おはようございます、盗賊団さん
【Scene 1:旅立ちの朝】
鳥の声で目が覚めた。
昨夜の焚き火の残り火が、まだ少し赤く光っている。
俺は伸びをしながら、寝ぼけた頭を掻いた。
「ふぁ〜……おはようございます」
その瞬間、草むらが一斉に揺れ、周囲の花が一気に開いた。
セリアが目を覚ましながら眉をひそめる。
「……ねぇ、それ毎朝やるつもり?」
「え?あいさつですけど?」
「もう花畑になってるわよ。環境破壊、じゃなくて“環境改変”ね」
俺は頭をかきながら苦笑いした。
まぁ、平和ならいいじゃないか。
「今日は街へ向かおう。まずは装備を整えないと」
セリアが杖を肩にかけ、歩き出した。
俺も後ろをついていく。
朝日が森の木々の隙間から差し込み、
光の粒が踊っている。
「……いい朝だな」
「まったく。あんたの“おはよう”のせいで森ごと目覚めたわね」
【Scene 2:山道の盗賊団】
昼前。
細い山道を歩いていると、木の陰から影が動いた。
「……止まりな!」
前に現れたのは、ボロボロの革鎧を着た盗賊たち。
十人ほどいる。
「おいおい、旅人か? 荷物置いてけ」
「お断りします」
セリアが杖を構える。
でも、盗賊たちはにやにや笑っていた。
「なんだお嬢ちゃん、魔法でも撃つつもりか?」
「あなたたちの方が先に消えるわよ」
その時、リーダー格の盗賊が俺の方を見た。
「で、そっちの村人は? 何ができる?」
俺は肩をすくめて言った。
「……あいさつ、ですかね」
「は? なに言って――」
「おはようございます!!!」
次の瞬間、
空気が震え、山が鳴った。
風圧で盗賊たちが吹っ飛び、木々がざわめく。
鳥が一斉に飛び立った。
一瞬で静寂。
地面には、全員ひっくり返った盗賊たち。
セリア「……もう、それ攻撃魔法でいいんじゃない?」
俺「いや、ただの“朝のあいさつ”なんだけど……」
【Scene 3:倒れた盗賊の中で】
盗賊たちはほとんど気絶していたが、
その中で一人だけ、体を起こした男がいた。
筋肉質で、大きな斧を持っている。
黒髪に鋭い目。
だが、妙に落ち着いていた。
「……あんた、なんだ?」
「村人Aです」
「その“おはよう”……何の魔法だ?」
「魔法じゃないよ。気持ちを込めた“あいさつ”だ」
男は目を丸くしたあと、笑い出した。
「……ハッハッハ! おもしれぇ!」
「……え?」
「俺はガルド。盗賊団の副頭だった。
今日から――あんたに仕える!」
「いや、早すぎるでしょ!?」
セリアは額を押さえながらため息をついた。
「また変なの増えたわね……」
【Scene 4:夜の焚き火】
三人で焚き火を囲む。
ガルドが豪快に肉を焼いていた。
「いやぁ、久々にマトモな飯だ!」
「いや、盗賊してたのにマトモってどうなのよ」
「……いい匂い」
セリアの腹が鳴った。
ガルドが豪快に笑って、串を差し出す。
「ほら、魔導士さん。食えよ」
「……ありがと」
その瞬間、
【スキル“ありがとうございます”が反応しました】
【仲間の心が少し癒やされました】
暖かい光が、焚き火と一緒にゆらめいた。
セリアがぽつりとつぶやく。
「……あなたの言葉、ほんとに力を持ってるのね」
リュウは火を見つめた。
「うん。たぶん、“心を込めた時”だけ、反応するんだと思う」
風が夜空を通り抜ける。
小さな光の粒が空に舞った。
ガルドが笑って言った。
「リュウ、お前の“おはよう”で、世界を変えるぞ!」
「いや、それ言うなら“こんばんは”でしょ!」
三人の笑い声が、夜空に溶けていった。




