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Rising Force - Genesis -  作者: J@
事件編
9/124

発見

「あった! あったよ! 見つけた!」


 抑え目の声を上げ、アルが目的の黒のワゴン車を発見したと、ジェスチャーでオレに伝えた。


「ホントにあった……。見つけた」


 まず一つ、目的が達せられた事に体が震える。

 そして、直ぐ目の前に建物も見える。これで二つ目の目的もクリアだ。


「喜びたいとこだけど、本番はこっからだね」

「ああ、だな。オレは中の様子を探ってみる。アルは見つからない様に、茂みの中に」

「りょ!」

「何かあった時は……頼んだぞ!」


 オレは合羽をアルに預け、建物に慎重に近づいていく。

 建物はやはり大きな倉庫の様に見え、窓の位置もかなり高い。外から中を覗くのは無理そうだ。

 どこかの窓から光が漏れていないか慎重に外周を回るが、見つける事は出来なかった。

 だが、中に人が居る限り、何か必ず綻びがあるはずだ。


 裏側を全て確認したがダメ。正面入り口も鍵が掛かっており侵入は出来そうにない。

 詰んだか? と思ったが、雪室に使う為の地下があった事を思い出す。

 正面玄関を通り過ぎ、少し進んだ所で両側にスライドする大きめのドアを見つけた。

 よく見ると、ドアが合わさる部分が少し開いている。……これは開くのでは?

 音がしない様にゆっくりゆっくり慎重にドアを開いていく。


 流石に、いきなり中に侵入したりはしない。

 真っ暗なドアの中に頭だけ突っ込んで、聞き耳を立てた。

 雨音と雷鳴が邪魔をして、中の様子は殆ど分からない。もっと中に踏み込む必要がある。

 そして半身分だけ開いたドアの中に体を滑り込ませ、オレは建物内に侵入した。


 中は真っ暗だが、外の音が遮られるのか、思ったより静かだ。

 壁を打つ雨音や、時折鳴る雷が、この空間の広さを教えてくれる。

 目を閉じ、耳を澄ませ、頬から伝わる空気の流れを感じようと動きを止めた。

 とりあえずこの空間に誰かがいるようではないようだ。


 マグライトを取り出し周囲を確認すると、あちこちに段ボールが積まれているのが分かる。

 雪室では? と首を傾げながらライトを頼りに中を歩き回ると、5m程の道幅で地下に向かう緩やかな斜面を見つけた。

 この先が雪室に使っている場所か? そう思いながら静かにそこを下る。


 すると、またスライドするドアがあり、人が通れる程度で開いていたので、先程と同じように頭を突っ込もうと近づいたら、ふとタバコの香りがした。

 慌ててマグライトを消しパーカーのポケットに突っ込んだ。

 急激に上がる心拍に呼吸が苦しくなる。ここに間違いなく(れい)がいるはずだ!


 乱れる呼吸に逆らわず、パーカーの袖で口元を隠し、徐々に整える。

 静かに深呼吸をし、オレはもう一度ドア前に移動した。

 頭を突っ込んで周りを確認すると、奥の方から光が漏れているのを見つけた。


 大丈夫、やるべきことはちゃんと頭に入っている。ミッションの三つ目と四つ目だ。

 3.麗が拉致されている事を確認する

 4.犯人の人数を確認する


 緊張で心臓は爆発しそうに脈を打つが、静かに、かつ慎重に光の方へと進む。

 奥には上部に分厚い曇りガラスが付いたドアが見える。

 光はそのガラス部分から漏れていたが、流石にこのドアノブを回し中に入るのは危険すぎる。

 だから、ドアにそっと耳をくっ付けて聞き耳を立てた。


「身代金手に入るまで時間あるッスよね! 少しくらい遊んでダメッスか!」

「バッカお前、リーダーがダメだっつったらダメなんだよ、バレたらお前がバラされんぞ?」

「だって、どうせ海外に飛ばすんスよね?」

「あー多分な、詳しくは知らねぇ」

「俺JKとヤった事ないんで、こんな状況で我慢しろとかマジ無理ッスよ!」

「やめとけマジで! 先にお前のナニが飛ばされんぞ? 俺はおもしれぇから別にいいけどよ」

「かぁーっ、ならさっさと金手に入れて、それで遊ぶしかねっスかぁー」

「そうした方が身の為だな」


 そんな胸クソ悪い会話が聞こえて来た。だが、確定だ! このドアの向こうに(れい)がいる!

 逸る気持ちを抑えながら、一旦外に出てアルと合流し警察に連絡をと耳をドアから離そうとした。


「あー、オレちょっと小便行ってくるわ」


 ヤバイ! ここから離れないと!

 オレは慌てて中腰のまま早足で離れようとして、あろうことか躓いてしまった。

 はずみで、パーカーのポケットに入れていたマグライトと脇のベルトに差していたバールをコンクリート地面の上に落としてしまう。


 ――ガキーンッ!! キンキンキン……


 バールは金属たる音をこれでもかと鳴らして地面を転がった!

 ハイディングゲームで言えば死亡フラグだ。


「なっ! 誰だっ!!」 

「誰かいるぞっ!!」


 一気に大きな声が上がり、ドアが開け放たれ数人が走って来る。

 俺はダッシュで落ちたバールを拾い、振り向き様に、すぐ後ろに迫ってきた二人の顔面を、バールで思いっ切り殴り飛ばした。


「うわあああぁぁーーっ!!」


 声を張り上げた分、力が乗ったのだろう。

 1人はバールの折れ曲がった角が頭部にヒットしたらしく、激しく何かを飛び散らせながら吹っ飛んでいった。

 振り返しで殴りつけたもう1人は、L字の折れ曲がった先が頭に突き刺さり、その勢いのまま地面に激しく頭部を打ち付けた。何かが割れる音と共に派手に液体を撒き散らかし、濃い血の香りが一気に周囲に立ち込める。

 頭の中では何が起きたのかなんて容易に想像がついた。だが、それがどうした。

 オレは今、決死の覚悟で(れい)を助けに来たんだ。それこそこいつらを全員殺す覚悟で。


 ドアを抜け入って来た緩い斜面を駆け上がり、積まれている段ボールの影に隠れた。

 出来れば外に出たと勘違いして外へ行ってくれと願ったが、外まで出たのは数名で、残りは段ボールが積まれているこの倉庫の中をライトで照らして探している。


「さっさと出てこいやコラァッ! このクソネズミがぁ!」 

「よくも仲間をやりやがったなっ! ぶっ殺してやっから出て来いよっ!」


 何と悪役然としたセリフを吐くのだろう。

 オレは追い込まれているにも関わらずそんな事を思ってしまう。

 早打つ鼓動と状況でテンションがおかしくなったのか、段ボールの影で暗闇の中ニヤっと口元を歪ませながら、腰にあるネイルガンを手に取った。

 左手にネイルガン、右手にバールを携え、段ボールの裏で近寄ってくる奴を待ち受ける。


 奴らはライト片手に歩いて来るので、自分はここだと教えてくれるのだから有難い。

 チラ見するとライトは6つ見える。

 出口付近に2つ、反対側に行くのが2つ、そして、俺の方に向かって来るのが2つ。

 この6人の他に、外に出た奴を3人位だとしても全部で10人はいるよな。


 アルにどうやってこの状況を知らせる? 警察への通報と(れい)の救出。さあどうする。

 追い込まれているにも関わらず、結構冷静な自分がいることに少し驚く。

 暗闇を味方にして、1人ずつ倒していけばきっと助けられる! 単純な答えだ。

 一つ目のライトがすぐそこまで近づいてきた。

 オレはバールを強く握り、足のスネを狙って思いっ切り振り抜いた。


「ぐあぁっ! ってぇぇーーっ!!」


 大声を上げながら前のめりに両手をついて転ぶ犯人A。

 犯人Aが手に持っていたライトは地面を転がり、少し遠くからオレを照らす。

 他の犯人らには逆光で真っ黒な誰かがいるって事しか見えないだろう。

 転んだ犯人Aの手、腕、肩、腿めがけ、無慈悲にネイルガンのトリガーを引いた。


 ――タンッ! タンッ! タンッ! タンッ! タンッ! タンッ!


「あ゙あ゙あ゙ぁぁーっ!!」


 男の汚い叫び声が建物内に反響する。


「なんか持ってんぞっ!」

「このクソ野郎がっ!!」


 騒がしくなるのに乗じて、転がったライトを反対側に投げ飛ばし、また闇に潜んだ。

 次にオレに近かった犯人Bが、今オレが居た所に走り寄ってライトを向ける。

 が、そこに照らし出されたのは、血だらけで床に臥せっている犯人A。


「んだこりゃぁ!?」


 地面にはじわじわと血が滲んできているが、まだ生きているようだ。

 ようだ、というのもオレは既に犯人Bの背後に移動してその様子を伺っていたからだ。


「たっ、助けてくれぇぇーっ!」


 そう叫ぶ犯人Aに駆け寄りしゃがんだ犯人B。

 オレはすかさず背後から、バールを横っ面に叩き込んだ。

 潰れる感じの嫌な音が混ざったがどうでもいい。積まれた段ボールに突っ込む犯人B。

 崩れる段ボール音に紛れてオレはまた闇に消えた。


 外に出ていた犯人らが戻ってきて、二人やられたことを警戒し、出口は閉められてしまった。

 外にいるアルに、警察に通報するよう気付いてもらう方法は……。


 ――ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!


 察しのいいアルなら、きっとこの音の意味に気付いてくれると信じて、オレは倉庫の剥き出しになっている鉄骨をバールで思いっきり叩いた。

 その奇異な行動に犯人らは一瞬怯んだが、一斉にライトを向けられて逃げられなくなった。

 襲い掛かられ、殴られ、蹴られ。

 ボコボコにされたが、お返しに手当たり次第にネイルガンを打ち込んでやった。


「ははっ! ざまあみろ……っ! 畜生が……」

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Side Story があります! 目次「 Side Story 」の章に掲載。

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