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第6話 干渉

 ステータスをもっと見やすくできないだろうか。通常の意味合いとは違うから、どうにも分かりにくい。

 意識を集中し、ステータス画面を開いてみた。


【ステータス画面】

――――――――――――――――――――

名前:ヒナタ

種族:幽霊

レベル:82

HP(霊圧):105

MP(霊力):100

STR(霊的影響力):10

VIT(存在安定性):10

INT(知識・魔力制御):10

WIS(霊的直感):10

CHA(霊的親和):10

COR(瘴気適応力):10

EXP(経験値):8,029

スキル:異形の血統(Lv.1)/ステータス可視化(Lv.9)《エクスペリエンス・リンク/インサイト》

振分可能ポイント:80

獲得可能スキル:なし

――――――――――――――――――――


 ……悪くない。かなり見やすくなった。

 だが、また経験値が増えている。しかも、これまでよりも明らかに速いペースだ。追加されたステータスのおかげだろうか。 ならば、他にも身体に変化が起きていないか――


 そんな時だった。 後ろで、先ほど死闘を繰り広げた魔獣が吠えた。


「ワンッ!」

「うおっ!?びっくりした!」

 ついさっきまで無反応だった四足歩行の獣が、まるで犬のような鳴き声を上げたのだ。

 そして――ヒナタの足元(正確には幽霊なので、足はないのだが)へ頭を擦り寄せてきた。本来ならすり抜けるはずだが、確かに“感触”があった。

 どうやら、ヒナタ自身が実体化できるようになったらしい。

 試しに、周囲の地面や木々に触れてみる。普段なら素通りしていたそれらも、「触れる」と意識すれば、すり抜けることなく感触があった。 どうやら、意思によって物理干渉を切り替えられるようになったらしい。


 そしてふと、目の前の獣のステータスが気になった。


【ステータス画面】

――――――――――――――――――――

名前:ーー

種族:魔獣

レベル:1

スキル:威嚇(Lv.1)/牙撃(Lv.2)

獲得可能スキル:嗅覚追跡/咆哮

――――――――――――――――――――


 どうやら、レベル以外のステータスは数値化されていないようだ。

 これは、ヒナタが《ステータス可視化》を持っているから見えるだけで、普通は見えないのかもしれない。そして、名前欄も空白だった。


「よし、名前を付けよう!見た目が真っ黒だし……クロノ、だな!」

 クロノ、と名付けると、嬉しそうに擦り寄ってくる。見た目に反して、すっかり懐いているらしい。


 思い出す。友好関係にある相手には、経験値を与えられるという話を。

 試しに、自分のステータスを確認し、八千ほど溜まっていた経験値をまるごとクロノに注ぎ込んでみた。


 すると――クロノの身体がブルブルっと震えた。改めてステータスを確認すると、クロノのレベルが一気に102になり、獲得可能スキルもすべて習得していた。

 ただ、スキルレベルまでは上がっていないようだ。

「お!やったなクロノ!レベル上がったぞ!」

「ガルッ!」


 クロノは嬉しそうに、長い尻尾をぶんぶんと振った。


(……ただ、レベルが上がってもスキルが増えるだけで、ステータス数値そのものは変わらないのか?)


 そんなふうに考えていたが、実際には違った。ステータス可視化スキルを持たない魔獣たちは、レベルアップによるポイントを“自動で”最適配分していたのだ。

 つまり、ヒナタの目には見えないだけで、クロノは以前より格段に強くなっていた。

 そんなことは露知らず――ヒナタはクロノを撫でながら、レベルキャップが99ではないことに安堵していた。 これで、俺はまだまだ強くなれる、と。


「そういえば魔獣は、スキル獲得のために泉の神殿へ行く必要ないんだな!」

「ガルッ?」


 首をかしげるクロノ。俺も新しいスキルに目覚めないかなー、と呑気に考えながら、辺りを見回した。すると、夜闇の中で、ひときわ明るい光を放つ場所が目に留まった。


「行ってみるか」

 ヒナタはふわりと浮かびあがり、クロノと共に光の方へ向かった。

 そこは――広大な湖だった。 湖面の上には、ホタルのような光る存在たちが、無数に舞っている。ただし、大きさは普通のホタルの十倍近くあった。


「うわ、めっちゃ綺麗なとこだな……」

 思わず呟く。

 クロノはぺろぺろと湖の水を舐めていた。

 夜が明けるまではここでのんびり過ごすか――ヒナタはふわりと腰を下ろすような仕草を取った。

 幽霊であるヒナタだが、実体化できるようになったことで、地面に座ることができたのだ。


(浮かびっぱなしじゃなくて済むの、ちょっと嬉しいな)


 そんなささやかな満足を噛み締めていた、まさにその時だった。周囲の木々の影から、赤い瞳が次々と現れる。

 数十頭の獣たちが、ヒナタを見上げ、低く頭を垂れた。まるで――新たな「王」に臣従するかのように。

 クロノと同種の獣たちだが、毛並みの色には個体差があった。中には、白っぽい個体も混じっている。

 しかし、理性を失いかけた一体が、突如ヒナタに飛びかかってきた。


「……!」


 ヒナタは「経験値共有」で宥めようと試みたが、間に合わない。暴走個体には友好関係が築けていないので効果がないのだ。


 クロノが咄嗟に間に入り、迎え撃つ。 そして、あっさりと暴走個体を倒した。


 戦闘が終わると、周囲の魔獣たちは改めてヒナタの前に座り込み、従属の姿勢を見せた。数えてみると、全部で二十頭ほどいる。


「……まるで呼ばれて集まってきたみたいだな」

 これが、カリスマのステータス効果か。

「よしよし、みんなにも経験値を分けてやろう!」


 ヒナタは全員に、二千ずつ経験値を与えた。これで、またも経験値はほぼゼロに。

 それでも満足だった。 俺のカリスマ性に憧れて集まってきた。――そんな気がして、悪い気はしなかった。


 レベルを確認すると、仲間たちはレベル32〜34に成長していた。どうやら同じ経験値でも、レベルアップするために必要な経験値は個体差があるらしい。

 そんな中。ふと、目を向けたヒナタのステータス画面が、勝手に開いた。


【ステータス画面】

――――――――――――――――――――

名前:ヒナタ(アクセス中)

観測レベル:Ⅱ

監視:ON(管理者承認)

接続端末:不明

――――――――――――――――――――


「……え?なにこれ?」

 驚く間もなく、画面には“謎の文字列”がちらつき、選択肢が現れる。


――――――――――――――――――――

【スキル取得可能】(未確定接続)

>選択候補:

* 《╳ソウ■ノ=観測……》 [未検証]

* 《[Phntm.DJ]:実在-データ》 [整合性不安定]

* 《ADMIN::LINK>>SYSTEM》 [危険]

* 《LINGUA=ERROR//感応リンク》 [安定接続可]

提示元:不明(監視状態)ユーザー同期度:不安定(56%)

選択しますか?【Y/N】

――――――――――――――――――――


「いやこれ、選んだらヤバいやつじゃないの!?」

 明らかなバグ画面であった。テレビゲームならまだ理解できるが、現実に生きている世界でこんなことが起こると恐怖心が半端ない。


 だがヒナタは一つだけ、無性に気になったスキルがあった。それは唯一“安定接続可”と記された《LINGUA=ERROR//感応リンク》というスキル。

(…これ、もしかすると言語化対応とかのスキルなんじゃないか?)


 今の所この世界で言語に困ったことはない。ザイルとの会話も問題なかったし、書かれている文字の解読も自然とできている。ヒナタにとって理解しやすい言語、つまりは日本語として認識し会話や読解が自動的に行えているのだ。


 ではこのスキルが気になる理由だが、”感応リンク”の部分にあった。これはおそらく、感覚や感情を共有するという意味なのではないであろうか。つまりは、クロノとも会話できる様になるかもしれない。


(よしっ!せっかくだから取得してみよう!)


 先ほどまで、新しいスキルに目覚めないかな、なんて考えていたヒナタにとってこの機会を逃すわけにはいけない。

 頭の中で取得を念じてみた。


 次の瞬間。 いつもの見慣れた、正常なステータス画面が戻ってきた。


 これにより、ヒナタは魔獣たちと直接会話ができるようになったのである。


 だが――あの「監視中」の文字と、異常な接続表示。不安は、拭いきれなかった。

補足です。

ヒナタが魔獣たちと会話できるようになったあの力ですが、あれはいわゆる「正式なスキル」とはちょっと違う扱いになっています。

ですので、他のスキルのように指に紋様が浮かんだり、ステータスに表示されたりはしません。

ちょっと特殊な力、という感じで覚えておいていただければ嬉しいです。


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