今日も私の街があった
街は急いで帰宅する者と、カフェで一息つく者とに分かれていた。
路地裏には、古い建物が立ち並び、その壁には時の流れを感じる落書きがある。
狭い通りには、照明が灯り、影が長く伸びている。
私は、静かに歩きながら、路地の隅々まで目を凝らす。
古い木の扉が半開きになっている家があり、中から灯りが漏れていた。その向こうには、きまって本棚が並ぶ小さな書店がある。
店主は、本を手に取りながら、お客さんと熱心に話している。
歩道には、石畳が敷かれていて、足音が響く。
時折、風が吹いて、木々の葉が舞い上がる。
路地の先には、広場が広がっている。
ベンチには、疲れた人々が座っているが。子供たちは、鳩を追いかけて笑いながら走り回っていた。
街は今日も、いつも通りに流れていた。
なんだか安心した。
私は歩きながら思う。
この街だけは相変わらずのままでいて欲しいと。
 




