話出たら一気にお腹空いてきたわ(恥)」
「正直私も」
「上がろっか!」
「えぇ」
「ここの宿、一昨日来る時も泊まった感じやとね」
「うん」
「お風呂と部屋とご主人の人柄は最高やけど、食事はフツー」
「そっか」
「千早ちゃんはローマ京都ーでの食生活と比べちゃうとあんま良くないから、そのつもりで食べたほうが落胆せぇへんくて済むかもな」
「助けられた身分だもの、自由なだけで有難い。贅沢は言わないわ」
「まっこんな空腹で、しかも徒歩5分の上り坂で風呂上りの運動もしなきゃいけないし、実物以上に美味しく感じる準備はバッチシやな!」
「あんな坂を5分なんて、運動の範疇に入らないわ。私が体験した、人一位の街中を『徒歩で片道5時間ずつ、往復で合計10時間の刑』に比べたらね」
「いやもうその仕打ちだけで千早ちゃんが仮に聖女だったらローマ京都ーの人達は神罰下されとるやろ(滝汗)」
◎ 第29話 カッさん編8 ◎
● 別宇宙無期滞在刑35日目の日没辺り ●
■ 聖なる奇跡の宿屋の共通スペース ■
▲ カッサンドロップス ▲
「ただいまカッさん! お腹空いたでぇ~!!」
「おかえり未来君」
「…………」
「えっ!!(驚)」
「?」
「あなたは……えーっと、王様のセレブ狡ッスさん(超緊張)」
「その通り。俺の名前覚えてもらってたんだねぇ、妹さん。光栄の至り(笑)」
「セレブ狡ッスとプレースタイル濃イスと私で帰りの経路の調整をしてたんだよ」「せやったんですね……でもあの、ローマ京都ーで打ち合わせ済みだって聞いてましたけど(緊張)」
「?? ローマキョートーだぁ?(笑)」
「先に出発したリューシ負ケ越スとアンティッ後伸スから連絡が入ってね。僕達が人一位に滞在してるあいだに、どうやら東部で大雨が降って橋が落ちた箇所があるらしい。どの迂回路を通るべきか検討、修正するために後続のセレブ狡ッスにはご足労だが、わざわざ来て貰ったわけだ」
「なるほど……(緊張やや低下)」
「それもこれもなぁ、男だけの部隊じゃないから出来る限り安全かつ穏やかな道を選びたいっていう、お兄さんのお心遣いの為に他国の王達が引っ張りまわされてる結果なんだぜ(笑)」
「あ……も、申し訳ありません……大変ご迷惑をお掛けしています、私達の為に……(やや緊張)」
「いいってことよ。実に妹思いでこっちまで泣けてくるね。ついでと言っちゃ何だが、こないだの無礼を許して貰えるなら、俺は感動でもっと咽び泣いちまうところだがね?」
「こないだの? あぁ! 私は全然……。兄が感情的になってしまって、こちらが謝りたいくらいなんです(緊張かなり低下)」
「おいおい未来君っ!(焦) それだとちょっとさ、僕の立場がさ(汗)」
「フハハハハハ(笑) どうやら妹さんからも許して貰えたと思っていいようだ。これで蟠り無し、ということにしていいかカッサンドロス?」
「もちろんだセレブ狡ッス。僕もやり過ぎたことを認める。かつての友情を取り戻したい。お前が良ければだが……」
「取り戻さなくていいっつーの」
「!」
「もし失われてるなら、お前のほとんど私事私情で引き起こされた内政干渉と国際問題に巻き込まれながら、遥々人一位の都市への行き帰りまで、こんなにも律儀に付き合い続けるか?」
「そうだったな……ありがとう」
「ケッ! よせよこの水臭い感じ苦手なんだよ。さーてと。これ以上俺が居続けるとどうやらここの和気藹々とした雰囲気に水を差すようだ。部隊も待たせてるし、お邪魔虫は退散して俺の方の宿に戻るとするよ。じゃあな」
「あぁ、またな」
「ありがとうございました。セレブ狡ッスさん!(緊張、ほぼ薄らぐ)」
「はいよ~(手を振って去る)」
「では私も隊に戻ります。2人は帰りまで本隊で頼んだぞ」
「はい」
「は!」
「すまんな」
◎ 第30話 残夢編 ◎
● 別宇宙無期滞在刑35日目の夜 ●
■ 聖なる奇跡の宿屋の2人の部屋 ■
△ 大昨夏未来 △
「未来ちゃん」
「ん?」
「ごめんなさい私あの……」
「なーに?」
「馬車だと課題出来ないから……」
「とてもじゃないけど無理やもんね。酔っちゃうし」
「だから宿に着いてから相談しようって話だったけど……」
「あ、そだったね。キツいかちょっと」
「お風呂と夕食後すぐでなんか……私、昨日あまり眠れなかったせいか……今強烈なのが襲ってきてて……ちょっともう限界みたい(眠)」
「あ、うちももう眠いから丁度えぇわ、寝よ寝よ。よく考えたら電気ないし蝋燭の灯りで課題はキツいわ、またにしよ。カッさんにうちらもう寝るからって伝えてくるね」
「ごめんなさい、お願い……(眠)」
「はーい」
◆ 未来と千早の同床同夢亜空間 ◆
「えっ」
「???」
「う……浮いてる!! 何やここ!?」
「何これ未来ちゃん!?」
「いや分かんないってうちに聞かれても」
「私達、あの宿屋で寝てたはずだよね……?」
「そうだよね……。カッ素神様! この空間何なんですか一体!?」
「……応答ないわ」
「この神託腕輪は契約上、神から一方的に語りかけてくるものでしょう。まぁ私、1度規則破っちゃったけど」
「いや、ちゃうねん! 沈黙の気配がないねん、いつもと違う!」
「気配?」
「うちが語りかけて無反応でも、カッ素神様の無言の気配がすんねん! でも今はしない。通じてないみたいや。何やこれ、パチもん……!?」
「えっ!! まさか模造品? すり替えられた!?」
「でも寝てるときも風呂は入るときも、これだけはぜったい外さへんのに! 2人とも盗られてて気付かないなんて有り得へんで!!」
「いやちょっと待って。この腕輪がいくら地味だっていっても、神器なのよ。こんなに違和感のない軽さと触れてる質感の贋作を簡単に作れるとは思えない。意匠まで再現するんなら見本が傍にないと無理よ」
「確かに肌と衣装みたいに自然に触れるこの感触、今までと変わらへんな」
「というかよく考えるとすり替えなんて手の込んだことするくらいなら、ただ単に盗んだ方がよっぽど話が早いわ」
「せやな」
「通信腕輪の電源みたいなものを元から切ってるんじゃないかしら? カッ素神様が」
「電源?」
「みたいなものよ」
「これうちら用に試作してみたって言っとったで。多分やけどカッ素神様はスマホみたいに、これと同じ物を手に持って話してるわけやないと思う。そんなん宇宙で全知全能の神様には必要あるって思えへんもん」
「分かってるわよ。そうじゃなくて、遠隔操作で一方的に電源を切ったって話よ! 神様なら普通に出来るでしょそれくらい」
「こんな『粘土でコップを作ってたら底が抜けたから腕輪にしてみましたー!』 みたいなシロモノに、遠隔操作で電源のオン・オフ機能がねぇ(笑)」
「……やっぱり。気配がせぇへん。おっかしいな、いつもやったらすーぐに気配でピキり出すはずやのに。神罰中、常時見張ってるから言うてたんやで? 24時間365日。いや地球時間やないからこんな表現はしとらんかったか」
「……! これ、カッ素神様の新たな神罰か試練か何かじゃない?」
「! ……。違う!」
「?」
「いや、断言は出来へんけど。千早ちゃんはカッ素神様の亜空間、1回通ってきとるよね?」
「通ってきてるけど、あまり覚えてない。ずっと平伏して縮こまってただけだし、畏ろしくてほとんど目も瞑ってたから」
「そっか。この亜空間の感じって、うちが何度も通ってきたカッ素神様の亜空間とちゃう感覚なんや。夢みたいな」
「夢!!」
「夢? これって。でも服とか肌とか腕輪とか、実物に触ってる感覚あるけど」
「うちも最初に夢やって思ったんやけど。でもこの会話リアル過ぎない? こんなハッキリとした意識あるみたいな会話、出来る普通?」
「いや、それは私は出来るわ。夢でもこういうリアルな会話をしたり、それを起きても内容を忘れずに覚えてることもある」
「は?(威圧) 何や? 千早ちゃんその唐突な夢マウント。おいコラ! そんなん言うたら、うちだってな」
「ちょっと!(汗) それどころじゃないでしょ今……待って、どこかに着きそうだよ!?」
「千早ちゃん、手ぇ繋げる!?」
「頑張ってるけど体勢が……」
「つ……つ……掴んだ!!」
「眩しいっ……!!」
◆ 未来と千早の同床同夢、どこかの場所 ◆
「……?」
「未来ちゃん」
「良かった、出入り口で意識失う系のアレじゃないわ」
「えぇ、それに離れ離れになってない」
「せやな! 助かったわぁ!」
「……そんでさ、ここどこ? この、刑務所ってゆーか、牢屋? に入ってる人達誰や?」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「何て言ってるか分からない。千早ちゃんは?」
「同じよ」
「やっぱ通訳腕輪の方も機能してない。カッ素神様は時代、地域、言語問わず意思疎通出来るって豪語しとったのに! 最近自動学習上手くいってるなースムーズだなぁーって思ってたら、これだよ。はーあやっぱポンコツ。いくら神様だからって所詮は速攻で作った試作品、駄作や!!」
「……やっぱカッ素神様、反応せぇへんな。調子悪いんかなぁ?」
「いいえ。単純な性能の問題や不調の可能性は低いと思う。神託腕輪も通訳腕輪も全部、4つともに一斉によ? 個体差の問題でもないわけね」
「まぁそうやけど」
「それにしてもこの人達……建物や服装、容姿も明らかに今までの人達とは違う……というかどう見ても東洋文化圏に見えるわね。何となくだけど中国」
「ぽいよね」
「ここが今までいたあの星でいいなら、中国に相当する東方の地域ってとこかしら?」
「カッ素星の中国かぁ。カッさんの話でもインドは聞いたけど、中国は話題に出てへんかったな。あまりにも遠過ぎるんやろな」
「またはカッ素宇宙内の他の似た星か、あるいは地球がある私達の宇宙における別の似てる星か、はたまたどちらでもない第3の別宇宙の類似の星か。後者になっていくにつれ腕輪が本物で故障してないとしても、機能しない理由が合理的に説明がつく」
「へ……? ごめん、ちはやちゃん。うちの頭でも理解出来るように頼むわ」
「宇宙からして違うならカッ素神様の管轄外、機能しないのも理の当然でしょう。使用環境のせいで使えない。通訳は対象言語外、神託は圏外ってとこね」
「それはないと思う」
「何故そう思うの」
「カッ素神様がそんなことする動機がないもん。神命課題終わってないのに」
「でも他の神の干渉で飛ばされたって可能性はどうなの?」
「だってカッ素神様が許すはずがないやん。同じ理由でさ」
「無許可の干渉は? 話題に上がった女神もそうだけど、他の宇宙の神が勝手に侵入、暴走したとしたら?」
「それは……でもあの女神の上司の最高神は、もう手を出させないって約束してたし……」
「そこでもない全然別の宇宙の神が無許可侵入で干渉してる可能性は?」
「いやあるかもやけど!! そんなん言い出したらキリないやんっ!!(汗)」
「でもあるってことでしょ、可能性。逆にここがカッ素宇宙内の他の星なら神託腕輪の方が機能しない原因が説明しにくい。もちろんカッ素神様があえて話しかけてこない説は依然としてあるわ。えーと、それから。カッ素星? っていう呼び方で合ってるの?」
「せやで! うちが名付けてカッ素神様に認めさせたんや!!(自慢気)」
「カッ素星内のどこかなら神託腕輪と、それ以上に通訳腕輪、両方共に機能しない原因の説明が難しい。でもこの通訳腕輪の方も、電源みたいなものがあるのかも。つまりカッ素神様は何かしらの新たな試練をお与えになり、通訳機能も切った、とか」
「うー……んー……」
「それかほんとに夢の中だからとか」
「う~ん……」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「! 千早ちゃん、これ見て! この小っさい木の板」
「えっ漢字!! ……いや、ここがあの星なら地球と似てるし、あってもおかしくはないか」
「部屋ごとに囚人名を書いてるみたいやな。看守は見当たらへんけど」
「この人は……リョウ王」
「※※※※※※※※※※」
「えっ王様? 何で王様が牢屋ん中いんねん」
「さぁ。……次の人の、漢字が……読めない。イ……偉人の偉っぽい漢字に、王。イ……イ王?」
「何か温泉っぽい響き」
「※※※※※※※※※※」
「次の人がリン王。……次の人、読めない。商売の商っぽいからショウ王かな」
「商売の上の『立つ』んところが無くなっとるから、商売が成り立たへんくなって破産した王様とちゃうの」
「※※※※※※※※※※」
「ちょっと! 未来ちゃん言葉通じてないと思って! 失礼よ」
「ごめんなさい」
「次の人。何か×っぽい、漢字かなこれ? とにかく読めない文字に王」
「何やこれ、芝刈りのハサミか。とりあえず芝刈り王ってことにしとこ」
「※※※※※※※※※※」
「次の人も、その次の人も、もう全然読める気がしない。昔の漢字なのか、現代日本では使ってない漢字かもね」
「※※※※※※※※※※」
「※※※※※※※※※※」
「8人目、最後の人は読めるわ。エツ王ね」
「※※※※※※※※※※」
「もしかして、この人達を解放して助けてあげた方がえぇんかなぁ?」
「! それが神の試練?」
「いや、ちゃうと思うけど。カッ素神様の性格からしたら、ないと思う。千早ちゃんがめっちゃ試練説押してくるから言ってみただけやで」
「でもこの人達、解放しても意思疎通出来ないし、何をしてくるかも分からない。凶暴で襲って来るかも……」
「そいつらを解放しても何の意味も無いぜ!!(デカ声)」
「!?」
「誰っ!!」
「意味が無いどころか、カッ素宇宙の最高神の意にも沿わないはずだ(ボソ声)」
「! カッ素宇宙……」
「まぁそいつらに危害を加えられることはねぇぜ!! 現地人に物理攻撃されてもただただ素通りするだけ!! その点は安心しな!!(デカ声)」
「だがこの世界はそいつらを消滅させる為に形成されている。触るのは止めておくのが懸命(ボソ声)」
「しかーし!! パチパチパチパチ!!(拍手しながら口でも言う)人名読みの正解率は8分の4、つまり半分。まぁ及第点ってとこだな!!(デカ声)」
「何でこの人達だけ言葉、通訳されてるんや……?」
「さぁ……」
「但し正解っていっても、意味を汲んであげてのオマケだからな! この星独自の人名発音規則に厳密に従うとすると、8分の1にまで落ちちまうからねえ。だから本当は落第点だよ(デカ声)」
「独自の発音規則……?」
「そう! この星では最高神の命令により、洋の東西や時代の前後を問わず人間の正式名称の発音には、必ず日本語で言うところの『ン』、小さい『ッ』、伸ばし棒ン『ー』のどれかを入れなければならないんだ(デカ声)」
「! 日本語やて!?(驚)」
「!!」
「但しあだ名や略称、通称の場合は含まなくても可(ボソ声)」
「そうなんだよな。特にこの伸ばし棒のン『ー』に該当する人名の場合、要注意だよ。例えば最初のそいつ!!(デカ声)」
「※※※※※※※※※※」
「日本語表記の『リョウ』の『ウ』みたいに、実際は伸ばし棒のオ『ー』みたいな発音を普段からしてるにも関わらず、その読みを書く際には『ウ』と書く、みたいな書き方はこの星だと、はい一発アウトー!! NGなんだぜ!! 『リョウ』ではなく『リョー』となるんだ!!(デカ声)」
「…………」
「…………」
「だからそいつら八王の読み方は順番に、リョー王(△)、イッ王(△)、リン王(○)、ケー王(×)、ガイッ王(×)、エー王(×)、ギョー王(×)、エッ王(△)になるってわけ!! ま、あくまで日本語流に変換したらの話だし、どーせ言葉も通じないんじゃ何の意味もないんじゃね? ってツッコミは受け入れる準備出来てるけどな!!(笑)(デカ声)」
「あなた達って、日本人? 現代日本人だとして、普通じゃないわね」
「普通じゃねーのはそっちもじゃね???(笑)(デカ声)」
「一体何者……?」
「名乗れってえ? 人に名乗れって言うならまず、そっちからじゃね? それが人としての礼儀ってもんじゃね!?(笑)(デカ声)」
「但し注意点が1つ(ボソ声)」
「大昨夏未来や! よろしくね!」
「うわちょっバカッ(焦)(早口のボソ声)」
「バカァ!?? 初対面の人に面と向かってバカとか、許されへんで!?(怒) どーゆー教育受けてきとんのや自分!!(憤) そのフード取れやてめぇおい! コラァ!!」
「おいおいおいおいっ!! もしかして今の……珍しい苗字なだけで、マジもんの本名? まさか苗字と名前、全部言った???(焦)(デカ声)」
「へ? そらそうやで、名乗れ言うたやんかおたくらが!(怒)」
「……可哀想に。お前が名乗れなんて言ったせいで、この人は……(ボソ声)」
「おおお俺の責任じゃないぞ言っとくけど!! お前が注意点言うの遅いからじゃね!?(デカ声)」
「ふざけるな。出来る限り即座に注意しようとしたわ。そもそも名乗りの話題を出す前に、お前が予め注意しとけば済んだ話(ボソ声)」
「だってよ、日本語の流れが変ってもんだろそれじゃあよ!! そんじゃ何だ? 『全部言うなよ、全部言うなよ、本名全部はぜってー言うなよ』って事前に言っとけってか!? お笑いじゃねーんだからさ、逆効果だろ!! むしろノリが良かったら事故る可能性高いんじゃね!? そっちの方がさ!!(デカ声)」
「そんなもん言うなっつってんのに勝手に解釈して事故るのは自己責任、そこまで知らんわ。念の為名乗らせる話題を出す前に注意しとけって話(ボソ声)」
「ちょっとあのぉー……何の話かよく分かってないんやけど。うちが本名名乗ったのって、そんなに不味かったん???」
「あれ??? アイツ来んのやたら遅くね逆獏(デカ声)」
「いや遅いというか……もうとっくに来てるはず。どうなってる?(ボソ声)」
◎ 第31話 監獄編 ◎
◇ 第十二宇宙共通罪神矯正機関、中級女神用監獄 ◇
△ ヘーベー中級女神 △
「ちょっと行けロ素、何グズグズしてんのよ!? せっかくあの女が自爆して自分から真の名を名乗ったんだから、早く夢体離脱してバクバクと食い※しに行きなさいよ!!」
「私だって行きたいわヨ! 行きたくても行けないノ!!」
「こんな絶好のチャンスに何やってるわけ!? 今行かないであんたの夢力はいつ活躍する場があるのよ! 今でしょ!!」
「ウルサイわねヘーベー、集中出来ないじゃないの黙ってなさいヨ! 何か今日に限って跳ねられるのヨあの空間、おかしい!! いつもだったら夢体で簡単に入れるワ! プロテクトされてるのヨ!」
「えっ! まさか……!! カッ素神様!? あんたの夢の亜空間誘導、跡を辿られたんじゃないの? 盛るべウ素」
「ウ~ン可能性を全否定は出来ないワネ。でも知っての通りカッ素神様は宇宙間の夢の繋がりについてヒジョーに杜撰。他宇宙からカッ素宇宙に夢体が出入りしてても意に介さず平気で全放置なさる、寛大過ぎる御方ヨ」
「寛大なのは知ってるけど、気付いてて放置してるのと、最初から気付いてないんじゃ、こっちがどう対応すべきかが全然違ってくるわ」
「だから分からないって主神のことだモノ、真意は窺い知れないワ。でも残夢空間処理なんてネ、派ー手ー素宇宙に丸投げしてる産廃処理場ヨ。偉大なる豪放雷落の雷神、カッ素神様からすれば、それはもう心底どうでもいい空間のハズ! これ全然盛ってないし嘘でも何でもないワ」
「それはそうでしょうけど……というか今更だけど、何なのよあの意味不明の謎空間と、この地球人の知った風な男2人は!!」
「知らないワヨ私に聞かれても! パン頼素に聞いてチョーダイ!」
「コッチに聞かれても困るワ! こいつらは水素宇宙からカッ素宇宙に夢断侵入してる常習者ヨ! しょっちゅう見かけるワ! アタシは地球から亜空間接続中の残夢空間を探知特定して位置を教えただけダーケ!」
「もういい! 行けロ素! 喰い※せなくてもいいから、私のスピーカーになりなさい!!」
「無理ヨ、防護されてる。残夢空間に具現化してないから一切発揮出来ないノ」
「発揮も何も、喋らせろってだけなのに? それも駄目ってぇの!?」
「そ。声を届けるのだって実体が具現化してないと無理ナノ」
「はぁ~あ、つっかえ!」
「何ですってぇ!?」
「棚ト素か諸素って今どこにいるの? 派手素神様に随行してる? いるなら探して来て!」
「分かんないワヨ。宇宙各地に散らばってるのが、各々の任地から何百神も召集されて来てるんだモノ。それにこの残夢、消滅しかかってる。あと1時間も持たないワ。狭いしガタが来てるノヨ、今に崩壊し始めるワネ」
「でもあいつらなら短時間で確実に※れるわよね!!」
「そうだけど無理ヨ。棚ト素や諸素みたいに人間に対して力がモロに直撃する連中は、ふざけたり悪用したりは派手素神に厳禁されてるノ、あいつらに限らずネ。当神達も性格がクソ真面目過ぎて私達と嫌い合ってるから、協力なんてしてくれるわけないワネ」
「待てよ……! ちょうど残夢消滅のタイミングなのよね! 行けロ素、パン頼素! 比喩プノ素を探して呼んできて! あいつはここの駐在武官だか書記官だかもやってるから必ずいる! 能力も人間に対して間接的だし専門夢力だからいけるはず、今すぐ呼んで来て!!」
「チョット! どんだけ身勝手なら気が済むワケあんた!?」
「横暴が過ぎるワヨ、ヘーベー!! 私達は使いっぱしりの使い魔じゃないのヨ、いい加減にしてっ!!」
「早く行け!! 抗議してるその時間がもったいないの!! ついでにパンも買って来い!! 私の極上の酒を飲みたいならね。さぁ行った行った!!」
◎ 第32話 残夢編2 ◎
◆ 未来と千早の同床同夢、中国っぽいどこか、牢屋から離れた場所 ◆
△ 大昨夏未来 △
「俺は地球仮名即ちペンネーム兼法名、夢想春門漱石と号してるぜ!! 字は枕流!! カッ素宇宙名はドリームスプリングゲートストーン!! こう見えても有象無象のドリーマー達からは七朝夢師ってぇ国士夢号で心の師匠的に崇め奉られる残夢の生ける伝説的存在で、地球で現役1、2位を争うスペースドリーマーだぜ!! ちなみにこの頭は剃髪してる坊主頭なだけだからな、くれぐれもそこんとこ勘違いしないように頼むぜ!! そんじゃあまっ以後夜露死苦ぅ♪♪♪(デカ声)」
「はぁ……」
「…………」
「…………」
「あれ? 何か反応薄くね? 俺女の子のドリーマーにこんなに受け悪いの、生まれて初めてなんだけど!!(汗)(デカ声)」
「あなたのこと、うちらは結局何て呼ぶのが正解なん?(困)」
「あぁ、それな!! なるほど~それでかそうかそうだよな、悪い悪い!! 普通だったら夢想春門漱石に様付けしてもらうとこなんだけどな!! それか婆娑羅大名っぽいキャラで風流気取って歌舞伎捲くるこの俺様さぁさぁ聞い?(てみ) どーよ? ってえとこなんだけど、残夢に輪郭をハッキリさせながら長居出来てるってこと自体、あんた達が他の雑魚どもとは既に一線を画してるって証拠だよな~。だから俺もあんた達が相当な実力者だってこと、認めるよ。ってことで!! 強大な夢力を持つ者同士、俺のことは気軽に源氏名で、夢千一百って呼んでくれよな!!!(デカ声) b」
「もおだからぁ……情報量、多過ぎやって……。ただの自己紹介でお腹いっぱいや(辟易)」
「えぇっ? 聞っこえねえなあ!! 何だってえ!?!?!?(超デカ声)」
「声デカッ! 声デッカ!! 初対面の人にさこんなん言いたないねんけど、もお声デカいねんあんたさっきっからあ!! 頭痛なってくるでほんまに(大声)」
「この人に声デカいって言われるって、相当よあなた」
「おーいっ! ち(汗)」
「あなた黙ってて!(ピシャリ)(睨)」
「ひぃっ!?(怖)」
「えーと、いいかしら。これ以上話がとっ散らかる前に、私が一旦今までの情報をまとめても」
「ここはカッ素宇宙における夢の共通世界的な場所で『残夢』と呼ばれていると。感覚はあるけど肉体は実際に来てるわけではなく、身体的には現実で眠っている。夢千さん達は現代日本から来てて、本名を名乗るのは何故かここでは危険。名乗るなら仮名か、カッ素宇宙名が望ましい」
「夢千さんて。何か無銭飲食の食い逃げ犯みたい(超小声)」
「あ~そーね! ま、大体んとこは合ってるかな!! でもな、現代人なのはそうだけど、別に俺は日本から来たとは一言も言ってねぇけどな~。日本語を喋ってるだけかもだぜ?(デカ声)」
「いや日本人でしょどうせ。字とか取って付けたようにわざわざ名乗る辺り、歴史にかぶれた俄かの日本人」
「う゛っ……(汗)(小さめのデカ声)」
「参ったなこりゃ。何か手厳しいなぁ巫女さん。これじゃあ七朝夢師も形無しじゃね。こんな扱いって初めてだぜ! そうだよなぁお前も俺と同格の存在として、そう思うよなあ五朝無っ姓十一君の夢宰相殿!!(超デカ声)」
「やっと俺の番か。初めまして。仮名は小野台風道。カッ素宇宙名、フード。まんまだけどフードって呼んで(ボソ声)」
「いやもう簡潔! 素晴らしいわフードさん! 100点や!! もうフード取れなんて言わん。そのままでオッケーやで!」
「それはどうも(ボソ声)」
「じゃ、私の番ね。地球での仮名とか、ペンネームとかは無いわ。カッ素宇宙名、オーヴァーロードシュラインハイプリーステスサウザンドアーリー。でも長いから役職の意味だけ取って、普通に『巫女』でいいわ。よろしくね」
「……(汗)」
「よろしくな巫女さん! そんで、問題のお隣さんのことなんだけど(デカ声)」「えーとぉ、それが私は特に」
「この人はカッ素宇宙名、カッサンドロテーア」
「ちょっ! えっ? それ知ってたの千早ちゃん!?(恥)」
「っ!(苦)」
「あっ!? ごめん!!(謝)」
「いや、とりあえずは大丈夫。他人から呼ばれるのは関係無い。本名をフルネームで、自分の口から言わなければ基本、問題無い(ボソ声)」
「あ、そうなんや。よかったぁ……(安堵)」
「大丈夫だけど、とりあえず?」
「一応基本、ここで本名は他人に知られないに越したことはないぜ、出来るだけな!! 雑魚いスペースドリーマーとかだとさ、意識がボンヤリしてて、夢ん中にいながら催眠にかかって操られたりするビギナーがいるんだよ! そんで誘導されるがまま本名全部言わされて、逆獏に夢体を美味しく頂かれちまうんだ!!(デカ声)」
「あんた達は明らかに意識明瞭だし、その点は心配ないだろう(ボソ声)」
「あのー。そのギャクバクってのがまだよく分かってないんやけど」
「化け物を繰り出す能力を持った神がいるんだよ、神っつっても下っ端だけどな!! 悪夢喰いならぬ夢を見てる人間の方を喰らう、厄介な化け物下っ端神が生息してるんだこの残夢には!! その発動条件が何でか知らんが自分で本名全名乗りってわけ!! その場にいなくても地獄耳でやって来やがる!! ボヤーッてしてるとうっかり操られてバクッといかれて、実体の方の人生も同時にジ・エンドってーわけだ!! 俺達ぁ何人もこの目で見てきてるんだぜ? それもビギナーだけじゃねえ!! トーシロに毛が生えた程度の、哀れなアマチュアドリーマーどもの末路をな!!(デカ声)」
「なるほど。つまり夢で※されると現実でもリンクして意識が戻らずに※ぬっていうSFのアレね」
「いやー、厳密には違うんだけどな。まぁいんじゃね!!(デカ声)」
「厳密には違う? 夢と現実が連動して危険ってことじゃないの?」
「リンクとか連動というよりも、攻撃されたり喰われたりした夢体と人体の部位が転移して『置き換わる』感じだな。まぁあまりその光景はイメージしない方がいいだろう(ボソ声)」
「なるほど、えぐいわね……。 ? でも待って。その化物が催眠出来る特殊能力を持っているとしたら、他人に知られてようが知られてまいが、『自分で本名を全部名乗れ』ってそいつに命じられたら同じじゃない?」
「違う、催眠の方は特殊能力じゃない。各下っ端神で夢力は1つ。逆獏の催眠というのは人間の見様見真似、それもエセ催眠術師のレベルだ。意識朦朧としてる相手だから、何とか本名を引き出せるだけ。この世界で意識をハッキリ保てるならば、あんなもんに掛かったりはしない。他の下っ端神もたくさん見てきたが、催眠が夢力のやつは今のところ見たことがない(ボソ声)」
「……今の話が本当だとしたら、例え悪意は無かったとしても結構な罠よ? 最初の『そっちから名乗れ』ってくだり。せっかちな人には命取りじゃない(呆)」
「いやいくら何でもせっかち過ぎじゃね!? 注意する合間、なさすぎだって! あそこまで間髪入れずに全名乗り来るとは思わないって!! そこの大阪弁ちゃんさあ!!(デカ声)」
「大阪弁ちゃん(汗) ……まぁえぇかこの際」
「そんでだ。あんたは自分で全名乗りしてんのに襲われなかった。命拾いしたんだよ!! それもこれもきっと俺達のおかげだぜ!!(デカ声)」
「うんうん、せやなせやな! ……どの辺が?」
「分かったんだよ!! この七朝夢師と五朝無っ姓十一君の2人が揃い踏みしてるから逆獏もビビッて出てこれねーんだ!! 生ける伝説の俺達に恐れをなしやがったんだよ!!(デカ声)」
「そうは思えないけどまぁいいわ。次の話題に進みましょう」
「一旦素通りしてたけど、この夢の共通世界の『残夢』って何なの? ここはどこであそこの牢屋の人達は誰で、あなた達はどうやってここに来れていて、一体ここで何をしてたわけ? ハァ(溜息)。ようやくこれらの質問に辿り着けたわ」
「その質問! 待ってたぜぇ!!(デカ声)」
「待て夢千。俺が答える、要点を掻い摘んでな(ボソ声)」
「いやいやいやいや!! 要点を掻い摘むのは不可能だろこの質問は!!! 俺が詳細を詳しく詳らかに要約せずにみーっちり答えるからすっこんでろフード野郎てめえ!!! おとなしくフードコートで分度器片手に風土記でも書いてろよ!! そのうち風化して散逸する風土記をよ、この不審者野郎がよお!!!(超デカ声)」
「ならこうしよう。この2人に、どちらに答えてほしいか指名して貰うというのはどうだ(ボソ声)」
「それはいい考えだお前にしてはグッド過ぎるぜナーイス・グレイトゥ・ベスト・アイディーア・ピューリッツァー&ドレッサー賞を受賞だ!!!(超デカ声)」
「フードさんで」
「私もフードさん」
「何でだああああああ!? 今の流れは俺が指名されるとこだろおおおおおお!!(超デカ声)」
「いやどう考えてもフードさんが指名される流れやで」
「じゃ、いいか。最初の質問(ボソ声)」
「残夢のことだが、それが一番説明が困難だ。俺達の理解も完全ではない。便宜的に共通の夢と言ってるが、純粋な夢ではない。カッ素宇宙で廃棄予定の世界線から実在を切り取って夢と混ぜた空間。それを【残夢空間】と呼ぶ。実体感覚があるのは、一定の実在性がある空間だからだ(ボソ声)」
「?????」
「…………」
「夢と実在の割合は各残夢で異なる。大体の傾向としては、夢成分が濃い残夢は実体感が薄く物体がぼやけて見え、重力が軽い。夢体維持時間が長く難易度は低い。逆に実在成分が濃い残夢は実体感が強く感じられ、物体も鮮明で重力もリアル、夢体維持が大変で難易度が高い。今いるここがかなり実在度高めだ(ボソ声)」
「なるほどね。でもちょっといい?」
「どうぞ(ボソ声)」
「ここに来るときに私達、妙な亜空間を通って来てるのね」
「うん(ボソ声)」
「そこの時点で既にこの実体のような感覚があったんだけど」
「眠ったらまずそこを通って来ることになるが、その亜空間の時点で行き先の残夢と同じ感覚がある。だから俺達は今回は行かなくていいと思ったら引き返すこともよくある(ボソ声)」
「引き返せるんやあれ、自分の意思で!!(驚)」
「コツと慣れ次第だな。夢成分が濃過ぎると大抵景色がぼやけてるからその日は止めておく。ガキの頃は重力が軽くて飛んだり跳ねたりして楽しかったが、今は寝てた方がマシだ(ボソ声)」
「えぇ~何か楽しそうやん! もったいない」
「実在成分が高くても、寒くて風が吹き荒ぶほとんど何も無い荒れ地、とかは大体来る前に分かる。但し何も無いといっても、廃棄される残夢には必ず処分される世界線における実際の現地人がいる。それが『架空』ではなく『夢』と表現してる理由だ。だから必ず生存可能空間ではある。海の中とか空中とか溶岩の中とかに突然放り出されるとかはない。たまに現地人の夢体が紛れ込んでることもあるが彼等は侵犯者ではなく、地球人とは違い本名と真の名が一致してないので逆獏の捕食対象にはならない(ボソ声)」
「時と場所って選べへんの?」
「選べない。範囲はカッ素宇宙【機軸時間】から見て未来の廃棄世界線、かつあの星の人類が滅亡するまでのどこか、だ。俺達はずっとSFみたいな近未来の残夢に出ないかと待ち望んでるが、残念ながら今まで出た試しがない。いつも古代とか中世とか時代劇みたいな時代ばかり。だからあの星の人間にとっては未来でも、俺達地球人から見ると過去っぽく感じる(ボソ声)」
「その話やと残夢って複数あるみたいやけど、ここから別の残夢には行けるん? それとも寝るごとにランダム?」
「基本的にはだが、別の残夢には行けず、ランダムでもない。複数あっても地球との亜空間が1個の残夢としか繋がらないからだ。但し夢体が残夢内のどこに出るかはランダムだ。今日みたいに空間が比較的狭く区切られてると夢体が集まりやすいが、星全体が残夢対象だとどの地域に出るか分からない上、次に眠った時に出る地点も各自違う為、計画的な集合は不可能。別の夢体に会えたら奇跡だ(ボソ声)」
「なるほどなぁ」
「残夢が消滅すると自動的に次の残夢に繋がる亜空間が形成される。残夢の残存時間も不明で、完全消去直前に兆候があるからそれで分かる。やたら長い時だと地球時間で1年以上残り続けるが、短ければ1日と経たず崩れ去る(ボソ声)」
「ほえ~!」
「亜空間の話に戻るが、実はあの亜空間が一番安全な場所だ。残夢よりも現実よりもな(ボソ声)」
「え! そうなん?」
「亜空間では逆獏を初め直接的な夢力による攻撃は、自動保護機能がかかっていて効力を失う(ボソ声)」
「そんなことまで分かってるんか!」
「残夢は他にも地球がある宇宙や他の宇宙にも存在してるが、人間が使用可能な亜空間がなく往来は不可だ。カッ素宇宙にだけ行けるのは宇宙の最高神の管理がザルで抜け穴を放置してるから。残夢は実在と地続きで、夢体で実在側の機軸時間現在に抜けようと思えば行けるらしい。しかし高次元存在でも何でもない人間がそんなことをすれば一体どうなるか? 本棚の裏にでも行って本をバサバサ落としまくることが出来るのか? 忠告を無視して試したやつが何人もいる。その後一切姿を見かけない(ボソ声)」
「??? 本棚の裏ぁ? 何のこっちゃいな」
「…………」
「何で俺達にこんなことまで分かるのか、という説明を抜きにすると納得感が減るだろうが、そこ飛ばしてもいいか?(ボソ声)」
「いいえ。飛ばさないで」
「了解。とある女神に教えて貰ったから知っている、それだけだ。一度物凄い女神が目の前に光臨したことがあるんだ(ボソ声)」
「物凄い女神?」
「げっ! アイツかなぁ(嫌)」
「夢の女神?」
「いや、夢は彼女が司るもののうちの1つに過ぎない。部下達に部分的に力を付与しているんだ。冥界の最高神だと言っていた(ボソ声)」
「明快の最高神? 何やめっちゃ理路整然と論破してそうやな」
「冥府の女神でまず思い浮かぶのは、ギリシャ神話のペルセポネね。日本流で言うと黄泉の国のイザナミってとこ」
「読みの国……? 何か意味不な女神様やな。さっきから全然明快じゃないわ」
「すうっげード派手な格好とゲーミングPCっぽい髪の毛が目立ち過ぎの女神様さ!! あれで通夜や葬式にでも行こうもんなら、遺族と弔問客全員にドン引かれること請け合いさ!!! 後で分かったんだが、単なる視察だったんだ。下っ端神の仕事現場に来てみただけ。ところがだ、どっかの国の発情した屈強な脳ミソ筋肉ソルジャードリーマーが挑発しやがったんだ、半裸で片手逆立ちしてファー※クってな!! 癇に障っちまって一気にご機嫌斜めモード突入よ! 下っ端神どもとは比較にならない、とんでもねー力の波動を全方位に放ってきやがった!! 俺達2人以外は耐え切れず脳ミソ筋肉も含めてその場で全員掻き消されちまった、巻き添え喰らって跡形も無くなあ!! せっかく逆獏に喰われず意識を保てるくらいまで訓練してやって、そこそこは上達してた中途半端実力ドリーマーどもの集会だったのによお!! 何十人も一掃されちまったんだ!! 普通は逆獏に喰われると、現実じゃ不審※か捜索願コースだが、あん時はもう戦場でもないのに世界各地で大量爆※の嵐よ、突然大量発生の奇妙奇天烈な変※体!! あんなもんプラズマどころの騒ぎじゃねーぜ!! とてもじゃねぇがグロ過ぎてテレビ番組なんかじゃ特集出来ねぇ!! ガチもんのアンビリーバボーさ!!!!(超デカ声)」
「黙ってろ今俺が話してるんだ(ボソ声)」
「俺達2人も一発は凌いだがすぐ始末される、早く起きようとしたが起きれない。冥界の女神が戻りの亜空間に、一時的なロックをかけたんだ。終わったと思った。ブルブルガタガタ震えながら揃って必死に土下座してたが、急に俺だけツンツン肩をつつかれた。『フード取れやお前』ってことらしい。気紛れなのか、生き残った俺達を評価したのか、※されなかった。女神は暫く黙ってたが、脳内のチャンネルを合わせたのか何なのか、急に日本語を流暢に喋り出した(ボソ声)」
「カッ素宇宙のこと、亜空間のこと、残夢空間のこと、夢体移動の仕組みのこと、逆獏は部下の神で侵入者の始末が正当な職務だからせいぜい気をつけろってこと、侵犯は残夢空間までが許容範囲で、実在側にまで行くといよいよ一線越えたってことで始末せざるを得ないという警告。色んなことを教えてくれた(ボソ声)」
「まぁ程々にしとけよお前らっていう説教くらった感じだな!!(デカ声)」
「さて、大前提の背景説明が出来た。結局長くなってすまんな。残りは具体的だから一気に答える。ここはカッ素宇宙の中国相当地の残夢、乱を起こした八王は宇宙の神の懲罰で残夢処理され、事実ごと消される運命。次、俺達が来てる方法。夢体で亜空間を通り残夢に行き来する特殊才能を生まれもって有しているから来れる。次、ここで何をしているか。特に何も。辿り着いた残務が当たりで面白い空間だったら遊んで回ることもあるし、こんなつまらん上に狭い空間に出ることもある。そういう外れ回は他の夢能力者が来ないか、暇を潰しながら過ごしてるだけ(ボソ声)」
「なぁフードその夢能力者ってゆーの止めようぜ! 日本語の響きが悪過ぎるって!! スペースドリーマーね!! まあ俺達は別格の存在だから、他の有象無象と同じ括りで語っていいのかって疑問は拭えないんだけどさ!!(デカ声)」
「……う~ん」
「何だ大阪弁ちゃん。こんなに聞いてもまだ納得いかないわけ?(デカ声)」
「何か聞いてる限りだと、結構リスクがある気がするんやけど」
「そりゃもう! ハイリスク・ローリタン、いや違う!! ゼロリターンだぜ!!(デカ声)」
「そんな危険な目に遭いながらここに来て、一体何の得があんねんおたくらに」
「……結構なブーメラン発言だけどねそれも(小声)」
「えっ!! いやいや違うやん! だって遊びの暇潰し言うてんねんでこの人達!(汗)」
「その答えは『ロマン』『好奇心』『チャレンジ精神』『冒険心』『飽くなき挑戦』『どうせ人生五十年チキンレースどこまで行けるか下天の内を比べようぜ』!!! そして『夢幻の如くステータスGETなり』だぜ!! この7つのキーワードが揃ってりゃそれでじゅうぶんなんだよ!! 分かるかな???(超デカ声)」
「ごめんなさい。投げたブーメラン返ってこないわこれ」
「さぁもういいだろ、俺達のことは散々話したんだ!! 今度こそあんたらの番だぜ!! 教えてくれよ、あんたらは何者なのか! そのクッキリとした輪郭、滞在時間の長さ、意識明瞭な受け答え!! これ程までの実力者であるにも関わらず、どうやって今の今まで世界ツートップスペースドリーマーの俺達の目を逃れ続けていたのか!! つーか何で元から知り合いっぽい会話してんのか、地元一緒なケースとか聞いたことねぇけどマジでなにもんあんたら!? 納得いくまでご説明願おうじゃねえか!!(デカ声)」
「なにもんって言われても、別になぁ。うちらはただの」
「(未来を押しのけて)待ってくれる。話したいところだけど、残念ながら全部というわけにはいかないの。何故なら私達の言動は大いなる存在によって厳しく監視されているから。情報伝達禁止事項を回避しながら、制限つきでいいならお答えするわね」
「千早ちゃん。禁止事項とか別にないよね?」
「ちょっと!(汗)」
「この人達正直に教えてくれとるみたいやし、パチこいたらあかん思うで。慎重んなるのは分かるけどさ。状況打開するのにも詳しい専門知識持ってる人達にお願いしたいやん」
「ぐ……。それは……そうね(落)」
「まぁ今のやりとりで大体察しとる思うけど、うちらには大した秘密とか、何もないで。ここに来た理由知らんし、帰る方法も分からんし、そもそもうちら地球じゃなくてカッ素星から来とるしな」
「カッ素星……?(ボソ声)」
「……いやもうハテナだらけだぞ??? 今の聞いた時点で既にあんたら。変だぜ(デカ声)」
◎ 第33話 監獄編2 ◎
◇ 第十二宇宙共通罪神矯正機関、中級女神用監獄 ◇
△ ヘーベー中級女神 △
「連れて来たワヨ!」
「全くモウ!」
「何なんだお前達、またつるんでるな。良からぬことを企んでるだろヒヒッ」
「比喩プノ素! あんたの夢力、今こそ使うべき時よ」
「あのなヘーベー。エレ暴素や新喰う素ら中級神にバレたらキッツい懲罰をくらうのは俺らなんだぞ? お前はもう入獄してる身分だから気楽でいいけどな。ヒヒヒヒヒ」
「何が気楽なもんですか! 私がこんな目に遭ってる原因になった人間の女がね、何のお咎めも無しにのうのうとちょっといい男と旅行を謳歌してるのよ!! 私が一体どんな思いでいるか……この気持ちあんたに分かる!?」
「イヒーッヒッヒッヒィ!! 正直分からんヨ。それで? あんたのお手製極上酒を飲ませてくれるって話は本当なんだろうな?」
「もちろんよ。但し成功報酬。人間の女をたった1人※すだけの簡単なお仕事」
「ヒィ~ン? 人間の夢体が4人で……? 女が2人いるみたいだが??」
「もう1人の方はどうでもいい、一緒の部屋で寝てるっていうから途中で起こされないように連れて来させただけ。この大昨夏未来って女がターゲット」
「どうしろってんだ?」
「この残夢空間は後僅かで崩壊するって話。つまり消滅するまでこの女を強制的に居させ続ければいいのよ。あんたの夢力でね」
「ヒヒッだがなぁ? 俺の夢力の性質上、対象を絞れないが?」
「別に構わないわ」
「オ~ケ~イ~ヒヒヒヒヒヒヒィ!!(愉悦)」
「ただあの残夢空間には何らかのプロテクトがかかってるけどいける?」
「プロテクト?」
「夢体で直接干渉出来ないそうよ」
「ウヒヒヒッ問題ない。俺の夢力は残夢と亜空間の中間を司ってるからなぁ。お前ら下がってみていろぉウヒヒヒヒィ」
「よーし閉じ込めちゃって! 女ごとこいつらまとめて残夢ごとすり潰しちゃってちょーだい!!(嬉)」
「趣味悪過ぎナノヨこいつらモウ。ハァ――」
「ぇ? ――」
「――――」
◎ 第34話 残夢編3 ◎
◆ 未来と千早の同床同夢の残夢空間、中国相当地 ◆
△ 大昨夏未来 △
「なるほどねぇ……何でここに来れたか不明で、しかも一緒に寝てて同じ亜空間を通って来てると(驚)(小さめのデカ声)」
「暇潰しはしてみるもんだな夢千よ。こんなレアケースに当たるとは(驚)(ボソ声)」
「そんなに珍しいんかうちらって?」
「同じ亜空間で来たというのは知る限り初の事例だ。実験して検証した連中がいる(ボソ声)」
「検証……?」
「この残夢がきっかけで現実世界でも連絡を取ってついには付き合いだしたバカップル・ドリーマーが何組かいるわけよ!! そいつらが一緒に住んで同じ部屋でいくら寝ても、同じ亜空間を通れたケースは皆無ってわけ、行き帰り共にな!! それがマジもんのビギナーが出来てるってのが、意味不明理解不能ってわけ!!(デカ声)」
「なるほど」
「何でここに来れたか分からないというのは、夢能力発現したての初心者なら皆そうだから別段不思議ではないように思えるが……(ボソ声)」
「そっか! どんな大ベテランも大御所も、最初は初心者やもんな」
「だがそこから先が変だ。あんた達はどう見ても初心者の輪郭をしていないし、意識明瞭さも滞在時間もおかしい。特殊な才能がたまたま2人同時に、突然覚醒したと仮定しても尚、変だ。超プロの俺達ですら幼い頃から訓練してこの境地に辿り着いてる。到底納得出来ん(ボソ声)」
「やっぱアレじゃね? 地球人だけどカッ素星で寝てるってとこが最重要ポイントなんじゃね???(デカ声)」
「恐らくそうなんだろうな。俄かには信じ難いことだが……(ボソ声)」
「そこで教えてほしいんや」
「何だ?(ボソ声)」
「どうやったら起きれるんやってこと! うち亜空間抜けてからも夢なんじゃないかって思って、何回も起きようって試してるんや!!」
「私もよ」
「でも未だに起きれてへん! そりゃ普通の夢でも起きよう思ってなかなか起きれんことたまにあるけど、さすがにここまで起きる気配ないのは変やで!!」
「亜空間のことを考えたり、寝てる自分の姿を想像したり、意識を合わせようとしてるんだけど」
「……マジでガチもんのビギナーなんだな! それでこの夢体輪郭、すげーぜあんたら!! 逸材なんて生易しいもんじゃねー!!(デカ声)」
「あの亜空間を通る際、身体の方は夢体離脱状態となっている。帰りの亜空間を通らないと起きることは出来ない(ボソ声)」
「それを言うなら幽体離脱とちゃうの」
「幽体離脱は亜空間を通らなくても身体に戻れる。帰りのことだけ説明するが基本的に自分の意思で亜空間に入る」
「ゲートって自分の意思で出せるん?」
「ゲート……? それは神が操作し出現させるものだ。人間に出したり出来るわけがない。ここから亜空間に戻るのは『消える』感覚だな。そして同じ亜空間に他者は入ることは出来ない……『はず』なんだがな。コツがあって(ボソ声)」
「! フード!! 見ろあれ!!!(超デカ声)」
「!!」
「何や?」
「残夢消滅の兆候が出た。空間の端が融け始めてる(ボソ声)」
「!!」
「何やてぇ!?」
「ここ狭いから早いぜ!! とりま急いで帰りのコツを伝授だ!!(デカ声)」
「いいか! 帰りの亜空間に入るのに必要なのは自分の姿ではない! 鏡を使わず自分の目で自分の顔を直接見ることは出来るか? 家族だ!! 大切な家族、育った家、子供の頃の部屋。そのどれかを強く思い浮かべろ!!(大きめのボソ声)」
「えっ!!」
「う……」
「何だ? 天涯孤独か? その場合は別のイメージ方法がある(ボソ声)」
「うちら今地球に居てへんけど、それってだいじょぶそ……?」
「…………」
「……まっずいそこもレアケースだったああああぁっ!!(大きめのボソ声)」
「どうしたらいい、何か提案はあるか夢千?(ボソ声)(困)」
「そうだな、互いをイメージしたらいんじゃね!? 夫婦は元々他人だし恋人も他人だけど、イメージして帰ってるやつはいる。有効性は証明済みだ(デカ声)」
「それだ!!(大きめのボソ声)」
「え……あの……うちらさすがに、恋人ではない(赤面)」
「それに私達、会ってから日も浅い」
「恋人でなくてもそれに近い存在でもいけるぜ!! だって一緒の部屋で寝てんだろ? もはや恋人みてーなもんじゃねーか!! 行ける行ける、行けるって信じろ!!(デカ声)」
「やってみるけど」
「…………」
「…………」
「無理や。イメージしてるけど」
「私も」
「! もしかして……この残夢でも夢体で一緒にいるからか……?(ボソ声)」
「いやいや! バカップル連中だって互いをイメージして帰ってたはずだろ(デカ声)」
「だがあいつらは行きも帰りも亜空間は各自1人だ結局な(ボソ声)」
「そんっ……!!(デカ声)」
「超絶レアケース過ぎんぜ、あんたらって!!(汗)(デカ声)」
「仕方ない、俺が手本を見せよう」
「え! でも……手本って言うても、すぐには戻ってこれないんじゃ?」
「俺は眠りのプロだぜ。瞬時の2度寝ごとき朝飯前、時流差すら俺の夢技の前では誤差だ(ボソ声)」
「何かかっこ良い場面のはずやのに、すごくかっこ悪い(汗)」
「万が一、有り得ないことだが2度寝にしくじった場合、彼女達のフォローは頼むぞ夢千(ボソ声)」
「任せとけ(デカ声)」
「どういう消え方をするものなのかイメージを掴んでもらう、そこで見てろ(ボソ声)」
「オッケー!」
「…………」
「うっ!?(苦)(ボソ声)」
「だっ大丈夫!? フードさん!!」
「どうした? フード(小さめのデカ声)」
「ロックだ!! 亜空間ロックされてる!!!(大きめのボソ声)」
「何だってえ!?!?!?(超デカ声)」
「……マジだ……でもこれって、あん時のに似てはいるけど……?(小さめのデカ声)」
「そうだ、確かに似た感覚だが、冥界の女神の遮断力は完全にレベチだった。それに彼女がこんなことをするとは到底思えん……多分力を付与してる部下の下っ端神の仕業だ。多分、俺達の夢能力で各自強行突破出来るレベルだ。だが問題は……(ボソ声)」
「…………」
「…………」
「…………」
「しゃーないわ。フードさん、夢千さん、色々教えてくれてありがとうな! あんたらはもう行った方がえぇ」
「そうね」
「待て待て……限界時間ギリギリまでやってみてからだな……(か細いボソ声)」
「突破ってのにどれくらいの時間が必要か知らないけど、遅れて巻き添えは意味ないわ。私達が突破する可能性もゼロではないんでしょう? 駄目元でイメージし続けてみる」
「せやな」
「…………」
「ちょ、待てよ!!!!!(超デカ声)」
「駄目元で思い出した!! 今こそアレを試す時じゃね!?!?!? 小学ん時に1回やったっきりの、思い出のアレ!!!!(超デカ声)」
「!?」
「?」
「?」
「だがアレは、当時の……(小さいボソ声)」
「お前ずっと再挑戦したいって言ってたじゃねえか!!(デカ声)」
「あの現象は止むを得ない例外的状況の離れ業で、必死だったから出来たことだ。再現性も確認してない。危険過ぎる上、ド素人が2人もいるんだぞ(ボソ声)」
「ついにその止むを得ない例外を上回る、例外中の例外が来たんだよ!! 再現性なんて世界ツートップの俺らがやらなきゃあ、どうやって確認出来るんだよ!!!(超デカ声)」
「…………」
「そうだな。分かった、お前の言う通りだ。やってみよう、但し彼女達もその道を選択をするか、それに同意するならだが(ボソ声)」
「何の話しとるん?」
「よく聞いて。亜空間は基本1人で通ると言ったが例外がある。消滅寸前の残夢から次にセットされて地球と繋がる新残夢に向けて一時的に形成される【共通亜空間ジャンプ】だ。そこで普段は通らないゲートの入り口と出口を通る(ボソ声)」
「緊急脱出ってやつさ!! 俺らとペアで腕を組むんだ、ダブルデート中のバカップルみてーにな!! 向こうに着くまでぜってえ離すなよ、めちゃくちゃ強引に抱きついてもいいぜ!! 俺の見立てとガキん時の記憶じゃ、残夢と共通亜空間のあいだにある乱夢流が一際厄介だ!! 強弱も風向きもその時々で、とてもじゃないが予測出来ねえ!!(デカ声)」
「乱夢流自体は夢体に直接悪影響は無い。普段と違うのは亜空間ゲート入りに失敗すると、その時点で一巻の終わりという点だ(ボソ声)」
「最難関はそのゲート入りだ!! 亜空間遊泳は安全だし、ゲートから出た後は何とでもなる!! 飛行機みてーなもんだ!! 着陸よりも離陸が一番神経使うし、危険でムズいってわけ!! 生き延びたきゃな気合い入れてしがみつけよ俺らにな!!!!(超デカ声)」
「私達の同意は???」
「すまん思ったより時間がない残夢が消える! 拒否権は無しだ(ボソ声)(未来と強引に腕を組む)」
「あと夢セクハラ罪で告訴も無しで頼むわ。行くぜ!!!!(超デカ声)(千早と強引に腕を組む)」
■ 聖なる奇跡の宿屋の2人の部屋 ■
「Zzz……Zzz……(両腕の神器が光る)」
「スーッ……スーッ……(両腕の神器が光る)」
『――――』
◆ 未来と千早の同床同夢の残夢と残夢の間の共通亜空間の入口手前 ◆
「ちくしょう……流されるぜコレ……!!(デカ声)」
「くそ、くそ……! くそったれが……!! 乱夢流が思ったよりずっと激しい……!!(ボソ声)」
「ガキん時のことよ……今でも鮮明に覚えてるぜ!! こんなに酷くなかった、ここまで荒れてなかったっ!! 神様ひでえぜ! 今俺らだけじゃねえってのに!! こんな仕打ちまですんのかよ……!!(デカ声)」
「軌道に乗れん……それどころか……航路の維持がっ……!!(ボソ声)」
「きゃあっ!!(眩)」
「うわっ!?(ボソ声)」
「おいおい何だよその光!! 頼むぜおい気が散って集中出来ねぇ!! 軌道修正しねえと……!!(デカ声)」
「うちらの腕輪が……勝手に……」
「!? 待てっ! 光を消すな!(ボソ声)」
「いや、消すも何も、うちら何も操作出来へんのや(汗)」
「急に航路が安定した……? 乱夢流を抜けた?(小さめのデカ声)」
「抜けたんじゃない、離れていってるんだ俺達から(ボソ声)」
「つーかさ、これって……勝手に理想の軌道に近づいてる???(小さ目のデカ声)」
「そうだ、この光に包まれてから……それに前を見ろ夢千(ボソ声)」
「!! ゲートが……今集中力乱されたばっかなのに輪郭がぼやけてない……どころか明確になってる、何だよこの現象!?!?!?(超デカ声)」
「何が起きとんのかよう分からんけどまさかこれって……カッ素神様!?」
「神器の御加護……神の御導き……? でもこれは実物じゃなくて、夢の中で身に着けてる物を具現化しただけのイメージだと思ってたけど……」
「物質転移の置き換えじゃね!? ここの最高神ならそんぐらい可能だろ!!(デカ声)」
「仕組みは不明だが、とにかくその光を纏いながら逆らわずに進んだ方が良いと直感が言っている。この際、理屈は抜きだ……!!(ボソ声)」
「理屈屋フードがそうなら、さすがに俺も何も言わないぜ!! このままで行こう!! 信じよう!!!!(超デカ声)」
「ゲート中央付近に突入するぞ、一番良いところだが油断するな!! 俺達から離れるな!! あとその腕輪を絶対落とすな!!!!(大きめのボソ声)」
「落とさへん!! 一度も落としたこと無いで! これピッタリ身体の一部みたいに馴染んどるんや!!」
◎ 第35話 監獄編3 ◎
◇ 第十二宇宙共通罪神矯正機関、中級女神用監獄 ◇
△ ヘーベー中級女神 △
「ちょっと何なのよこいつら! 何で亜空間を遮断してるのに入れてるのよ、あんたの夢力はどーなってるわけ比喩プノ素!!(憤)」
「言ったろ。俺の能力は残夢と現実の亜空間を遮断して侵入者を拒否または隔離するだけ。ヒュイーッヒッヒッヒッヒィ!!」
「さっぱり隔離出来てないじゃない!!」
「残夢間の共通亜空間は対象外。他の神の担当。ヒッヒッヒ」
「誰よ他の神って」
「さぁな知らん。担当外だ興味ない。派ー手ー素宇宙の誰かの仕事だ。それより酒はどうしたヒヒヒ。いい加減、酒を飲ませろヘーベー!」
「話聞いてなかったの!? この女を※してからの成功報酬だって言ってるでしょーが!!」
「チッ(舌打ち) あぁそうかいそうかい。ヒッヒッヒ。じゃ、もういい。俺は仕事に戻るとするよ」
「何ですって? ちょっと! 亜空間遮断しなさいよ!」
「無理言うな話聞いてたかぁ? ここは夢力が及ばないんだよ。ヒヒッ」
「そうじゃない! こいつらが飛んだ先の新しい残夢と現実の亜空間を遮断しろって言ってんの!!」
「遮断して、それでどうする? こいつらはまた次の新残夢に飛べるんだぜ?」
「女を閉じ込めてるあいだに残夢間の亜空間遮断夢力者の神を連れて来るのよ!! それなら両方から隔離して夢体を残夢消滅で滅※後、人体転移出来るじゃない、これよ!! 完璧な作戦!!」
「穴だらけだな、カッ素宇宙の残夢ザル管理並に。次の残夢がいつ消えるか知らんが、たまたま一番短かったとしてここでの換算時間でも最低一日はかかるぞ。俺達は随行員でここに来てるんだからな。もう付き合ってられんぜおいヒヒヒヒヒ」
「待って!! お姉ロ素三神組に担当の神を連れて来させるから」
「三神組、もういないぞ?」
「えっ!! あいつら、いつの間に……!!」
「さぁな。お前がいつまで経っても酒を出し渋りし続けるから、諦めて仕事に戻ったんじゃないか?」
「信じられない! 中級神に挨拶もせず、ただ消えるなんて!(憤)」
「イヒィーッヒッヒッヒッヒュイー!! 俺も消えることにするよ。じゃあな訪問客をロクにもてなさない、もったいぶりのドケチ女神の高慢ちき――」
「何ですってえ!?」
「ちょっともう消えたの戻って来なさい!! 今の悪態、聞き捨てならない、たかが下級神風情が!!! 他宇宙の中級神に対する最低限の礼儀すらなってない!! 後で派手素神様に報告するからね、今のあんたの態度と言動!!(激怒)」
「どうぞ」
「えっ」
「今、報告して」
「!!!!!」
「は……派手素神様……!!(滝汗)」
「久しぶりね。ヘーベーさん」
「……お久しぶりです……アハ、アハ、アハハハハハ……(乾)」
「わしもいるぞ」
「! あなた様は……顔素神様?」
「おぉ。さすがに一目で分かるか。何せ顔だからな(笑)」
「初めまして。オリュンポ素第十二宇宙所属、主神オリュンポ素神様直属の部下、中級女神のヘーベーと申します。若さと青春と美、それらを齎す神酒を司っております。よろしくお願い申し上げます」
「よろしくの」
「私、そんなに丁寧で儀礼的な挨拶、あなたにされたことない気がするけど」
「えっ!! いや……あの。もう何度もお会いしてるじゃないですか(汗)」
「いや初めて会った時の話よ?」
「……すみません、ちょっと昔のことですから、最初どうだったかは……。記憶に御座いません(汗)」
「あっそう。じゃあさっきのことは覚えてる?」
「え」
「私の部下4下級神を夢断使役の上、カッ素宇宙との二宇宙間協定に基づく共同管理宇宙域である廃棄世界支線残夢空間処理場に別宇宙から無許可の不当干渉」
「いっ! いえいえいえいえ!! 違うんです!! 私は水素宇宙の地球人の常習侵犯者がいると聞き及び、義憤に駆られまして!! 許し難く思い、始末しようと率先して協力を申し出たのです!!」
「全てあなたの管轄外。水素宇宙もカッ素宇宙も私の宇宙も全部。余計なお世話」
「は……い。それは……仰る通りで御座います」
「しかも今、あなたは私達2主神の前で虚偽の罪を犯した。それも二重に」
「え」
「二重とな?」
「動機は私怨。義憤なんかじゃない。関係ないんだから。白々しい」
「いや……あの……(汗)」
「しかも標的も違う。常習侵犯者の地球の男2人じゃない。カッ素宇宙でカッ素神の神命を遂行中の地球の女。その内の片方、大昨夏未来とかいう娘」
「……(滝汗)」
「従犯且つ実行犯の4下級神はもう送還して厳罰に処してる」
「えっ!? あいつらって、もう……?(驚)」
「そうよ。私は彼等の主神、一瞬で全て済む。聴取も尋問も裁判も不要。さて残るは主犯且つ間接正犯だけど別宇宙の中級女神で、何故か既に監獄に入ってる」
「くっ……」
「ちょうどこの場に顔素神も立ち会ってる。他に弁明は? どうぞ」
「…………」
「ぐ……ぅ……」
「なさそうね。顔素神、見届けて」
「!」
「私が直接極刑を下す。執行(髪の毛から光の波動を充填して放つ準備)」
「!? お待ち下さい司法管轄権侵害です!! ここは第12宇宙共通(焦)」
「オリュンポ素神も納得するでしょう。ここまで各宇宙に迷惑を掛けた国際犯罪神だもの。事後承認してくれるわ(髪の毛から光の波動を適当に牢に向けて1本放つ)」
「ひいいいいいいぃっ(回避)」
「あなたと違って私、対象をいたぶる趣味はない。無用な拷※もしない。避けない方が早く終わる(また1本、やや狙っていい加減に放つ)」
「ぎゃああああああああああああああああ!!(傷を負うがギリ直撃回避)」
「往生際が悪い。せめて最期は中級の神らしく、誇りを持って星になりなさい」
「派手素神様、罪が! 私だけ罪が重過ぎます!! あんまりです!!」
「私の部下は唆され、指示された。あなたが主犯でより重罪なのは当然。でも最も重要な点はそこじゃない」
「えっ」
「?」
「ティターン素神と談笑中『カッ素宇宙と派ー手ー素宇宙の共通空間の在り方を理想的モデルとし見本にしてる』って賞賛されたの。三主神による首脳会談、途中で抜け出せないわけ。その間あなたは私の部下を使役し、他宇宙の神による干渉の『いい見本』を作ってくれた」
「……(青)」
「しかも標的の※害が阻止されたのも共通空間の防衛機能は作動してない。カッ素神の神器が彼女等を守るために緊急防護しただけ」
「!!」
「だから私は赤っ恥を通り越して今、顔面蒼白なのよ(髪で持った手鏡を見る)」
「……そ、そんなやり取りがあったとは露知らず、申し訳」
「申し開き不要。受け入れなさい(光の波動を足元に1本放つ)」
「ギャアアアアアアアアアアアア!!(足をかする)」
「派手素神様!! どうか!! どうか一度だけ、偉大なる主神の御慈悲を!!」
「慈悲の心はもう無い(光の波動を適当に乱発)」
「なぜ!! なぜですか!!(泣)」
「私の面子と共に失われたから(光の波動を一斉に、集中的に放つ準備)」
「顔素神様!!(泣)」
「!」
「どうか!! どうか隣のかたを御止めになって下さいまし!! お願いです!!(泣)」
「……(キョロキョロ)」
◎ 第36話 残夢編4 ◎
◆ 未来と千早の同床同夢、新しいどこかの場所 ◆
△ 大昨夏未来 △
「ふぅ~着いたぜ! 共通亜空間ジャンプ、完全成功だ!!(デカ声)」
「良かったぁ!(安堵)」
「助かったのね(安堵)」
「まさかここまで上手くいくとは……最高神の加護を受けるあんた達2人のお陰だろうな(ボソ声)」
「いいえ、あなた達2人の子供の頃の経験がここで活きたのよ」
「せやせや! 2人の実力でうちらは助けられたんや!!」
「それもあるが、今回の乱夢流は当時よりずっと酷かった。加護の光に守られなければ今頃どうなっていたか……(ボソ声)」
「あれ! いつの間にか光消えてる! 昼だから気付かんかった」
「御導きが終わったから消えたのね」
「でも別の機能あるなんて、うち説明されてへんかったけどな」
「機能とかそういう問題じゃないの。この腕輪はきっと日本流の用語で言えば依代に近い、神の御力を宿す器なのよ」
「よりしろ???」
「神霊が宿る媒体よ。もっとも憑依まではしてないでしょうけど、これを通して御力を発揮させてるんだから似たようなものね」
「へ~。そうなんかなぁ?」
「それにしても……新しい夢に来たけど、何かまた中国っぽいとこやな」
「この街の景観は中国の五胡十六国時代相当だぜ!!(デカ声)」
「えっ? 時代まで分かるん?」
「俺達は最古参だ、何度もここに来てる(ボソ声)」
「近世まで進むと古代まで戻っては繰り返し何十週もしてるんだ!! 建物と町並みを見れば時代も場所も大体すぐピーンと来る!!(デカ声)」
「残夢自体は個別だが世界線が懲罰処分されるのはカオスな時代、乱世だと相場が決まってる(ボソ声)」
「! カオスな時代……」
「概ね時代の流れに沿って次に進む感じだが、たまに乱れて前後したりする。順当にいけば魏晋南北朝時代相当、五代十国時代相当となるんだが、場所も2、3回続くと東に移動していく傾向にある。だから次あたり日本列島が選ばれるかもな(ボソ声)」
「東に……なるほど……」
「さてと!! 前の残夢で亜空間ロックしてたのが誰か知らねーが、こっちはもう大丈夫みてーだぜ! ようやく起きるフェーズ到来だな!!(デカ声)」
「せやな」
「それなんだが、1つ提案があるんだがいいか?(ボソ声)」
「何や?」
「さっきの共通亜空間で、2組がほぼ同じ軌道に収束した様子を見て思いついたんだが。俺の実体験に基いた説明に沿って2人とも起きようとしていたが、事情が違い過ぎるあんた達に的外れなことを実践させていた可能性がある(ボソ声)」
「どゆこと?」
「行きの亜空間が2人で来たなら帰りも2人……。つまり2人が傍にいて繋がった状態で起きるんだ。それなら片方が起きるだけでもう片方も連れて行けるかも……確信はないんだが(ボソ声)」
「いいや! うちは確信した! フードさんそれやで!!」
「だがよ、地球に居ねー問題の方はどうする? 家族も居ない、生まれ育った家もない、互い以外の大切な人も(小さめのデカ声)」
「大切な人おる!!!!! カッ素星に大切な人、おるで!!!!!(超大声)」
「声デッッッカ(汗) マジか、大切な人いんのマジか(小さめのデカ声)」
「早速やってみるわ! 千早ちゃん!」
「えぇ(手を繋ぐ2人)」
「もしすぐ起きれた時の為に、今のうちあらためてお礼言っとくわ! 色々助けてくれてありがとう2人とも!」
「私もです。感謝してます」
「いいんだぜ! 俺達も亜空間ジャンプで腕輪に一緒に導かれたわけだしな!! 多分加護されてんのは女子勢だけだろうけど、ついでに救ってくれたっつーわけだ!! つまりお互い様ってことよ!!(デカ声)」
「全くもってその通りだ、こちらこそ助けられた。……カッ素星に居ることについて詮索はしないが、起きた後についてのことも万事上手くいくよう祈ってる(ボソ声)」
「ありがとう! ありがとうなフードさん、夢千さん!! ……ってここでタイミング良く起きれないと、超絶気まずい時間が訪れるでこれ、どうしよ(焦)」
「無理に起きよう起きようとするんじゃなくて、そのカッ素星の大切な人の声や容姿を思い浮かべてみて(ボソ声)」
「分か――」
「きゃ――」
◎ 第37話 監獄編4 ◎
◇ 第十二宇宙共通罪神矯正機関、中級女神用監獄 ◇
△ ヘーベー中級女神 △
「庇う義理も無いんだが」
「その通り」
「そんな! 顔素神様!!(泣)」
「初対面だしな。だが少し待て派手素神」
「待たない」
「待て待て待て待て。待てといったら待て。わしの顔を立てんか。このデカい顔面子をな」
「……。なんですか(放つ寸前で一時停止)」
「派手素神、お前この件で面子が失われたとか言ってたが、わしはお前が言い出すまで気付かんかったぞ」
「は?」
「何と言ったらいいか、関係あることとして考えてなかったというか。別に何とも思っとらんかったというか」
「…………」
「誰も大して気にしておらんのじゃないか?」
「あなたが気にしてなくても、ティターン素神と私は気にしてる(一応光の波動の充填状態を切る)(呆)」
「そのティターン素神を呼ばんか? 上司は違えども第十二宇宙なんだ。判断というものがあるだろう」
「それ。ここにティターン素神がいないこと自体、彼が結果的に私に恥をかかせてしまったと思ってるいい証拠」
「ん? どういうことだ?」
「気まずいの。彼は。忘れ物をしたとか無理のある言い訳をして、主賓を自由散策という名の放置で逃げ出したの」
「い~や~!! ごめんごめん!! 遅くなりまして!!」
「ティターン素神様……!!」
「! おぉ、素晴らしい。ちょうど良いところで来たな」
「探したよ! まさか女神用の監獄に来ていたとは!! 幾千万という共通機関がある中でわざわざここをチョイスするセンスには脱帽だよ。あのね顔素神、ここは事前申請して第十二宇宙主神の誰かの【最高神度許可証】がないと、男神は立入禁止、面会も禁止。例え主神といえどもね!!」
「なぬ? てっきりわしは今日主賓の1人として、外交上の特別待遇で自由見学に来ておると思っておったのだが??」
「主賓だろうと国賓だろうと規則は規則! 禁止は禁止!!」
「だがなぁ。門衛の神にも看守の神にも止められんかったぞ?」
「そりゃ止められないでしょ! 下級神の言葉が届かない他所の主神2人が堂々と入ってきてるのに」
「職務怠慢じゃないか? 刑務官失格じゃないか?」
「そりゃそうだけど主神に刃向かえば即、宇宙際問題発生だ。『顔素神の前に立ちはだかってしかし抵抗はせずに、ただただ※されろ』。それはさすがに酷」
「う~む。そういうもんか」
「あのね、何をうちの門衛や看守を責める流れにしてるんだい? この案内資料に書いてあるでしょ! 自由に立ち寄って良い施設とそうでない施設のこと!!」
「その資料なるものをを受け取ってないんだがな」
「それは済まない! 忘れてたんだ。せっかく案内資料のパンフレットなんて初めて作ったから、どうしても渡したくてね! ここの総合管理タワーに用意してたと思い込んで探し回ってたんだ! そしたらまさかの主星に置き忘れていたというね! いや~参った参ったハッハッハッハッハ!!」
「……(黙って資料を受け取る)」
「こんな紙っぺらの為に、わざわざ主神たるお前が往復してきたのか。ずいぶんとご足労なことだったな(資料を受け取る)」
「紙っぺらって言わないでくれると助かる」
「部下に探させて持って来させれば良いものをな?」
「主星は主神本神じゃないと入れない場所がいっぱいあるんだよ!! 分かってるでしょ!! これでも最速で戻ってきたんだ! もう許してくれないか!!」
「分かった分かった(苦笑)」
「そんでだ、派手素神。この場の流れを説明しなくていい、ここの管理者だからね全て把握しているよ。彼女の処遇をどうするか、だろ?」
「来るのは遅いのに話だけは早い」
「ヘーベー」
「はいっ」
「君を【神朕大赦】する」
「えっ……!?」
「!?」
「ほお」
「ティターン素神様、今何とおっしゃって……???」
「大赦すると言ったんだ。いいかい? これは普通の恩赦じゃないよ。私達による史上初の電撃鼎談が成立したのを記念して、主神である私が自ら指名して大赦を下す。無条件で釈放するから出ていい」
「無条件!(驚) ティ……ティターン素神様! 本当なのですか!!(嬉)」
「別に釈放は結構。出ようが出まいが私が彼女を始末するだけ。それでいい?」
「ひいぃっ!(怖)」
「良くはないな。ヘーベーは第十二宇宙の中級神なんだ」
「別にあなたの部下じゃないでしょ彼女。オリュンポ素神の部下じゃないの?」
「僕の直接の配下ではないがここは共通機関、所属は違えど彼女は私の同胞」
「オリュンポ素神を呼んできて! 直属の上司と話がしたい」
「彼は同盟間紛争の調停で多忙なんだとさ。同盟外の身としてコンタクトが取れない状態だ。カッ素宇宙と協定を結んでいる君の方がよくご存知だろう」
「もういい。私の判断で※刑する。オリュンポ素神に追認して貰う。無理だったら彼と事を構えてもいい」
「彼の前にまず私が看過しないな。正当な理由がなければ了承出来ない」
「私は彼女に恥をかかされた。それだけで理由はじゅうぶん」
「一体何のことだい恥って?」
「……言いたくない(不機嫌)」
「では到底見過ごせない。うちの神を私刑で※すことなど。それにそもそもここは攻撃禁止だよ。職員を除いた中級神以下はほぼ神力を発揮出来ず、正当防衛も不可能。主神クラスだから平然とプロテクトを破ってるけどね」
「見過ごさなくて結構。禁止だろうと防護があろうと私の前では無関係、無力。彼女に正当防衛の権利などない。これから※刑に処される立場の者が、自分の身を守るために執行者に反撃など許されない。……これだけ論破されてまだ妨害する? ティターン素神」
「妨害ではない。制止してるんだよ」
「第十二宇宙全体と宇宙際問題が発生しようと、宇宙間戦争が勃発しようと構わない。彼女を※す」
「1ついいかな派手素神? 最高神度許可証もなくここに連れて来たこと、忘れてないかい?」
「? 知らないわよそんなの顔素神の責任でしょ。成り行きで一緒に見学して回ってただけで、別に私が行動を強制したわけじゃない」
「いや。わしは連れ回された気がせんでもない」
「ふざけないで(睨)」
「では彼等の行動の責任は……?(空中にお姉ロ素三神組と比喩プノ素神の夢体壁抜け侵入の様子を映した画像を出現させる)」
「っ!!」
「!」
「……彼等は誰の部下だい? 誰がこの共通空間に連れて来た?? 大した役目もないのにぞろぞろぞろぞろ引き連れて、一体誰の随行員なんだ??? 彼等の勝手な行動と犯罪行為を同じ空間にいながら統制も抑止も出来ない上司はどこの誰だ???? 下級神への最高神度の教育責任と監督責任は誰にある????? 下級神や中級神が別宇宙で犯罪行為を働いた場合、犯罪神引渡し協定を締結していようといまいと当該宇宙の主神の判断が仰がれ先決されるのが大原則だが、一瞬で連れ戻して隠蔽し無かったことのように振る舞いながら彼女を※刑に処そうとしているのはどこの主神だ?????? 私が持っているはずのこの犯罪神4名を裁く先決権を奪っておいて、自分だけは何が何でも私刑を強行するって???????」
「…………」
「提案だ。宇宙間の侵犯、干渉、指示。主権が交錯する部分はこの際無視しよう。そして棲み分けて相殺しよう。彼等の処分は君の管轄。彼女の処遇は我々の管轄。当然、今回限りの個別具体的、且つ例外的事案処理だ。先例にはしない」
「……(頷)」
「解決! さぁこの話は終わりだ! ヘーベーも出ていいぞ! こんな陰気な所は出よう! 祝祭なんだからね! 皆で楽しい話題に切り替えようじゃないか!!」「ティターン素神様!! 私今まで寡聞にして知りませんでした。何と寛大で慈愛と同胞愛に満ち溢れた御方、御意志を固く貫き通される御方、頼もしい御方……!! オリュンポ素神様に散々聞かされてきた御神柄と全然違う!! こんなの惚れてしまいますわ♪♪♪ 待って下さいまし~! このヘーベーが行く先々に花を巻きますわ! ティターン素神様~!!!♪♪♪」
「……。今、一件落着と見せかけたこの瞬間八つ※きの滅多※しにしてやったら、その後の展開ってどうなるのか! ちょっと興味が湧かない? 顔素神!!(結構な声量で)」
「ひっ(ティターン素神の傍に駆け寄る)」
「そろそろ赦して差し上げろ。な?(笑)」
◎ 第38話 過っ疎編8 ◎
● 別宇宙無期滞在刑36日目の昼 ●
■ 帰りの道中の止まっている馬車の中、昼休憩 ■
△ 大昨夏未来 △
「えーっ!?(驚)」
「いやいや、そんな驚くとこ?」
「驚くとこだよ。ほんとなの?」
「せやで。オトンとオカンは大阪人やけど、うち自身は大阪出身やない」
「信じられないんだけどちょっと」
「生粋の大阪人やないんや。たまに京都弁みたいな方言も入り混じるのは、色んなとこから取り入れたごった煮の似非関西弁だからや」
「そうなの?」
「……うちはな、幼い頃から根っからの陰キャやってん。どうしても夢千さんみたいな陽キャが苦手やねん」
「? いや彼は陽キャとかそういう問題じゃない。変人一歩手前の風変わりってとこね。お世話になったし根は良い人だと思うけど」
「とにかくや、うちも陽キャになる為に大阪弁を意識的に喋るようになったんや。大阪人になろうって思ってな」
「どういうことなの一体。あなたの理屈じゃ大阪人全員陽キャってことになるじゃない。とんでもない偏見よ」
「もちろんそうじゃないってこと分かっとるで。でもどうしてもイメージっちゅーもんがあるやん、お笑いの」
「まぁねぇ」
「でも方言っちゅーのはさ、本来そんな努力して積極的に摂取しにいくもんやないやん? 意識的に喋るわけやなくて、周りの人みんなそうやから自分もそうなるっていうのが自然やん」
「それはそうかもね」
「うちにはそれが足りてないねんな。そのコンプレックスも合わさって、陰キャから抜け出せないんやないかって、最近小旅行しながら考えとったんや」
「そうだったの……。いつ頃から意識して喋るようになったの」
「オトンの仕事の都合で小学二年生の時に大阪に引っ越して来たんや」
「えっ???」
「親からしたら里帰りやけどな。えって何? 千早ちゃん」
「未来ちゃんそれからずっと大阪で過ごしてるの?」
「せやで!」
「……小二から大阪で育ってて両親も大阪人なら、それはもう普通に大阪人でよくない?」
「でも厳密には違うんや」
「厳密に違うのは出生地ってやつでしょ」
「出生地?」
「生まれた場所。『出生』が別の場所でも育ったのが大阪なら『出身』は大阪って言っていいんだよ」
「……いいの!」
「何がいいのよ。どこがいいのよコンプレックスなんでしょ? そこを解消したいわけでしょ? だったら」
「やっかましーい!! うちの意識的には違ってるってゆー思いがあるんやから違うんや!! 尊重しーや分かったぁ!? あんまそこつつくとどつくで自分ほんまにぃ!!(怒)」
「いやだから、何でそこ拘ってんのよ、気にしなくてもいいんじゃない? って気遣ってるだけで、何で怒られてんの私?(汗)」
「千早ちゃんって方言ないよね」
「方言とか訛りとかそういうの私、嫌いだから。消してるだけ」
「そうなん?」
「そうよ。でも人が喋ってるのは気にしない。私自身だけの話ね」
「当てにいっていい?」
「当てる?」
「千早ちゃんも実は大阪生まれやないんちゃう?」
「生まれも育ちも大阪府」
「あらら。そうなんだ。てっきり京都の方の人かと思ってたわ」
「何で京都?」
「だってほら、うちら出会ったのがあの神社やから。あの辺の人やと思って」
「? 何言ってんの未来ちゃん、あの辺の人だよ私」
「そうだよね」
「あなたまさか、あの辺り一帯が京都府だと思ってないでしょうね……?」
「言うてほぼほぼ京都みたいなもんやん」
「はあ!? 今の問題発言よちょっと!! 聞き捨てならない!!(怒)」
「ちょっ……いや……うちほらあのさ、生粋の大阪人やないから、詳しくないんや特に内陸の方って初めて来たし(汗)」
「小二から大阪に住んでて詳しくないも何も通らないでしょ」
「待って待って……うちも勉強して詳しくなろうと思ってるんや、あの神社の街にも……ってあれ? そういえば」
「何?」
「今思ったんだけどさ、もしかして千早ちゃんの名前の由来ってさ」
「うん」
「あの神社のある場所にちなんでる……?」
「まぁ一応。それも含めてってところ」
「そうなんだ。あははは、オケオケー♪」
「……私ね、未来ちゃん。ずっと田舎から抜け出したいって思ってたの」
「あ……うん」
「だけどね? 子供の頃から生まれ育った思い出のある場所のことをすぐ近くで『過っ疎い過っ疎い』連呼されたらね? こんな私でもイラッとくるわけ。そこんところ未来ちゃんには分かってほしいの。OK?」
『…………』
「OKです全然OKです全然全く悪気はなかったんやて本当にもうぜんっぜん!! だからもう言わないからマジで許してほしいお願い!!(汗)」
「つーん(横を向く)」
「ちょっと! 千早ちゃん(汗)」
「……何だか急に仲良くなったね君達!(歩いて来て外から声を掛ける)」
「昨日と今日とで全然違うじゃないか(驚)」
「せやでカッさん! 大冒険してきた仲やからなうちらは! 夢ん中でな!」
「夢の中?」
「うちと千早ちゃんで同じ夢の旅や!」
「そうね」
「君達は一緒に眠ったら同じ夢を見れるのかい?(笑)」
「見れるんやで!」
「え! もしかして君の世界の人って全員そうなの?」
「ちゃうちゃう! 夢のお告げを聞ける本物巫女さんと天性の巫女素質持ち(嘘)が揃ってるからや!」
「ハハハなるほど納得だ! さてそろそろ食べ終わったかい2人とも?(馬車に乗り込みながら)」
「あ、食べ終わった。課題考えてたとこ」
「ご馳走様でした」
「そうか……。せっかく集中して取り組んでいるとこすまないが、迂回路をとった影響で次の宿が少し遠いんだ。夕食時には到着したいからもう出発したい」
「えぇで! だべりながらやってただけやから全然集中してへん!(笑)」
「そうかい(笑)。ピーリッポス、出してくれ!」
「はいさぁ!」
「日が明るい内に書きたいだろうに、今日はほぼ小休止しかとれなくて悪いね」
「構へんで! 今回の神命課題は期限切られてへんから。カッさんち着いたら本格的にしよう思ててん」
「期限……?」
「うちん時は提出期限有ったんや」
「そうだったの」
「あれ? そういえば千早さんの神命は期限無いんだね」
「千早ちゃんは囚われて何も出来へん牢獄ん中で神命を聞かされたんやで。さすがのカッ素神様もその状態で時間的な制限まではせえへんかったってことやな」
『…………』
「…………」
「なるほど」
「でもなんかさ! 思ってた人と違ったわ、いい意味でな!」
「その言い方でいい意味?」
「だってお互いに第一印象が最悪やったやん。うちだって神社で美人の巫女さんに冷たい感じで対応されたんやもん。感じ悪かったのは千早ちゃんも認めるやろ」
「まぁね」
「でもいい意味で印象変わったわ。不良から一緒に逃げたあの時から、ようやく止まってたイメージが繋がった!!(嬉)」
「あぁ。あれはあの場に女子2人しか居なかったからそうしただけ。別に何か今に繋がるような行動じゃないの。私のせいであの石を踏んで、あなたを巻き添えにしたこと以外は……(落)」
「千早ちゃんっ!! いいんだよそれはもう、不可抗力! ね! 忘れよ!」
「……ありがとう。未来ちゃん……」
◎ 第39話 残夢編5 ◎
● 別宇宙無期滞在刑36日目の夜 ●
■ 宿屋の2人の部屋 ■
△ 冬楠木千早 △
「ふぁーあ(欠伸)。昼は馬車で移動だし夜は蝋燭つけても暗いしで課題がなかなか進まへんねえ」
「でも馬車移動の休憩時間にだいぶ書けたし夕方も少しやったから、今日はこれで切り上げましょう」
「せやな。じゃ、もう寝よっか」
「でも……このまま寝て大丈夫かどうか」
「あ、夢?」
「えぇ」
「また何か起こるかもね。でもどうしようもないで」
「そうなんだけど」
「フードさんは夢に行く時の亜空間は逆戻って止めとくこと出来るみたいな話はしてたけど」
「そうね、でも2人の場合でも同じなのか。それに技術やコツがいるかも」
「うん。うちらに出来る事前対策といえば必ずコレを肌身離さず身につけて寝るだけや(両腕をあげて腕輪を強調する)」
「もうそれだけは必須、命綱ね。私は今日も箒横において寝るわ」
「じゃ、寝よ(ベッドに入りながら)」
「……もしかして、前の宿屋が特別だった可能性も?(ベッドに入りながら)」
「特別?」
「前の宿屋って『聖なる奇跡の宿屋』だったよね? 何か特別な力が働いていたのかも……」
「あらへんあらへん! あれは主人の転んでもただでは起きない商売魂やで。謳い文句や……んじゃ、おやすみ~♪」
「おやすみなさい……」
◆ 未来と千早の同床同夢、残夢行きの亜空間 ◆
「……千早ちゃん!」
「手を繋げる? 未来ちゃん」
「捕まえたで!(手を繋ぐ)」
「あなたの言う通り、宿屋がどこかは無関係みたいね」
「せやね。それにしてもさ、この亜空間の流れってさ」
「えぇ……とてもじゃないけど流れに逆らって遡るなんて芸当は出来そうもない」
「困ったもんやね……」
「残夢に着きそうよ!」
◆ 未来と千早の同床同夢の残夢空間、どこかの場所 ◆
「あれ??? 何か雰囲気違くないここ?」
「そうね、昨日の新しい残夢は五胡十六国時代って言ってたけど……」
「ここって何か中国? って言うより……」
「えぇ。昔の日本っぽい」
「昨日の残夢、出来てすぐに消滅しちゃったんか。最短1日で消えるっては聞いたけど」
「ちょっと待って未来ちゃん! ここって……」
「ん?」
「ここって……もしかして……!!」
「どないしたん千早ちゃん?」
「昨日、フードさんの言ってたこと思い出したの! 残夢が新しくなると、時代が進むって言ってたよね!(輝)」
「せやったっけ」
「同じ場所、中国が続いてたから次あたりは東に行って日本辺りが来るんじゃないかって予想してた!(輝)」
「そんな話やった? あんま重要な話でもないし……よお覚えとらん」
「そして残夢に選ばれるところは決まってカオスな時代、混沌とした乱世だと相場が決まってる! そう言ってた!!(輝)」
「言ってたね。どないしたん千早ちゃん急に興奮してない?(笑)」
「私……分かっちゃった! ここが日本ならどの時代かってこと!!(興奮)」
「えっ! そんなもう見当ついたん?」
「見当じゃない! 断定よ!!」
「何時代?」
「そうだなぁ、ヒントは中国にも同じような名前の時代があるってとこかしらね! だから混同に注意してね!(楽)」
「いやあの。ヒントとかいいから。詳しくないし、普通に教えてほしいねん」
「さぁあっち! 何か騒がしい方に行こう!(楽)」
「ちょっと」
「百聞は一見に如かずよ!! 口で言うより、直接この目で確かめてみましょう!!(楽)」
「でっでも危ないんじゃ」
「危なくない! この夢体には物理的攻撃は効かないって説明されてたでしょ!」「でもでも、出来るだけ接触しない方がいいってフードさんが(汗)」
「こっちから積極的に触ろうとしなきゃいいのよきっと! それより私、会ってみたい人達が3人いるのこの時代に! 何とか会えないかな、近い所にいるといいんだけど!(興奮)」
「千早ちゃん! もし誰かに会っても自己紹介で本名全部言っちゃ駄目だよ!」
「分かってる!」
「それとさ、ここは地球の過去やのぉて」
「承知の上よいいの! ほらローマ皇帝の人達ってさ、容姿そのままっぽいじゃない!(走)」
「かなりの割合でそうっぽいね、彫刻のスケッチと見比べても(走)」
「でも日本だと絵でしか残ってないし、描いた人の想像ってことも多いと思う! 見てみたいの実際どんな人だったのか!! 但し懸念事項もあるの!!(走)」
「ねーえー! 走らんといて千早ちゃん! 懸念ってなにー?(走)」
「この時代の前半というか、かなり序盤の方じゃないと会えないのよその3人! 特に私が一番会いたい人が真っ先に決戦で退場しちゃうの! 局面がそこまで進んでないといいんだけど……!!(走)(願)」
◆ 未来と千早の同床同夢の残夢空間、どこかの荒廃した街 ◆
「よっす! また会ったなお2人さん!!(デカ声)」
「室町時代後期の京都。応仁と文明の乱が凝縮された残夢にようこそ(ボソ声)」
「なああああああんんんんでえええええええじゃああああああああああああっ!!(両手で箒を割ろうとする)」
「うぇっ!?(驚)」
「そこは南北朝時代来るとこでしょーが!! 何で通り過ぎた!? 何でわざわざこの時代引っ張ってきた!?!?!?(箒で地面叩き捲くる)」
「千早ちゃん! 落ち着いて!(汗)」
「何か知らんが荒れ狂ってんな巫女さん(汗)(デカ声)」
「鎌倉時代末期と南北朝時代、室町時代初期はこの前の残夢周回でやったから飛ばされたんだろう(ボソ声)」
「応仁の乱なんて知らんがな!! もー私知らないっ!! もおいい、こんな時代興味無いっ!! 私帰る!!(泣)」
「おいおい! いくら何でも興味失うのが早過ぎるって(汗)(デカ声)」
「それにしても何でこんなに残夢に来れるようになったんやろ? 今まで人生でこんなことなかったのに。カッ素星にいるからかなぁ?」
「カッ素星の影響と2人一緒に来てること。あまりにイレギュラー過ぎて断言などは到底出来ないんだが。推測というか憶測混じりでいいなら思い当たることが1つ(ボソ声)」
「なんや?」
「恐らくあんた達の1回目は、夢力を持った何者かの干渉の結果だ。可能性が高いのは夢力を行使する下っ端神だな。あの中程度の亜空間ロックもその一環だろう。冥界の女神は部下の神に、必ず1つずつだけ夢力を与えてると言っていた。複数の下っ端神が徒党を組んで、何らかの意図を持ってあんた達を一緒に残夢に呼び寄せた。あくまで仮説だが」
「ふんふん」
「そしてこの2回目だが、これは少し確実性が増す。1回何らかのきっかけで夢能力が覚醒すると、その後は自然とチャンネルが合って残夢に来やすくなる。好むと好まざるとに関わらず、あんた達は夢能力者となったわけだ(ボソ声)」
「スペースドリーマーね(デカ声)」
「俺達の実体験がようやく比較適用出来るわけだな。だからこのまま何事もないとすれば、今回あんた達がここに来たのは多分自然なこと、夢意識だという可能性が高いだろう。そうであれば少しは安心材料になるんじゃないか(ボソ声」
「安心……なるかなぁ?」
「下っ端神の干渉でないとすれば妙な攻撃もないだろう。ここからまた俺の憶測なんだが、多分下っ端神の夢力行使は行き過ぎた暴走だと判断された(ボソ声)」
「暴走? でも侵入者の排除が役目なんとちゃうの?」
「残夢に来る気もなかったあんた達を誘い込んだとすればわざと侵入させているということになる。後になって排除するという名目を掲げたところで正当性がない。マッチポンプだろう(ボソ声)」
「んん~、にゃるほど!」
「それ以前に冥界の女神はそこまで俺達スペースドリーマーに厳しくないぜ!! 多少のことは大目に見てくれてるんだ!! 挑発したり不敬したり、現世に抜けたりしなきゃ積極的に咎めてくる神様じゃねーぜ、ご本人はな!!(デカ声)」
「その後暴走した下っ端神は女神の懲罰を受けて出てこれなくなり、攻撃がパタッと止んだ。他の部下に担当が変わったとして、とてもじゃないが何かの意図や私情などは持ち込める状況にないはずだ。当面、残夢は平穏だろう(ボソ声)」
「納得や! ちょっとだけホッとしたわ(安堵)」
「ホッとしたからもういい! 帰る!!」
「ちょっと待って(汗) 帰る前に、この前伝え忘れたことがあるんだ。残夢行きの亜空間に入った際、残夢に行きたくない時の対処方法、逆戻りする方法について(ボソ声)」
「あ! お願いするわ。教えて!」
「もっとも俺は2人が通れる亜空間は知らないから確実ではない。あくまで参考ということで頼む」
「オッケー」
「亜空間のことを、自由自在に行き先を操作出来る、機械の回転式滑り台だと思うんだ」
「えっ、確かにあれ滑り台みたいな感覚やけど、自由にって」
「人間が自分で自由に行き先を決めるという断固たる意志が大事だ。普通は慣れてくると思うだけでいいんだが、あんた達は常に例外だ。亜空間では手を繋げるか?(ボソ声)」
「今のところ全部のケースで繋げてる。腕輪が引き合わせてるのかも」
「了解だ。繋げてるなら片方でもいいかもだが、念の為2人で口に出して亜空間に対し意思表明、宣言するのが望ましい。先に確認して行くか戻るか意見を一致させておく方がいいだろう(ボソ声)」
「なるほどなるほど」
「ここで要注意ポイント! 戻る宣言前、宣言後ともに言えることだが、流れに逆らってジタバタ強引に戻ろう戻ろうとか、起きよう起きようとしないこと。それをすると亜空間が硬直化して、むしろ残夢行きが確定する(ボソ声)」
「ふんふん」
「では戻る宣言後、することは何かといえば流されながら少し待つだけだ。亜空間自体の流れがスライドしながら曲がって行く。自分達も一緒に曲がる。ぐるっと180度、反対方向に変わるわけ。その流れに身を任せるんだ……(ボソ声)」
◆ 未来と千早の同床同夢の残夢空間、日本相当地の荒廃した京都の野原 ◆
「ありがとうフードさん。次残夢行きの亜空間が出たら逆戻りやってみるわ」
「試してみればコツを掴んでいけるだろう(ボソ声)」
「でもよ、前も言ったと思うけど慣れてくると、亜空間の空気で楽しそうなとこかそうでないか分かるようになるぜ!! 俺らもよくいるからよ、気が向いたらまた来てくれよな!!(デカ声)」
「帰る!(手を繋ぐ)」
「そうするわ!(汗)(手を繋ぐ) また遊ぼ~ね2人とも! ほなな~♪」
◎ 第40話 カッさん編9 ◎
● 別宇宙無期滞在刑37日目の朝 ●
■ 帰り道の馬車の中 ■
▲ カッサンドロップス ▲
「千早さん、さすがにここにきて疲れが出たみたいだね」
「うん……。宿屋だとうちと同室だからえぇけど、やっぱこの馬車でカッさんと斜め向かいじゃ緊張するんや」
「まぁ仕方ない。荷馬車の方も常にここから見えるし、今は信頼出来る部下だけに周囲を任せてるから大丈夫さ」
「……やっぱカッ素宇宙の人ってさ、全体的に穏やかだよね。兵士の人も含めて」
「んー、そうなの? かもね? といっても大して誇れるものではないかもよ、その実ね」
「誇れるものだよ」
「神の怒りへの恐怖心、薄まるまで十数年単位で空中に漂うカッ素濃度の色濃い影響。それらが相俟って人々の自制心になっているとしたら」
「例えそれでも誇れるもんやで」
「そうなのかな。僕の方は君の世界のこと、比較して見れてないからさ」
「カッさんの友達も部下の人達も、びっくりする程みんなえぇ人やん」
「それはありがとう。何だい突然さっきから、どうしたの?」
「だってさ、全員もう知ってるでしょ? うちがカッさんと半分血の繋がった実の妹なんかじゃないってこと。それから王女なんかじゃないってこと。どう考えてもみんな分かってるよね」
「ん……。いや……そんな別に……必ずしもそんなこともないよ。普通に気付いてない兵もいるかも……いや、気付いてないよ。うん」
「えぇんやって。分かってても尊重してくれるだけで嬉しいんや」
「……そう」
「それに、みんなうちが千早ちゃんを助けてくれるのに協力してくれたやん。カッさんの友達も何だかんだ言うてたけど、結局全員一緒に来てくれたし」
「そうだね。まぁディア・ドッコイの緒王の場合は、一人欠けると他全員で共同謀議を企まれる潜在的な可能性があって、それを排除したいっていう国際政治上の各統治者心理、勢力均衡的思考も働いているんだけど」
「また出た! まーたそれ言い出したわ! えぇてそのカッさんのセーリョクキンコー理論講座はもう。ウンザリや、耳タコなんや(辟易)」
「待って待って。それもあるけど、っていう続きが重要なの! それだけじゃないんだよ。今回の共同外遊はそれ自体も効果を発するんだ、直接は目に見えない利益だよ。僕達の結束は崩れなかった。脱落者も裏を掻こうとする者も出なかった。その事実を内外の各勢力に示すことが出来たんだ。今までは強大な諸王の目が互いが互いに光ってるからという事情が大きかったけど、今は他のどこの勢力も動き出し難い状況だ。下手を打てば僕達の協力体制によって他を全て敵に回すからね。比較的平和が続いているんだよ。例え永続的なものでないとしても、十数年、数十年と続けば世界的には長いさ」
「ほへー……なるほどなぁ……よう分からんけど、そういうもんかいな。でもカッさんの部下の人達もみんなえぇ人や。お別れん時お礼言いたい」
「それは喜ぶと思うよ。解散時に報酬の支払いをするから声を掛けてあげてね」
「うん」
「将兵みんなずっと本国に縛り付けられていたのが、今回武力行使の遠征ではないものの一定の緊張感のある遠出が出来て、いい気晴らしになった。そして何より、せめて僕達の世代が王であるあいだだけでも潜在的敵性、ライバル関係を棚上げし団結すべきだという点で諸王が全員見解が一致した。いや、こんな堅苦しい言い方をしなくていいほどにかつてないほど打ち解けたよあいつらとも」
「他の王様達はカッさんの怒りが炸裂するのが恐いんちゃうかってゆー疑問が僅かにあるのは言わんとこか」
「もう言ってるよね? 未来君?」
「ごめんて」
「まぁたとえそれが表面上だけのことであっても、一時のことに過ぎなくても、その表面と一時が大事だということを皆共有することが出来た。それもこれも未来君のおかげさ」
「そう?」
「君は神の怒りに怯えて暮らすこの陰鬱で、活気のない平和な世界の夏に訪れた、一陣の涼風のようなものだよ」
「ちょ、また照れるて。苦手やねん。まぁ嬉しいからいいけど!」
「あれ……?」
「どうかした?」
「そういえばあの人は? 暫く見かけへん気するけど」
「プレースタイル濃イスかい? 彼と別働隊員達には基本的に別の道を任せてるんだよ、周囲に異変がないかどうかの警戒と、火急の時は経路を速やかに変更可能なようにね」
「ちゃうちゃう。それはもう説明してくれてるからえぇの。ちゃうくてあの、副隊長さん。思い出した、ペラペラ薄ッスさんや!」
「あぁ。彼には暇を出したよ」
「ヒマ?」
「今度からは新進気鋭の剣士、ピーリッポスに守備隊の副隊長をやってもらうことにした」
「そうなんか? 剣士のピーリッポスさん!」
「はいっ! この度、光栄にも副隊長に取り立てて頂きました! 残りの道中の安全も二個乗ール隊長と、この私めに護衛指揮をお任せ下さい(敬礼)」
「うむ」
「2人とも、よろしゅう頼むでな~」
「こっちの人員も補充したいんだけど、僕の軍団の本隊を本国から動員すると斥候のように少人数であっても緊張が走ることがあるんだ。だからプレースタイル濃イスの部下で、僕もよく知ってる2人をこっちに回してもらったよ。他勢力との争いを起こしたくない時は出来る限り目立たず少数精鋭の編成でいきたいんだ」
「いや今更ちゃうん? 言うて目立ちまくりやで」
「確かに今更かもね(笑)」
「ってあの、うちが頼んだ外遊やねんから、そんなこと言う資格ないねんけどな」
「いいんだよ。いくら抑止力が働いているといっても警戒を怠る理由にはならないからね。それに人間だけじゃない、あの暴走女神の件もあったし。慎重さや注意深さは必要だよ」
「そうやね」
「でもあの女神に会って良かったことが1つだけあるよ」
「良かったこと??? 何やねん」
「僕は生まれて初めて本物の女神という存在をこの目にしたんだが」
「うん」
「女神よりも未来君の方が遥かに美しいことが判明したことさ♪」
「ちょ! 歯が浮く浮く浮く! もう口ん中上も下も、全部の歯ぁが浮いちゃうてカッさん!!(汗)」
「いやほんとにほんとに」
「うちはすぐ隠れちゃったから、あんま見てないから分からないんだけど」
「あぁそうだったね。僕はかなりの時間対峙してたからよく顔を覚えてる。そして少なくともあの女神なんかよりずっと未来君の方が美しい」
「ありがとうやけど、女性に対してあんまり比べてどうこうっていうのは良くないでカッサン!」
「ごめん。そうだった。言い直すよ。ただただ君が美しいし、僕は君のことが好きなんだ、愛してるんだってことを言いたいの」
「けどさ、前の副隊長さんって、何でそんな急にクビにしたん?」
「えっ!? 今の受け流されるのかい、僕は!?(汗) しかもペラペラ薄ッスなんかの話題に切り替えてスルーされるの??? ショックだよ結構、今僕……」
「これ以上は歯が浮き過ぎて抜けかねんからスルーやスルー(笑) で? ペラペラ薄ッスさんはどないしたんや質問してるんやで?」
「んもー……ずいぶんそこ突っ込むね。そんなに気にするとこかなぁ?(笑)」
「いやツッコミちゅうかさ、クビにするなら家につくなり任務が終わるなりしてからにすりゃえぇ話やん。まだここってローマ京都ーの領域内やろ? 帰ってる途中やのに。だから何かヘマでもしたんか思っただけや」
「なるほどね! それは疑問を抱くのも納得だ。では答えると、彼は護衛としても幹部としても不適格なだけでなく、兵士としても不要だったと判明した。戦闘力としてはそこそこだったけど、それよりも主に内面が不適格だね。二重の意味で」
「そうなんか」
「女神の襲撃の際に周囲を取り囲んだけど、彼はなるべく一番後方に位置しようとしていた。その後一斉突撃の号令をかけたが、彼は逆方向に後ずさって逃げかけたのを僕は視界の端に捉えていた。もっとも直後にあの神が現れて、女神の首根っこを押さえつけて状況がまた変化したから、彼は逃げるのを止めたようだがね」
「えっ? 私、宿屋ん中で声聞いてただけやけど、あの極限状況でそんなん把握する余裕あったん?」
「ないない(笑)。余裕なんてないよ。それどころじゃないのは分かってるんだけど、軍事指揮官時代からの習い性になっててね。嫌でも動作に違和感のある兵士の戦闘態度が視界に入ってくると、自動的に脳内の片隅で評価が完了してしまうんだよ。それも一瞬のことだけど、一瞬で致命的に勝敗や生死を分かつことがある世界だからね。瞬間的な行動が評価に直結するんだよ」
「ほえ~。だから解雇したん?」
「そうだよ。敵前逃亡しかけたんだからね。本来は即刻※刑してもおかしくないところだけど、今は友好国に出国中だし、せっかく喜ばしい解放もなされた後だ。だから解雇で済まそうとはしたんだよ、これでもね」
「でも逃げかけただけで、逃げてはいないんでしょ? ペラペラ薄ッスさん、一応踏みとどまったんじゃないの? うちが口出すことちゃうけど処分が重過ぎるんとちゃうん?」
「まさにその通りだよ未来君。君が口を出すべき問題ではない」
「うっ……。ごめんなさい(沈)」
「ははは、いいんだよ。……ペラペラ薄ッスは結果あの場では逃げずに済んだが、突撃で前進の動きをしなかったことに変わりはない。その時点で兵士の心構えとして失格だし、いざという命令を発した時に動かなかった彼を以後、部下として信頼することも出来ない。だから解雇は妥当、それだけのことさ」
「そうなんや……何か……うちは責められへんなぁ、正直。臆病もんやから」
「臆病者?」
「うん。ちっちゃい頃から怖がりやった。警察官の夢を諦めた理由の1つや」
「友人を助ける為に、自分の意思でこの世界に戻ってきた未来君が臆病?? 今度こそ故郷に生きて帰れない可能性を神々に警告されながら、それでも尚ここに来る決意を貫き通した君が臆病???」
「臆病やで。戦闘なんてどう考えてもぜったい無理や、仮に剣なんて持たされたところで戦える訳ないし怖いもん」
「いいんだよ未来君はそんなこと考えなくて。兵士と王女では立場が全然違う」
「うちってまだ王女なん?(笑)」
「フフフ。もはや王女さ未来君は」
「人類が神の怒りに触れてからというもの、多少腕が立つ程度のペラペラ薄ッスのごとき軽薄な人物ですら、本国出身者の中堅幹部として遇さないとならなかったんだ。人を継続的に雇うのに苦労するこのご時世だからね、最近少しは状況がマシになってはきたけど」
「へ~。カッさんも色々大変やねんな?」
「分かってくれるかい? 人事の機微も大変だけど、同じぐらい大変なのが俗物的感情を隠しながら、それをいつ露わにしようかと機会を窺っている輩から女性達を守ることだね」
「え? なんやて??」
「僕はこう見えて予兆というものに敏感でね。部下の増長、慢心、疑心や二心を抱いてるかどうか、他国の王やライバル勢力からの勧誘があった際の気の迷い、配下の諸将や兵士の言動から反乱の兆候を感じ取れるかどうか、不忠、不義、そして性的欲求を同意なく満たす行動を己で抑制可能かどうか。そういったものを見極めるが得意なのさ」
「……!!(ピーリッポスの剣の柄の『錆』を目撃する)」
「実行に至る直前に現場を抑えるのがベストタイミングなんだけどね、言い逃れ出来ないようにね。これが絶妙で難しいのさ、手遅れになってはいけないからね。そこでセレブ狡ッスとプレースタイル濃イスに頼んで、一芝居うってもらったのさ」「芝居……?」
「わざと隙を作ってみると、案の定彼は暴走した。剣士のピーリッポスらに寸前で取り押さえさせた。彼は隊から脱走する準備もしていたから、ついでにその証拠も突き付けて、近くの野原で『終わらせた』よ」
「……いつそんなこと……?」
「聖なる宿の温泉の時だよ」
「あ! だから帰りの時、いなかったんか……」
「ちなみにもし彼が暴走しなかったとして、解雇は変わらないよ。人生は少し延びただろうけど、兵士としては終わりだ。協定により不名誉な元兵士を雇う勢力は無い。それこそインドより東方にでも逃げ延びない限りはね。……とまぁこのように事前に萌芽を摘み取ることによって私的な現象においては悲劇を、公的な現象としては内乱に発展することを、予め防いでおく。それが肝要なんだ」
「……(青)」
「! もしかして、僕は言う必要のないことを言ってしまったかもね。無闇に怖がらせちゃったのかな?」
「そんなことなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもないです(萎縮)」
「未来君、隣においで!」
「はいぃっ!(即移動)」
「僕はずっと君の話を聞いてきたからね。そちらの世界の価値観とここは異なることを理解しているつもりだよ。君達2人に対して僕は、こっちの世界の基準や規範を押し付けたり適用したりなんかしない。もう何回も言ってることだけど、改めてそれを宣言するよ」
「そ……そうね。ありがとうやで。あは、あははは……」
「まっ! とにかく物事や局面は見極めが大事って話なんだけどね。そんな僕にも見極められない現象が2つ。神々の気紛れと」
「うん」
「女心の気紛れかな♪」
「えぇて(笑)、カッさん。なんか会ったときからどんどんキザ度が進行しとるで最近な(笑)」
「ん? キザ? ……微妙な意味合いが含まれてる俗語のようだが、果たしてこの僕は該当するかな?」
「該当するする。キザったらしいで。イケメンやから許されとるだけや」
「キザかそうでないかはともかくとして」
「キザやってだから」
「知一位の都市の出目トリックスや他の諸都市の代理者に向けて、政策指示出しと人事も済んだことだし」
「カッさん、もうあそこは知一位やない! 大阪ギリシャの合ッテナイやで! 間違えんといて!」
「はいはい。そうなのね(汗)」
「ふぅ~。しかしこれでようやく煩わしい頼まれ仕事の副業政治からも、暫くのあいだ解放される。僕は本業に戻れるんだ。ただのしがない一介の吟遊詩人に戻るんだからね(喜)」
「こんだけ部下ゾロゾロと引き連れといてどの口が言うとんねん(笑) カッさんはどう考えても詩人より武人のが向いとるで」
「そりゃ元々武人だからね。でもいいんだ」
「いいんだって何がや」
「吟遊詩人がやりたいから吟遊詩人をやる。それだけさ」
「好きで不向きなことより嫌いでも向いてることやった方がえぇんちゃう?」
「ちょっ……信じられない! 一体何てこと言うんだい? いくら親しくなったからって、言っていいことといけないことがあるだろう!?(笑)」
「ごめんて。ごめんやけどうちはカッさんの今後の為を思ってやな。楽器も持ってるだけでろくに弾けないし、歌詞の1つも浮かばないんでしょ? そんなんを無理してさ」
「ねぇねぇねぇねぇねえ! 何でこういうとこだけ理解してくれないの、未来君?? 向き不向きの問題じゃあないの!!」
「こっちの世界の人みたいなこと言うやんカッさん。そういうとこだけ妙に現代人感覚あるのはなんなん?(笑)」
「未来君に心ないことを言われて今、固く心に決めた! こうなったら僕は、意地でも吟遊詩人をやめないっ!!」
「いやもう意地んなっとるやん自分(汗)」
◎ 短編につき38日目~40日目の展開カァッt!! 3 ◎
◎ 第41話 カッさん編10 ◎
● 別宇宙無期滞在刑41日目の昼前頃 ●
■ 知一位の都市の市場の一角 ■
▼ カッサンドロップス ▼
「偽巫女はまだいいとして、偽王女ってどーゆー了見? カッサンドロス」
「偽なんかじゃない。王である僕が王女だと認めてるんだから王女なんだ」
「百歩譲ってあなたの養子ならね、それだって当然私は認めないけどね。でもお義父さんの実の子であなたの腹違いの妹だって主張するなら、完全に嘘つきじゃない。つまり偽王女よ」
「僕が認知したのさ亡父の代わりにね」
「遺命で実の息子を千人隊長に留めた上、他人の将軍を摂政に指名したのが余程気に食わなかったのね。今に至るまで自分を後継者に選ばなかった実の父に復讐し続けてると」
「そもそも摂政とは王が幼い、若年或いは意思疎通に支障があるなど、何らかの理由で王による統治行為が困難な場合の代理者であるに過ぎない」
「あなただって当時は若年同然だったでしょ。力が強くても若過ぎて貴族も諸侯も将軍も総督も全員その統率に納得するわけがないわ。相当程度、妥当な判断だったのよ。肝心の人選の方はちょっと首を傾げたけど」
「父の摂政指名は当時のカッチドニア王家成員の承認無しに行われ、追認もされなかった。よって単に人事内容が不当であるというだけでなく無効だ。次代の摂政はあいだを挟まず、王家に承認されたこの僕ということになる」
「承認『させた』でしょ」
「同じことだ。大王一家の実質的断絶後も廃絶と見做さず、お前と結婚した私が王位を継承する正統性とともにそこに至るまでの摂政位の継承の流れをも、現緒王は承認している」
「単一王朝の巨大王国の分裂と引き換えに、お互い様のなし崩しの結果でね」
「平和裏の分裂なら歓迎さ。図体ばかりでかくて神々の怒りに触れ、人口は激減。その巨体を維持出来るはずもない。父はどうにかして緩やかな統一を続けたいと老体に鞭打って奔走していたが無理が祟ったのさ」
「…………」
「かつては人望も厚く持ち前の調整力で王国全体を取り纏めていたが、年功だけが取り柄の老将を後継者に据えるなんてね。最期は耄碌して判断が鈍ってしまった、悲しいことだが寄る年波には勝てないね。残念ながら晩節を汚したと言わざるを得ないよ、息子の責務として後始末と後処理はこなしたけどね」
「その自然の寿命で亡くなったお義父さんにあなたは、一体どれだけ死後の汚名を着せれば気が済むの? 死体に鞭打てば満足するの? 赦されざる死者への冒涜行為よ。天から下界を見下ろしては、さぞかしお嘆きのことでしょうね気の毒に」
「汚名? 冒涜? 遥か東方の超大国の王女とのあいだに娘がいる栄光栄誉がかい?」
「それが本当ならね。でも虚偽じゃない。身分詐称にも程があるわ」
「詐称なんかじゃない。王である僕が妹だと認めてるんだから妹なんだ」
「呆れ果てたわ嘘つき王が開き直っちゃって。この世に真の王の妹がいるとしたらこの私、大王の妹テッサロ二課だけなのよ」
「その大王家の血統を受け継ぐ我が子3人の顔をもう1年近く見てないんだが? そろそろ会わせてくれないか?」
「私が会わせてもいいと判断出来る状態にあなたがなったら会わせるわ」
「血が繋がっている実の父と子だ。会って話す正当な権利がある。連れて来い」
「この私に命令しないで。父親としての役目を放棄してなければ今も一緒に住んでるはずだったの」
「一切放棄してないし教育費もそれ以外の費用も全て私が出している。つべこべ言わずに連れて来い」
「血が繋がってない出自不詳の女を妹と称し外遊に同行させる父王に会わせるのは教育上悪影響を及ぼしかねないので連れて来ていません母として」
「口答えするな。一度詩人の家に戻った後、また宮廷か離宮に行く。今度こそ子供達に会わせろ。いちいち情報をキャッチしてタイミングを見計らい、子牛一位の都市に逃げ込むのはやめろ。嫌味ったらしい」
「子供達と一緒に実家に帰っているだけ」
「何が実家だ。笑わせるな」
「祖母の故郷の王家にね、あんなことがありながら私達の置かれた境遇に同情し、今なお特別に計らってくれている。挿話ロス現王もとても優しい人柄よ誰かさんと違って苛烈じゃないの。すぐに一族根絶やしだの血統断絶だのと言い出さない」
「そういえば誰かさんの継母も実に苛烈な女だったな。ところで大王の母の故郷の王家であっても、お前の故郷の王家ではないだろう、忘れるなよ。お前と大王の母は血が繋がってないんだからな」
「例え血は繋がっていなくとも幼き日より母に可愛がって頂き、育てられました。母と娘の関係同然、いいえそのものよ」
「私と未来も兄と妹の関係同然、いいやそのものさ」
「穢らわしい。離婚の是非吉凶を子牛一位の神託所で出して頂かないといけないのかしらね」
「市場の路上で臣下と市民に聞かれながらする話ではない。いいか、とにかく次に行ったとき子供達に会わせろ。少し経てば成長する子供時代の貴重な時間を、父親からだけ奪うな、母親だけが独占するな」
「都合のいいこと言ってるんじゃないわよ。実際に育ててるのはこの私。親と言えるのは私だけ」
「言っておくが僕は育児放棄なんかした覚えは無いからな。一方的に子供達を連れ去ったんだ。なのに僕はお前の意向を尊重し、追認し、宮廷で何不自由なくさせ、後継者教育も最善のものを提供し続けているんだ。父親の義務だと考えてな」
「ならば無理にでも会えばよろしいんじゃないの? 私を処※して会おうと思えば会えるでしょう、いつだろうとね」
「平穏裏に一家団欒の場で会わせろと言ってるんだ。子供達の実の母を父が※刑に処して再会する家庭が一体どこの世界にある? どうしてそういつもお前は発想と言動が極端なんだ。子供達の前で口走ってないだろうな」
「大王とその家族だって一家団欒で平穏に時を過ごしたかったでしょうに」
「あの大王に限って平穏は有り得ないし平和も有り得ない。そして仮に存続していたとして、あの骨肉の争いが日常の家族に一家団欒はどうせ無い」
「大王個人の平穏をも奪った張本人のくせにその言い草はなに」
「何の話だ」
「いい加減にして頂戴。周知のことをいつまでとぼけ倒せば気が済むわけ? 兄の毒※を指示したのは一体誰なのよ」
「いい加減にしろはこっちの台詞だ、お前まだ思い込んでたのか。大王は馬美ロンで疫病に感染して高熱を発し、快復せずにそのまま亡くなったんだ。看病した者達がそう言ってる」
「その看病した者達がもう既に怪しいのよ」
「フン。だが死因が疫病でないとすれば……いや! もっと言えば疫病が原因ではなく結果なのだとしたら、思い当たる節がある。神々の怒りだ。大王は最高神の怒りに触れた。己が神の子孫を通り越して、化身だとまで主張していたからね」
「神々の怒りは侵略戦争と大量虐※に対して降り注いだもの、神だと名乗ったせいじゃないわ」
「いいや。僕の予想では違う。その実、戦争も虐※も引き金に過ぎない。人が神だと言い出したのが天上の神々の怒りの根源なのさ。だから人間を元老院の決議などで神格化し祭り上げる人一位の都市と、神官と結託して王が神の子孫であり現人神だと言い張る枝プートの歴代王朝があれ程までに罰せられたのさ」
「そんなことない。あなたの本当の妹が現ファラ雄に嫁いでからというもの、枝プートはかつての繁栄を取り戻そうとしているじゃない」
「それは現ファラ雄のプトレーマイ推スが有能な上に、現人神を自ら名乗ってないからだ」
「名乗ってるって聞いたわよ」
「それは神官団が勝手にやってるんだろう。自分を祭り上げるのに任せて気分が悪いこともないしな、政治的実権を手放さないという前提条件さえ確固としてあればだが。どの王朝でファラ雄が誰だろうと、何度神々に罰せられようとも、枝プートの神官どもは原因を他に帰して性懲りもなく何千年も同じことを繰り返している。習い性だ」
「どうだかね。そのうち彼が自分は神だと言い出すのも時間の問題じゃないの」
「あいつの性分からしてそれはないさ。それが起きるのは次代からだろう。カッチドニア貴族と軍勢、大衆を抑えるのに先代以上に苦労し、何れ神官どもの権威付けとご宣託に頼り出すのは目に見えているからな。そのうち王権の弱体化を付け込まれるだろうさ」
「とにかくあなたは彼を含めたディア・ドッコイの諸王に借りを作ったわけよね。愛人の友人を助ける、それも自国民でもない咎人を外圧で釈放させるなんていう、恥ずべき私的動機のために軍を動かし、本国に本隊を残して玉座を空ける危険を冒し、旧友とはいえライバルである他国の王に助力を仰いだ。政治の公私混同ここに極まれり。今の父王の姿を後継者教育中の息子達に見せられますか? 学び取る部分が何一つとして無いわ、反面教師を除けばね」
「言っておくが諸王に借りなど作ってない。此度の彼等との武力行使無き遠征、外遊はそれを行うこと自体が有益なんだ。即ち私達カッチドニア勢の団結による支配の安定、勢力間の平和的均衡の維持。他勢力による手出し困難さをより一層見せつけることに成功した。これら全ての成果が諸王との共通認識事項なのさ。それもこれも妹のお陰」
「そんなのはただの結果論」
「政治とは詰まるところ結果論さ。ついでに外交上の大成功には続きがある。未来のプレゼントが威信財となり権威の確保と増加に苦労する諸王が大喜びし、もはや借りどころの騒ぎじゃなくて感謝されているんだ。ちなみにもう聞いてるかもだけど、人一位の都市との友好関係は亀裂が走るどころかむしろ強化されたからねぇ、未来のプレゼントのお陰でね。それもこれも世にも珍しい貴重な品々を提供出来る彼女の出自だからこその芸当さ。大王の妹の威光より政治的権威があるかもね」
「一歩、また一歩と確実に修復不可能な離婚への道を突き進んでいるわねカッサンドロス。大王家の血筋が遠ざかれば、元を辿れば臣下の身分であり、所詮は武官。それも東方遠征で武功も武勲も挙げられず、総督職を任されず将軍にすら進めず、千人隊長止まりの摂政の息子に過ぎない。そんなあなたなんかいつでもどこからでも誰からでも離縁された途端に見放されるってこと、くれぐれも忘れないことね。あなたと結婚している私の高貴な血統だけがあなたの支配の正統性を保証しているの。それが失われたら個人的な戦闘能力と見た目しか長所が残らないってこともついでに思い起こすことね。子供達の教育なら心配ご無用。帝王学なら帝王の妹であるこの私が兄の言動と行動を叩き込みます。ちょうど文官と武官が言行録を作っていますからそれも利用させてもらうわね。成り上がり者の軍人は戦争指揮と武術と馬術だけ鍛えに来ればよろしいこと」
「勘違い女が上っ面だけなぞった知識で帝王学など教えられると思うなよ」
「それじゃ私、知一位でまだ買い物したいから。子供達にお土産持って行くの、お父さんからのお土産じゃないんだってきっとまたガッカリされるだろうけど仕方ないわね。人一位まで不倫旅行に行った挙句に何も用意してないんだものね。ま、何か買ってきたところで不快だから別にいいんだけど。お母さんが子供達の悲しみを少しでも減らさないといけない」
「土産も何も送ってるだろうが毎月のように色んな物を!! おい待てテッサロ二課、お前子供達に何て言ってるんだ!? 僕の手紙ちゃんと読ませてるんだろうな!? 何で手紙を返して寄越さない、字がグチャグチャでも文章になってなくてもいいから本人達に勉強がてら返信を書かせろ!! それからあれこれ嘘を吹き込まずちゃんと本当のことを伝えろ、いいな!」
「あら? 行くつもりで未だ行ってないお店ってどっちの方向だったかしら?」
「はい王妃様。予定ではあちらの道です。開店していることも店主に確認しております」
「ありがとう」
「聞こえてるんだろ!! おい止まれ! こっちを向けっ!! お前の夫に向かってちゃんと返事をしろ!!! いいな!!!! 分かったんだなっ!!!!!」
■ 知一位の都市の市場の一角 ■
▽ 大昨夏未来 ▽
「しゅ……修羅場ってる……(滝汗)」
「居合わせなくて良かったね未来ちゃん」
「せやな……買い物してて大正解や。剣士のピーリッポスさん達」
「はい」
「カッさんにゆっくり買い物しててえぇって言われてるけど、馬車に戻るのってもう少し経ってからでいい?」
「問題ありません、もう別荘まで遠くないですから。……私達兵士としてもその方が助かる思いです」
「アハハハァ……(乾)」
「犬も食わへんであれは……どないしよ……私のせいでカッさんの家庭環境が……(落)」
「『夫婦喧嘩は犬も食わない』は、その後仲直りすることが前提の諺よ」
「あっ、そうなん?」
「そ。だからあれは違う。既に家庭が崩壊し別居もしてて離婚が秒読みの夫婦には諺すらない」
「秒読みて。決めつけんといてあげてや(汗)」
「でもその先にはまた別の諺がある。『覆水盆に返らず』よ」
「千早ちゃんその何や、意味知らんけども。良くないでっ!!(汗)」
◎ 第42話 過っ疎編9 ◎
● 別宇宙無期滞在刑42日目の朝 ●
■ カッサンドロップスの家の近くの浜辺 ■
△ 大昨夏未来 △
「すごい!(興奮)」
「でしょ~(自慢気)」
「昨日の夜の時点でもう凄かったけど、太陽の下でキラキラと……これが未来ちゃんがずっと言ってた海と砂浜……内陸育ちだからこういうの憧れだった(輝)」
「いやうちも海岸育ちやけど憧れやったで。大阪湾あるけどな」
「こんな最高のロケーションで神命課題に取り組めるなんて!」
「せやろ? 馬車の上で揺られながら無理してやんなくて良かったってわけ!」
「穏やかなさざ波が心地良い……」
「カッさんの別荘でもちょうど良いくらいに波の音が聞こえてきて眠気を誘うで」
「これで私達も課題に集中……出来るかな?」
「確かに条件が悪いところからの、いきなり環境が整い過ぎた感はあるなこれ」
「でも帰る為にはやるしかないって思えば」
「せやな! やったりましょ一緒にな!!」
「えぇ!」
◎ 第3部終わり 第4部に続く ◎
作者情報:枯木田万流です。日本史は好きですが浅いです。法律学は好きではなく不得手です。物理学は嫌いで苦手です。 注意事項:地名は地方公共団体までは実在地名が出てきます。詳細地名や建物等は一部実在の場所を参考としている場合が有りますが、あくまで架空です。登場人物は一部歴史上の人物をモデルにしている場合が有りますが、全員架空の人物です。




