2.次期辺境伯候補
私が次期辺境伯から外れた為、父は新たに次期辺境伯を育てなくてはならなくなりました。
私は遠縁にあたるリースを、次期辺境伯候補として推薦しました。
リースは私の武術の兄弟子で、討伐隊随一の魔物討伐数を誇っていました。
そして、私の元婚約者でもありました。
私とリースは、私が王国の成年である16才になればすぐ、結婚する筈でした。
ですが、王命の為、あと1年という所で、リースとの結婚はなくなりました。
仕方がありません。
私は即戦力として、リースを次期辺境伯に推薦したのですが、リースに断られてしまいました。
次に次期辺境伯候補として名前があがったのは、父の弟である、叔父ダリオスの一人息子、ダレンでした。
ダレンはその時、14才。
私は14才の時、討伐隊の隊長に任じられ、先陣を切って戦っていました。
ですが、ダレンは未だ一人で魔物を討伐した事もありませんでした。
猛者揃いの辺境騎士団で、そんな軟弱者が認められる訳がありません。
私はそう言って反対しましたが、それを押し留めたのは、父でした。
こうして、ダレンは次期辺境伯候補となり、王太子妃教育を受ける為、王都に登る私に随行しました。
王都に登ったダレンは、いつの間にか、王太子の腰巾着となり、人前で堂々と私を罵るようになりました。
私に『軟弱者』呼ばわりされた事が、余程腹立たしかったのでしょう。
ですが、軟弱者は軟弱者です。
あれから3年経ちましたが、未だ一人で魔物討伐した事はないではないですか。
「リリア‼
お前のように、戦うしか能のない者を義姉と呼ぶ気はない‼
義父上にお願いして、修道院送りにして頂く‼」
ダレンが鼻息荒く叫びました。
私を義姉と呼ぶ必要はありません。
お前は我が家の養子ではないのですから。
我が父を義父と呼ぶのも止めなさい。
お前の肩書きである、『次期辺境伯候補』から、『候補』が外れる日は来ません。
というより、お前が『候補』でいられるのも、あと僅かの間です。
この3年、王太子と王太子の母である王妃は、何かにつけて、自分の仕事を私に押し付けようとして来ました。
似た者親子ですね。
ですが私は、「まだ王太子殿下の婚約者でしかない私には、荷が重いです」と断り続けました。
他人の仕事を代わりにやってやる気はありません。
どうせ王太子も王妃も、感謝などせず、文句を付けるだけでしょうし。
そんな事もあり、王太子はますます私が気にいらなくなったのでしょう。
私を見ても嫌味を言うか、田舎者と馬鹿にするだけになりました。