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Rising Force - Genesis -  作者: J@
激闘編

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漆黒の炎

    § リン視点 §


 ディノポネラと名乗った敵と向かい合ってから、どのくらいの時間が経過した?

 実際はほんの少ししか経っていないのだろうが、オレもコイツも間合いを取りながら見えない攻防を繰り広げている。

 様子見から先に進まない展開に痺れを切らし、オレから切っ掛けを作る。

 コイツも同じ事を感じていたのか、敵ながらオレに同意したように動いた。


「いい加減、戦いらしく行こうじゃないか!」


 オレは両手を開いて突き出し、構える。

 指先に球体が現れ、それは熱を帯び赤から黄色に変わる。

 ディノポネラも構えを変え、更に半身になり攻撃に備えた。


「いけっ! 散弾(フレア)っ!」


 激しく連発する爆裂音。超超高速で次々と飛んでいく散弾(フレア)

 何百発もそれは対象に向かって破裂し、さらに細かい球となって敵の表面で破裂する。

 只の人間であればそれであっというまに丸焦げだ。

 だが、こいつには目くらまし程度の意味しか為さないだろう。

 なので合間に連弾(ブラスト)も混ぜ撃ちまくった。

 数千発の散弾(フレア)に数百発の連弾(ブラスト)

 爆発の熱と風圧で辺りの木々が燃え始める。

 かなりの煙がディノポネラを包んだ。


「ゴホッ! ケホッ! 流石に煙いじゃねーかぁー、なぁ!」


 腕を一振りしたのか、煙が上空に巻き上げられ吹き飛んだ。

 黒のボディースーツはボロボロに破け各部のアーマーも黒焦げ、仮面も吹き飛び、髪の毛もパンチパーマ状態だ。


「……チッ、中々タフだな」

「まぁーねぇー、物心ついた時から丈夫なんだよなぁー」


 丈夫って……そんなレベル通り越してんだろうが!

 かなりレベルの高い身体強化だ。今の火力、熱量に耐えただと?

 オレも大概だとは思ってるけど、コイツもかなり普通じゃない。


「ふぅー、んじゃ次はこっちから行くよぉー」


 両の手を手刀にし、突き刺すような恰好で構えを取る。

 空気が震える程の凄まじい踏み込みの音と共に、超高速でオレに迫る。

 コイツ! 纏っているモノが冗談じゃない程の練度と硬度だ!

 一秒間に百発以上も放たれた怒涛の突き。とんでもない速さで振り抜かれた日本刀が発する様な、空気が切れる音がする。当たらなくてもその圧だけで骨まで絶たれそうな鋭さだ。

 冗談じゃないと思いながらも、オレはその全ての軌道を反らし、往なしてみせた。

 ディノポネラは驚いたのか、一瞬目を大きく開くと、後方に飛び退き間合いを測る。


「いやぁー! ビックリだなぁー。オレの攻撃を全部躱すかぁー。参ったねこりゃぁー!」

「……参ったって顔じゃないだろ。お前、とんでもない強さじゃねーか」


 その顔は、楽しくて仕方がない子供そのものだ。


「こりゃー、シーなんかじゃ歯が立たないのも当然だぁー」

「んで? 次はオレのターンって事でいいのか?」


 さっきから調子を崩される感じがするのは、こいつがお遊び感覚で様子見をしているせいなんだろう。証拠に、一切焦る様子も、呼吸も乱れていない。

 乱れているのは髪の毛だけだ。


「それもいいけどなぁー、そろそろ本気で殺り合ってみたくなったなぁー、どうだぁー?」

「ああ、その方がオレもやりやすい」


 ほんの僅か数秒、空気の読み合いを経て、向かい合ったお互いの姿が掻き消える。

 真っ暗だった夜空は、木々が燃える炎で赤く染まった。

 天空に散り瞬く星があまりにも今日という夜に不釣り合いで、銀色に輝く月は何も言わず、ただ無表情にオレたちの戦いを眺めている。

 なんて滑稽でなんて無意味なんだ。地球に寄生する小さな小さな虫たちが、お互いの欲をぶつけ合い、お互いのちっぽけな命を奪い合う。

 このとんでもなく広い宇宙にしてみれば、何を愚かな事をと笑うのだろうか。

 ちっぽけなオレたちの想いを、遥かな高みから笑うのだろうか。

 オレたちの中にあるこの熱い想いを、大切なものを守りたいと思う心を笑うのだろうか。

 愚かなオレたちを笑いたくば笑え! 

 世界が何と言おうとも、オレたちは今、お互いの大切なものを守る為、命を懸ける!


「……負けられないんだよっ!!」


 怒涛の如く鳴り続く空気の破裂音。超高速で衝突し合うお互いの乱打。

 風圧に押され、周囲の燃え上がる木々の炎は空高く舞い上がり、更に温度を上げていく。

 執拗に手刀を打つディノポネラ。

 その全てを掌底で叩き落すオレ。

 力を込めて握った拳より、遥かに衝撃が相手に残る掌底。

 結果、ヒートアップしていく乱打戦はディノポネラの腕を赤く腫らしていき、内部が弱くなった箇所の皮膚が割け、血が飛び散り始める。



    § WORMS ディノポネラ視点 §


 その血が俺のものだと気が付いたとき、この戦いで人生初めての「痛み」と「恐怖」を感じた。


 俺は今まで、怪我というものをした事がなかった、幼少の頃からストリートファイトでも負けたことがない。

 街で敵対していたチームからの襲撃も、毒を喰らった時も、ダメージというものを知る機会がなかった。そしてこのWORMSにスカウトされ、どんな任務でも無傷で帰還した。

 「痛い」それは一体どんな感覚なのだろう?

 「怖い」とは一体どんな気持ちなのだろう?

 今まで相対してきた敵は、ディノにそれを教えてはくれなかった。

 そして今、その「痛み」と「恐怖」を与えてくれる存在が目の前に現れた。

 「痛い」とはこんなに昂るものなのか!

 「怖い」とはこんなにワクワクするものなのか!

 この前レッドアイが教えてくれた「怒り」と同等かそれ以上の震えを感じる。

 これが感情というものか! ああ、いいぞ! いいぞ!

 もっとだ! もっと俺を震えさせろ、アマツリン!



    § リン視点 §


 血を吹き出しながらも執拗に手刀を打ち込んでくるその顔は、大きく口を開けこれでもかと不気味な笑みを思わせた。

 オレはそれを目の前にしながら、割けた腕の個所を何度も何度も殴打する。

 ベールが砕ける音と同時に左腕に痛みを感じ、ステップで間合いを取る。


「流石に何度も同じ所を攻撃したらぁー、そりゃあ分かるってもんだぁー」


 不気味な笑みを更に歪ませながら、追撃の構えを取り攻撃パターンを変えてきた。

 手刀、蹴り、体当たり、膝、踵。

 器用に飛び跳ねながら圧倒的なスピードでラッシュをかけるディノポネラ。

 防御なんて知ったことかと、お互い全力で攻撃を当てにいく。

 ディノポネラの体もあちこち赤く腫れあがり、割けて出血している。

 オレの身体も所々ベールが剥がれ、手刀を叩きこまれた箇所がドス黒く変色していく。

 手刀を喰らった左腕、右脛、左わき腹の感覚が、徐々に無くなっていくのが分かる。

 クソ! 右足の感覚が無くなって来て踏ん張りが効かない!


「ッチ、毒かよっ!」

「悪いなぁー、それがオレの能力なんだぁー、けどオマエやっぱりいいなぁー!」


 不気味な笑顔と驚き顔を交互に話すディノポネラは、感情表現が苦手のようだ。

 笑っているような、悲しんでいるような、怒っているような顔だ。


「普通オレの毒喰らったらぁー、ものの数秒で腐ってドロドロになって死ぬんだけどなぁー」


 なんつう能力(ちから)だよ! オレだからまだ耐えられるってもんだけど。


「……まぁ、オレも普通じゃないんでな、お生憎様だ」

「動きは鈍くなってきてるみたいだなぁー、時間の問題かぁー」

「ふーん、なら時間稼ぎしてないでさっさと来いよ異常者」

「いいねぇー、言ってくれるじゃ……」


 突然ディノポネラがスキー場の方、作戦本部の方を向いて動きを止めた。


「な……ウソ、だろ……パラ……」


 構えていた腕は力を無くし垂れ下がり、膝から崩れ落ち、地面に座り込んでしまった。


「おい……ウソだと言ってくれぇー……パラ……パラァーっ!」


 突然号泣し始めたディノポネラ。

 何だ! 今度は何が起きたんだ!? それにコイツは泣き方を知らないのか!?

 不気味に笑っているような、悲しんでいるような、怒っているような。


「ウワァァァーんっ! ウアアァァァーんっ!」


 流石にこの異常な状態に危機感を覚え、上空に飛んで距離を取った。

 号泣に呼応するかのように、その体に闇が集中していく。

 力の密度が上昇し、悲しみと怒りが増していく。


「ア゙アア゙ア゙アア゙アァァァァァア゙アア゙ーッ!!」


 ディノポネラから発せられた凄まじい勢いの漆黒の柱が轟音を上げて天に立ち昇る。

 オレがあの事件の時に見たオレンジの柱と似たような漆黒の柱。

 そして、その漆黒は収縮しディノポネラに吸収されていく。

 ユラユラと、そしてヌラヌラと。

 ディノポネラの体表を覆った漆黒の炎は揺らめきながら立ち上がり、オレの方を向いたように見えた。

 カッと見開いた目と口? が真っ赤に燃え盛る。

 笑っているような、悲しんでいるような、怒っているような。

 そしてそのどれでもない不気味な表情。不安定な感情の交錯。

 オレには覚えがある。これは、復讐に取り憑かれた人間のものだ。


「ぐヴぁぁアァァァーッ!」


 空中に避難していたオレに向かって咆哮し、そして跳躍する。

 先程までとは比べ物にならない程の更なる速度で拳を交わす。

 ディノポネラが纏う漆黒の炎は、普通の人間が触れたら一瞬でその存在は消滅するであろう程の禍々しさ。差し詰め、復讐の炎といった所か。

 お互いが繰り出す攻撃で大気が揺れ轟く。まるで真夜中に咲く大輪の花火の様に。

 張り直すベールも次々に剥がされていく。毒もジワジワと効いてくる。

 あれこれ考えている余裕は無い。全力でぶつかりコイツを倒さなければ、次の瞬間地面に横たわっているのはオレの方だ。


「この、クソ野郎がぁぁーっ!」


 距離を取る為の前蹴りがクリーンヒットし、ディノポネラ改め人型をした漆黒の炎はノックバックする。両手に連弾(ブラスト)を纏い思いっきり撃ち込んだ。

 壮絶な爆発の中、煙の中から飛び出す漆黒の炎。

 そういえばなんでコイツ空飛んでるんだ!? さっきまで飛べなかっただろっ!

 ただでさえ厄介な能力(ちから)の上に、この土壇場で飛べるようになるなんて、面倒極まりない。

 インファイトで殴り合う拳に()()()()とイメージを乗せて連打する。

 さっきまでの打撃力が数倍に跳ねあがり、真っ赤に開いたヤツの目がほんの少し揺らぎを見せた。


「ぐヴぁぁアァァァーッ!」


 更に咆哮を上げ、纏う漆黒の炎を厚く、更に黒くする。


「チクショウがっ! ()()()()! ()()()()! ()()()()!」


 オレの身体もあちこち皮膚が割け、血が飛び散り骨が見えている。

 晶の超回復も、ベールが割れてしまっては効果が無く、オレ自身が持っている超回復でも毒と怪我両方ではとても追いつかない。

 漆黒の炎の中にいるであろうディノポネラの本体に、拳は届いているし打撃感もある。

 なのに真っ赤に見開いた目と口の様相に変化がない、このままじゃジリ貧だ。

 その時、オレたちじゃない異音が混じる。


 ――ヒュウウゥゥーン!


 高圧で排気しているような、ジェットのような機械的な音がした。

 地表から飛び立ってきた何かが、オレと漆黒の炎にライトを向ける。

 照らし出されたオレ達を視認すると、機銃掃射を浴びせてきた。

 マズルフラッシュの中に浮かび上がったのは、人型のロボットだった。

 大量に浴びせられた弾丸は痛くも痒くもなかったが、ロボットだと!?

 一瞬の閃光の中で見えた機体はざっと15メートル。

 夜空も空の端が少し白んで来た中、燃え上がる木々。

 黒狐面を付けた黒装束。真っ黒な人型をした炎。そしてロボット。

 最早意味が分からない。

 何なんだ一体、と思ったところでそのロボットから人の声が流れる。


「ヒィャーッヒャッヒャッヒャッ! こっ、これでお前も終わりだっ! アマツリンっ! そこの黒いのはWORMSから派遣されたキチガイ共の成れの果てかぁ!? 支部長も幹部共も先ほど私が全員息の根を止めた! 残るはオマエら二人! いいや、この場に居る全員殺して私が次のBUGS、いや、WORMSの頂点に立つのだぁぁーっ!」


 止まらない機銃掃射の嵐。


「死ね! 死ねっ! シネ! シネッ!! 皆、シネェァァィーッ!」


 誰だ!? 拠点内で生き残っていた幹部の一人か!


「しぶとい奴らめ! これでも喰らえぇぁぁぁーっ!」


 機銃掃射の弾幕程度ではオレたちを殺せないと判断したそいつは、背中から新たな武器を肩に二門、腰脇に二門、計四門を回した。


 ――ウィィーン、ガチャンッ!! キュイィィィーン……!


 砲門の口に、高周波音と共に高密度の光の粒子が集まる。

 アニメや映画で見た粒子砲や波動砲そのものである。


「消し飛べっ! 消えろっ! 消えろぉっ! ヒィィーッヒャッヒャッヒャッ!」


 方向的に、避ければベータチームのアゲハたちとスキー場のキラさんたち。さらにその直線上にある街に被害が出る。

 かといって今の状態でアレを防御する術はない、ならっ!

 銃口を空に向けるしかないっ!


「クッソがぁぁ! こっちだ!」


 飛び出し高度を上げ、銃口を誘導する。光の粒子は更に輝度を上げていく。

 恐らく発射速度は光の速さ。今のオレでは避ける事は出来ないだろう。


「……なら、相打ち覚悟で幕引きにしてやるっ! うおおぉぉぉーっ!!」


 グッと拳を握り腰の左右で構え、イメージし力を籠める。


 ――バチッ! ッチ! バチッバチチッ! ッチチチリチチリッッ!


 眩い紫電が身体の表面を纏い、超高圧電流の音を奏でる。

 クソっ……分の悪い賭けだ。

 その時、遠くから音楽と歌声がオレの耳に届いた。

 紫電を纏うオレの身体を、更に何色ものライトエフェクトが包み込むと、紫電の輝きは数倍にも膨れ上がる。


 ――バリバリバリバリバリバリバリバリバリッッッ!!


「悪党の思い通りになんか! させる訳がねぇだろうがぁぁぁーッ!」


 さらに威力を増す紫の光。


 ――バガガガッバガガッガガガッガガッガガガガガ!!


 凄まじい音を発する紫電。

 身体は既に限界ギリギリ。


「ぐあぁっ! ぐっ! あがぁっ!」


 こいつを最大威力まで高めてぶっ放したら、後はどうなるかなんて知ったこっちゃない。

 大事な事はたった一つ。オレが、みんなを守るんだ。


≪悪りぃ、オレ、死んだかも≫


 皆にテレパシーを送り、そしてオレは紫電轟雷を解き放った。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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