プロローグ
初めての作品のため、至らない点も多いかと思いますが、温かい目で見ていただければ幸いです。
ご感想やご意見には必ずお返事いたしますので、ぜひお気軽にお寄せください!
目標は200万字――長くお付き合いいただけると嬉しいです。
薄暗い一室の中央に、重厚な円卓が鎮座していた。 人ひとりが余裕をもって座れる大きな椅子が、等間隔に六脚、ぐるりとその卓を囲んでいる。
椅子のうち五つにはすでに誰かが腰掛けていたが、部屋を満たす薄闇のせいで、彼らの姿かたちはぼんやりとしか見えなかった。
やがて、そのうちのひとりが静かに口を開く。 その声は、水面をかすめる風の音のように澄み、ひそやかに部屋へと広がった。
「それで? どう進めるつもりなのかしら?」
誰に向けたとも知れぬ問いかけに、楽しげな少女のような声が応じる。
「そんなの、アヴァリスがちゃちゃっと何とかしてくれればいいんじゃないの!」
不運にも名指しされた男――アヴァリスが、うんざりしたように返す。
「勘弁してくれ。こういうのはオレの性に合わない」
肘を卓に突き、組んだ手を口元にあてながら、思案に沈んだ男が言葉を続ける。
「だが、このままでは、いずれ崩壊する。……そのために我らが集ったのだろう?」
重い声が部屋に響く。まるで地の底から這い上がるような響きだった。
どうやら、議論は長引き、堂々巡りに陥っているらしかった。
苛立ちを隠せないツインテールの少女が、ついに円卓をバンと叩き、立ち上がった。
「と・に・か・く! この件はアヴァリスに任せた! わたしは忙しいから帰る!」
言い捨てると、少女の姿はふっと消えた。
続くように、残った者たちも次々と口々に「やれやれ」とぼやきながら、順番にその場から姿を消していく。
気づけば、円卓にはアヴァリスだけが取り残されていた。
「……どうしていつもオレ様だけが、こんな役回りなんだよ」
ぼやきながら立ち上がると、アヴァリスはふと、先ほどまで誰も座っていない一脚の椅子へ目を向けた。 小さく、吐き捨てる。
「……空席すら埋められてねえのに、よ」
そして彼もまた、溜息をつくようにして、その場から消えた。
薄暗い部屋には、ただ静寂だけが取り残された。