ありがとうの力
【Scene 1:ガルドの過去】
夜。
月の光が森を照らしていた。
焚き火の火が小さく揺れ、虫の声が静かに響いている。
ガルドは一人、木に背を預けて空を見上げていた。
その顔は、昼間の豪快な笑いとは違い、どこか寂しげだった。
リュウが近づく。
「眠れないのか?」
ガルドは短く笑った。
「……ああ。森の音が静かすぎて、逆に落ち着かねぇ」
「盗賊の頃は、いつも騒がしかったんだろ?」
「ああ。笑い声と怒鳴り声、喧嘩と奪い合い。
でも、あの頃が一番“生きてる”気がしてた」
焚き火の火がパチリと弾けた。
「……昔はな、俺にも守りたいもんがあった」
「守りたいもの?」
ガルドは少し間を置いて、低く言った。
「妹だよ。小さい頃、村が魔物に襲われて……俺だけ生き残った」
リュウは黙って耳を傾けた。
「力がなかった。だから俺は奪う側になった。
弱さが、怖かったんだ」
ガルドの手が震えていた。
焚き火の光が、その傷だらけの拳を照らす。
「でもな……」
彼はリュウを見た。
「お前の“ありがとう”で、
なんか胸の奥が、久しぶりに温かくなったんだ」
リュウは少し照れくさそうに笑った。
「それは……よかった、かな?」
【スキル“心響”が反応しました】
【共鳴率:12%】
優しい光が、二人の間を通り抜けた。
【Scene 2:村の依頼】
翌朝。
セリアが地図を広げて言った。
「次の街まで行く前に、この辺りの村で“盗賊退治”の依頼があるらしいわ」
「盗賊退治? 俺たち盗賊退治専門みたいになってきたな」
ガルドが笑った。
「今度は俺が退治される側じゃねぇから安心しろ」
三人は村へ向かった。
途中、村の入口で老人に呼び止められる。
「おお……旅の方々、助けてくだされ!
畑が魔物に荒らされておるんじゃ!」
リュウは頷く。
「分かりました。行きましょう」
【Scene 3:畑の魔物】
畑には、巨大なイモムシのような魔物がうごめいていた。
数は三匹。
どれも5メートル級。
セリアが杖を構える。
「“ウィンド・ランス”!」
風の槍が放たれ、一体を貫く。
だが残りがこちらに突っ込んでくる。
「ガルド!」
「任せろ!」
ガルドが斧を構え、叫んだ。
「おりゃあああああ!」
その一撃は確かに重かったが、魔物は倒れない。
リュウが一歩前に出る。
「おはようございます!!」
轟音。
爆風。
魔物が吹っ飛んだ。
が、衝撃波で畑の作物も吹っ飛んだ。
「……やっちまった」
「世界は救えても、畑は救えないわね」
セリアが冷静にツッコむ。
【Scene 4:ありがとうの力】
戦いが終わり、村人たちが集まった。
畑は少しボロボロだったが、魔物はいなくなった。
村の老人がリュウに頭を下げる。
「ありがとう、本当にありがとう……」
その言葉を聞いた瞬間、
リュウの胸が温かくなった。
【スキル“ありがとう”が共鳴しました】
【新効果:癒やしの波動】
村人たちの小さな怪我が、光に包まれて癒えていく。
セリアが目を見開いた。
「……今の、治癒魔法?」
「いや、ただ“ありがとう”って言われただけだよ」
ガルドが大笑いした。
「ハハハ! お前、もう魔法使いよりすげぇじゃねぇか!」
リュウは笑いながら、空を見上げた。
「……“ありがとう”って言葉、本当にすごいな」
セリアが微笑む。
「言葉は、心そのものよ。あなたの力は、それを形にしてるだけ」
その言葉に、リュウの目が少し熱くなった。
【Scene 5:夜の焚き火・再び】
ガルドが木の枝を投げ入れ、火がぱちぱちと音を立てる。
「リュウ、今日はありがとうな」
「え、俺に?」
「ああ。お前のおかげで、もう奪う理由がなくなった」
リュウは微笑んだ。
「じゃあ、こっちこそありがとう」
【共鳴率:35%】
【スキル“心響”が上昇しました】
暖かい光が三人を包み、焚き火がより明るく燃えた。
セリアが少し照れくさそうに言った。
「……なんか、ほんとにいいチームになってきたわね」
リュウは笑う。
「うん、“挨拶パーティ”って名前にしようか?」
「やめろ、それはダサすぎる」
三人の笑い声が、星空に溶けていった。




