Eine
機械音が鳴り響く室内で、アタクシの身体は肉を捲られ骨を接がれ、まるで何かのおもちゃの様に組み立てられ、造られていく。
何故アタクシはこんな想像を絶する痛みを与えられているんだ。
「ぐぁぁっ! がっ! あ゙あ゙あぁぁぁーっ!」
高速で回転する甲高い金属音がアタクシの悲鳴と重なる。
骨を切断し削る振動に全身が跳ね上がりそうになるが、拘束されている為それすらも許されない。
アタクシは一体どうなってしまうというのだろう。
「い゙ぇぇぁぁーっ! あ゙あ゙あぁぁぁぁーっ!」
「うんうん、そうだねぇ~痛いよねぇ~? でも大丈夫だよぉ~、そのうち痛みも感じなくなってくるからねぇ~。ちゃ~んと元通り、ううん、前よりキレイに、そして強く。完璧に直してあげるから頑張ろうねぇ~、ボクのベイビー。……うひっ、うひひひひひっ!」
WORMSが抱える科学者「Blutegel」。
世間一般的に言うならば、倫理の欠片もない常軌を逸した思考と、狂気としか表現できない実験・研究を行うマッドサイエンティスト。
Fuhrerは18歳になったばかりの彼女を「数世紀に1人の天才」として、自由に研究出来る事を条件に組織へ招いた。
彼女、「ブルー」の行動原理は「興味」だ。
ブルーは今までにも、能力者の血液を自分の血液と混ぜたらどうなるか、能力者の血液を飲んだらどうなるか、能力者を食べたらどうなるか、一般人の脳と能力者の脳を交換したらどうなるか、能力者の精液を自分の卵子で受精するとどうなるか等、思いつくまま興味に従って行動してきた。
結果、ブルーの受精卵を培養し成長した子供らは、皆何かしらの能力を持つ事が判った。
そして今、そこから得られた実験結果を利用し、アタクシから離れた両手足はブルーのオモチャとなり、そして再生された。
満足に足る実験結果を得られたとして、到底手術とは呼べない手法で、今、再生された手足をアタクシに結合している最中だ。
そしてブルーの思考の中には、麻酔というものは存在しない。
ブルー曰く、痛みというものはあって当たり前の反応であり、麻酔で痛みを消すという行為は、神が与えたものを否定する、侮辱した恥ずべき行為なのだそうだ。
「痛みは神から与えられし恩恵だよぉ~? だから、この痛みに対する叫びは神への祈りにも似た喜びに値するとボクは思うんだぁ~。だからさぁ~我慢せずに存分に叫ぶといいよぉ~? もちろん、イイ声でねぇ~? いひひっ! うひひひひひひっ!」
激しい機械音と想像を絶する痛み、そして自分の叫びが続く中、アタクシは思い出していた。
日本へ先行偵察として降りた際に、自分は圧倒的に強者であり、相手は遥か格下であると驕り高ぶり慢心し戦闘に臨んだ結果、アタクシはまだ年端もいかない日本人の少女達に惨敗した。
挙句、両手両足が使い物にならなくなった姿で、死に物狂いで飛行し、逃げた。
息も、意識も絶え絶えの状態で本部上空まで到達し、そこで意識を失った。
次に気が付いた時には、胴と頭を固定され、酸素マスクを付けられた状態で、研究室の培養カプセルの中に入れられていた。
正直、まだ命があった事に驚いたが、その代償に、アタクシは手足を失っていた。
そこで、また意識を失った。
次に気が付いた時には、かろうじて瞼と眼球だけは動かせた。
瞼を開くと、ディノ様がカプセルに手を当て、アタクシを見て何か語りかけていた。
カプセルの中まで声は届かず、眼球を動かしてそれに応える。
視界には、アタクシから離れた両手足が培養液に漬けられているのが映った。
ディノ様は、ブルーに言われて血を提供しているようだ。
採取された血液は得体の知れない液体と混ぜられ、アタクシの手足だったものに半分注がれ、残りの半分をアタクシが入っている培養カプセルに注いだ。
視界が赤く染まっていき、意識が段々と遠くなって行く。
……ああ、ディノ様がアタクシの中で混ざり合っていく
次に気が付いた時には、身体が、細胞が、生まれ変わったかのように以前のアタクシの身体とは違う事を感じる。
培養カプセルの中から研究室を見渡すが、ディノ様、そして癇に障るパラの小娘の姿は見えなかった。
ブルーが近づいて来て、アタクシに語りかける。
声は聞こえなかったが、唇の動きで
「もうすぐだよ 待っててね ボクのベイビー」
と読み取れたが……、ベイビー? 意味が分からない。
ブルーはいつものように気味の悪い笑い方で恍惚とした表情を浮かべながら、実験対象に向ける目でアタクシを観察した。
カプセルの中で、培養液が揺れる感覚を感じ目を覚ました。
いつの間にか別の場所に運ばれており、ここは今まで見た拠点とも違う、知らない場所だった。
目を覚ましたアタクシにブルーが話しかける。
「三日後 身体を戻してあげる 楽しみだね」
戻してあげる? どういう意味? ここはどこ?
失ったはずの手足が疼く、まるで内側から吹き出す炎に焼かれでもしているかの様な感覚を覚えた。
それから3日後、培養カプセルの液体が抜かれた。
どの位の期間この中にいたのだろうか、久しぶりの外気がヌルッと肌に纏わり付く。
胴と頭を固定されたまま、金属台の上に移され、動かない様さらに固定された。
「ボクのベイビ~! いま人間にしてあげるからねぇ~! うひひひひっ!」
視界の端に、培養液に漬けられたやけに白い手足が見える。
ブルーはアタクシの右足股関節部分を愛しそうに撫で、興奮した表情で執拗に舐め回す。
「あ゙ぁぁっぐっ! ぁあ゙え゙ぇえぉーっ!」
やめろっ! と声を発したはずなのに口が上手く回らず言葉を発しない。
堪らずニチャーッと笑みを作ったブルーは、股関節に刃物を突き立て、肌を切り開いた。
「い゙ぇぇあ゙ぁぁーっ!」
痛みで目を閉じてしまう寸前、ブルーが培養液から足を一本掴んで取り出したのが見えた。
「い゙っ! ぎぃぃぁぁーっ! んあ゙あ゙あぁぁぁぁーっ!」
「いいよっいいよぉ~っ! うひひひひひひひひひひひひひっ!」
ブルーの狂った笑い声が聞こえたのを最後に、また意識を失った。
そんな事はお構いなしに、その行為に集中するブルーは、恍惚とし歪み切った表情で、だらしなく口の端から涎を垂らしながら悦に浸る。
「ちゃ~んと元通り、ううん、前よりキレイに、そして強く! 完璧に直してあげるからぁ~頑張ろうねぇ~ボクのベイビー。Tsetseの死体とディノの再生能力を含んだ血液。そして結合と変質を与えるボクの能力と媒介となるボクの卵胞液! 触媒にボクの卵子を使って細胞分裂させたボクのカワイイベイビーっ! 進化した人類、新しい存在として、生まれさせてあげるねぇぇ~っ! ……うひっ! うひひひひひっ! いぃーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
目が覚めた時はまた培養液の中だった。
横たわった状態で特に拘束もされておらず、視線を横に移すと首が回った。
暗い部屋で光るPCモニターや機械のLEDが眩しく、思わず目を窄める。
気が付くと失ったはずの手足がむず痒い。
耐えられず身体を捩ると、無いはずの腕が培養液ケースに当たる。
「は?」
酸素マスク越しに自分の声が口籠って聞こえた。
そういえば「身体を戻してあげる」と、ブルーの唇がそう語った事を思い出す。
そんな事が可能なのか? と疑いたくもなるが、事実、アタクシに左腕がある。
腕を動かすという感覚を忘れそうになっていたが、腕を持ち上げ上に伸ばした。
開いた手から零れる培養液が、液体を打ち付ける音を立てた。
手だ、思い通りに動く手だ、失くしたはずの手が帰ってきた。
驚きと興奮で、切れ長の目をこれでもかと開き、その手をまじまじと見つめる。
アタクシの手はこんなに白かったか?
まるで血を抜かれたような、まるで死人のような、不自然な程に真っ白な肌。
違和感は拭えないが、これはこれで悪くはない。
アタクシの美を表現するにはこれくらいでないと。
培養ケースの端を掴み、上体を起こす。
自分の胸から腹、腹から腰、そして腰から下をゆっくりと確かめる。
その先には美しくスラっと伸びた足が付いていた。
アタクシの身体が帰って来た。
以前と遜色ないアタクシの身体が。
ただ、全身「真っ白な肌」ということを除いては。
自分の身体を確認していると、近づいてくる足音が聞こえた。
「おお~っ! もう起き上がれるようになったのかい? 素晴らしい出来上がりじゃないかぁ~ボクのベイビー!」
「……ベイビー、とは一体なんの事かしら? ブルー」
「そぉ~んな他人行儀なぁ~、ブルーじゃなくて『ママ』って呼んでもいいんだよぉ~」
「……冗談にしても度が過ぎますと、吐き気を感じる程に気色悪くてよ。そもそもブルー、アタクシよりも歳が2つほど下ですわよね? ですがまあ、元通りに直して頂いた事には感謝申し上げますわ」
「え~っ! もぉ~っと感謝してくれてもいいんだよぉ~? 凄く大変だったんだからぁ~! あ、そうそう、それよりもちょっとこっち来てぇ~? ってか立てる? わぁ~もう歩けちゃうのぉ~!?」
培養液ケースの端に手を付き腰を上げる。
そのままフワッと宙に浮きブルーの隣に着地する。
「いいねぇ~いいねぇ~! 能力もちゃんと引き継がれているねぇ~!」
引き継がれている?
妙な言い回しが引っかかるが、ブルーが手招きした方へ歩いて行く。
ドアを開け暗い部屋を通り、さらにドアを開けまた暗い部屋を通り、階段を上がり、またドアを開け、そこでエレベーターに乗り上に向かった。
出た先はまた暗い部屋だった、そしてまたドアを開ける。
目に入って来たのは真っ白な壁、天井、廊下、そして眩く輝く太陽の光。
廊下の壁には大きく空いた窓代わりの穴が沢山あり、そこから太陽光と潮の香り、波の音が入り込んでくる。
「ここは……?」
「ここわねぇ~ギリシャよぉ~! ギリシャのサントリーニ島! もちろん眼前に広がる青い海はエーゲ海! 青い海、白い空! じゃないわねぇ~白い家ね。 綺麗よねぇ~素敵よねぇ~あなたと同じくらい白くていいわぁ~! 真っ赤に染めちゃいたい位に。うひっ、うひひひひっ!」
「アタクシの知らない拠点ですわね」
「そりゃぁねぇ~Fuhrerがボクの秘密の研究施設って事で用意してくれた場所だものぉ~」
そう言ってブルーは先に歩みを進めた。
付いて行くと白い部屋にふんだんに日光を取り入れた明るい部屋で、家具や調度品は余分な装飾を避け、すっきりとしたデザインの物を置き、小物やカーペットラグはカラフルで色合いの強いものを置いている。
「こう言ったらなんですけど、結構いい趣味してますわね。ブルーはもっとこう、暗くてジメっとした感じを好んでいるのかと思っていましたわ。端的に言えば意外、でしたわ」
「あのねぇ~こう見えてもボクはまだ20代前半のうら若き女子なのよぉ~? それよりもほらこっち来てこれで自分を見てみてぇ~?」
浴室前に置いてある全身が映る鏡で自分を見る。
一糸纏わぬ裸の自分が映る。
以前と変わらないプラチナブロンドの長い髪に灰色の目、輪郭は少し痩せた感じにシュッとしている。
出るところは出て括れるところは括れ、髪、眉毛、睫毛以外の無駄な毛は一切ない完璧なボディ、だが、胸の先で突起している部分まで真っ白な肌。
口を開けると赤色が見える、舌を伸ばすとちゃんと赤い、体内は赤いが肌は真っ白だ。
ならば、陰部はどうなっているのかと鏡の前で両手で拡げて確認する。
肌から大陰唇まで真っ白、だが陰核含め小陰唇から内側は真っ赤だった。
肌の白と対比して真っ赤に見えたのかと思い、もう一度確認すると、口の中も舌も真っ赤だった。
隣でまじまじと観察しているブルーに聞く。
「肌が真っ白な事と、体内がピンクでもなく真っ赤なのはどういうことかしら?」
「うーん、ちょっと確認するねぇ~」
そう言ってブルーは拡げたままのアタクシの陰部に顔を近づけ匂いを嗅ぐ。
そして舌を出し、全てを中まで嘗め回し、目を閉じて味を確かめる。
指で、突起したものと周囲の感触を確かめ、そして深くまで指を埋めて中を弄る。
「うーん、おかしなところは何も無いしぃ~血でもない。いや、おかしなところと言えば寧ろ無味無臭すぎるってところかなぁ~? あっ! ちょっとオシッコしてくれなぁ~ぃ? そっちも確認したいからぁ~」
ブルーに言われるがまま下腹部に力を籠めると、湯気を立てながら迸る飛沫は無色透明に見えた。
真横から観察していたブルーは口を開け、それを受け止め口の中で舌で転がし味を確かめる。
口の中に溜まったそれを少量ずつ味わうように全て飲み干し、そしてまた舌を出し全てを嘗め回した。
ブルーは顔を上げ、アタクシの陰部、股間、伝って濡れた足を丁寧に拭いた。
「うん、大丈夫よぉ~無味無臭だけども何も問題ないわぁ~! ただ一つだけ言えるのはねぇ~ボクの結合と変質の能力を引き継いでいるってことねぇ~。それともうひとつぅ~」
ブルーはアタクシの手を取り、人差し指を摘んでニチャァっと笑みを零し、人差し指の第一関節から先を噛み千切った。
「ちょっと! 何を!」
指の先を咀嚼し飲み込んだブルーは、またニチャァっと口の端から真っ赤な血を垂らしながら言う。
「大丈夫よぉ~? ほらぁ~指なんてもう生えてるでしょぉ~」
さっきブルーが噛み千切ったはずの指先は、何事もなくアタクシ指の先にある。
さっき吹いた血飛沫は、ブルーの身体と顔を真っ赤に染めたまま、頬を伝い床に滴り落ちているのに。
「……説明をお願いしても?」
「んふ~っ、さっきの続きなんだけどねぇ~ボクの能力を引き継いだ事ともうひとつ~。ディノの再生の能力を引き継いだんだよぉ~ベイビー」
その説明をしろと圧を掛けると、ブルーの表情は恍惚としたものに変わる。
そしてその時の事を思い出しながら語った。
どうやら、アタクシは一度死亡したらしい。
その亡骸を、ディノ様の能力を含んだ血液とブルーの能力を含んだ卵胞液を加工した培養液に漬け、ブルーの卵子を触媒にして細胞分裂させ頭と胴体を再生させた。
破壊された両手足も同じようにして作ったようだ。
最終的にそれらを元のように結合し、今のアタクシに至ったという内容だ。
なるほど、ブルーが「ボクのベイビー」などと気色の悪い言い方をするのはこの為か。
「なるほど、理解はしましたわ。気色は悪いですけど、あなたのその天才っぷりに感謝しておきます」
「もっと褒めてくれてもいいと思うんだけどなぁ~。ありがとぅ~ママぁとかさぁ~?」
「あなた、死にたいんですの? まあいいわ、ところでディノ様は今どこで何を?」
「んん~? 血液提供しに来た時以来からだからぁ~んん~今どこで何してるんだろうねぇ~? そもそもあれから2か月くらい経ってるんだものぉ~」
「……は?」
自分が戦いに敗れドイツの本部に戻ってから2か月が経過している。
であれば、後発で日本に出向いたディノ様や他のメンバーは今どうなった?
何故ディノ様はアタクシに会いに来てくれない?
意味が分からず困惑した表情を浮かべていると、誰かが部屋に入って来た。
「やぁ、やっと黄泉の国から帰って来たんだねぇ。 おはよう、気分はどうだい?」
やって来たのはFuhrerだった。
一枚の布も纏っていないアタクシの身体をじっくりと観察し、困惑を浮かべた表情を読み取る。
「そうだね、まずは今何が起きているのかを、話さないといけないねぇ」
◇◇◇
Fuhrerは、今何が起こっているのかを語った。
日本に先行偵察に行った翌日、日本支部のBUGSが壊滅した事。
そこから情報が漏れ、各国の支部が次々と潰されていってる事。
組織メンバーはもちろん、関係団体から資金の流れまで全て押さえられたこと。
敵は「アマツ リン」を主とする強力な超能力者集団と各国政府だという事。
本部も近々制圧されるだろう事。
現在の拠点および組織は捨てざるを得ない事。
ここは安全である事。
新しく体制を作り直し、失ったものを取り戻さねばいけない事。
「我々は全てを失う。最早それは時間の問題だ。だから、君には新たな役割を担ってもらう必要がある。 これから新たに作り上げる組織の『絶対的象徴』として君臨しなさい。君は美しい! 髪も、目も、声も、そしてその神を感じさせる白い肌も! これからの我々の新しい時代において、君の存在は必要不可欠だ。一度死に、そして『進化した人類、新しい存在』として蘇った。今後は名を変え、闇の世界から光の世界へ! 表に出るのだ! そして仲間を集え、我らこそが正義であると。そして反する敵は全て滅ぼせ。我らこそが唯一無二、唯一至高であると知らしめるのだ。今日から君は、いや、今から君は『Evolved Idea , New Existence』進化した存在、新しい存在、を意味する『 Eine 』を名乗るがよい」
今まであったモノは全て崩壊した、これからは名を変え新たな勢力を作り上げろ、という事か。
「分かったわ。今までの名は捨て、以後『Eine』と名乗りましょう。それでFuhrer、ディノ様は今どちらに居られますの?」
正直、組織だ新たな体制だ勢力だなどと言うものに一切興味はない。
アタクシはただディノ様の側にあるだけ。
さあ、ディノ様は今どこにいらっしゃいますのかしら?
「ふむ、ディノポネラおよびパラポネラ、そしてシーボルディは『アマツ リン』なる能力者に殺された。レッドアイデビルは敵の手に落ち、捕らえられている。残っているのは君だけなのだよ、Eine」
……今、今こいつは何と言った?
「……は? アタクシの聞き間違えかしら? まさかとは思いますが、今、ディノ様が負けた、と言ったのかしら?」
「ああ、信じられないのは分かる。だが、ディノポネラはEineが戻った日の翌日に日本に出向いて『アマツ リン』に負け、殺された」
「……そう差し向けたのは……Fuhrer、アナタなのではなかった……かし、らあ゙っ!」
白い肌の眉間に険しい皺を寄せ、奥歯をギリギリと噛みしめ、怒りをあらわにする。
「ああ、出向いて奴らを駆除するよう、私がディノポネラに命令した」
「ん゙あ゙ぁぁーっ! お前がぁぁ! お前が命令しなければぁぁっ! お前があぁぁぁっ!」
「ッ! グボッォ! ブハァッ! オ゙ェェッ ゲハァッ!」
心臓を貫かれ、口から大量に血を吐きだすFuhrer。
「うあ゙あ゙ぁぁぁーっ! あ゙ぁぁぁぁーっ! お前のっ! お前のせいだあ゙あ゙ぁぁーっ!」
お前の! お前の! お前がっ! お前が全部悪いっ!
アタクシの怒りは、お前の身体中に穴を開けたって収まりはしないっ!
「……ディノ様は! ……ディノ様が! ……ディノ様が、唯一無二なんだ オマエなんかじゃない! ……オマエなんかじゃ……決して、ナィィィィーっ! あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁぁーっ!」
眼前に広がる青いエーゲ海、燦燦と照り付ける太陽、真っ白い建物たち。
真昼間のギリシャ、サントリーニ島に突如として天に立ち昇る赤黒の炎の柱。
轟音と共に巻き上がる巨大な炎柱が急速に収縮し、Eineに還っていく。
赤黒い炎は、Eineの肘から手首、膝から足首を覆い、ユラユラと、そしてヌラヌラと揺らめいた。
何が起こったのか分からなかったが、この炎はよく知っている。
触れるもの皆焼き尽くす、ディノ様の漆黒の炎。
「……ディノ……様?」
Eineが名を呼ぶと、炎は揺らめいてゴォッと燃え上がり全身を包んだ。
一見、赤く黒い炎は何もかも焼き尽くす獄炎に見える、だがEineには心地よく、あたかもディノに体中を撫でられているかのような安心感を感じた。
「ああ……これは、ディノ様、アタクシの中にいるのですね……ディノ様、ディノ様……これからはずっと一緒です、ああ……」
Eineを包んでいた炎が膨れ上がり霧散する。
「え!? あ、ちょっ! ベイビー!? 背中背中っ! それと頭っ! 目っ!」
ブルーが慌てて掛けた声で我に返った。
なんなのだと鏡を見ると、赤黒の炎の揺らめいた美しくも逞しい翼がそこにはあった。
それと、眉毛の端から延長するように赤黒の炎が立ち昇っており、それは悪魔の角のようにも見えた。
眼は白目が真っ黒に、灰色の瞳孔は真っ赤に染まっていた。
なによりプラチナブロンドだった髪は漆黒に染まっている。
赤黒の炎は、腕、脚、頭、背中でユラユラと揺らめく。
「ディノ様 ディノ様の感情が伝わってきますわ……悔しかったのですね、悲しかったのですね……そしてアタクシに、仇を取ってくれと……そう言うのですね」
炎は肯定を示したように揺らめく。
「分かりました……では一緒に……アタクシと一緒に、どこまでも」
グッと拳を握ったところで、ゴアッと赤黒の炎が膨れ上がり、そして霧散し消えた。
そこには、プラチナブロンドに灰色の目をした、真っ白な肌のEine。
だがその目の奥にはチラチラと赤黒く揺らめく炎、復讐の怨念が宿っていた。
「あー、えーっとねぇ~。さっきの黒い炎ぉ~? カッコよくて良かったよぉ~! 黒の炎の翼でしょぉ~黒く染まった目と真っ黒な髪ぃ~手足に黒の炎があってさぁ~? なんか悪魔っぽくてよかったよぉ~! 特に真っ白い胸と陰部がよかったぁ~! うひっ、うひひひっ! 何か変化ないか調べるからぁ~もっかい足開いて広げてねぇ~」
ブルーに言われるがまま足を開き手で陰部を広げ、ブルーの顔の前に出すEine。
ニチャァっと顔が崩れ笑みを浮かべるブルーの舌が、Eineの陰部をねっちこく、さも美味しそうに嘗め回すのだった。
ブルーの顔に排泄物を迸りながら飛沫をまき散らす。
びちゃびちゃになった顔をさらに押しつけ、舌を奥まで突っ込み中を掻き回すブルー。
そんな光景を眺めながら、Eineは思う。
ディノ様と一緒に「アマツ リン」に復讐をする。
それと「テン」と「アキラ」だったか?
確か3人いたが残りの一人は最後まで名前が分からなかった。
彼女らにも復讐してやる。
許さない! 絶対に、どんな手を使ってでも!!
そして数日後。
白の帝国 『 Weiße Reich 』 の設立が宣言される。
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