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1.婚約破棄

「リリア・アンドリュース‼

私はそなたとの婚約を破棄する‼」

私、リリア・アンドリュース辺境伯令嬢は婚約者であるオーバス王国王太子、カロン王子から、そんなありきたりの台詞でたった今、婚約破棄されました。

因みに今は、他国からの国賓も参加する、王家主催の夜会の最中です。


平民の間で流行しているという、恋愛小説でも読まれたのでしょうか?

私も読んでみましたが、『婚約破棄もの』と呼ばれるジャンルが人気があるのだそうです。

まあ、平民は貴族社会の実情を知らないでしょうから、「これ、無理でしょう」と思う事もしばしばありましたが、娯楽作品としては、面白かったです。

ですが、王太子ともあろう方が、平民の小説などを真似ては駄目でしょう。


この世界に点在する森には、魔物が棲んでいます。

オーバス王国において、魔物討伐をしているのが、我が父サリオン・アンドリュース辺境伯が率いる、辺境騎士団なのです。

とはいえ、辺境伯である以上、一番の仕事は国防です。

辺境伯が魔物討伐をしている間に、他国に攻め込まれたなどと、許されません。

その為、父は辺境騎士団の精鋭を10数名集め、魔物討伐隊を編成しました。

討伐隊は各領の領主の求めに応じ、魔物討伐を請け負っています。


「魔物など、狩り尽くしてしまえば良い」と言われる事もありますが、魔物も森の生態系の1つです。

生態系が崩れれば、最悪、森が死んでしまいます。

森から多くの恵みを受けて生きる、我々人間も、生きてはいけないでしょう。

かと言って、魔物を放置してスタンピードでも起きたら、やはり人間は生きていけません。

なので、討伐隊は定期的に各領を回り、魔物を間引いているのです。


さて、現オーバス国王は大変臆病な性格で、大袈裟な程、魔物を恐れています。

王は辺境伯である我が父に、「王都近くの森の魔物を狩り尽くせ」と言いましたが、父は前述の理由から、断りました。

次に王は父に、「王都近くの森に、討伐隊を常駐させろ」と言いましたが、他領の森も回らなければならない為、やはり父は断りました。

そこで王は、「王の一人息子である王太子と、父の一人娘である私を結婚させろ」と父に命じたのです。

王命であれば、オーバス国の貴族である父は、従わざるを得ません。

こうして、次期辺境伯であった私は、王太子の婚約者となったのです。


「そもそも、辺境のようなド田舎から、王太子妃を迎えよう、というのが無理なのだ」

おや。

王太子は『辺境=ド田舎』と思っているようです。

馬鹿なんでしょうか?

我が辺境領は、隣国であるアルカラ帝国との交易の玄関口。

このオーバス国王都などより、よほど栄えています。


「そなたは怠惰だ。

王太子妃教育から、早々に逃げ出したそうではないか‼」

事実誤認ですね。

逃げ出したのは、教育係の方です。

次期辺境伯であった私は、王太子妃教育程度の勉強は、幼少期に終わらせています。

国防と交易の最前線である辺境では、その程度の勉強をちんたらやっている時間など、無いのです。

「リリア嬢に教えられる事など、何もありません‼」と何人もの教育係が泣いて訴えた為、王太子妃教育は終了となったのです。


「何度言っても、ド田舎式のマナーを止めようとしない。

アルカラ帝国の使者の前で、私は酷く恥をかかされた‼」

恥をかかされたのは、こちらの方です。

アルカラ帝国の方の前ですから、私は帝国式のマナーで、おもてなししました。

他国の方の前であれば、その国式のおもてなしをするのが、当然でしょう?

アルカラ帝国の使者が、自分達式のマナーを蔑んだ発言をした王太子の事を、本国にどう報告するか、分からないのでしょうか?


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