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3.聖女

「私はこの聖女である、パウラ・ロメロ男爵令嬢を新たに婚約者に迎える‼

これは我が父である、国王陛下にもお許し頂いている事だ‼

覆る事はない‼」

王太子が自慢気に、自分の腕にぶら下がった娘を紹介しました。

パウラ嬢はロメロ男爵が、高級娼婦であった愛人に産ませた庶子です。

パウラ嬢は母親から美貌と、男を手玉に取る技術を受け継いだようです。

王太子もダレンも、その他の王太子の取り巻きも、簡単にパウラ嬢に籠絡されました。


「パウラは王都全体に、魔物を寄せ付けない結界を張る事が出来る‼

リリア、そなたの唯一の取り柄である魔物討伐も、必要なくなった‼

魔物はもう、王都に入って来れないのだからな‼」

これが、王が私と王太子の婚約破棄を認めた理由でしょう。

王は自分達が魔物の被害に遭わなければ、それでいいのです。

パウラ嬢の結界で王都が守られるなら、他領はどうなっても構わない。

為政者の資格もない、ド屑な考えに反吐が出ます。


そもそも、王が王命を出してまで、私を王太子の婚約者にしたのは、一人娘の私を人質に取れば、辺境伯である父が、もっと頻繁に王都近くの森の魔物討伐を行うだろう、と考えたからでした。

ですが蓋を開ければ、私が王都に来てから3年、父は一度も王都近くの森に討伐隊を派遣しませんでした。

王は半狂乱で、「早く討伐隊を送れ‼」と父に言いましたが、父は「魔物はちゃんと間引いている」と言うばかり。


父はあてにならないと思った王は、ある日、「魔物を寄せ付けなくする結界を張れる、聖女が現れた」という噂を耳にしました。

それがパウラ・ロメロ男爵令嬢でした。

王はすぐにパウラ嬢を王宮に呼び、実際目の前で、パウラ嬢に結界を張らせました。

森で捕まえた、小型の魔物を結界に近付けると、魔物は必死で逃げ回ったそうです。

パウラ嬢は王都をすっぽり覆える程、巨大な結界を常時発動出来る、と聞いた王はパウラ嬢を賓客として、もてなしました。

そして王太子が「リリアとの婚約を破棄し、パウラと婚約したい」と申し出ると、大喜びで認めたそうです。


ですが、パウラ嬢の結界、弱いですよ?

私、王都の端っこの結界を剣で斬ってみたら、斬れましたもの。

結界は自動ですぐ修復されましたけど、あれ程弱い結界なら、少し強い魔物なら一撃で壊せると思います。

そう言えば、先程からパウラ嬢の付き添いである神官の顔色が悪いです。

神官は知っているのでしょうね。

パウラ嬢の結界が弱い事を。

スタンピードが起きれば、持ちこたえられないでしょう。

パウラ嬢の父である、ロメロ男爵は資産家で、「貧乏な神殿に金を積んで、聖女の称号を買った」という噂があります。

野心家なロメロ男爵は、娘を王妃にする為、大した力も無いパウラ嬢を聖女に仕立てたのでしょう。


「王太子殿下、婚約破棄を承りました。

では、失礼致します」

私が用件だけ告げて踵を返すと、王太子は慌てて「待て‼」と私を呼び止めました。

仕方なく振り返ると、王太子はニヤニヤ笑いながら、こう言いました。

「そなたのように魔物討伐しか能の無い、ド田舎の女、今さら縁談など無いだろう。

どうだ、今後一切、私の言う事に逆らわないと誓うなら、私の側妃にしてやっても…」

「お断り致します」

食い気味に断りを入れ、今度こそ退出しようとした時、縋るように声をかけられました。

「リリア、待って‼」


ダレンでした。

普段の貴公子然とした、気取った態度は何処へやら。

まるで3年前に戻ったかのように、私に縋り付いて来たのです。

私は溜め息をつきました。

私も甘いですね。

そんな態度を取られたら、見捨てられません。

「行きますよ、ダレン、…リース。」

リースが次期辺境伯の推薦を断わったのは、王太子妃になる予定だった私の、護衛になる為でした。

無事、王太子から婚約破棄された事ですし、辺境に戻ったらすぐ、リースと結婚式を挙げましょう。

流石にあの恥知らずの王太子も、人妻を側妃に出来ない事くらい、理解出来るでしょう。


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