表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rising Force - Genesis -  作者: J@
異界編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/124

未来の為の復讐

 あの事件の夜にいた奴らは、全員残さず捕まえた。


 上空から移動した先には、白と黒の混ざった噴煙が立ち昇っており、眼下には真っ赤に鈍い光を放ちながら流動する溶岩湖が見える。

 ここは、山形県と宮城県の境にある蔵王(ざおう)連峰。

 そのお釜と呼ばれる火口上空50m付近だ。


「本当なら、有毒ガスで息なんて出来ないんだが、今は影響がないようにしてるんだよ、特別にな」


 オレは眼下を指差しながら続ける。


「ほら、足元には真っ赤でキレイな溶岩が見えるだろう?」


 そう言われ、現状が理解出来ないまま顔面蒼白になりガタガタ震えている奴、既に白目を剝いて気絶している奴がいる中、キレ叫ぶ奴もいる。


「なな、な、なんっ! 何なんだっ! テメェ誰だっ! クッソがぁぁ!」

「おっ、おっ、俺らが何したっていうんだ! 報いってなんだよ! 俺らまだ何にもしてねーぞっ!」


 こいつらが元の世界でやった事は、オレの中で絶対に許すことのない、消えない地獄の業火なんだ。

 テンやショウゴ、晶や皆に救われ、一度は、過去を受け入れて前に進むとした。

 だがそれは、過去に戻れないという前提での話だ。

 オレは今、その過去に戻って来た!

 悲しい過去が繰り返されないよう、お前らみたいな悪党は、潰すっ!


「まぁ、言ってしまえばただの大量殺人鬼か、立場によってはヒーローか。 どっちにしろ、やる事に変わりはない……か」


 思考が口から洩れていたようで、聞こえた男共から悲鳴が上がる。


「こっ、こいつ! くっ、狂ってやがるっ! ひぃやぁぁーっ!」

「たっ、助け、助けてくれぇーっ! 誰かぁぁーっ!」


 お前らはあの時、そうやって助けを求めた(れい)を笑いながら殺したよな?

 なのに何故、今、お前らが助けられると思ってんだ?


「本当にイラつかせる……本当に頭の悪いクズ共だっ! さっき言ったよなぁ! これは、お前らが起こした事、そして起こす事への報いだって!」


 感情が高まり、怒りが爆発しそうになる。


「ふざけんなっ!! 意味わかんねぇぞ!! 理不尽すぎんだろゴルァ!!」


 それに続いて、他の奴らも非難と怒号を上げ始める。


「……ふざけてんのはどっちだ? 理不尽だなんて言うなと、さっき教えたはずだけどなぁ?」


 オレの雰囲気が変わったのを感じたのか、男共が身震いして怒号が一瞬静まる。


散弾(フレア)


 両手の指先が赤く光ると、男共の足元で強烈な爆発が起こる。

 運悪く足に爆発を喰らった奴は、膝から下を失い悲鳴を上げて気絶した。

 それを見た他の奴らが、更に悲鳴を上げ(うるさ)くなったが、片手を前に突き出し、指先を赤く光らせると一瞬で静かになった。

 イラつきと怒りで、このまま一気に潰しそうになったが、そこはなんとか抑えた。


「……まあいい。 そもそもこっからが本番だ」


 オレは、前に突き出していた手を降ろし、過去の復讐、いや、未来の為の復讐の幕を上げた。


「これから何が行われるか、大体の察しは付くだろ?」


 足元に見えている溶岩がゆっくりゆっくりと、さも餌が飛び込んでくるのを待っているかのように(うごめ)いている。


「そうだなー、既に白目剝いて気絶してるお前、えーっと、A君でいいか」


 そういうとA君はスーッと空中を滑るように少し前に出された。


「この世から消えるまでのその刹那の時間、絶望を味わいながら、恐怖して死んでいってくれ」


 オレは右手を上に上げ、パチンッと指を鳴らした。

 同時に空中での拘束が解かれたA君は溶岩湖に向かって自由落下し、ボシュッ!! という音と共に僅かな黒煙を上げた。


「「うあ゙あ゙ああぁぁぁぁーっ!」」


 その様を見せられた男共は絶叫し、なりふり構わず命乞いや怒声を上げる。


「次、B君!」


 指差された奴は、恐怖で既に事切れた様だ。


「おい……もう少し頑張って意識保てよ!」


 オレは手当たり次第、次々に溶岩湖へ落としていく。


 ――ボボボシュッ! ボシュボボボボシュッ!


 その度に黒煙が上がり、そして空に昇っていく。

 最後の一人は浅葱色のスーツにメガネの男。

 あの夜で最も憎むべき相手。


「さあ、お前で最後だ。 何か言いたい事、言い残す事はあるか?」


 本当は今すぐにでも(ひね)り潰したい。

 体中の血液を搾り取って、内臓をぶちまけて、手足一本ずつ()いで、最後に首を引っこ抜いてやりたい。

 メガネ君はカラカラに乾いた喉で、最後の言葉を毒づく。


「……くたばれ、クソがっ!」


 それを聞いたオレは、なんだかものすごく滑稽に思えた、何故か笑ったんだ。


「フッ、ハハッ、ハハハハッ! アーッハッハッハッハッ!」


 それが何の感情なのかは分からなかった。


「ありがとう!! おかげで心置きなく復讐が出来るっ!! では、さようなら」


 拘束を解くと、糸が切れた蜘蛛のように落下していく。

 見えない糸を掴もうとでもするかのように、手足をワチャワチャ動かしながら。


「お前に蜘蛛の糸はねーんだよ」


 ――ポヒュッ!


 復讐の第一幕が下りるファンファーレにしては、響きもしない、やけに乾いた音だった。



    ◇◇◇



 蔵王連峰の火口から離れ、今は田代峠に向かっている。


「師匠、さっきのを見て、オレに幻滅したか?」


 オレは、自分自身でやっているこの復讐に、多少なりとも気持ち悪さを感じている。

 だけど、ケジメ的な(こだわ)りだったり、区切り的な意味だったり、悪は許さないと言ったあの時の自分の気持ちをうやむやにしたくなくて、嘘にしたくなくて、背を向けたくなくて、半ば意地になって実行しているのも本当だ。

 オレ一人で行動し、この非情で理不尽な復讐を行うのならまだよかったのかもしれない。

 その一部始終を、師匠は見て、聞いていた。

 だからオレは不安になったんだ、師匠がオレという存在を気持ち悪いものだと思っただろうと。

 オレの黒い部分、嫌な部分を見せてしまったのだから。


「幻滅? 何故だ? お前は(かたき)討ちをしただけだろう? 私の常識からすれば当たり前の行動だ。 むしろ、行動しない方が気持ち悪いぞ?」


 オレは辛辣な言葉が来ると構えていただけに、肩透かしを喰らった。


「へっ? そ、そういうもんなのか?」

「ああ、そういうもんだよ。 アストルミナだったら、(かたき)討ちや復讐は法的に認められているからな、言ってしまえばさっきお前の取った手段は、ヌルすぎる・短すぎる・優しすぎる、の三拍子だ」

「いや、三拍子って! お笑いじゃねーよっ!」


 思わず突っ込んでしまった。


「お笑いがなんなのか分からないから、後でゆっくり教えてくれ。 あ、いや、そうじゃなくてだな、拷問なしに簡単に殺してしまっては、相手が苦しむ暇がないだろう? 相手に苦しみと絶望を与えてこその復讐だ」


 なんか、すごくそれっぽく説明された。


「あ、はい、なんか、ごめんなさい?」

「分かればいい。 それに……お前はアルと似ていて、優しすぎるんだ」


 後半が風音のせいでよく聞き取れなかった。


「だがまあ、イロハが寝ていてくれてよかったよ。 もし起きていたら面倒な事になっていた」


 師匠も流石にイロハには見せられないと思って、心配してくれていた事になんかホッとした。


「だな、流石に小さい子に見せていいもんじゃなかった、配慮に欠けていてゴメン」


 本当は、ありがとうと言いたかったんだけど、何故かゴメンになった。


「違う、そうじゃない」


 師匠は、今オレが言った事を否定する。


「違うって? どういう事?」

「あー……イロハは拷問が上手すぎる上に、大好きなんだ」

「えーっと、はいっ?」

「イロハは、魔狼(まろう)族って事は知ってるな? 魔狼といえば狩りの本能は狼と一緒でな、獲物を追い詰めて甚振(いたぶ)っては逃がして、また追い詰めては甚振(いたぶ)って逃がして、というのが遊びの一環で、これが非常に大好きな上に上手くてな……。 最終的には、拷問を受けている奴から頼むから殺してくれと頼みこんでくる始末だ。 あの時も大変だった……」


 師匠が遠い目をしながら、死んだ表情で過去を思い出しているのが分かる。

 オレが想像していたのと違う、斜め上の回答だった。


「おっ、おう……」


 なんか、オレが純粋に考えていた部分、返してもらって、いいですか!?

 ハッと我に返った師匠が慌てて話す。


「リン! 今どこかに向かって飛んでいるという事は、まだ復讐先があるという事だな!?」

「お、おう、出来れば後2つ行きたいけど」

「私も手伝うから、イロハが起きる前に何とか終わらせたい! ダメか?」


 いや、どんだけイロハの拷問ってヤバイんだよ。

 師匠がこんだけ焦るって事は、相当面倒な事になるって思った方がいいな。


「わ、分かった! 手伝ってくれ師匠!」


 コクンと頷く師匠を見ると「あんなことは二度と御免だ」的な表情になっていた。

 どんだけだよっ!? イロハさん、なんて恐ろしい子っ!!



    ◇◇◇



「この真下に、地下30階以上ある悪の拠点が展開されてる」


 オレ達は田代峠にあるBUGS(バグス)の拠点上空にいる。


「今から、オレが入り口部分を破壊して大量に水をぶち込むから、師匠には雷系魔法で中にいるやつらを動けなくして欲しい」

「了解した! というかこの世界に来てからまだ魔法を使っていないが、使えるのか? 大気中に魔素が殆ど感じられないが……なら」


 師匠はボソっと詠唱し、胸の前で(てのひら)を上に向ける。


「力を貸してくれ、Violetia(ヴィオレティア)


 (てのひら)の上に、オレの紫電より濃い紫色の光が現れ、それは蝶の形を取って師匠の(てのひら)に止まった。


「久しいな、長い事呼んであげてなくて、すまなかった」


 紫色の蝶は、師匠の言葉に答えるように、優しく羽根を揺らめかせた。


「師匠、それは?」

「ああ、この子は私が契約している雷の精霊だ。 この世界は魔素が殆ど無いようだからな、Violetia(ヴィオレティア)を呼んで、直接触れ合った状態ならば魔素も必要ない。 詠唱と私の魔力だけで魔法の行使が可能だろう」


 数年あっちの世界で一緒に暮らしていたけど、師匠の契約精霊は初めて見た。


「凄い、キレイだな! いい色だ」


 Violetia(ヴィオレティア)は、オレの言葉にも答えるように羽根を動かす。


「ありがとう、うれしい、だと。 良かったなリン」

「えっ! マジで!? いや、オレも嬉しいよありがとう!」


 蝶に向かってお礼を言うオレ。

 そしてVioletia(ヴィオレティア)はパタパタと飛び上がり、師匠の肩に止まる。


「私の方は準備OKだ」

「了解! なら、流し込む水を調達する!」


 オレは右手を上に上げ念を集中する。

 遠くから夜空を駆けるように大量の水が集まり出す。


「ちょっと鳴子(なるこ)ダムと月山(がっさん)ダムから水を借りますよっと!」


 あり得ない程大量の水が上空に待機し、月明かりを遮る。


「お次は」


 左手を拠点入り口の方に向けて、フタを開けるように拠点上部を捻じり開けた。

 激しい土砂崩れのような、山が動いた様な音を立て、頭蓋骨の上部がパカっと開きでもしたかのように、中から拠点が現れ、漏れ出す照明と共に夜空に向かってけたたましくサイレンが鳴り響く。


「いっけぇぇーーっ!!」


 オレは右手を振り下ろし、上空に待機させていた水を的確に中に流し込む。

 子供の頃、水でアリの巣を攻めたように、凄まじい勢いで階段とエレベーター部分に流し込み水責めにする。アレを思い出した。

 電気系統もショートしたようで火花を上げる。

 オレが思っていた以上に地下が深かったのか、満ちるまでに数分を要した。

 まあ、中に出来た空気層でまだ息をしている奴らもいるだろうが、諦めろ。


「師匠! 頼む!」

「ああ、いくぞVioletia(ヴィオレティア)! 『破滅(Lightning)(Of)雷光(Cataclysm)』!!!!」


 師匠の肩に止まったVioletia(ヴィオレティア)が、チリチリと帯電し激しく発光する。

 天空からと言った方がしっくりくる程に、天から紫色の稲妻が何本も何本も轟音と共に水没した地下拠点に降り注ぎ、さらにその威力で地形も形を変えた。

 轟音と雷光は反響し、それこそ遠くまで響き渡る。


「ヤべぇ!! オレ、師匠の本気、初めて見たわ!!」

「はっはっはーっ! どうだ! 私もやるだろう!?」

「凄すぎだろ!? オレの紫電なんて、まだまだ師匠とVioletia(ヴィオレティア)さんの足元にも及びません、はい」


 でも本当に凄いのは、この轟音の中でも寝続けるイロハだけどな。


「最後の仕上げに」


 オレは水没している水ギリギリまで降りて、片手を水に突っ込む。

 水中で高密度の火球を練り上げ、一気に赤から黄色へ、黄色から蒼炎へと変化させる。

 晶のベールがない状態で、これ以上は手が骨まで溶けそうだ。


「お前らにはこういうのがお似合いだ! 永久に地下に潜ってろっ! 超新星爆発(スーパーノヴァ)!」


 放つと同時にオレ達は上空に退避した。

 撃ち出された火球は下層まで一気に到達し、急激に沸騰させられた水は内部で大規模な水蒸気爆発を起こした。大気を揺るがし轟く爆発音を上げたうえに、辺りはかなりの震度を伴う地震になってしまったようだ。内部から上空に吹き上げられた水蒸気が急激に冷え、辺りに雨となって降り注ぐ。


「フッ、バカ弟子もなかなかやるじゃないか!」

「いや、オレなんて、師匠に比べたらまだまだだよ、ホントに」


 お世辞じゃなく、さっきの雷撃はそれだけ凄かった。


「さぁ、次に行くぞ!」


 オレより師匠の方が張り切っているように見えるんだけど!?


「イロハが起きる前に、だな」

「そういう事だ!」


 最後は、以前に壊滅させた暴力団事務所だ。

 ぶっちゃけ一番簡単だ。

 屋上に降りたオレ達だけど、流石にさっきと違って街中でド派手にやらかす訳にも行かないって事で、オレが単独で中に入って終わらせて来る事になった。


「んじゃ、ササっと片づけてくる、すぐ戻る」


 屋上のドアは相変わらずカギが掛かっていない。


「いや、流石に不用心すぎだろ?」


 そう言いながら超高速移動で建物内をくまなく探し周る。

 構成員を発見しては散弾(フレア)を叩きつけ、ほぼ銃で滅多撃ちにされた状態になっていく。

 ド派手にやらかさないようにってオレ単独で来たのに、ド派手に音を出しまくってしまった。

 麻薬云々に使われていた地下はそのままにしておいて、扉だけは警察が来た時に分かりやすく開け放っておいた。

 高速で屋上まで戻り、これで全て終わった事を師匠に告げる。


「師匠、お待たせ! 終わったよ、全部」

「うん、そうか。 心なしか表情も少しスッとしたようだな」


 そう言うと師匠はオレを抱きしめ


「今まで頑張って来たんだな、お疲れ様、リン」


 そう言ってオレの後ろ頭をポンと叩いた。

 オレはちょっと照れくさそうに、ヘッて笑いながら


「ありがとう、師匠のおかげだよ」


 とお礼を伝えた。


「よしっ! ならこれで気兼ねなく先に進めるわけだなっ! リン! 約束の科学の粋が集まった大都会と、お笑いというものを私に見せろっ! 後、アレだ『本物のウナジュー』だ!」


 さぁ! と迫る師匠。

 なんか、うん……。 さっきのオレの純粋な部分、返してもらって、いいですか!?


「んー……! フワァーっ! ウナジューって聞こえタっ! おはよう、リン、タラ」


 それを見てオレと師匠は噴き出して笑った。


「プッ! プハハハハッ!!」


 空には月と星が見えるような夜だけど、色々な意味を込めて返事をする。


「うん、おはようイロハ!」

ご覧いただき、ありがとうございます。


『 面白かった 』、『 続きが気になる 』と思った方は

「 ブックマーク登録 」や「 評価 」して下さると励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ