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Rising Force - Genesis -  作者: J@
激闘編

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モニター越しの姿

    § アルファチーム リン視点 §


 オレたちアルファチームは階段を駆け下り、次のフロアに向かった。

 先ほどのフロアと廊下の造りは似ているが、雰囲気が変わり照明が暗い。

 だが、オレたちがやることは変わらない。虱潰しに全ての部屋を調べていく。

 このフロアは、ベッド・シャワールーム完備の部屋が多い。、休憩フロアか?

 晶が飛び込んだ部屋から女の驚いた声と男の声が上がる。


「キャッ! 何っ、誰よっ!?」

「なんだお前! し、侵入者だっ!」


 巫女服に白狐面の人間が突然ドアを開けて入って来たら、まあ驚いて当然だ。

 部屋の中は暗くスタンド照明が薄っすらと点いており、女の匂いと汗の匂いが入り混じった湿気が漂う。その意味に気が付いた晶は舌打ちをし、突きを一閃した。


「汚いものを……見せるなぁぁーっ!」


 ドス黒い液体が部屋中に飛び散り、ベッドの上には胸に穴の開いた死体が二つ転がった。

 ベールは飛び散るものを全て弾き、晶に汚れは1ミリもない。


「晶! 大丈夫か!」

「はい! 不快で汚らしい蟲が沸いてたので潰しました!」


 まるで一つ作業をこなしましたとでも言わんような微笑で先に進み、次のドアを開ける。

 晶の中にはブレない心と信念があるのだろう。強さに直結したそれは、年齢よりも随分と大人びた感じを与え、幼さを忘れさせる。大きなお世話かもしれないが、だからこそ表に出ていない本来の少女然とした部分が、知らぬ間に傷付きそうで少し怖いんだ。

 だけど、オレは掛ける言葉を知らない。だから、ただ無言で晶の頭に手を置いた。


「大丈夫ですよリン先輩! 私、強いですから! こんなの、タダの塵あくたです!」

「アーちゃん。キツい時はあーしもいるんだから、ちゃんと頼る事も忘れんなしー!」

「はい! その時はお願いしますアゲハちゃん!」


 オレは黒狐のお面越しにアゲハとアイコンタクトをとり、感謝を伝える。

 階段近い奥の部屋にも休憩中と思われる敵を見つけた。声を上げるよりも先に非常ベルらしきものを押そうとしたので、思わず頭部を一蹴。血液、脳味噌、脳漿が壁にへばり付く。

 後ろにアゲハが来て、俺の腰に腕を回し背中に抱き着く。


「リン。アル君助けたら、こんな嫌なとこ早く壊して、一緒に家に帰ろ?」


 濃く漂う血のニオイが舞う薄暗い部屋で、アゲハはそう優しく呟いた。

 その言葉に込められた意味を、オレはどの位拾えたのだろう。

 何故か、失っていきそうな何かを繋ぎ留めてもらった気がした。

 アゲハは額を背中にぐりぐりと押しつけ、ぎゅっと力を込め抱き締めると、両手を放し、パンっ! とオレの背中を強く叩く。


「よしっ! さぁ、行こーっ!」


 オレの手を取り、更に奥へと駆け出した。



    § ベータチーム ロック視点 §


 エレベータの穴の中を飛行すると、下にエレベータの天井が見えてきた。

 ぶち抜き、中に降りた俺たちは廊下に飛び出す。

 辺りは既に血まみれで、十体以上の死体が転がっている。

 普通では有り得ないその状態に感じる事は多々あるが、それは、今この場においては只の言い訳であり、甘えであり、昔の俺の常識だ。


「二人とも! 大丈夫かっ!」


 桜煌(おうか)葵育(あおい)に駆け寄り無事を確認する。


「えへへ。大丈夫なの。でも、ちょっとだけ気持ち悪いかもー」

「しばらくトマトスープとカレーは無理だっちゃにゃー」


 明輝(あき)(かおる)恋焦(ここあ)が二人を抱きしめ、さっちゃんがそれをまとめてさらに抱き締める。


「大丈夫よ! あたしたちがずっと一緒にいるから! 何も怖くないわ!」


 皆がその言葉に頷くと、力強く立ち上がる。


「さぁ! 進むっすよ!」

「さっさと終わらすなのっ!」

「そうよ! 立ち止まってなんかいられないんだからーっ!」

「そうですわ! 前へ進みましょう!」

「まだまだ序の口なんだっちゃ!」


 葵育(あおい)走りだすと皆がそれに続いて走り出した。


「うぉぉぉーっ!」


 無性に負けていられないと感じた俺は、叫び、ダッシュする。

 みんなは振り返り、そんな俺を見て爆笑した。

 血だまりの中、背後に転がる無数の死体を置き去りにして。



    § アルファチーム リン視点 §


 各フロアを制圧しながら更に深く降りていくアルファチーム。


「アゲハ! 今何階まで来た!」

「今9階よ!」

「次10階です!」


 10階。研究棟だな。もしかしたらそこにアルがいるかもしれない!

 それに研究棟っていうなら、何かしらネットワーク機器もあるんじゃないのか?


≪キラさん! ネットワーク侵入の方はどうだ≫

≪まだダメね。サーバー室とかあれば最高なんだけど≫

≪次10階に降りる! キリ番の階だから期待しててキラちゃん!≫

≪アゲハちゃん、焦りは禁物よ! みんな注意してね!≫

≪各チームの状態は僕の方でモニター出来ています! 何かあったら直ぐ共有します!≫

≪ああ、よろしく頼む! 10階! 入る!≫


 アゲハの情報通り、今までのフロアとは一線を画した階。

 狭い通路に広い部屋。ガラス張りの壁に目に刺さる程の明るさが、オレたちを異物にする。

 ガラス壁の向こうには、見た感じ培養カプセル的なナニカとか、怪しい色の液体が入った試験管が沢山並べられたケースとか。一言でいえば危ないモノが多くあるフロアだ。


「これは、研究フロアって感じですかね」

「全て壊したほうがいいのか?」

「待てショウゴ。もしTウイルスみたいなのが漏れたらどうすんだ!? 流石に勘弁だぞ?」

「そん時はリンの炎で焼き尽くせば大丈夫だし! 滅菌消毒ってやつ?」

「アゲハちゃん!? 一応何が起きるか分からないので、機器の破壊は無しで、人間だけ無力化していきましょう!」

「そうだな、後で然るべき機関にでも調べさせよう。それにアルの救出もまだだしな」


 通路は左、右、真っすぐと三つに分岐している。


「リン、どうする。別々に分かれていくか?」


 どこかで聞いた事があるような言葉をショウゴが発する。

 デジャブか? これって……そうだ、アルとあの日の夜に交わした会話だ。

 思い出したオレは何となくアルが近い事を感じ取り、片方の口角が上がる。


「リン先輩?」

「いや、アルが近いなって思ったんだ。それとみんな一緒に行動しよう。左から行く」

「「了解!」」


 通路を走り左側の研究ルームに入る。

 沢山の機器が並んでいる中に七~八人の白衣を着た研究員が作業をしている。

 ドアを蹴破った音に反応し、何か叫びながら白衣の中から拳銃を取り出して撃ってきた。

「晶のベールがそんなオモチャにやられる訳ねーだろうがぁっ!」


 片腕を横なぎに一閃し、一気に全員の両足を砕く。

 ルーム内は完全防音なのか、反対側のルームにいる敵の研究員は、ここの惨状に全く気が付く様子がない。


「うぎゃぁああーっ!」


 悲鳴がルームに鳴り響く中、晶はネットワーク機器に中継器を取り付け、アゲハとショウゴは転がっている奴らの腕を全て粉骨した。


「よしっ! 次っ、右!」


 通路右側のルームに飛び込むと、今度は晶が今拾ってきた拳銃で全員の大腿骨を撃ち抜き無力化した。

 アゲハとショウゴがそれに続き、一瞬で無力化していく。


「アーちゃん! 銃上手すぎん!?」

「ふっふっふー! FPSゲームで練習した成果ですっ!」


 2丁持ちアキンボスタイルでポーズを決める。


「上手いぞ晶は。なんたって、俺はランク戦でキャリーしてもらっているからな!」


 それでいいのかショウゴよ。


「えっ! アーちゃん今度あーしとパーティ組んでーっ! あーし今ダイヤ! マスター行けなくて沼ってんだー」

「分かりました! ですがアゲハちゃん! 組むなら全力でやりますよ! 覚悟しておいてくださいね! お兄ちゃん用のサブ垢でいきます!」

「サブ垢って……え? アーちゃんって今どこら辺?」

夜乃(よるの)……晶はここ最近のシーズン、全部プレデター維持だぞ……」

「ふぇっ!?」


 オレは何も聞かなかった事にする! 万年プラチナ止まりのオレはついて行けそうにない!

 何ていうか、頑張れアゲハ! どんまいアゲハ!


「次! 真ん中っ!」


 中に飛び込んだが人の気配はしない。

 ルームの奥に行くとモニターが並んでおり、画面には白い空間に白いベッド。白い布団で誰かが寝ているのを観察しているような感じに見える。


「リンっ!」


 アゲハがモニターの一つを指差しながら、オレを呼んだ。


「あ……ぁぁぁっ! アル! アルーっ!!」


 そこに映っていたのはマブダチの『本栖(もとす) (ゆう)』こと、アルフォンスだった。


「アゲハちゃん! お兄ちゃん! リン先輩をお願いっ!」

「りょ!」

「おう!」


 晶はネットワーク機器のL2SWを見つけ、そこに中継器を付けキラさんに連絡する。


≪キラ姉! 今L2SWに中継器をつけました! 行けるはずです!≫

≪たった今こっちでも確認出来たわ! 侵入完了!≫

≪ジュンタさん! ドローンでこの画面を映して!≫

≪はいっ!≫

≪キラ姉、このモニターに映る場所が何階か分かりますか!≫

≪33階よ!≫

≪了解! 今から33階に降り、目標の本栖さん救出に入ります!≫

≪了解したわ! ベータには引き続き各階の制圧を続けるよう指示しておくわ!≫

≪晶さん! アゲハさん! リン君! ショウゴ先輩! 成功をっ!≫


 未だに地面に膝を着きモニターに向かって放心状態のオレに向かってアゲハが叫ぶ。


「リンっ! しっかりして! アル君を助けに行くんでしょ!」


 反応の鈍さを見かねて、頬を思いっきり引っぱたく。


 ――パッシーンッ!


「あ、痛った!」


 アゲハの行動を予測した晶が、どうやらオレのベールを強制解除したようだ。

 痛みで我に返ったオレに往復ビンタが迫る。


 ――ピッシーンッ!


「痛ぁっ! 起きた! 起きましたっ! もう大丈夫っ!」


 危うく3発目を喰らう所だった。ショウゴはあたふた見ているだけだった。


「ほんとに大丈夫!? こっから先、気抜いたら駄目だし! 33階、行こっ!」


 ベールを再度付与され、やっと頬の痛みが治まった。

 アゲハの言う通り。そうだ、まずはアルを助けないと始まらないんだ!


「ありがとう、アゲハ!」

「当然だし!」


 白狐面の下から白い歯が見えるほどに強い笑顔を見せ、オレにそう答えた。

 待ってろアル! もうすぐお前を取り返しに行くっ!

 オレたちアルファチームは、更に下へと階段を超速で駆け下りる。

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