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Rising Force - Genesis -  作者: J@
誕生編

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迎撃

    § WORMS視点 §


 WORMS本部内、地下20階にある中央管制室。

 衛星監視システムにより、この本部拠点に真っすぐ向かって来る飛行物体を早い段階から把握していた。


 現在、この本部を仕切っているのは僕たち(エヌ)の司令官「Void(ヴォイド)」だ。

 Fuhrer(総統)は数か月前に姿を見せた以降、行方が知れなくなっている。

 能力者部隊でも過去最強と(うた)われたDinoponera(ディノポネラ)様を始めとする、トップ5の方々が死亡、投獄、行方不明となり、ほぼ瓦解(がかい)した。

 今ここに残っている戦力は、五席から下の中位、下位の能力者ばかり。

 早い話が、この組織はもう終わりかもしれないという事だ。


 だが、僕は逃げる訳にいかない、そもそも何処に逃げられるというのだ。

 組織構成員は勿論、末端関係者まで全ての情報は流出しているというのに。


「目標射程範囲内に到達を確認したら、一斉射撃で撃ち落とせ!」

「コピー! 敵機、目標射程範囲内まで、残り10km、9、8、 敵機、南に旋回! 目標射程範囲内から離れて行きます!」

「何っ、どうやって察知したというのだ!」

「分かりません! ですが、そう言った系統の能力者が乗り合わせている可能性はあります!」

「予測、察知……いや、もしくは予見、予知の能力者がいるかもしれないという事か。面倒な事だ」


 司令官が額に手を当て、眉間の皺を濃くし、この場にいる者に声を上げる。


「皆、よく聞いてくれ。ここはもうじき死地になる。今ならば私は何も言わない。何も見えていないし、何も聞こえない。命が惜しい奴は今すぐこの場から離れ、遠くへ逃げろ。遠くへ逃げて、ごく普通に、当たり前に生きてから死ね。私は今から30秒、目を(つぶ)る」


 耳に手を当て目を閉じる司令官。

 この場にいる僕を含めた22名が立ち上がり、席を離れる。


 30秒が経過し、司令官が目を開く。

 目の前には、逃げることを選択しなかった22名全員が立っていた。


「司令官、逃げる場所なんてどこにもありませんよ」

「そうですよ! 私なんて、そもそも世間から逃げてきた先がここなんですから!」

「それに、逃げるつもりならもっと早くに逃げてますって!」

「今だから言いますけど、この組織には不信感しかなかったっす! けど、司令官……いや、Void(ヴォイド)の事は尊敬してるんで、こうやって最後まで残ってんすよ!」

「ここが死地になろうがどうなろうが、僕は最後まで司令官を尊敬し、信頼しています! だから僕らは皆同じ想いで残っているんです!」


 今から死ぬかもしれないというのに、コイツらは……。


「お前ら……本当にバカで、本当に可愛い奴らだよ、全く!」


 そう言って、目頭をグッと押さえた司令官は、スゥっと息を大きく吸い声を張り上げる。


「よぉしわかった! 今から背水の陣を敷く! しかし、後ろにあるのは川なんて生易しいもんじゃない、断崖絶壁、いや、無だ! 一歩でも後ろに下がった終わり、ゲームオーバーだ! コンティニューなしのクソゲーだ! 恥も外聞も信念も容赦も情けも全部捨てろっ! 全部捨てて生き残る事だけ考えろ! 徹底抗戦、死に物狂いで生き残れーっ!」


 いつもと違う素の口調で張り上げた声は、皆の心に突き刺さり、全員が敬礼で応えた。


「「サーッ! イエッサーッ!」」


 ――ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!


「さぁ、呼んでねぇお客さんがおいでなさったぞ! 状況報告!」

「は! 先ほどの航空機より敵兵が降下。こちらに飛んで来ます! 距離1800 数49!」

「なんてゴロの悪りぃ数字だよ、ったく! 全砲門開けろ! 距離1200で一斉に叩き落してやれーっ!」

「コピー! 距離1500、400、300……」

「てええぇーっ!!」



    ◇◇◇



    § アル視点 §


 輸送機から降下した俺達は、前方に見えるシュヴァルツヴァルト、通称「黒い森」を目指して滑空する。ウイングスーツのスピードと機動性を活かし、なるだけ拠点入り口まで近づいて降下し先陣を切る予定た。

 和田さんらのP‐SACOは後追いで俺達の後方に降り、追撃および補完、サポートに当たる。

 大きくはそういう作戦だが、俺達は降下前にチーム分けをしていた。


「地下に展開する敵の施設は、相当広いし階層も深い。5階層までを一気に潰して、逃げられない様フタをしたいと思う。そこで4つの班に分けたいと思うんだけど、どうだろう?」

「えっと……アルくん、よね?」

「……アル君、で合ってる?」

「このアルさんは偽物かもしれませんね」

「いや、キラさんも、天南も晶もヒドくない!? 俺だよ俺っ!」

「新手のオレオレ詐欺なの、胡散臭さが増したの!」

「増したっすね!」

「えーっと、話進めてもいい、ってことで合ってるかな!?」


 キラさんが入手した情報では、どの階も中央で十字に通路が切られている為、施設内を大きく4つに分ける事が出来る。

 通路は東西南北に走っているので、ブロックとしては、北西、北東、南西、南東の4つだ。

 俺はこんな感じで提案した。


 ――――――――――――

 北西  チーム晶     晶、アルテミス

 北東           アル

 南西  チームロック   ロック、天南、ジュンタ

 南東  チームショウゴ  ショウゴ、キラ、セオドラ

 ――――――――――――


「それにしても面白いわね、リンくんも今のアルくんと同じような作戦を立ててたわ」

「え、マジで? まー、俺とリンちゃんはー? 親友(マブダチ)だからー?」

「でもアル君、学校でリンと絡みあったっけ? いつ友達になったの?」

「いやー、学校のクラスメイトなら俺的に全員友達だぞ? それとリンちゃんと親友(マブダチ)になったのは、あの事件の夜からだなー」

「って、それってほんの数時間ってこと? え、ちょ、浅くない!?」

「アルさん、私なんか幼稚園からの付き合いですよー!」


 両腕を組んで若干ドヤる晶。


「ああ、それを言ったら、俺もリンと出会ったのは晶と一緒の時だな」

「チッチッチ! 時間の長さではないのだよー! っていうかまぁ、共有した時間の濃さが普通じゃなかったからな、俺ら。異常っちゃあ異常っだっただけに、たったのその数時間で昔からの悪友(ダチ)みたいに感じたし。何考えてるかとか、どんな気持ちかとか、言葉なしに分かったし。って感じかな!」

「話しぶった切る様でアレなんですけど、このチームの分け方には何か意味があったりしますか?」

「ああ、確かに。ジュンタの言う通り、前回アルを助けに行った時と同じチーム分けの方が、連携が取りやすい気がするんだが」

「んー、ミサキ先輩、えっとね、あたしの感覚でしかないんだけど、多分これがベストな気がするの」

「あ、やっぱり? 天南も何か感じた? 俺も勘でしかないんだけど、多分一番激戦になりそうなのが北東。次に南西かな? 多分ね」

「ってことは、それぞれのチームで盾役になるのが、俺、ショウゴ、それと|晶だな。アルは一人でいいのか?」

「ロックさん、そこは大丈夫! ほら、俺って強いからっ!」

「ふふっ、わかったわ、じゃあこの布陣で行きましょう!」

「ありがとうキラさん! それと、突入後は5階層までそれぞれのチームで一気に制圧。その後は連絡を取りながら階層を合わせて行こうと思う」

「「了解!」」


 そして、滑空している今、眼前に見えている「黒い森」が動き始めた。


 夜の山間で不気味な音を立てながら山肌が(めく)り上がる。

 地面から砲台のようなものが現れ、砲門が一斉にこっちを向き始める。

 黒い森と呼ばれるだけあり、視認しづらいがCTLのナイトアイモードで暗視は問題ない。

 見渡しても一面砲門だらけ、戦艦大和や長門、アイオワだって驚きの数だ。

 いや、ドイツだからビスマルクか?


「撃って来るぞっ! 迎撃に備えろっ! とにかく俺らは作戦通り! 拠点入り口まで近づいて降下する!」


 連弾の効く細かめの弾丸で弾幕を張り、ライフル弾で当てに来る敵。

 時折混ざる墳音や爆音は、照明弾、焼夷弾、榴弾となって容赦なく浴びせてくる。

 絶対に撃ち落としてやるという気迫、徹底抗戦、後には引かない意思が伝わってくる。

 周囲の被害などお構いなし。焼夷弾が森を焼き火の手が上がり、空が明らむ。

 とんでもない数の徹甲弾が飛来してくるのが見えた。


「シールド展開っ! 防ぎますっ!」


 滑空する俺らの前面に晶のシールドが張られ、飛来した攻撃は次々と衝突し派手に爆発を起こす。

 それはまるで、俺らと敵の間に火の壁でも作ったかのように、こっちに来るなと拒絶を具現したかのように。


 多くの砲門に高周波音を発する光の粒子が集まっていく。


「アレはヤバイです! 急降下で避けて下さい!」

「あの時のレーザーよっ! 晶ちゃんのシールドでも防ぐのは無理!」

「皆っ! 急降下急げっ!! アルっ! 早く下へ!」


 皆が急降下し回避していく中、俺だけは風に乗って上昇し、砲門はそんな俺を追って角度を上げる。


≪みんなっ! 下じゃない! 俺の所まで上昇してくれっ!≫

≪理由は分からないけど、了解なのっ!!≫

≪信じていいんですよね! アルさん!≫

≪アルくん、全くあなたって人は、本当にリン君に似てるわ! 悪い意味でっ!≫

≪ははっ! もっと信頼してくれてもいいと思うんだけどなぁ! 大丈夫! だって俺だぜ!?≫

≪バカっ! 信頼してるけど、だから心配なのっ! しくじったら許さないのーっ!≫

≪なら桜煌(おうか)! よっく見てなぁ! 俺が! 守るからっ!≫


 充分な高度を確保した俺は、変身を解き自由落下しながら呟く。


「知ってるか? ビスマルクは初航で撃沈されたんだぜ? まさか知らないって事はないよなぁ?」


 俺は風を受けながら落下する中で不敵にもニヤリと笑ってしまった。

 何故って? だって、最高の見せ場じゃないか。


 俺は指を弾き、そして()ぶ。


「行こうぜっ! (すみれ)!!」


 一筋の紫の閃光が夜空に走ると、強い紫電の光が神秘的に浮かび上がる。

 オレンジ色の線を(えが)いて空に上って行く弾光は、聖なるものに執着し手を伸ばす哀れな亡者の残光の様。

 だが、そこには慈悲など一切なく、この夜空は紫の閃光の独壇場、独り舞台となった。


「お前がスゲーってとこ、この世界の人類に見せつけてやれっ! 雷装(らいそう)!!」


 激しい蒼紫の雷光を放ち、紫電を纏ったヒーロー、紫の閃光「(アール)」がその存在を知らしめる。

 自由落下から解き放たれた「(アール)」は、左手を右手で押さえ、黒い森へと向け狙いを定める。

 それは、理を紡ぐ様な、祈りにも似た様な、そんな一瞬の静けさだった。


天照(Celestial)雷煌(Glory)!!」


 幾重(いくえ)もの稲妻と雷光が混じり合う。

 それは、あたかも巨大な光の柱が地上に降り注ぐかの様な、夜空に強烈な陽光が差す御業(みわざ)

 神の怒りに触れた咎人に裁きが下される様な、そんな神話の1ページ。


 光に遅れて多重に重なる轟音と轟音は、互いの音を打ち消し合い、神や光を象徴する言葉である「ラー」の余韻を残した。

 日本では天照は太陽神として知られ、古代エジプト神話で「ラー」は太陽神を意味する。


 地上に降り注いだ光の柱が消え失せると、アルが纏っていた(すみれ)雷装(らいそう)を解除する。


「ありがとうな、(すみれ)。 疲れただろ、戻ってゆっくり休みな」


 (すみれ)は、アルの頬に自身の手を重ねた所で精霊界に戻って行った。

 そしてまた、重力に捕らわれ自由落下を始めると、地表では爆発が鳴り響き、俺達に向けていた砲口は全て粉々に吹き飛んだ。


「変身っ!」


 再度、天狐(あまつきつね)に戻り、ウイングスーツを展開する。

 風を捉え、皆と合流し、拠点入り口近くに爆発で穴があいた部分を指差す。


「こっからが本番だっ! さあ、蟲退治に行行こうぜーっ!」


 急降下を始める狐たち。


「それにしてもケタ外れにも程があるんじゃない? リンくんと同等並みよ? 火力」

「想像以上のヤバさですよね、アルさんのスペックは」

「あたしも精霊と契約したーい! アル君どうにかして捕まえてきてー!」

「アル先輩にPACSって必要なんですかね? 出来れば回収したほうが、僕とキラさんの処理負担減るかなーと思うんですけど!」

「えっ! ちょっと待ってジュンタ! 皆はすぐテレパシ―で連絡取れるだろうけど、俺だけスマホ使って連絡するワケ!? ってか俺、皆の電話番号知らないんだけど!?」

「てかアル、さっきの凄かったの、ちょっとカッコ良かった……なの」

「だろぉー!? やっと桜煌(おうか)も俺のカッコよさに気が付いたかーっ!」

「前言撤回っ! 調子に乗るななのーっ!!」

「あ、ちょっ! まっ! おまっ、あっ、落ちるーっ!」

「えっ! あ、落ちるのーっ!」

「やっぱりアルさんと桜煌(おうか)お姉ちゃん、仲いいですよね」

「てぇてぇだっちゃにゃー!」

「てぇてぇだしっ!」

「見てらんないですわね!」

「やっぱりアル先輩からPACS取り上げてもいいんじゃないですかね?」

「「ジュンタ!?」」

「今日の作戦、心配になってきたっすー」


 地表が吹っ飛んだことで、あちこちから地下施設の肌が見えている。

 敵の巣は広く、そして深い。

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2025年 お正月特別回の Side Story があります! 

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