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4.辺境への帰還

私は王都中にいる辺境伯の配下達に、「近日中に全ての配下を連れて、辺境に帰る」と事前に伝えてありました。

王太子が私との婚約破棄を企んでいる事は、筒抜けでした。

あの抜け目ない父が、何の仕込みもなく、敵地である王都に、私一人を送り出す訳がないのです。

父は王都中に配下を送り込み、万が一にも私が危険な目に遭わぬよう、監視させていました。


私は自分の竜であるパーシーに駆け寄り、

「やっと辺境に帰れるよ。

長距離飛んで貰うけど、お願いね」

と声をかけました。

パーシーは嬉しそうに、クルルッと鳴きました。

辺境において、騎竜は一番の移動手段です。

辺境は森だらけなので、森を避けながら移動すると、遠回りになりますし、まだ竜に乗れない子供や、身体を悪くした者などは、竜の下に吊り下げた籠に入って、運んで貰うのです。

また、魔物討伐にも、騎竜は欠かせません。

ワイバーンなど、飛ぶ魔物相手にこちらも飛べなければ、討伐など出来ないのですから。


3年もの間、竜に近寄りもしなかったダレンは、長距離竜に乗るなど、無理でしょう。

私は荷物を運ぶ担当の配下に、籠に少しだけスペースを作って貰い、そこにダレンを押し込みました。

とても窮屈でしょうけれど、元々、ダレンは置いて行く予定だったのに、連れ帰ってやるのだから、文句は聞きません。

ダレンは大人しく籠に収まっていました。


「お嬢」

浅黒い肌のリースは、王都では『田舎者』と嘲笑われていました。

でも実は、密かに御婦人方に人気があった事を知っています。

リースはとても綺麗な顔立ちをしていますし、王都のヒョロヒョロした男性とは違い、逞しく引き締まった身体付きのリースを、御婦人方は扇で顔を隠しながら、食い入るように見ていました。

でも、リースは私のものです。

やっとそう言えるようになった事が、嬉しくてたまりません。

「リースは、もうすぐ妻になる私をまだ『お嬢』呼びするつもり?」

私が悪戯っぽく囁くと、リースは目元に僅かに笑みを浮かべ、「リリア」と呼んでくれました。


私の号令と共に、王都の空一面に竜達が飛び立ちました。

「スタンピード!?」

「何であんなにたくさん、竜がいるの!?」

人々が口々に叫びますが、答えてやる義理はありません。

王都中に散らばった配下達は、それぞれ小さな隊を作り、辺境に飛び立って行きます。

私とリースがいる隊は、私を守りながら、先頭を飛んでいます。

私は守られる必要はありませんけどね?

ですが、3年に渡って私を守り続けてくれた配下達は、無事私を父の元に帰して、やっとお役御免になるのです。

それまで、大人しく守られている事にしましょう。


私達は夜通し飛び続け、ようやく明け方、辺境の領都に辿り着きました。

先触れが我々の帰還を知らせたのでしょう。

父を始め、辺境中の人々が迎えてくれました。

私はパーシーを竜番に任せると、父の元に行き、「リリア・アンドリュース、只今帰還致しました」と報告しました。

「長きに渡る役目、ご苦労」との父の言葉に、ようやく辺境に帰って来た実感が湧きました。


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