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Rising Force - Genesis -  作者: J@
事件編
6/124

コンビニでクラスメイトと

 オレは、情報を掴めそうなコンビニに向かって自転車を飛ばしていた。

 辺りは街灯も少なく見通しも悪いが、目的のコンビニから漏れる明かりが見えて来た。

 この天気のせいか店内に客は誰も居ない。

 いきなり監視カメラを見せてくれ、と言ってもまず無理だろう。

 とりあえず飲み物と軽食、電池等を手に取りレジへ向かったが誰も居ない。

 不用心なコンビニだなと思ったが、カウンターには『ご用の方は押してください』と書かれた貼り紙がされた呼び鈴が置いてあった。

 大丈夫かこの店? と心配になるが、とりあえずチーンと鳴らす。

 裏の方からバタバタっと音がし、クロックスを履いたような足音と共に店員が駆けてきた。


「いらっしゃいまー……えっ? アマツ!?」



    ◇◇◇



「えっ? これ映ってるのって絹路(きぬじ)さん!? 一体どーいうこと!?」


 結果から言うと、オレは監視カメラを見せてもらえた。

 バックヤードから走って来た店員は、クラスメイトの『本栖(もとす) (ゆう)』だった。

 苗字と名前を逆にすると「有本栖」アルフォンスと読める事から、高校入学3日目でアルと呼ばれるようになった。気付いた奴は天才かと思った。

 オレの中では特に親しくもない只のクラスメイト。

 だけどアルの中ではクラスメイトは全員友達だろ? ってことで中々に馴れ馴れしい。


 聞くと、このコンビニはアルの親が経営している店で、手伝いがてら小遣い稼ぎしてるんだとか。

 店員がクラスメイトだった事にまず驚いたが、焦りから事の詳細を省いた。


「いきなりで悪い! 監視カメラ見せてくれないか!」


 突然詰め寄ったもんだから、当然アルも驚くものだと思っていた。


「おっ!? おう、別にいいぞ!」


 と軽くOKしてくれた事に、逆にオレの方が驚いた。


「どうせこの天気で客なんて誰もこねーし、ヒマだし! もう少しで閉店時間だし!」


 と笑いながらバックヤードに案内してくれたアルは、監視カメラの管理端末の前に座る。


「早速で悪いんだけど、昨日の19時ちょい前くらいからの映像が見たいんだ」

「オーケー、オーケー、この俺に任せなさい! んで、理由は後で聞かせろよー?」

「とりあえずそこのサンドイッチでも食べて待っててー、廃棄予定だから気にする必要ナッシングー!」

「いいのか? じゃ、遠慮なくいただきます!」


 19時5分前くらいの部分から、店舗前に設置された2台のカメラ映像を見始める。

 自転車のカゴに買い物袋を入れた人物が端っこに映った。


「ストップ! そこっ! その自転車!」

「おっ! アマツの探し物はコレ? あれ? コレってウチの制服じゃん!」


 間違いない、(れい)だ! ドクンと心臓が跳ね、背筋に悪寒が走る。


「スローで進めてくれ」

「オーケイ!」


 次の瞬間、後方から来た黒のワゴン車が自転車の前に割り込んで停まる。

 急に割り込んできた車に驚き、自転車に乗っていた人物は道路に倒れ込んだ。

 車から二人の男が素早く出てきて、道路に倒れた人物を抱え、車に押し込んで走り去って行った。


「え……? アマツ……なに……コレ?」


 顔面を引き攣らせたアルが、画面を指差しながらオレに顔を向ける。


「アル! この自転車って今どこにある!」

「え! 店の前の端っこにとりあえず置いてあったはずけど」


 ダッシュで店の外に出て自転車を探すと、暗がりの中にそれらしきシルエットを見つけた。


「さっきの映像ウチの学校の子だよね! これ誰の自転車!?」


 クソっ! ふざけるな畜生が!! 奥歯をギリギリと噛み締める。


「ちょ、顔コワっ! と、とりあえず落ち着こうぜ、なっ?」


 オレはアルの腕を掴み、急いで監視カメラの前に戻った。

アルも心配した顔でオレを見ている。


「悪りぃ……大分、腹が煮えくり返ってるし、頭に血も昇ってる」


 画面は、車が走り去ったところで一時停止してある。


「さっきの場面、もう一回スローで再生出来るか?」

「お、おう、もちろん」


 自転車が見えた所から再生し、オレはアルに話をする。


「今朝、先生が言った話覚えてるか?」

「もちろん覚えてる、サラリーマンは安月給だって言ってた!」

「おまっ! そこじゃねぇよ!」

「ゴメン、ゴメンて! ジョークだよジョーク! だってお前今スゲー怖い顔してるからさ、少し和ませようとしただけなんだよ……」


 確かにオレの心情は今普通じゃない。コイツなりに気を使ってくれたのか。


「……オレの方こそ余裕なくて悪りぃ、あの自転車は……そこでストップ!」

「えっ! おう!」


 画面は自転車が転倒したところで一時停止され、オレはそこに一瞬移り込んだ人物の顔を指差した。


「えっ? これ映ってるのって絹路(きぬじ)さん!? 一体どーいうこと!?」

「今朝、留学するって日本出たんじゃ? ちょ、マジで意味わかんねー! 説明頼む!」


 絶対に誰にも話すなという条件付きで、アルに事情を手短に打ち明けた。

 (れい)が誘拐に遭った事。両親の判断で警察に通報していない事。脅迫されて留学という形をとった事。オレだけが麗の足取りを追えている事など、事実と予想の混ざった内容を話した。


「え、マジで!? マジで誘拐された!? って、この映像見れば一目瞭然だよな……」


 流石に内容を聞いてしまったら事の大きさに動揺するよな。


「え? で、アマツはどうすんだよ! まさか一人で助けに行くつもりじゃないよな?」

「オレはそのつもりだし、犯行車両を特定したくてここに来たんだ。巻き込んで悪りぃ」

「いやいやいや! 警察に任せたほうが良くない!? ってか一人で乗り込むとか危なすぎんだろっ! それに巻き込まれたとか思ってねーし! ってかどうやって助けんだよ! 謝んなよ! 友達だろ!?」


 アルって、学校ではノリの軽い調子のイイ奴だとばかり思ってたけど、根は友達思いだったんだな。知らなかったその優しさに心の中で感謝する。


「警察に通報……うん、それも考えた。考えたけど、それは(れい)の両親が判断すべき事だって割り切った。かなり微妙な線だけど、捕まってるだろう場所の目星はついてる。かなりバカな事してるってのも分ってる。行ってみた結果誰も居なかった、何も無かった、だったなら後は(れい)の両親に任せればいい」


 アルはオレの話を聞きながら、黒のワゴン車のナンバー部分を拡大したりして、少しでも情報を得ようとしてくれている。


「でも、もし行った先でこの黒のワゴンを発見したら、警察に現在位置と状況を通報して、直ぐに対応してもらおうと思ってる」


 オレがこれからやろうとしている事を話すと、アルはフゥと息をひとつ漏らす。


「よかった。俺はホントに一人で突っ込んで行くのかと思ったぞ!? 意外と冷静じゃん」

「あたり前だ。俺一人突っ込んだって、事態を悪化させるだけだろ」


 これから行く先で、もし(れい)を発見してしまったらオレは多分突っ込むだろう。

 衝動を抑えることはきっと難しい。でも……そん時はそん時だ。


「で? 場所の目星はついてるし車も判った。って事は今から行くのか?」

「ああ、そのつもりだ。それに折角のこの雨だ、暗闇と雨音に紛れて乗り込むには丁度いい」


 静かな夜じゃなくて良かった。いつもなら嫌いな雨が今は心強い。


「分かった! 店も丁度時間だし、ちょっと待ってて! 閉めて準備するわ!」


 アルは時間を確認すると力強くそう言った。


「えっ!?」

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