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第一章 六話目

本日二話目の投稿になります。

皆様見て頂きありがとうございます。

ボディーバッグからポチ袋入りのジッパーつきビニール袋を取り出す。


「どうしてお年玉袋ジップロックに入れてるの?」

「この中に粗塩入ってて溢れたら嫌だろ?」

「初めからジップロックだけにしたらいいんじゃ?」

「え……あ、そっか。ま、まぁでもちょっとしか入ってないからいいんだよ!」


思い至らなかったことを突っ込まれて恥ずかしくなったものの、この後のことを考えてこれでいいと思い込む事にした。

ジッパーを開けて、膨らんだポチ袋の中に返ってきた10円玉を見えなくなるよう押し込んでシール紙を剥がし、しっかり蓋をしてから再度ジップロックの蓋を閉めてそのまま手に持つ。


「このまま近い神社行こう」

「埋めるの? それ」

「いや、神様にお預けする」

「どうやって? もう夜だよ?」

「賽銭箱入れる」

「いいの?それ」

「わからないけど、中身はお金と塩だし、いいと思うことにする」


あとは宮司さんとかがやってくれるだろうと割り切って、地元の氏神さんのところへ足を運ぶ。

真っ暗な中、街灯の光を頼りに階段を登る。

足が重くなるのは抵抗か運動不足か、鳥居の前まで来ると冷や汗がびっしょりと衣服を湿らせる。

ズキズキと痛み出す足と頭。

まだ足掻くかこのやろ……大人しく塩漬けになってろよ!

あと一歩が進めない、せめて咲だけでも境内に入らせないと。


「先に、入って」


呼吸すら荒くなってくる。

やっぱ、目合わせてチャンネル合いすぎたから?まだあたしに影響が残ってて、指の先すら境内に入る事を嫌がる。

先に鳥居を潜った咲が心配そうに手を伸ばす。

フルフルと首を振ってそれを拒絶するあたし。

何があるかわからないから託せない。

あたしが運ばなきゃだめなんだ。

始末を付けないとーー


「頑張ったね、あとはお兄ちゃんに任せなさい」


いつのまにか後ろまで来ていた兄ちゃんの声がしたと同時に、手に持っていたジップロックがするりと持っていかれ、ハッと顔を上げた頃には兄ちゃんが賽銭箱に投げ込んで手を合わせていた所だった。

それとは入れ替わりに咲があたしの側まで近寄り、手を握って二人してへたり込む。

あたしと咲はただただ真剣に祈ってくれている兄ちゃんを見つめていた。



あたしたちは家に帰り着くと一旦、リビングで話す事にした。


「凄かったね、月斗さん! かっこよかったです!」

「ははっ、ありがとう、咲ちゃん」

「怖かったけど、もっと怖い思いをしたのは翼ちゃんだから……助けてくれて、ありがとう、翼ちゃん。月斗さんもありがとうございました」


佇まいを正して頭を下げる咲。


「大丈夫、気にしなくていいよ」

「咲に付き合うって決めたのはあたしだし気にすんな」


ただ兄ちゃんがなんであそこにいたのか、ってことがわからなくて。

ジトっと兄ちゃんを睨むあたし、安心しきったのかニコニコと麦茶とポテチを齧る咲。

この時、咲の笑顔が少し翳りを帯びていた事に、いっぱいいっぱいだったあたしは気付けずにいた。


「翼、睨むなって。何となく行かなければいけない気がしたんだよ。実際、行って良かったと思ってるよ」

「それにしたって、場所なんか言ってなかっただろ」

「近い神社なんか限られてるし、何となく足が向くままに任せたんだよ」


勘が良過ぎる。

普通、あんなタイミングよく来れるかっての!きっと助けてくれる誰かが示したんだ、そう思うようにした。

色々言いたいこともあるけど、助かったのは事実。


「あり、がと……兄ちゃん」

「うん、どういたしまして」


俯いてか細く呟いたあたしの頭を優しく撫でて微笑む兄ちゃんにはきっといつまで経っても敵わない。

そんな気がした。


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