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Rising Force - Genesis -  作者: J@
激闘編

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63/124

天狗

 夜。指定時間通り。最上町にある赤倉スキー場の頂上に皆が集合した。


「揃ったな、みんな家の方は大丈夫か?」

「またダミー作って来たから大丈夫だし!」

「あたしもここあちゃんの真似して毛布に布団被せてきたよ!」

「私もダミーを置いてきました!」

「じ、実は俺も晶に言われてダミーを作ってきた」

「ふっ、皆お子ちゃまなの!」

「ん? 桜煌(おうか)は家の人大丈夫だったのか?」

「ボクもダミーを作ってきたなの!」

「一緒じゃねーかっ!」

「にゃはははっ! 桜煌(おうか)ちゃんもリンも、おもろーっ!」


 ゲンコツで桜煌(おうか)の頭を挟んでグリグリしたら、晶も頭を出すのでそこは撫でておいた。


「差別なのっ! マスターがいぢめるのっ!」


 晶がドヤ顔で腕組みをしフンスっと鼻息荒く勝ち誇り、桜煌(おうか)はぐぬぬぬっとなっている。


「はい! じゃれ合うのはそこら辺にして、そろそろスーツの換装方法を説明します」


 換装ロジックはアルテミスの衣装換装と同じものを使っているので、アクションにプラスして掛け声が必要となるらしい。

 ジュンタから教えてもらった変身アクションはこうだ。


 ① 左手を開いて前に突き出すと同時に右手は腰に引いて握る。

 ② 右手を左上前に開いて突き上げると同時に左手を腰に引いて握る

 ③ 「変身」のコール

 ④ 空手の「押忍」と同様に、顔の前で腕をクロスし両の手を腰に引く


「まだ換装できるフラグはOFFにしているので、練習してもらっていいですよ」

「あっ、あたし空手やってたからなんか馴染やすいかもっ!」

「俺も警察時代にやってたからな、型と一緒だな、悪くない!」

「アルテミスで慣れてると思ってましたけど、結構恥ずかしいですわ!」

「こうっ! こうっ! そして、こうなのっ!」

「にゃ! にゃ! んーっ、にゃっ! 完璧だっちゃ!」

「これ、癖になりそうです!」


 晶、桜煌(おうか)葵育(あおい)恋焦(ここあ)の低身長チビっこキャラ四人は、変身ポーズを気に入ったらしく、並んで何度もポーズを合わせている。

 なぜかそれを見るキラさんも混ざりたそうにウズウズしている。


「キラお姉様も交ざるにゃっ!」

「キラ姉も来てくださいっ!」

「えっ! じゃ、じゃぁ、お言葉に甘えて? 交ざっちゃおうかなー?」


 スススっと横に並び、楽しそうに一緒にポージングを連発するキラさん。

 なかなかのレア場面を頂きました。


「さちこさん、これで合っていますでしょうか!?」

「だ、大体OKよ! 大丈夫っ!」

「どう! あーしの振り付け変じゃない? 合ってるー?」


 アゲハ、天南さん、(かおる)、セオドラさんが、色々とブルンブルン振り回しており、男共は目のやり場に困る始末。

「大体OKですね、では換装フラグをONにして変身本番いってみましょう!」

「「おーっ!」」


 ノリノリの返事が返る。


「換装フラグ、ON!」


 バッ! バッ! と腕を振る音が鳴り「変身っ!」とコールが発せられた。

 ラストのクロスモーションをすると同時に、銀色の光が体から放たれる。


 男性は濃紺色を基調とした忍者スタイル。

 腕は肘から手首までと足は膝下から足首まで赤い紐で何度もクロスして間に四角が出来るようにギュっと纏められ、靴は底が硬くつま先に金属板が入ったオレのお気に入りの脛下まである黒のロングブーツ。

 手には拳と甲に鋲が付いた金属プレートの黒のハーフグローブ。

 顔には黒狐をイメージした口元が開いたハーフのお面で隈取等は赤と白で装飾され、耳付きで顎ラインに沿って顎ガードまである。


 女性は白色と緋色を基調とした巫女スタイル。

 白衣は肩と首元が露出、袖は控えめに小振り、緋色の糸で縁取りが施してあり、前面は幅の狭い前掛けが腰から膝上にかけて伸びており先が菱形になっている。

 胸前は緋色の紐で留めが結びで渡っている。

 緋袴は袴ではなく緋色の短いプリーツスカートスタイルで帯は大きく、背中腰付近でリボン結びになっている。

 膝上から足元までは白色のタイツで膝上部分に結びの紐の装飾、靴は男性と同じ仕様のロングブーツだが緋色で少しヒールが高い。

 手にも男性と同じ仕様のハーフグローブだがこれも緋色。

 顔には白狐をイメージした口元が開いたハーフのお面で隈取は緋色で装飾され、耳付きで男性と同じく顎ラインに沿って顎ガードもあるが、全体的にやや可愛らしいイメージにまとめられている。


「「……かっ……かっ! カワイイーっ!」」

「「うおーっ! カッコイイーっ!」」

「よかったぁーっ! あまり自信なくて、みんなにどう言われるか心配だったからー」

「ちなみに、飛行するとエフェクトで背中に半透明の翼が現れるようにしてみました。男性は黒、女性は白で。ちなみに動きに合わせて器用に羽ばたくモーション付きです」

「キラさんもジュンタさんも天才ですか!? 凄いです! カワイイですっ!」

「ちょっと(わたくし)には派手過ぎませんでしょうか!? 恥ずかしいです!」

「めちゃくちゃカワイイんだけど、あたしもかなり恥ずかしいかもーっ!」

「そーかなー。このぐらいがベストだと思うしー! キラちゃんセンスいいーっ!」

「アゲハとテンとセオドラと香はカワイイと違うにゃっ! エ・ロ・イ・んだっちゃ!」

「ボクらとはちょっとジャンルが違うの」

「いや、俺はみんなすごい可愛いと思うぞ?」

「ああ、オジサンの俺が言うのもアレだがとっても似合ってるな!」

「最高だと僕は思いますっ! 最高だと思いまっす!」

「ジュンタさんなんで二回同じこと言ったんですか! 恥ずかしいじゃないですか!」

「リン、どう? 似合う……かな」

「あーし、カワイイっしょ!」


 天南さんとアゲハがオレの隣に来て、照れながら聞いてくる。


「あー、えーっと、そのー、二人ともめちゃくちゃ似合ってるし、カワイイ……です」

「「やったっ! イェーイ!」」


 パチンと掌をうち合わせ喜ぶ。これまた二人ともカワイイ照れ笑いでもう、最高か!


「エヘヘーっ ありがとっ!」

「これで今日のあーしも頑張れるし!」

「それにしてもなんで狐モチーフなんだ? キラさん、ジュンタ」


 オレ的なイメージでいったらそれこそヒーローっぽい衣装なのかなと思ったが、いい意味で違ったから気になって聞いてみた。


「あ、それね、リンくんの苗字って天狗(てんぐ)って書いてアマツって読むでしょ?」

「ああ、うん、そうだな」

「なんでかなって調べたんだけど、日本書紀では『天狗(てんぐ)』と書いて『あまつきつね』って読んでるのね、そして狐と天狗(てんぐ)を同一視していたっても述べられているの」


 キラさんが語源を話し、ジュンタが補足してくれた。


「それと密教では『三類形(さんるいぎょう)』と言って、天狐、地狐、人狐というまじないが説かれていて、天狐(てんこ)を『あまつきつね』とも読み、キラさんが言った狐と天狗(てんぐ)を同一視していたことから、天狗(てんぐ)も同じく『あまつきつね』と読んだのが由来だそうです。それと、天は鳥を、地は獣を、人は人を指すらしいんです。なので、人は僕らを、獣は狐を、鳥には翼をって思い付いて、飛行する際は翼が現れるようにしてみたんです。まさにリン君そのものだと思いませんか!」


 それを聞いて、オレは昔じいさんが話してくれた事を思い出した。


「……そうだ、思い出した! 実は、オレも子供の頃じいさんに聞いた話で曖昧な部分が多いんだが、かなり昔の先祖が神職? をやっていたらしくて『お狐様』って呼ばれていたらしい。 それに、火を操ったとも聞いてる。苗字の由来はそこから来てるって話してくれたな、詳しい事はもう覚えてないけど」

「だとしたら、その衣装もスーパーノヴァも、まさにリン先輩を体現したようなものじゃないですか、キラさんも、ジュンタさんも流石です! にしてもリン先輩のおじいさんの話、妙に気になりますね」

「難しい事は分からないけどー、リンは特別って事じゃない?」

「だね! リンはホント特別。あーしにとっては、特にね。にゃはははっ!」


 最終的に「まーそういうこと」になり、その話はまた後でという事になった。

 時刻は21時50分、そろそろ作戦開始の時間だ。


甘楽(かんら)さん、聞こえますか」


 オレは準備が整った事を連絡する。


 東京では、甘楽(かんら)の所持しているビルにある中央管理室(コントロールセンター)甘楽(かんら)含め5人が待機していた。


「そろそろ作戦開始の時間だ! 通信不良、記録漏れなど無いように細心の注意を払って欲しい。 今日、本当の意味で世界が変わるぞ! 皆よろしく頼む」

「了解です! 通信、接続、共にクリア、データ入ります」

「映像入りました、チェックモニターにミラーします」

「音声クリア、ノイズ等問題なし、インカムへ送ります」


 大型モニターに現場の映像が映し出され、音声が流れる。

 場面は丁度変身する手前。


『換装フラグON!』


  画面に映るメンバーらがポージングを行い、変身の掛け声と同時に、画面は銀色にフラッシュする。

 次の瞬間、女性は夜の闇に浮かぶ狐の巫女のように、男性はそれを先導する闇に紛れる黒子のように変化し、さも(あやかし)の如く、現界と幻界の境界が曖昧になり狐の祝言のような幽玄を醸し出した。

 モニターに映し出された浮世離れした所業に魅入られ、言葉を失う。

 無邪気に楽しんでいる様子と会話が流れるが、甘楽(かんら)は行っている事とこれから行おうとしている事、見えている物と言動、その共存と乖離を前に全身に鳥肌が立ち身震いする。

 感動なのか恐れなのか、全身が震えを感じている中、リンから応答が入る。


甘楽(かんら)さん、聞こえますか、こちらの準備はOKです。こちらの会話が聞こえたら管理PCの画面にでもメモ帳でOKって入力してもらえますか』


甘楽(かんら)所長、これは一体どういう意味でしょうか?」

「俺にも分からない、が、彼の事だ、何か意図があるんだろう。 なら『こちらは映像も音声も問題なし、作戦の成功を祈る』ってメモ帳に打ってみてくれ」

「了解しました」


 そういってオペレーターは言われた通りの文言を打ち込む。


『大丈夫そうね、こちらは映像も音声も問題なし、作戦の成功を祈る。だって』

『了解。なら、最後までよろしく。って返してもらっていいか』


 オレはキラさんにそうお願いする。


「えっ? なんで分かるんですか? ハッキング? でも彼女立ってるだけですよね」


 メモ帳に打ち込んだメッセージの下に、追加されていく文字。


( 最後までよろしくお願いします、後でその動画データ頂きますので )


「「はぁぁーっ!?」」


 甘楽(かんら)とオペレーターは何が起きているのか理解が及ばず思わず変な声を上げてしまい、他のスタッフも巻き込みただただ驚くばかり。


「全く理解が追い付かない」


『まぁ、そういうもんなんだなと理解して頂くしかないですね、ちゃんと撮ってくだいね、後でデータ頂きますので』


 キラさんがオレの小型カメラに向かってそう話す。


「はぁっ? 何で聞こえて返事まで……ますます意味が分からない」

「マジっすか……! 所長、凄い人らと関係持っちゃいましたね!」

「ヤバすぎだろ!」


甘楽(かんら)さん、そろそろ作戦を開始します。一応正体バレしないようにしたんで、名前以外はモザイクとか加工無しでもOKです』


 甘楽(かんら)はとんでもない依頼を受けてしまったものだと和田に恨み言を言いたくなったが、もう腹を括るしかないと思い、両手で自分の頬をバチンと叩き気合を入れる。


「よしっ! やるしかないなっ! この仕事が終わったら皆で飲みに行くぞ!」

「「しゃーっ!」」


 チーム甘楽(かんら)の戦いも今始まった。


「よし、最終確認だ! 超速で入り口を捜索し中に入る、殲滅しつつアルを見つけ救出する、掃討する、この3段階だ」

「あ、リン君、ゴメンもう一つ追加してもらってもいいかな!」

「ジュンタ、なにか重要な事が抜けてたか?」

「中に入ったらどこでもいいんだけど、いや、出来ればコンピュータ関連の近くがベストなんだけど、これをくっつけてきて欲しいんだ」


 小さい丸い……FRISKサイズの何かが沢山ある。


「これは?」

「それは、キラさんがシステムに入り込めるようにするための中継器ですね」

「せっかくだから奴らの持ってる情報を引っこ抜いてやろうかなって、ね。アゲハちゃんの言ってた、完全に潰すってやつを実現させましょ? やるならとことんよ!」

「キラちゃん! んんーっ! 大好きーっ!」


 キラさんは悪い笑みを浮かべながら、アゲハの胸に沈んで行った。


「その中に組織メンバーの一覧データとかあったら最高じゃないですか!」

「晶さん! 狙いはまさにそれです!」

「一網打尽ってことねっ! とにかくそれっぽい機械見つけたらくっ付けまくってくるわ!」


 天南さんも一応電気科だから、ネットワーク機器くらいは分かる……はず、だよな?

 とにかく手分けしてあちこちくっつけてくることになった。


「準備は万端だな! よしっ! やるかっ!」


 ジュンタが大量のドローンを飛ばし、探索を開始する。

 発見の報告を待って即突入できるよう、オレたちは上空に昇る。

 背中に翼を生やした狐たちが夜空を駆け昇る様は、さながら天翔る龍のようでもあった。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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