がんばって、あたちのヒーロー!
ライブはスタートからの盛り上がりそのままだ。
8曲目の情熱的な曲『 Eternal Blaze 』で更に会場の熱気を高めていると、海側から打ち上げ花火のような光が沢山上がった。
外周を警備していたロックとショウゴがいち早く気付き皆に連絡する。
≪海側からかなりの数の光弾が上がって行くのが見えるが、あれはジュンタの演出か?≫
≪いいえ、僕ではありませんので、もっと他の何かかと≫
≪ロックさん、あれ、こっちに向かって来てませんか≫
≪え! サトルくん、それどういう事?≫
≪な゙っ! 皆さん! あれはロケットランチャーのミサイルじゃないですか!?≫
≪社長! ヤバイ! あれは攻撃だ! 確実に攻撃の意思を持って撃って来てるぞ!≫
≪了解っ! ジュンタくん! ドローンでアレを追跡してライブスクリーンに映像を反映して! アルテミス! そのままライブをしながらMCで観客に説明と動かないように指示を! みんな! 変身して迎撃するわよっ!≫
キラの号令で皆に緊張が走る。
≪GO!≫
≪≪了解!≫≫
ライブ中のスクリーンに突然映る打ち上げ花火のような無数の光弾。
会場上空に『 当ライブ会場に向け攻撃が確認されました。絶対にその場から動かないように! 』とメッセージが流れるや否や、曲中で葵育がMCを入れた。
「みんなーっ! よく聞いてーっ! このライブ会場に向けて何者かがミサイルで攻撃してきたわ! でも慌てないで! 大丈夫だから良く聞いてね! 私達Artemisと仲間たちがみんなを守るから! 信じてっ! んじゃ、みんなっ! 行くよーっ!」
曲中で歌いながらババッと腕を振りアクションするアイドル5人。
何が起こったのか分からない観客たちは、一瞬パニックに陥りそうに騒ぎ始めた。
ライブを見に来ていたカップルは、ステージのアイドルと同じく隣で腕を振ってアクションをする女の子2人に気が付く。
「え、っちょ何をして……!」
声を掛ける寸前で会場全体に響く掛け声。
「「変身っ!!」」
ステージのアイドルたちと隣の2人の女の子から眩しい銀色の光が放たれた。
次の瞬間、少女たちはハーフの白狐面を付けたミニスカートの巫女に姿を変えた。
「「うえええぇぇぇぇーっ!?」」
到底、人間業ではない跳躍力で、ステージまでひとっ飛びした2人の女の子。
ドローンはテン、晶、Artemis、ロック、ショウゴ、ジュンタ、キラ、セオドラ、P‐SACO。そして敵の攻撃に張り付く。
急遽5枚に増えた巨大モニター。シーンは自動で切り替わり、音声も全て拾われ会場に流された。
『みんな! 大丈夫! 私のベールで守りますからっ!』
会場中に晶の声が流れると、両手を前に突き出し、バッと左右に広げた。
『展開っ!』
――ブォン……
低い音と共に、淡い緑色の光を放つ膜のようなものが会場全体を包み込む。
会場中に驚きとどよめきが広がる。
『お姉ちゃんたち! 後はお願いっ!』
『『任せなさい!』』
『晶ちゃん! 全て叩き落すわよ!』
『はいっ! さちこ先輩、行きますっ!』
『『はあぁぁっ!!』』
――ドンッ!!!
ステージから夜空へ跳躍し光弾に向かっていった巫女2人。
だが観客からは「晶ちゃん?」「さちこ先輩?」「お姉ちゃん達!?」という「?」の声が飛び交った。
Artemisの皆は、戦闘に向かった仲間達に向けて歌唱する。
『みんなっ! フルバフ! 受け取ってーっ!』
モニターに映る白狐面、黒狐面を被ったArtemisの仲間達皆に強化バフが掛かり、何色ものライトエフェクトが体を包んだ事でそれを知らせる。
ロックとセオドラ、P‐SACOは、飛来するロケットに向けて一斉掃射で撃ち落とし、キラとジュンタは撃ち漏れした飛来物を物理的に叩き落し海に沈める。
≪さっちゃん! 晶ちゃん! 発射地点まで行って敵の制圧は可能かしら!≫
≪任せてください! ライブを邪魔された分はキチンとお返ししてこないと!≫
≪あたしたち2人でも行けそうだけど、ミサキ先輩! 一緒にお願いしてもいいですか!≫
≪俺は構わないが、キラさん! 行っても大丈夫だろうか!≫
≪ええ! 2人を助けてあげて! そして皆無事に戻って来てね!≫
≪≪はいっ!≫≫
海岸線ギリギリまで走り、思いっ切り跳躍し上空300mに到達する3人。
両手両足を広げると、胴と腕の間にフラップが、両足の間にはスタビライザーが展開された。
これは、リンが不在で飛行出来ない不便さを何とか解消しようと、ジュンタと晶が考えたPACSの新装備、ウイングスーツである。
ちなみにフラップとスタビライザーの膜の部分は晶のベールで再現しているので、見た目は飛行しているように見える。
飛行している訳ではないが、背中から翼が生えるエフェクトもちゃんと機能する。
3人が上空まで跳躍し、夜の海を飛行する様がドローンで撮影され、ライブ会場のモニターに映し出された。
白狐面の巫女、黒狐面の忍者が翼を生やして空を駆ける様に、会場の熱気と共に「あれはなんだ!」との声も聞こえてきた。
曲中、歌いながら桜煌が語る。
「みんな! 聞いてくれるかな! ボクたちは、正義の執行者であり、月の代行者Artemis! 正義と共にあること、そして、それは天から与えられた使命であり、あまつ意思。ボクたちは神の使いであり、天の狐。神使『天狐』! この世の悪は、ボクたちが滅ぼす! だからみんなーっ! ボクたちを信じてーっ!」
会場上空に『 神使「天狐」 』と『 月の代行者「Artemis」 』の文字が浮かぶ。
桜煌の語りが終わると同時に9曲目『 Stellar Evolution 』が終わり、会場は一瞬静まり返った。
観客の1人が大きく声を上げると、それに呼応して次々と声を上げるみんな。
「がんばれーっ!」
「俺達は応援するぞー! これからもーっ!」
「今日からファン始めさせて頂きまーすっ!」
「熱い曲をありがとーっ! 信じてるーっ!」
「この前も私達を陰ながら守ってくれてありがとーっ!」
「おねーちゃんたち、かっこいいー! ヒーローみたーい!」
あどけない少女の応援が、ドローンを通して空を滑空しているテンと晶に届いた。
『えっ! ちーちゃん!?』
思わず反応してしまった2人に、会場にいたちーちゃんにドローンのカメラが向けられ、ステージ中央のスクリーンに両手を精一杯振って応援している姿が映る。
テンと晶はドローンがホログラムで映す映像でそれを確認し、手を振り返す。
『『お姉ちゃん達に、任せなさい!』』
笑顔でピースサインをして応えた。
「がんばってー! あたちのヒーロー!」
ちーちゃんの応援をきっかけに、会場は一気に熱気を取り戻す。
「「うおぉぉぉーっ!」」
「「アルテーミス! アルテーミス! アルテーミス! アルテーミス!」」
大声量のArtemisコールを受け、ステージ上で5人がコクンと頷く。
「10曲目は、神使『天狐』のこの子が作った曲よ! 『 Burn My Soul With You 』!!」
香が晶の映ったモニターを指差すと、更に声援の熱量がアップする。
情熱的な楽曲に会場には赤を基調としたレーザーが飛び交う。
光のギミックで具現化された『 Burn My Soul With You 』の文字が表示された。
滑空し、ロケットランチャーの発射地点まで到達すると、そこは海ほたるだった。
50台程のジープが並んでおり、そこからロケットランチャーをひっきりなしに発射している。
上空からザっと見た感じ敵は200人程。
『見つけたっ! これより殲滅に入る! 行くぞっ!』
『『了解っ!』』
ショウゴが会場の観客にも分かるようにと声を出して号令を掛ける。
滑空を解除し真上から制圧に突入する3人。
突然上空から振ってきた狐たちに動揺する敵。
「来たぞっ! アマツの連中だ! 殺せ殺せぇぇ!」
「オマエらさえ消せば我々の勝ちなんだぁぁ!」
「死ねぇぇぇぇーっ! 撃てぇぇーっ!」
ロケットランチャーからマシンガンに持ち替え一斉に撃って来た。
会場で戦闘を見ている観客たちは、銃撃を受けるシーンを見て悲鳴を上げたり、負けるなと応援の声を上げたり一生懸命声を送る。
弾幕をものともせずに突っ込んで、弾をはじき返し、敵を吹っ飛ばしていくその強さに会場が沸く。
『さちこ先輩! 敵が何者か視てください!』
『任せてっ!』
テンが敵の一人に接触すると、BUGS残党だという事が判明する。
『判明! こいつらはBUGS残党! それとWORMS本部から能力者が3人来てる! キラさん、そっちに向かってる!』
『何っ! チックショウがっ! ここを最速で片づけて加勢に戻るぞ!』
『了解! お兄ちゃん!』
『了解したわ!』
会場に駄々洩れの会話で、観客は、正体とか大丈夫なのだろうか……、と心配になる。
さっきから名前……お、お兄ちゃん? 呼び合ってるんだけど……と。
テンから能力者が向かっていると聞かされたキラは、飛来するロケットの迎撃をP‐SACOに任せ、ロックとジュンタ、セオドラを連れて会場を守るように3方向に位置した。
『ロックさん、ジュンタくん、セオドラちゃん! 絶対に負けられないわよっ!』
『了解、ボス!』
『了解、キラさん!』
会場では、また新しい名前が出たぞこれ……しかもボスって! と、なっていた。
『奴らの中で飛行出来たのはツェツェとシーボルディだけのはずよ! なので地上戦になるわ!』
『俺の方に1体! おいでなさったぜ!』
『私の所にも1体です!』
『あら、最後の1体は私の所に来たのね。私の所に3体来てもよかったんだけど? 最初に言っておくわね、私、結構強いのよ? ジュンタくんはセオドラちゃんの所へお願い』
『任せて下さい!』
それぞれ接敵した事が会場のモニターで皆に伝わった。
会場の一番端に居る観客たちは、直ぐ目の前で敵と戦闘を繰り広げるヒーローの姿を目撃する事になる。
その様子はスマホでSNSにリアタイで中継され、爆発的に視聴者数を伸ばしていく事になる。
ヒーローが皆の為に戦い、Artemisが皆の為に歌う。
そして皆がヒーローとArtemisの為に声援を送る。
『だから、私達は負けちゃいけないっ! リンくんやアルくんがそうであるように、私達は迷わない、躊躇わない! そして、絶対に逃げないっ! 巨悪は、私達が許さないからっ!』
キラの熱いメッセージが会場の観客全員に伝播する。
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