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Rising Force - Genesis -  作者: J@
異界編

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83/124

0と1

 周囲に人がいない公園に移動して、オレの元の世界線にいざ()かん!

と、なったんだが……。


「ん、しばらく無理ダゾ? あれすごい沢山エネルギー使うし疲れるんダ」


 確かに、この世界に渡って来てからすぐに爆睡してたな。


「マジか、どうすれば回復するんだ?」

「とりあえずご飯タべて休まないとムリ! リン、ウナジュー食わせろー! お腹減っタゾ!」


 うん、分かる、分かるよイロハ! けどな……。


「オレ金持ってねぇじゃねぇかぁーっ!」


 そもそもアストルミナに行った時点で無一文だったし?

 言ってしまえば服装だってどこの民族衣装だよってぐらい異世界感半端ないし?

師匠はローブ羽織ってるし、イロハに至ってはケモミミに尻尾だ!

 百歩譲ってお金がどうにかなったとしても、お店に入れば「コスプレですか?」と言われる事必死だろう!

 こんな事なら暴力団の奴らからでも、現金だけ抜いてくれば良かったか?

 いやいや、流石にそれはオレでも躊躇(ためら)われる。


「なに? リン、金か? ふっふっふ、こんなこともあろうかと! 私がちゃんと用意しておいたぞ! ほらっ!」

「えっ! マジで!? やっぱ持つべきものは師匠かっ!」


 革袋から中身を取り出し、得意げに見せて来る師匠。


「って! これゼニだしーっ!」

「なっ! ダメなのか!? 全て白銀だぞ!? 軽く1億ゼニは越えてるんだぞ!?」

「んなっ! すっごっ! あ、いや確かに凄いよっ!? 確かに凄いんだけどぉーっ!」


 元の世界に帰還さえすればお金なんてどうにでもなる、ご飯も宿もどうにでもなる。

 でも、帰る為にはイロハにご飯食べさせて、ゆっくり休ませる必要がある。

 しかし、ご飯食べるにも宿を取るにもお金が必要。


「だぁーっ、ダメじゃーんっ! はっ、コレはアレか!? 野宿か!? 食料は調達しろってか!? ってか魔物いねーじゃーん!」


 思わず自分の頭を両手で抱える。


「なに!? この世界に魔物はいないのか!?」

「……いないよ? 野生動物くらいしかいない」


 いや、今問題そこじゃねぇーっ!

 どんな時でも自分の頭で考える癖を付けておくことだね。

 師匠の言った言葉が脳裏に浮かぶ。

 えっ、それの使い時って今!? 言葉の重みって何だっけ!? 軽くねっ!?


「はっ! いや待て! あるじゃないか禁断の手がっ!」


 頭を抱えた両手がワナワナと震え「禁断の手」これしかないと、オレの中のオレが囁いてくる。


「こうなったら、背に腹は代えられん!」

「ん、何か妙案が浮かんだのか? 私は何でもいいぞ、お前について行く以外勝手が分からんしな」

「アタイもご飯タべれれば何でもいいゾ!」


 公園の時計は20時半を過ぎた所。

 うなぎを買うにしてもヨークマルベーニは21時半まで! 時間がないっ!!

やるしかないっ!!



    ◇◇◇



    § ??視点 §


 晩飯も食べ終わり、今は風呂を沸かしている所。

 ちょっとのスキマ時間にリビングでホラー映画を見ていた、そんな木曜日の21時前。


 ――ピンポーン! ピンポーン!


 見ていた映画の内容も相まって、突然のチャイムに必要以上に驚く。


「うぉっ! えっ? こんな時間に誰だよ!」


 自慢ではないが、オレには友達が少ない。

 いや、少ないというのは誇張だ、ハッキリ言おう、オレには友達がいないっ!

 なのでこんな時間に訪問してくる(やから)といえば、夜遅くまで頑張って配達してくれるクロコネコ宅急便のお兄さんか、契約するまで居座る〇HKの人か新聞勧誘の人しか知らない。

 宗教関係だったら日中にしか来ないだろうし、いやホント誰?


 ――ピンポーン! ピンポーン!


 ああ、もうっ! こうなったらサッと行って、サッと帰ってもらうしかないっ!


「はい、はいっ! 今行きまーすっ!」


 玄関の照明を点け、カギを外してドアを開ける。


「はい、何ですかー? 今何時だとおもっ……」


 そこに立っていたのは、濃紺色のローブを羽織った銀髪銀目の美女。

 それと、こちらは灰銀色の髪の美少女で、耳……えっ耳!? ってか、尻尾付きだとっ!?

 左右にフサフサ揺れる尻尾に気を取られて、一瞬言葉を忘れてしまった。


「あっ、えーっと、あのー、ハロウィンにはまだ早いんじゃないかなー、と思うんですがー」


 と話しながら、後ろにもう一人居ることに気が付いた。

 黒髪でセミロング、斜め後ろを向いているので顔は見えない。


「すまない、ちょっと困った事になっていてな、力を貸してはもらえないだろうか、リン」


 銀髪の女性が話を切り出してきた。


「フシギー! リンのニオイがするんダゾー?」


 ケモミミの美少女もオレのニオイがーとか……ニオイ!?

 流石に風呂入る前だけど、そんなに臭くはないはず!


「と言うのも、こっちの世界に来たのはいいが、使えるお金を持っていなくてな。 致し方なく助けを乞いに赴いたという訳だ」

「えーっと、こっちの世界? お金? ……要はお金を貸して欲しいと、そういう事でしょうか」

「端的に言えばそういう事だ、話が早くて助かる!」


 銀髪美女がニコっと微笑む。

 と同時に全力でドアを閉めて鍵を掛けた。


「そう言うの間に合ってますんでーっ!」


 玄関の照明を消してリビングに戻る。


 ――ピンポーン! ピンポーン!


「んなっ! しつこいな!」


 テレビのボリュームを上げ「迷惑なんですが」とアピールする。


 ――ピンポーン! ピンポーン!


「……」


 ――ピンポーン! ピンポーン!


「おーい! リーン! 開けてもらえないだろうかー! リーン! おーいリーン!」

「リーン! お腹減っタゾー! ゴハーン! リーン! お腹へっター! リーン!」


 ――ドダダダダッ! パチッ! ガチャガチャ! バーンッ!


「ちょっとマジでなんなんですか近所迷惑なんで大声でオレの名前叫ぶの止めて貰っ……」


 あれ? 何でオレの名前知ってるんだ?


「なんで、名前、知って……」

「ああ、それはもちろん、元の世界のお前と知り合いだからな!」

「ダからなっ!」


 いや、元の世界とか、こっちの世界とか、オレと知り合いとか、ケモミミとか。


「全く意味が分からないんですけど! とにかく帰ってもら……」

「まあ、そう邪険にしなくてもいいんじゃないか、なぁ兄弟?」


 さっきまで後ろを向いていた黒髪の人が、振り返ってそう言った。

 あ、顔に傷、ってかイケメン、ってかどっかで見たことが……あ、オレだ……。


「はぁっ!? オレっ!? ちょ! ええっ!? オレぇぇーっ!? なん……ぁひゃっ……」


 あまりの意味の分からなさと驚きで、そこでオレは白目を剥いて気絶した。


 ボヤーっと意識が戻り始めると、香ばしい美味しそうな匂いが鼻を(くすぐ)った。


「リン! これウマイ! この、コノミ焼き!」

「おしいっ! お好み焼き、な」

「オコノミ焼きーっ!」

「私はっ、ズルズルっ! このっ、ズルズルっ! うどんが気に入ったぞ!」

「慌てなくていいから、喉に詰まらせない様にゆっくり食えよー」


 えーっと、これ、どういう状況?

 目が覚めるとオレはソファに寝かされてて、さっきの人たちがリビングでご飯食べてる。


 ご飯を作ってるのはオレで、ソファに寝てるのがオレ。

 いやいや、そうじゃない。

 えっと……ソファに寝てるのがオレで、ご飯を作ってるのが、オレ?


「って、なんでっ!?」


 思わずガバッと飛び起きてしまった。


「あ、起きター! おはよーリン」

「あ、おほようございま……じゃなくてーっ! え、なに? どういう事!? なんで勝手に家に上がってしかもご飯食べてんですか!? はぁっ!? えっ!? はぁぁっ!?」


 あ、このまま行くとまた白目剥きそう。


「まぁ落ち着け、こっちの世界のオレ。ほら、お前の分のうどんも作ったから、食べて落ち着け」


 と、オレの前に置かれるドンブリ。


「あ、はい、ありがとうございま……じゃなくてっ!」

「しっしっしっ! こっちのリンも面白い!」


 ケモミミ美少女が器用に箸使ってお好み焼き食べてるよ。

 ちょっと待て、一旦落ち着こうかオレ。

 確かに全く意味が分からないし、勝手に上がり込んで勝手に料理してご飯食べてるけど、少なくとも強盗とかではないようだし、殺されるとかでもないようだ。


「ん? こっちの世界のオレ……? ちょっと待って! 今、こっちの世界のオレって言ったか!?」


 今度は炒飯を作って大皿に持って来たオレ? が、コクンと(うなづ)く。


「え、って事はナニ? 別世界から来たオレって事?」

「おー、流石リンじゃないか! 中々に理解が早い! というかこっちの世界の人間は、状況理解力というか適応能力が高いな」


 折角の美女も、うどん(すす)りながら喋ると色々とアレだ、台無しになるやつだ。


「まあな、こっちではサブカルチャーっていって、異世界モノやタイムトラベル、そういった題材の読み物とか多いからな。そういった意味では、こういう特殊な状況を受け入れやすい土台はあるだろうな」

「え! いや、受け入れてなんかないぞ? 受け入れてないけど理解は出来るって話で! そもそもそれをどうやって信じろって言うんだよ! 普通に考えれば嘘って分かるよな!」


 炒飯を小皿によそってオレの前に置くオレ……うーん、ややこしい。


「まぁ、普通はそうなるよな。なら、まずはこれ喰ってからもう一度考えを話してみ?」


 うどんと炒飯を食べてみろと言われた、確かに美味しそうではある。


「……毒、とか入ってたりしないよな」


 そういうと、別の世界から来たオレは、小皿に炒飯をよそって食べて見せた。


「うん、旨いっ! って、どこの世界に自分を殺しに来る自分がいるんだよ。しかも周りくどい毒って無くね?」

「う、うん、まぁ、確かに。じゃあ……、いただきます」


 まずは、うどんの汁を飲んでみる。


「んっ!」


 次に、うどんをネギと一緒に口に運ぶ。


「んんんっ!」


 次に、恐る恐る炒飯を食べてみる。


「んなっ!」


 オレはレンゲを置き、こう言った。


「……オレだわ」


「やっぱりリンはリンだな、判断基準が料理っていうのは、冗談にしてもおかしい」

「「いや、うどんを(すす)りながらそんなこと言われる筋合いは……!?」」


思考回路が一緒のようで反応と言葉が被った。


「……オレだわ」


「しっしっしっ! リン! オコノミ焼き! おかわりっ!」

「「どっちのだよっ!」」


 うん、流石オレ、ツッコミも被る。


 元の世界から来たオレは、ここまでの経緯(いきさつ)を細かに説明してくれた。

 その中で呼び方が色々とややこしいので、元の世界のオレを「ゼロ」と呼ぶ事になった。

 基点の世界、原初の世界、オリジナルの世界という意味での「0(ゼロ)」だ。

 という流れから、オレの事は1つ目の分岐世界ということで「1(イチ)」と呼ばれる事になった。


「にしても、何でか厨二臭がするよな? イチ」

「いや、オレにその質問するってのは特大ブーメランだと思うんだが? ゼロ」

「いやいや、ゼロの次なら普通は『1(ワン)』じゃないか?」


 と銀髪美女のタラさんに言われた。


「『犬っぽくなるからそれは却下で』」


 ということで、ゼロがオレの事は「1(イチ)」にしようと決めた。

 でないと、~だろうワン! とか、語尾がムリゲーになるって理由だ。


 タラさんとイロハちゃんは疲れているみたいだったから、先に沸いたお風呂に入って貰っている。

 シャワーとかシャンプーリンス、ドライヤーの使い方は教えたし、着替えはオレの新品の下着とジャージを出した。

 その間、オレはゼロと話をする。


「そっかー、ゼロの世界で(れい)はそんな事件に巻き込まれたのか」

「ああ、イチの世界の(れい)はそんな事にならない様に、こっちの危ない芽は全部摘んだつもりだ」

「つもり、っていうのは微妙に含みのある表現だよなー、あ、もしかしてアレか? 因果法則とか因果律とか」

「流石イチ! ん? これって自分で自分を褒めてる事になんのか?」


 要は、分岐した世界で元の世界と同じような事件が起きない様に干渉しても、元の世界に戻ろうとする見えない力が働いて、違う事件や事故が起きて、結果的に(れい)は亡くなってしまうっていう事象。


「何がどう作用するかなんて、全くの未知だもんな。 ってかよくオレに会おうと思ったよな! タイムパラドックスとか心配になんなかった? もしくは何か確信があった、とか」

「ああ、イチの世界に渡って来る時に、次元の狭間みたいな空間通ったんだけど、まあ、そこで大丈夫っていう確信を得た感じだな」

「いや、スゲェ旅してきたんだな! こっちにはいつ頃までいる予定?」

「んー、イロハの能力が使える様になったら元の世界に戻ろうかなって思ってる。 多分、明日か明後日には」

「え、早くね? もっとゆっくりして行っていいのに」

「そうは行っても、イチ、明後日の土曜は(れい)の家に料理しに行かなきゃだろ」

「あっ、そうだった! ってか、因果律の話に戻るけど、そういう力がいつか働いた時はどうやってゼロに連絡とればいいんだ?」

「ソコだよなぁ」


 何かいい方法はないもんか考える。


「そんなものは、イチを覚醒させてしまえば、全ての杞憂が解決するんじゃないのか?」


 お風呂を上がって、ジャージを着たタラさんとイロハちゃんが戻って来た。


「あっ! 流石師匠っ! その手があったな!」

「ちょっと待って、覚醒って?」

「オレらが元の世界に帰った後に何が起きても大丈夫なように、イチもオレらと同じ様に能力(ちから)に目覚めて貰えばいいだろう? って話だ」

「それって、オレがゼロみたいな超能力者になるって事か?」

「そーいうこと! 全く同じ能力に覚醒するのかどうかは分からないけどな。 オレが覚醒した時とは状況が違うし」

「若干、怖さもあるな。まあ、勿論興味の方が強いけど」

「よし! なら決まりじゃないか? なっ師匠!」


 タラさんとイロハちゃんは、いつの間にか初めて見るテレビに夢中のようで、お笑い番組を見て爆笑している。


「ちょっ! ふひひひひっ! あっははははっ! ひぃーっひひひっ! 待って、腹が痛い! ひぃーっひっひひひ!」

「しーっしっしっし! あひゃひゃひゃひゃ! くっ、くるしいーっ! しーっしっしっし!」

「『あ、どうぞごゆっくりー』」

「そうだ! 冷蔵庫にアイスあるよ!」


 折角の初地球世界って事だから、スーパーカップのチョコミントとピノ、それと雪見だいふくだな。


「はい、好きなのどうぞー!」

「イチ! これなんダー? 食べていいのか?」

「むっ! また科学の粋だなっ! これは何だ」


 アイスクリームという物を教えてあげた。


「「うまぁーい!」」

「あ、一気に食べると……」

「「うくっ! 頭が!」」

「ま、実体験させた方が早いな! くっくっくー!」


 ゼロが悪い顔をして笑っている。


「で、ゼロ。さっきの話だけどさ、やるよ、その覚醒ってやつ」


≪お前ならそう言うと思ってたよ。あ、いや、そもそもオレか≫


「え! ちょ! 頭の中に直接!? これって、テレパシーってやつ!?」


≪そう、これで脳を共振させてあげると能力(ちから)に覚醒するんだ≫


「マジか! ヤバイな! 後でゼロはどんな事が出来るのか教えてくれ!」


≪ってか流石オレって感じだな、いつもならすぐ共振して意識失うんだが、中々に頑固だ≫


「そうなのか? んじゃそれまでアイスでも……」


 脳が揺さぶられるような、ゾワゾワっと撫でられるような感覚と共にパタっとソファに倒れ込んだ。

 遠くなって行く意識の中で、この選択をした事で人生が大きく変わるんだろうなと漠然と理解した。


 だけど、ゼロの元の世界のように、大切な誰かが害されてしまうのは嫌だ。

 オレに何が出来るのか、どんな力があるのか分からない。

 けど、そうだな…… もし得られるなら……

 決して諦めない力、負けない力、未来を切り開く力がいいな。

 欲張り過ぎか?

ご覧いただき、ありがとうございます。


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