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Rising Force - Genesis -  作者: J@
異界編

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新たな力

 師匠に世話になってから、一年が過ぎた。

 身体の方もとっくに全回復し、むしら以前よりも調子がいい気さえする。

 ここ最近のルーティンと言えば、朝にイロハと狩りに出て身体を動かしながらその日の食材を調達すること。

 そして朝食を作って皆で食べること。

 それが終われば師匠の研究を手伝ったり、お互いの訓練をしたりと中々に忙しい毎日を送っている。

 もちろん、地球に帰る手掛かりを探しつつだ。


「イロハ! 木の上にホワイトスネイクがいるぞっ!」

「アォアォン!」


 ダッシュからのジャンプで木から木へ飛び移り、ホワイトスネイクの首元を一噛みで仕留める。


「よーし! よくやった上手だぞーっ、ヨシヨシ! 帰って朝飯にするかっ!」


 オレはイロハをめっちゃ褒めて撫でまわすのが大好きだ、うん、ワンコは可愛い!

 今朝も大量の食材をGETした。


「師匠、ただいまー! 今、朝飯作るよ」

「アォン!」


 オレがこの世界に落ちてきたその日の夜に、晩飯を食べながら色々と話をした。

 師匠の名前は『タラ』と言うそうだ、いや、本当の名前は『タラ・ラ・フル』。

『ラ・フル』王国第十三代国王の第一皇子『リョウ・ラ・フル』と、地球人の母『ソラ』との間に生まれた王位継承権第一位の王女らしい、とはいえ()王女だそうだ。

 オレと同じ様にこっちの世界に落ちてきた地球人との混血ってことで、酷い目に遭って国を捨て出てきたらしい。


 何でも白耳族と言う種族らしく、寿命がめっぽう長いとか。

 タラは20代前半だとばかり思っていたが、なんと今年で49歳!

 そしてこの世界は、剣と魔法のファンタジーなワールドだった!

 タラはかなりの魔法の使い手だったらしく、引退する前はSランク冒険者だったとか。

 仲間と共に低ランクから徐々に成り上がり、十五年程前に災害級のモンスター「魔物の王」で所謂「魔王」って奴を打ち倒してSランクになったらしい。

 でもその際にパーティメンバーでタラの大事な人が亡くなってしまい、それをきっかけに冒険者は引退。今は引き籠って様々な研究をしている。

 なのでオレは尊敬を込めてタラを「師匠」と呼ぶ事にした。

 それと師匠の大事な人の名前は「アルフォンス」といって地球人。

 しかも日本人だったらしい。

 15年前に亡くなっているって事だから、オレの知ってるアルじゃないよね?

 いや、まさかそんな偶然、あるわけないよね?


 砂糖、酒、醤油を使って甘タレを作り、下処理したホワイトスネイクの白焼きにそれを塗って焼く。

 非常に有難い事にこの世界にも米があるので、今朝の朝食は豪華に「うな重もどき」である。

 タレの焼ける香ばしい匂いが漂うと、師匠が研究部屋から出てきた。


「ものすごくお腹が減る匂いがするな! お前は本当に料理が上手くて助かるよ」

「こっちの世界にも米、醤油、味噌があるんだから驚きだったよ」

「大方、昔こっちに落ちてきた日本人がいたんだろうよ」


 オレと師匠は今、異なる世界を渡る方法を調べている。

 オレがこっちに来たきっかけは、超高出力エネルギーの衝突により次元の裂け目が出来たパターンだが、昔の日本でそんなエネルギーの衝突なんて作り出せないだろうから、こっちに落ちてきた人達ってどうやって来たんだ? って疑問から研究というか調べては調査してを繰り返している。


「それじゃ、頂きます!」


 日本風の礼儀を師匠も気に入って、手を合わせてからもちろん箸を器用に使って食べている。

 もちろんイロハにも同じように「うな重もどき」を作ってある。

 地球の犬と違って、何食っても大丈夫なんだそうだ。


「んー! これは美味いなっ!」

「まあ、見様見真似の『もどき』だけど、いつか日本に行けたら本物食べに行こう! 師匠」

「ああ、勿論お前の奢りでな! その時が楽しみだ」

「あはははっ、りょーかい!」


 そして食べながら色々な話をする。

 もちろん次元の裂け目(長いので「ゲート」と呼ぶことになった)の話、魔法理論の話、オレの超能力の話など様々な事を考察と仮説を交え深堀りしていく。


「つまりオレは魔力を持っていないから魔法が使えない。なら超能力って何なんだ? って話だよな」

「ああ、だがこれはどう説明する? ファイアボール」


 師匠の掌の上に火球が現れる。


「師匠の魔法は、魔力を消費して大きさとか威力を指定。んで現象を起こしてるんだよな?」


 オレも掌の上で師匠と同じような火球を作る。


「お前のそれも、大きさと威力を指定して現象を起こしているよな? 違いはどこだ?」


 過程は違えど結果は同じ。

 という事は、魔法で出来る事は超能力でも再現が可能という事になる。

 だが、超能力で出来ることを魔法で全て再現出来るかというと、それは否になる。

 何故なら魔法には属性の適性があるからだ。


「師匠、オレの元の世界では魔法っていう概念は存在しない、だけど科学っていうものがあるんだ。 何がどうなって事象を起こしているのか、事細かに理論で証明し再現する学問なんだけど、多分、物事の仕組みを知っているか知らないかの違いでしかないんじゃないのかなって思ったんだけど、どうだろう?」

「ほう、カガク? それはどういうものなんだ?」


 魔法と科学の違い、それは魔法で火球を作る時は、呪文と魔力を精霊に捧げ、精霊が現象を起こしてくれるもので、科学で火を起こしたり加熱したりする時は、原子・分子・電子の加速と摩擦により現象が起こるものだという事を図解で説明した。


「これは、実に面白くて興味深いな! なら、この原子や分子、電子と言ったものを加速ではなく減速して動きを遅くするとどういう現象が起きるんだ?」

「師匠の理解力の速さにビックリだけど、減速すると水が出来たり、さらに遅くすると氷になる」

「なら雷系の魔法はどうやれば再現できる? 生前、アルが得意としていた魔法だったが」

「雷、オレのいた世界では総称して「電気」って言ってたけど、それは電子を動かすと発生するもので、それが集合したものが「雷」になるって感じだ」

「という事は、つまり魔法属性に適性がなくとも、その理解で物質に干渉すれば使えるようになるという事か……これは、アストルミナの常識がひっくり返るぞ」

「いやー、というか今のオレの説明で理解しちゃう師匠が異常なんだと思うけど」

「おまっ! 誰が異常者だとーっ!」


 そんな話をしながら朝飯を食べ終わったが、最後に師匠はこんな疑問も投げた。


「なら、空間属性の魔法はどういう原理なんだ?」

「空間属性??」


 モンスターのシャドウウルフやシャドウナイトが使うらしいのだが、影に入り別の地点の影から瞬時に出たり、影の中に身を潜めたりする。

三次元ではない別の次元に干渉するのが空間魔法というものらしい。


「ただ、今まで誰一人として人間でそれを使えた者がいないんだがな」

「師匠……それってもしかしたら、もしかするのか?」

「ああ、私はその空間魔法こそが、アストルミナの世界に地球人が稀に迷い込む原因なのではないかと思っている」



    ◇◇◇



 それから4年の年月が流れ、オレ達はノクターナ国にある地下墓地ダンジョンに来ていた。


≪師匠! シャドウナイトを追い込んだ!≫

≪よし、何がどうなるかわからんが、お前なら何とでも対処可能だろう! それに実験に失敗はつきものだしな!≫

≪ひどっ! でもこれを体験してみない事には先に進めないし、今回の目的だし、根性決めてやるしかないだろっ!≫

≪リン! アタイも一緒に行くっ!≫

≪なっ! マジで? なら、絶対に離れるんじゃねーぞ!≫

≪わかっタ!≫


 イロハはオレの背中に飛びつき、ワンコから人型にチェンジする。

 何がどうなっているのかというと、師匠は自分が超能力者になる方法はないのか? と言ってきた事で、オレは忘れていた思念干渉で覚醒させられることを思い出した。

 結果、師匠は能力(ちから)に覚醒し、時間に干渉する力と目視範囲へ瞬間移動ワープ出来る力、思念伝達の力を獲得した。

 しかもオレの手違いで、その場にいたイロハも思念干渉を受けてしまい、結果、覚醒してしまったのだ。

 イロハが獲得した能力(ちから)は、身体強化と思念伝達、そして状態異常無効と超回復。

 そしてなんとイロハはワンコではなく「魔狼族(まろうぞく)」という種族だったらしく、魔王を倒した際の呪いでワンコにされていたのだそうだ。

 状態異常無効を獲得したおかげで呪いは無効となり人型を取り戻したのだが、まさかのケモミミ美少女でした。

 ピンと立った狼の耳とフッサフサの尻尾が付いている獣人で、任意に人型と獣型に形態を変えられるらしい。

 オレ、毎日風呂入る時ずっとイロハと一緒に入ってたんだけど……しかも寝る時も一緒だったんですけど。……いや、もちろんワンコの姿でね。

 どおりで師匠が面白げにそれを見ているなーとは思ってた、早く教えてくれよっ!

 そして今はオレの背中に張り付いたイロハと共に、シャドウナイトが影渡りを使う時に便乗して影の中に入ったらどうなるか? の実験をする所だ。


≪今だ!≫


 シャドウナイトと共に影に飛び込もうとしたら、想定よりも影に出入りする速度が速くて一回目は地面に激突する羽目になって失敗した。


「痛ってぇーっ!」

「しっしっし、リンがドジっタゾっ!」


≪もう一度だ! 今度は影渡りの瞬間に奴の時間速度を遅らせる!≫

≪了解、師匠! よろしく頼むっ!≫


「イロハっ!」

「わかっタっ!」


 再度オレの背中に張り付きシャドウナイトに迫る。


≪行くぞ! ディレイ(遅延)!≫


 シャドウナイトの足元手前に濃い黒の穴が展開され、それに飛びこもうとシャドウナイトが跳ねる、が、遅延効果によりその動作速度は止まっているかの如く遅くなった。

 その瞬間を狙ってオレたちは黒の穴に飛び込む。

 何とも言えないゾワっと全身を何かが撫でていく感覚がした。


 タラはリンとイロハが黒の穴に全身が消えるのを確認し、周囲のどこかから直ぐに出てくるものだと見渡すが、その気配は全くない。


「シャドウナイトが影渡りをするのと、生身の者が渡るのでは違う結果になるのか?」


 20分程経過したがまだリンたちが戻って来ない。

 次々に増えるモンスターに回避が苦しくなり始め、タラは魔法でモンスターを一掃する。


「まさか、お前たちまで私を置いて居なくなってしまうんじゃないだろうな」


 一時間待っても、二時間待っても帰ってこない。

 タラは不安を抑え込みながら、あと一時間待って戻って来なければ引き上げようと決断する。


「……とうとう私も一人になってしまったのか」


 そう呟いてこの場を立ち去ろうと思った時


 ――ブォン……


 空間が振動するような低周波が聞こえた。

 天井に黒い穴が展開され、そこからリンとイロハが出て来た。


「よっしゃー! 出れたっ!」

「でれターっ!」


 タラは思わず二人に駆け寄り思いっ切り抱き締めた。


「馬鹿者ーっ! もう帰って来ないかと思ったじゃないかっ! 私はまた取り残されたのかと、一人になってしまったのかと……」


 タラは二人を抱きしめながら顔を下に向け、少し身体を震わせる。


「あ、あの、師匠? えっと、ゴメン、3分くらい中で迷ってたんだけど、やっと出口見つけて出てきました、遅くなってゴメン」

「おそくなっテ、ごめんタラ」


 プルプル震えていた顔を上げたかと思ったら、ビシっ! バシっ! と頭にチョップをお見舞いされた。


「私を一人にした罰だっ!」

「いやオレ達も入ったらすぐ出れるもんだと思ってたら、中の空間が歪んでて方向分からなくなって、暗い中にたくさんの光みたいなのが見えて、それを覗くと色んな場所が映っててさ!」


 何次元なのか分からない流動し続ける空間とでも言ったらいいのか。

 オレ達はその中から正しい出口を探すのに時間が掛かった事を説明した。


「そういえば、さっき3分と言ったな?」

「あ、うん、そのくらいの時間だった」

「そのくらいダっタ!」

「うーん……どういう事だ? 実際、お前たちが中に入ってから出てくるまで3時間は経っているぞ?」

「「えっ?」」


 とりあえずオレ達はダンジョンを出て、師匠の家に飛んで帰って来てから何が起こったのかを考察し、あーでもない、こーでもないと話し合った結果


「師匠のディレイ(遅延)で影渡りの空間に干渉したから、三時間後の未来に飛んだって解釈が一番しっくり来るんじゃないか?」

「空間の中と外で時間速度に違いが出た結果、お前たちの中では3分しか経過していなかったが、外では3時間経過していたということか。実質的に影渡りで3時間後の未来にジャンプしたと言えるな」

「あー、なるほど! コールドスリープして目が覚めたらそこは何百年も経過した未来だった、みたいなもんか」

「コールドス……? よく分からんが、ディレイ(遅延)で未来に飛んだのなら、逆にヘイスト(性急)で干渉したら、過去に飛ぶ理屈になるぞ?」

「なっ! 過去に戻れる……だと?」


 オレの頭の中で、過去に戻れば(れい)を助ける事が出来るんじゃないか? 書き変えられるんじゃないか? という現代地球人であればタブーであろう考えが浮かぶ。


「師匠! これはまた実験する必要があるんじゃないか!?」

「難しい事はわかんないけど、多分いけるゾ」


 イロハがオレの隣でイスに座って肉を食べながら言う。


「それはどういう意味だ? イロハ」


 師匠が興味津々で聞くと、イロハからトンデモ発言が飛び出た。


「んっ、リンとあの影に入った時、あの空間に入るやり方おぼえタ!」


 得意げな顔で豪快に肉を頬張るイロハは、空間干渉の能力(ちから)を獲得していたらしい。


「「なにぃーっ!?」」


 オレの中で記憶に眠った感情がドクンッと跳ね上がり、気持ちと身体が熱くなっていくのを感じた。

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