報告会
時間はあの激闘の夜、俺が目覚めて、リンちゃんが消失した時まで少し遡る。
「……アル君だ」
俺の顔を見て呟く女性。
その顔をよく見ると、懐かしい事に学校のクラスメイトだった。
「えっ! 天南!?」
天南と同じ衣装を着た見知らぬ人たちが皆驚いた。
「あれ? もしかして三年のショウゴ先輩!? えっ! 何で!?」
「ん。俺を知っているのか? まあ同じ学校だし、そういう事もあるか」
全部リンちゃんの元に集まった仲間だって事を説明してくれた。
学校では「ショウゴ先輩は怖い人だから近づかない様に」ってのが暗黙のルールだった。
何だよ! すげーいい人じゃん! 流石リンちゃん見る目あるわー。
「えっと、本栖 有です。天南とショウゴ先輩以外の皆さん、始めましてこんにちは。みんなにはアルフォンスって呼ばれてるんでアルでよろしく! ん? こんばんはかな? ってか、今って何年の何月何日なの? んでココってドコ? それとめちゃくちゃ不審人物を見る目で見るのやめてくれるっ!?」
「目覚めたばっかりだってのに、えらく元気な不審者っすねー?」
「新手のオレオレ詐欺なの!」
「テン! ホントにコイツがさっきまで大人しく寝てたアルなんだっちゃ?」
「運んだ時の色白金髪はどこに行ったんだし?」
「別人……という感じでもなさそうですわよね?」
好き勝手言われ放題である。
「……ふぅ。ごめん、やっと落ち着いてきたわ。で、アル君。起きたばっかりで身体の方は大丈夫なの? さっきもリン助けるために戦闘に入ってたし」
「あー、やっぱりさっきのはリンちゃんかーっ! もうちょっと早く気が付ければ助けられたんだけど。ゴメンっ! 間に合わなかった! ……でもあの次元の裂け目? 多分こっちで被害が大きくなんない様にってだと思うけど、リンちゃん自分で閉じたぞ?」
「「はぁっ!?」」
「えっ! 自分で!? 次元の裂け目って何!? ブラックホールじゃないの!?」
「んー? ん、そうだね! 次元の裂け目っていうか次元の穴かなー? ま、リンちゃんの事だから少なからず何か考えがあってやったんだと思うし。必ずどっかで生きてるし、必ず帰ってくるって。リンちゃんの事だから大抵の事は大丈夫だろ!」
俺を信じろとばかりに、これ見よがしにサムズアップで無害アピールしてみた。
「晶と同じ事言ってるにゃ」
「わ、私と同じ事言ってますね。それと次元の裂け目について詳しく説明して欲しいです!」
「いいけど、ちょーっと話が長くなりそうだから後でじっくりって事でもいいかな? まあ、多分焦る事は一切ないから大丈夫! あっ、それと、最後に誰かリンちゃんの名前叫びながら飛び込んで行った様に見えたけど?」
俺の目には、とても必死に、自分の命を擲ってでも、って感じに見えた。
声は女性だったよな。リンちゃんの彼女? ……えっ? 絹路さん?
「あれ? もしかして飛び込んで行ったのって、絹路さん?」
あれ? 俺のこっちでの最後の記憶ってどんなだった? 確か絹路を助けに行ってー……。
「アル君。詳しくは後でちゃんと話すけど、絹路さんは、リンとアル君が助けに行ったあの夜に殺されたわ。そしてさっきリンを追いかけて行ったのは、インテリア科の夜乃 蝶羽よ」
ヨルノ? よるの……ん!?
「はぁっ!? 金髪ツインテギャルのアゲハちゃん!? リンちゃんと真逆じゃね!? いやそこじゃねーよ! ちょっと待って、え? 絹路さん……殺された? 俺たち……失敗した?」
「失敗かどうか、あたしには分からない。けど、そのおかげで今があるのは確かよ」
「あー、本栖君、俺は岩上 拳って言う。ロックって呼んでくれ。これでも元刑事でな。君たちのその現場にいち早く駆けつけた者だ。君だろ? 警察に通報してくれたのは。昨日の事の様に覚えてるよ。絹路君の事は残念だったが、さっちゃんの言った通り、そのおかげで今があるってのは本当だ」
何が何やらサッパリだ。物事が動き過ぎて……って、あれ? 俺……今まで何してたっけ?
確か……あっちの世界で仲間と長い事冒険してたよな……。うん、大丈夫覚えてる。
何かすげー強い奴倒して相打ちになって……そっから記憶があやふやってか覚えてないな。
「とにかく、色々あったって事なんですね! 難しい事は後で教えてもらいます。天南に」
「え! あたし!? あたし説明下手なんですけど!?」
「いや、クラスメイトだからそういうの知ってるけど! 顔なじみ天南しかいねーし!」
「ちょ! 知ってるって何よ! 誰が説下手ですってーっ!?」
「いや、今自分で言ったんじゃーん!」
こりゃまた随分とややこしい感じじゃん? リンちゃん早く戻ってきてー!
後で教えてもらうにしても、今の俺の立ち位置ってどうなってんの? 家帰れるかなぁ。
「というかアルさん。マスターと違って、ちょっと楽観的過ぎませんこと?」
「そうなの! 若干アホの子の雰囲気があるの!」
「それにしても本栖君、六か月も意識不明で寝たきりだったのに、いきなりそんなに動いて本当に問題ないのか? どこか具合が悪いとか」
えっと、ロックさんだっけか。
「まあ、身体は絶好調って感じでもないけど、特にこれと言って問題ある感じでも……え?
ええーっ! 俺六か月も意識不明だったのぉ!? え……ちょっと待って……。ってことはつまり……えーっと……」
あっちの世界に行って、みんなとパーティー組んで、冒険して。んで、記憶の最後の戦いまでだからー……約六年だよな。
「うん、なるほどっ! こっちの一か月はあっちの一年ってことだな!」
「えっとっすね……まずはこの惨状片づけたら……アルさんは病院に逆戻りっすね」
「ちょーっ! 俺、至って健康なんですけどぉーっ!?」
「やっぱりアホの子なの!」
「頭が残念な子だっちゃにゃー」
「俺の扱いヒドくないっ!?」
ここでこうしていても埒が明かないだろうと言う事で、ショウゴ先輩の妹、晶が別の場所にいた仲間のキラさんに連絡を取り、まずは今回の事態収拾を行うことになった。
その間、晶の方からこれまで何があったのか、俺がここに至るまでを分かりやすく説明してくれた。この子、まだ中学生だってのにめちゃくちゃ凄い。
そして、警察、自衛隊、P‐SACOがBUGS拠点内に入り、生存者は逮捕。
原型を留めている死亡者は外へと運び出された。
その後、周囲一帯は立ち入り禁止となり、主に警察と自衛隊合同での拠点内部の調べが長期間続く事となる。
飛行能力を失ったメンバーは高速移動、高速機動でスキー場頂上に移動し、メンバー全員と合流。
後の事は国家権力に任せて良いという総理大臣と防衛大臣のお墨付きを得たので、ジュンタに大型バスを創造してもらって、ロックさんが運転。みんなを家に送り届けた。
帰りのバスの中で、俺の家の現状と両親の事について、ロックさんとキラさんが説明してくれた。だが、流石に両親二人とも既に殺されていて店も潰れており、学校も既に退学済みと分かると少しガックリきた。
「まぁ……アレだね。リンちゃんと同じ境遇になったって事だよね?」
「そ、そうね。……しかし切替早いわねアルくん」
「そっすねーっ! 悩んでも仕方がない事は悩んでも仕方がないって事で!」
「そう? なら、ウチの社員にならない? 社屋が完成したらだけど、今なら本社ビルの社宅に住めるわよ。衣食住の心配もなくなるでしょ?」
「マジっすか! 是非よろしくお願いしますっ!」
「決断早すぎじゃない!? 誘ったのは確かに私だけど」
「悩んでも仕方がない事は悩んでも仕方がないんで! それに、ビルってことは実質マンションじゃん! ムリして一人で実家に住んでてもなんかちょっと、ね? という事でよろしくお願いしますっ!」
「ふふっ、了解したわ。楽しみに待っててね。ってか、流石リンくんのマブダチって感じね」
「へへっ。そう言ってもらえると何か救われるっていうか。あ、でもちょっとだけ俺んち寄って貰ってもいいですか? 色々取って来たいものもあるし」
「あ、そうだ。本栖君の実家だが、確か電気・ガス・水道全部止まってるうえに、家の中に何も無かったぞ」
「えーっ! マジっすかー! うわー、今日どうしようお金もスマホも何もないや俺」
「そうだったわね。なら、今日は皆でビジネスホテルに泊まりましょうか。私も今から家まで車で帰るなんてとっても無理だし」
「ボス。正直私も疲れました。ホテル取ってどこかに食べに行きませんか」
「ああ、それいいな! 俺も家帰ってから風呂沸かす気力ないしな。ハッハッハ!」
「お金のことは気にしないでいいから、アルくんも行くわよ!」
「あのーっ、それ以前の問題でー。俺いま真っ白の病衣なんですけど……」
「……確かに。それでホテルは無理があるわね。あ、そうだ! リンくんの家に行って服借りちゃおう」
「マジっすか!」
「庭からなら入れるはずだから、大丈夫なはずよ」
そんなやり取りをしながら、やけに忙しかった一日がやっと終れそうだ。
太陽はとっくに登り切った。眠い瞼に燦燦と輝く太陽の日差しはやけに眩しく感じる。
今夜の出来事は、きっとみんな精神的に相当な負担だったろうし、一生忘れることの出来ない記憶になった事だろう。
でもまだ分からない事だらけだ。新しい人間関係もそうだけど、俺はこれからどうするべきなのか。明日もまた、みんなで集まって色々と情報を精査しないといけないな。
リンちゃんの家で服を借りて、早朝からやってるラーメン屋に入って。
皆グッタリしつつもかなりの量をしっかり食べてた。
俺に至っては約七年ぶりのラーメンだったから、美味すぎて涙がでたくらいだ。
既に朝だが、ビジネスホテルに入る。
「それじゃまた後で、みんな十分に休んでね。お疲れ様」
キラさんが締めると、みんな部屋に入ってそのまま昼時過ぎまで爆睡した。
◇◇◇
起きてから軽く風呂に入り身体と頭を洗い目を覚ます。
何の気無しに鏡を見たら、浅い褐色の肌に銀糸の髪、うん、いつもの俺だ。
「うん、いつもの俺……あれっ? おかしくね?」
これってアストルミナの世界の俺じゃん! ここって地球で日本だよね?
顔は元々の地球の俺に近いけど、ほぼアストルミナのアルフォンスが混ざってるよね?
髪をかき上げ耳を鏡に映すと、耳の形は地球人型の所謂普通の形だけど、耳のてっぺんが若干黒い。
「尖ってないだけで完全に黒耳族だわ。ムーンシーカーの特徴出てるし……。純日本人で金髪な俺も嫌いじゃなかったけど、こっちのほうが馴染んじゃったな。まいっか!」
ところで、なんで俺こっちの世界に戻って来れたんだっけ?
うーん、タラとイロハとバンチョと一緒に旅に出て、クソ強い敵を倒してからー……?
記憶が欠落していて思い出せない。
けど、逆らえない力で引っ張られるようにこっちに来たよなーってのは何となく分かる。
「まあ、分からんもんは分からんっ!」
今日はこれから昨日のみんなと集まって情報交換? 報告会? するって言ってたな。
準備しながらテレビを付ける。昨日の戦闘の事が大きくニュースになっていた。
「ってかテレビなんてめっちゃくちゃ久しぶりじゃん! 感動するわー」
『我々は現在、戦闘現場となったWORMSと呼ばれる地下組織の日本支部、BUGSの拠点上空に来ています。見えますでしょうか! 辺りの木々は燃え尽きており、一部クレーターの様になっていたりと、かなりの範囲でその爪痕が見られ、戦闘の激しさを物語っています』
中継ヘリからの報道で、画面には田代峠一帯が映し出されている。
『地下にある拠点の調査と死亡者の運び出しを行っているのでしょうか。大変多くの警察、および自衛隊員が行き交っています』
「うわー、派手にやったなぁー」
そろそろ情報交換会とやらの時間だ。色々聞いてみようかと思うし、とりあえず実家もどうなってんのか気になるし、一度帰ってみないとだよね。
ホテルのロビーに降りると既に三人が待っていた。
「おはようございまーすっ! って、あれ? 俺遅れちゃいましたか?」
「おお、おはよう本栖君、しっかり眠れたか?」
「それなりに、ですかねー。やっぱ久しぶりに動かす身体って感じなんで、ぶっちゃけバキバキですね。温泉とか泊りに行きたい気分っす! あ、自分の事はアルでいいっすよ!」
「ああ、なら遠慮なくアルって呼ばせてもらうぞ」
男二人でニヤニヤしながら何やら通じ合う。
「ではアル様、私の事はセオドラとお呼び下さい」
「えっ! 様っ? なんか色々とおかしいというかマズイというか、え、様!?」
「リン様の大事なご親友ということですので、同じくアル様と呼ばせて頂きます」
「ええーっ! あー……うーん、はい」
「ま、セオドラちゃんにそう言われれば嫌って言えないわよね、ふふふっ。私の事はキラでいいわよ、よろしくアルくん」
「あ、はい、よろしくお願いしますキラさん!」
「では、今日の日程ですが、メンバー全員で昨日の報告と情報共有。および今後の方針を話し合う予定ですが、場所は如何しましょうかボス」
「そうねー、飛べたら私の家でいいんだけど。流石にリンくんの家に行くのも今朝のニュースでまたごった返しになってるだろうし。あ、お昼ご飯って皆まだよね? なら全員入れる居酒屋でもいいんじゃない? ね!」
「了解しました、では十二時半から二時間程は押さえておきます。皆に連絡もしておきます」
「ありがとう、よろしくね」
昨晩の壮絶な戦いの後だっていうのに、あっという間に集合した。
「キラお姉様! タダ飯ごちそうさまですっ!」
「もちろん会社経費で落とすわよ? しっかり食べなさいね」
「やったーっ! あたし昨日からまだ何にも食べてなくてー!」
「私もです、流石にあの時間に家に帰ってから冷蔵庫でゴソゴソ出来ませんでしたから」
皆好き勝手に注文する。ガンガン注文する。特に天南とセオドラさん、すごい食べる!
俺はお金もスマホも何にも持ってないので、ほんと助かる。ゴチになります!
食べながら昨日の情報を共有していく。
・WORMSの本部がドイツのシュヴァルツヴァルトにあること。
・組織構成員リストと資金の流れ、裏金、関係者等が全てわかったこと。
・明日、防衛大臣と秘密裏に会合しデータを引き渡すこと。
・防衛大臣からOKが出たら全データを世界に向けて開示する予定であること。
・国からの要請で報道用に一部の動画データを開示したこと。
・ディノポネラおよびパラポネラは死亡が確認されたこと。
・レッドアイは重症だがまだ生きてて刑務所に収容されたこと。
・過去視で、ツェツェはWORMS本部で治療を受けていることが判明。
・リンが吸い込まれたのはブラックホールではなく、次元の裂け目だということ。
「なるほどなの!」
桜煌の相槌で一応全員が把握した様な雰囲気になった。
「えっ! 桜煌、今の理解出来たっすか!」
「情報が多すぎて整理できませんわ!」
「大丈夫、とりあえず相槌を打ってみただけなの!」
「まぁ、桜煌だし、仕方ないんだぞ」
「それより、もちチーズが美味いにゃーっ!」
「あー、えーっと、新参者の俺が言うのもアレなんだけどさ、君らユル過ぎじゃないっ!?」
「流石マスターの親友だっちゃにゃー、言う事が鬼畜にゃ!」
「ここに鬼がいるのーっ!」
昨日の壮絶さが嘘のような賑やかさだ。
「ところでアル君さ、六か月もずっと寝たきりだったのにホントに身体大丈夫なの?」
「あーそれなー、そうなんだよね。天南の疑問ももっともだと思うんだけど、目が覚めた時は全身に力が漲っててさ、リンちゃんの気配感じたから飛んでったんだよね」
「理解不能な事が多いんですよ、アルさん目覚めた時は紫電の光柱が天まで昇ってましたし。BUGSから救出した時は色白で金髪だったのに、今は褐色に銀髪ですし。アルさんも私達と同じ様に超能力に目覚めたとかですか? 昨日は紫電纏ってましたし、空飛んでましたし」
「それは僕も気になって聞きたかったとこです。出来れば判り易く説明してもらえると」
「んー、簡単にねー、簡単に……んーっ、出来なくはないけど、信じられないかも?」
「いや流石にここにいるみんなは能力者だし、これ以上驚く事なんてないだろ?」
「でもロックさん、想像しうることは起こりえるんですよ」
「晶さんの言う通り、想像できることは実現可能なんです」
晶とジュンタがさあ話せとばかりに体を向け姿勢を正す。
「私も昨日のあの一瞬、一体何が起こったのか興味あるわね」
「そうですね。次元の裂け目と表現した事と、リン様の行方が気になります。、アル様のお話が聞きたいです」
「えーっと、うん、コホン! では、皆様の期待に応えまして、不肖このアルが、一体何があったのか話すといたしましょう!」
「「わーっ! パチパチパチッ!」」
「どう話したもんか難しいなー……えーっと、まずはリンちゃんと絹路を救出に行った夜だよねスタートは。リンちゃんが奴らに捕まって、それを俺が更に救出に向かったら、突然オレンジ色のドデカイ火柱が立ち昇って建物が吹っ飛んだ。俺はその破片をモロに頭に喰らって意識が飛んだ訳なんだけど……」
みんながウンウンと頷き、口を挟まない様にして真剣に聞く。
「目が覚めたら……そこは異世界。アストルミナという世界でしたっ! テヘペロッ!」
「「はぁぁーっ!?」」
まあビックリするよね! 分かるーっ!
だって、俺もビックリしたものーっ!
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