脅威
ショートストーリーです。
BUGS諜報担当部隊「蟻」の長、顎砕は、何かしらの情報を少しでも頭に入れるのが日課だ。雑務を終えた私は、自室のベッドに横になりながら、仮眠前にSNSの投稿を漁っていた。
トレンドに突然沸いて上がってきた同じような投稿動画が上位に並ぶ。
どうせまた下らないネタで、誰かが承認欲求を満たそうとしているんだろう。低次元の愚民共はすぐ新しいモノや情報に踊らされる。故に愚民なのだと言う事に気が付きもしない。
だが、いつどこでこのネタについて話が出るか分らない。当然、知りませんは許されない。
何より蝶の長、翅脈に「そんな流行の事も知らないのー?」とバカにされるのだけは避けておくべきだ。私は仕方なくトレンドのリンクをタップする。
「なん……だ、コレは……」
映像に映る男、こいつは間違いなくアマツだ。今回のターゲットだ。
確かに支部長はアマツを能力者だと言っていた。だが、何だこの力は! 聞いていない!
しかもアマツを取り巻いていた周囲の者たちまで凄まじ過ぎる能力者じゃないか!
それにオレは知っている、この黒のスーツを身に纏った者たちを。
聞いたことがある、我々の本部WORMS最強部隊の話を。
「敵わないというのか……」
実際に目にしたことはないが、間違いなくWORMSの最高戦力を担う戦士の一人だ。
BUGSがいくら束になったところで到底手の届かない強さを持った存在が倒された。
「フェ、フェイク動画じゃないのか……有り得ないだろう……こんなの、人間じゃない」
支部長は、我々はこんな化け物に手を出してしまったと言うのか。
冗談じゃない、冗談じゃない、冗談じゃない! 無理だ、絶対に無理だ!
この拠点にはアマツの親友、本栖がいる! 絶対に取り戻しにやって来る!
「お終いだ……もうお終いだ。殺される、この黒い奴のように!」
どうすれば、どうすればいい! まずは緊急で幹部を招集して会議を? ダメだダメだ!
諜報部隊の私たちが、何故その情報を先に調べられなかったのだと問われるだけだ!
頭をフル回転させ思案を巡らせる。無理だ。行き着く答えは全て「死」だ。
私には聞こえたぞ。さっきの動画でアマツはBUGSに攻め入るつもりだ。
駄目だ! 何をどうしてもアマツたちはココへ攻め込んでくる! 避けようがない!
この動画の事件は数時間前の出来事。……ある、あるぞ! 死を回避する策が!
ここを捨てて逃げて逃げて、姿を隠すしかない! それしか生きる道がない!
もうどうでもいい! 私は今すぐ遠くへ逃げる! そして真っ当な人間として生きる!
私は情報に踊らされる愚民でいい! 私は逃げるぞ! 後の事など知ったことかっ!
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