クリスマス ミニLIVE!! IN 千葉
リン先輩とアゲハちゃんが戻らないまま、今年も年の瀬が近づいてきた。
学校の部活も落ち着いてきたので、私とさちこ先輩は2週間ぶりに「ARTIST JAM」に足を運んだ。
そこで1枚のポスターを見つけてしまう。
『 Artemis X’masミニLIVE !! in 千葉 』
「なっ、なっ、なんですとぉぉーっ!」
「キラ姉っ!! こっ、このライブっていつやるのっ!?」
「お、落ち着いて晶ちゃん! クリスマスライブって書いてあるよっ!? で、キラさん! このライブって何日ですかっ!?」
今までアルテミスのステージは何回か見たけど、海の中でのお試しライブとか、そのほとんどが戦闘中だったりとかして、言ってしまえばちゃんと見たことがない。
いきなりグイグイ来た私達を見たキラさんとセオドラさんの顔がちょっと引き攣っている。
「ちょっ、ちょっと2人とも落ち着きなさい!? まず、ライブは12月24日の夕方18時半から。場所は千葉県の幕張海浜公園、大芝生広場よ。それとミニライブだから総時間を1時間としてセットリストは12曲」
「そんなに!? 12曲もいつの間に!?」
「ふふっ、ビックリでしょ! 流石に私も短期間で詰め込んだから、相当頑張ったって言えるわね。それに、今回はセオドラちゃんとサクラも協力してくれたしね」
「はい、私、人生で初めて作詞作曲しましたが、非常に大変でした。ボスの異常さを再認識させられましたね。作曲は、サクラさんのお力添えがなければ、多分途中で挫けていたかと」
「セオドラサマノ ヨイカシガアッタカラコソ ウマレタキョク ダトオモイマスヨ!」
「あ、サクラちゃんおはようー!」
「おはようサクラっ!」
「アキラサマ サチコサマ オハヨウゴザイマス」
「「って、そうじゃなくてーっ!」」
「はいはいっ、言わなくても分かってるわよー! 私が2人を置いてけぼりになんてするわけないでしょ? でも、本当はサプライズでクリスマスプレゼントにしたかったんだけどなぁー、見つかっちゃったなら仕方ないわねー」
「「んなっ!」」
悪戯っ子な笑みを浮かべて、2人に向かって両手を広げるキラ姉。
「キラ姉っ! ダイスキーっ!」
「キラさん大好きーっ!」
「ムぐゅっ!」
さちこ先輩の胸に挟まれ、抗いようのない弾力の暴力に負けるキラ姉。
「……っプハァッ! という事で、前日から泊りで行くから、23日の朝8時、ココに集合ね」
「了解しましたっ!!」
「タダイマ アルテミスノミナサンガ レッスンチュウデス チョット ノゾイテミマスカ?」
「え! いいの? わーっ、私見たいです、見たいですっ!」
「邪魔にならないんだったら、あたしも見たいかなー? なんて」
「そうね、遊びに行っても大丈夫よ、彼女らにとってもいいエネルギー補給になると思うし」
「「ちょっと、行ってきます!」」
エレベータまで走って行く2人。
「ボス、あの2人には本当に甘いですよね。見ていて微笑ましいです」
「ふふっ、あの子たちだけじゃないわよ? 私は皆のことを家族だと思っているの、もちろんセオドラちゃんもよ? そうね……。リンくんが守りたいものは、私も同じように守りたい、ってところかしら?」
「なんか、分かる様な気がします。だからこそ、ボスも同じように皆から愛され、慕われているのですね。そんなボスの下にいられる私は、いえ、皆は幸せ者だと思います! ボス」
ニッと少し照れながら笑顔を見せるセオドラちゃん
いつもはクールビューティーなセオドラちゃんのレアな照れ顔、破壊力ある笑顔を後でこっそりとサクラに言って録画映像を自宅サーバーに送ってもらうのだった。
アルテミスのお姉ちゃんたちがレッスンしていると聞いて、どうしても見たくなってしまった。
突然押し掛けて迷惑じゃないかな? とも思ったけど、どうしても見たい!
~♪♫♩♪♬♬♩♫ ♪♫♩♪ ♬♩♫♩♪
「わっ、めっちゃ頑張ってる! 開けたら迷惑じゃないかな?」
「キラ姉も大丈夫って言ってたんで、行きましょう、さちこ先輩!」
曲が一区切りした所でレッスン室のドアを開け中に入ると、汗だくで床に転がっている5人が見えた。
「お疲れ様です! 応援に来ました、お姉ちゃん達!」
「皆っ! あたしも来たよっ! 応援しにねっ!」
「「ひ、ヒーリングしてぇぇ~~っ」」
PACSの効果で疲れ知らずの体力になっているはずなのに、どうしてこうなっているのかと、ヒーリングしながら聞くと、レッスン中は基礎体力と心肺能力を上げる為にPACSの使用を禁止しているとか。
「なるほど、汗だくで床に転がっているのも頷けます。ライブ本番はきっと最高のパフォーマンスが出せますね! ものすっごく楽しみですっ!」
「あたしと晶ちゃんも、ライブ、応援に行くからねっ!」
「これは、気合入れて行かないとだっちゃにゃー!」
「ですわよっ! 仮にもクリスマスイブ、カップルで来る方たちも多いはずですわ! イケメン彼氏さん達全員を落とすくらいの勢いで魅了しますわよっ!」
「こ、ここは、ここあお姉ちゃんのカッコいい所を見せないといけない場面なんだぞ!」
「よっしゃぁーっ! もう一丁やるなのーっ!」
「テン! 晶ちゃん! 誰よりも先に、特別に1曲だけ披露するっすよ!」
床から立ち上がる姿、そこには既にプロとしての気概、本気の意思が宿っている。
ザッ! と5人が並び、テンと晶に背を向ける。
「皆っ! 思いっ切り行くっすよーっ!」
「「おーっ!」」
強いコーラスで応える5人の背中が、強く大きく見えた。
「サクラ、曲は『未来へ』!」
室内の照明が暗転し、Artemisの5人にスポットが当たる。
未だ引いていない汗が背中から立ち昇り、照明に照らされる。
あたかも、今ここは既にステージなのだと錯覚させられた。
始まる演奏、力強く熱いビート。
心の奥底から湧き出るエネルギーのような、憧れや焦れにも似た旋律。
音楽に合わせ、5人は一斉にステップを踏み、たった2人の観客へと振り返り、歌い始める。
~♪♫♩♪♬♬♩♫ ♪♫♩♪ ♬♩♫♩♪
激しいステップが終わりをむかえ、五人の動きが演奏の最後を待つ。
フェードアウトしていく演奏が、自由への渇望、何者でもない自分は何者にでもなれる、そんなメッセージを発しているかのように感じた。
だけど、何故かちょっぴり切ない。
曲が終わりルームの照明が明るくなると、5人は崩れ落ちた。
「あ、朝からぶっ続けで、も、もうムリなのー」
「だぁーっ! これ以上は死んでしまいますわーっ!」
「テン、晶、ど、どうだった……んっ!? にゃーっ!?」
葵育の声にびっくりして皆テンと晶の方に顔を向ける。
「……ヒック! ヒック! うえぇ~~んっ ヒック!」
「うぅぅ~~っ グスっ! グスっ! うぅ~~っ ヒック!」
大泣きしてしているテンと晶を見て、何事かと慌てる皆。
「どどど、どうしたっすかっ!」
「わ、悪いモノでも食ったなの!?」
「ど、どこか痛くしましたのっ!?」
大泣きしながらフルフルと頭を振る2人が、顔を服の袖で拭きながら顔を上げ
「ズルイですっ! こんなスゴイのっ! 感動するしかないじゃないですかぁーっ!」
「よ、良すぎて、気が付いたら、こんなんなってたっ! 皆凄かったよっ! もう最高ってしか言えないじゃないっ!」
未だ涙が止まらない2人を、皆でハグして背中を撫で、頭をポンポンして宥めながらも、皆の目には火が灯っていた。
もっと、もっとだ、私たちは、もっと先へ行く!
「桜煌、葵育、香、恋焦! 限界突破行けますか? いや、行くっすよーっ!」
明輝の号令で立ち上がる4人。
「「当然っ!」」
応援の言葉を残し、テンと晶はレッスン室を後にする。
その様子をこっそり見ていたキラは、これは後々ライブDVDを発売した時の特典映像に使えるっ! と閃き、こっそりとサクラに言って録画映像を自宅サーバーに送ってもらうのだった。
◇◇◇
12月23日(金)
幕張海浜公園でのクリスマスライブに向け、現地へ赴くメンバー12人が時刻通りに集まった。
中学校も高校もすでに冬休みに入っているので、学生組の皆も何の憂慮もなく行けるわけだが。
「なんで俺だけ仕事なのぉぉーーっ!?」
「可哀そうなアル、南無阿弥陀仏なの」
「ご冥福をお祈りしますにゃー」
「チーン、だぞ」
「アルさんの分も私が楽しんできますから、何の心配もいりません!」
「じゃーねー、アル君。海外出張うらやましー、頑張ってきてー!」
「テン、全部棒読みですわよ」
「あははは、そんなこともあるっすよー! お仕事お疲れ様っすー!」
「チクショー! 覚えてろぉぉぉぉー……」
と、皆から温かい声援をもらったにもかかわらず、嘆きのセリフを残し連れられて行ったアルは、防衛省の依頼で米軍と合同のテロ組織制圧作戦に参加する為、P‐SACOと共に日本を発った。
「さ、私たちは明日のライブで忙しくなるから、そろそろ出発するわよー!」
「よし、皆コイツに乗ってくれー、俺がしっかり安全運転して行くから寝て行ってもいいぞー」
控えめな「ARTIST JAM」のロゴが入った15人乗りのバスに乗り込んで出発する。
「Artemisのライブ用バスなんだから、ド派手にラッピングして、ド派手にアピールしなきゃ!」
当初、ジュンタはそう言っていたが、まだ早いとキラとセオドラに一蹴。
「もっと知名度を上げて、Artemisのグループロゴとか決まってからにしましょ?」
「あまり早い段階からアピールし過ぎると、後々黒歴史になるのではありませんか?」
の言葉に納得し、控えめな「ARTIST JAM」のロゴに収まった。
◇◇◇
現地ではステージ設営関係が大方決まり、15時から行われるリハーサル待ちとなった。
幕張海浜公園までは、休憩を含めおおよそ6時間程の長距離移動になる。
ロックさんは入社前から大型免許持ちだったが、運転手が一人では色々問題があるだろうと、セオドラさんがなんと一発取りで大型免許を取得し、交代要員となった。
長距離移動中に仮眠を取る皆は、セオドラさんの方が運転が上手い!
と思った事だろう、なにせロックさんも爆睡しているのだから。
そんなセオドラさんをお兄ちゃんが後ろからまじまじと見ている。
そのうち、大型を運転できる人員は3人に増えそうである。
途中コンビニ等に寄りながら、大きな問題もなく会場に到着。
バスを降りると風が強く、季節なりの寒さも感じる事だろう。
事だろうというのは、今回現地に赴いたメンバーは全員PACS装備者であり、常時ベールで保護されている為、寒くも熱くもなく快適温度なのである。
「運転お疲れさまでした、ロックさん、セオドラちゃん。リハーサルが終わるまでゆっくり休憩してくださいね。Artemisの皆と警護役のサトル君は私に付いてきてね。さっちゃんと晶ちゃんはどうする? 周辺にアウトレットパークとかあるから見て回って来てもいいのよ?」
「え! じゃあちょっとだけ見に行ってみようかなー? 晶ちゃん、行ってみない?」
「いいですね! 興味あります! ちょっと都会を堪能しに行きますか、さちこ先輩!」
「じゃ、18時にバス集合って事で、気を付けて行ってらっしゃい! あ、それと、はいコレっ!」
キラ姉から私とさちこ先輩に、何やら封筒を手渡して来たキラ姉。
「キラ姉、これは? えっ! ごっ、5万円!?」
「うわっ! あたしの封筒にも5万円入ってるよっ!? ちょっと、キラさんっ!?」
「何をするにも軍資金は必要でしょ? こうなるかなーと思って昨日準備したの、だから遠慮なく貰ってくれると嬉しいな」
一番上のお札に付箋が貼られていて、デフォルメされたキラ姉と思われる手描きキャラと吹き出しに「楽しんで来てネっ!」と書かれてある。
「こんなの断れないじゃーん! うぅ~、んもぉ~キラさんっ! 有難く頂戴しますっ!」
「んじゃ私、キラ姉に何かお土産買ってくるねっ! ありがとう、大切に使うから!」
「うん、いってらっしゃい!」
キラ姉にバイバイと大きく手を振って、迷子にならない様にさちこ先輩と手を繋ぎながらアウトレットパークの方に歩く。
アルテミスのお姉ちゃん達はこれからリハーサル。
お兄ちゃんはインターンの一環で警護の仕事。
キラ姉は全体の指揮で皆忙しい。
「私達だけ旅行気分でなんか申し訳ない感じですね! 今日は今日で、明日はライブで、楽しみが多すぎます」
「いいんじゃないかな! 人生は楽しむ為にあるんだし? あたしなんかずっと楽しんでばっかりだけどね、あはははっ」
「あ、あれですかね! わっ、おっきい! 早く行きましょーっ!」
さちこ先輩と2人、手を繋ぎながらアウトレットパークへ向かった。
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