アル、奪還作戦
「はぁ!? おいリン! 相手はプロの集団なのは今日で分かったはずだろ! どうやってそんな危ない奴らと殺り合おうってんだ!? 無理がありすぎるし、命がいくらあっても足らんだろうが!?」
「言いたい事は分るよ岩上さん。だからと言って、アルの事をこのままにはしておく訳にはいかないんだ。オレの仲間に手を出したなら、その報いは必ず受けて貰う。オレは……いや、オレたちは、必ずアルを助け出し、地下組織をぶっ潰す。一匹たりとも見逃すつもりはねぇ。そして、オレ達にはその能力があるんだ」
「力って……お前そりゃ流石に……いや、待て待て待て! まさかさっきのって!」
「そう、オレは……いや、オレたちは所謂『超能力者』ってやつなんだ。いままで打ち明けられなくて悪かった」
オレはみんなに、自分がこの能力に覚醒した経緯を語った。
「なるほど。あの事件の奇妙さにやっと合点が行った。……そうか、そうだったのか」
「見損なったか?」
「いや、そうじゃない。リン、今までよく頑張ってきたな、よく生きててくれた。それがどんな力であれ、今、お前の周りには、俺も含めこんなにも沢山の仲間が集まっている。それが答えなんじゃないのか?」
岩上さんは、泣きながらオレの肩をバンバン叩く。
「俺はあの事件以降、ずっとお前が心配でな。本当の弟のように思ってきたから、だからこんな立派になってくれて、俺は……」
「岩上さん、リン様が今こうやっているのも、貴方のおかげでもあるんじゃないですか?」
「そうね、勿論みんなのおかげでもあるし、ロックさんのおかげでもある。そもそもリン君のおかげで今私達がこうしていられる。だから私はこれからも皆で一緒にやって行きたいと思っているわ」
「俺から言わせれば、リンは幼少の頃から凄い奴だよ。まあ、そう言う事だな」
「僕も同感です。そう言う事ですね」
「岩上さん、オレも、兄貴がいたらこんな感じなのかなって思ってた。だから、ありがとう」
またオレの肩をバンバン叩きながら男泣きする。
「おーい! 湿っぽいのはその辺までにするしー! 今はアルくん救出の為に作戦立てる時間だよー!」
「アゲハ、いい事言ったなの! 珍しいの!」
オレに頭を小突かれ、納得いかない表情の桜煌とニンマリ顔のアゲハ。
場の空気が変わった所で、庭からザッと音がして戸が開く。
「リン! 大変よ! 多分近いうちに例の地下組織と戦争になるっ!」
「さっき、さちこ先輩の未来視が発動したんです! あっ、皆さんこんばんわ!」
天南さんが見た事を晶が要約して説明する。
・どこかの山、森の中
・木が紅葉混じりになっていたので季節は秋
・全員が何かしら激しい戦闘になる
・敵にも能力者集団
「見えたのはそこまでよ。その結果がどうなるのかまでは判らなかった」
「アルは? アルの姿は見えなかったか?」
「見えた映像の中には見つけられなかったかな、ごめん」
「そうか……いや! 重要な情報をありがとう天南さん! これで迷うことは無くなった」
アゲハの持っている情報をどう伝えたらいいのか、悩んでいたから正直助かった。
「というか敵にも能力者がいるんですね。どの程度のレベルなのか、推し量る必要があると思いますよ」
「テンの情報から敵の位置も割り出す必要があるんだっちゃ!」
「ジュンタの能力で超小型のドローンとか沢山飛ばして探ったり出来ないなの?」
「桜煌さん! そのアイディア頂きます! 収集した映像や画像の解析をお願い出来ますか、キラさん」
「もちろんよ! 任せて!」
「なら私たちはは来る時に備えて皆の戦闘訓練をします! アゲハちゃん、さちこ先輩! お兄ちゃんも協力お願いします!」
「ああ、勿論だ! 任せておけ!」
「アーちゃんの頼みなら勿論! 戦闘技術ならあーしにお任せしろしー!」
「任せて! あたしたちでアル君を救出してその地下組織を潰すわよっ!」
「「おーっ!」」
次々と行動方針が決まって行くオレたちの士気の高さと統制。
「お、お前ら、何ていうか……凄いな! ちょっと、俺の常識が崩れたな」
「岩上さん、私が思うに、常識が崩れるのはこれからかと思いますよ。で、合ってますか、リン様」
「流石、正解だ! セオドラさん」
「先程、さっちゃんが『全員戦闘になる』と言っていましたので、私たちを含んでの事かと」
「ああ、その通り。ということで、これから二人には選択をしてもらうことになる」
奴らは間違いなくこの二人も攻撃対象とするだろう。だからオレは迷わない!
「岩上さん、セオドラさん。奴らと渡り合う為に、一緒に戦ってくれないか」
「た、戦うって言ったって、俺にはなんの力もないぞ!? 柔道ぐらいしか」
セオドラさんは、ここにいる全員が能力者であることから、既に予想がついたのだろう。
「ラテン語で『Si vis pacem, para bellum』平和を求めるなら、戦争に備えよ、という言葉があります。私は、リン様とみんなのお役に立ちたいです! どのようにすればよろしいでしょうか」
「二人の眠れる力をオレが引き出して、能力者として覚醒させる」
「なっ! そんな事が可能なのか!?」
「岩上さん、皆さんがなぜ皆能力者なのか、それを考えれば自ずと答えが出ますよ」
「まあ、正しく言えば、純たる自力覚醒したのはオレ、アゲハ、晶の三人。それとアルテミスの五人は潜在的覚醒からの成長だ。あとは、みんな干渉による後発覚醒ってとこだな」
ゴクリと岩上さんが唾を呑んで答える。
「お前と一緒に戦えるなら。お前が守りたいものを一緒に守れるなら。やってやるぞ!」
「……それが、例えば悪人の命を刈り取る事になっても、後悔しませんか?」
「ああ! それで多くの人の幸せを守る事が出来るなら、俺は迷わない!」
「リン様、私は命を救われた時から、NOという答えを持っていません」
「分かった。なら、覚醒させるぞ!」
いつの間にかリビングのテーブルは片づけられ準備万端になっていた。
「さて、どうなりますかね」
何故かジュンタは楽しそうだ。
≪覚醒後は軽い車酔いの感覚に襲われるから、一応言っとく≫
「なっ! なんだ!? 頭に直接! って、俺は車酔いが嫌いなんだがぁぁ……」
「ああ、リン様の声が直接頭の中にー……」
二人とも床に倒れ込み動かなくなった。
「……死んだにゃ?」
「マスターが二人を殺ったの……」
「んな訳あるかーっ!」
そういえば、アルテミスの皆はテレパシー干渉での覚醒は初見だったか。
間もなくして覚醒反応が始まった。
岩上さんの身体の周囲に、透明な小指の先程の円錐形が沢山現れた。
「晶! 岩上さんの周りにシールドっ!」
「はいっ!」
付与されたと同時にそれらは周囲に向かって放たれ、シールドに当たって砕けた。
「今のは、弾丸に見えました」
晶はオレが見たものと同じ答えを返す。
「だよな。てっきり防御特化系の能力かと思ったら逆だったな」
「分からなくもないかな? 誰かを守るって事は、少なからず相手を叩きのめす事の出来る力が必要だもの、あたしもそういう感じあるから」
「ふんふん、なるほどなるほど、放出系って事ですかね。なら……」
ジュンタは既に何かのアイディアを練り始めている。
「俺と同じタイプかとも思ったが、より攻撃的な感じだな」
そう言っているうちに、今度はセオドラさんの反応が始まった。
寝そべっている身体の上に、十字架のようなものが現れた。
段々とその十字架は細くなって行き十字架と言うより「+」になり、よく見るとメモリが刻んである。
「これって照準じゃないかしら? スナイパーのスコープの様に見えるんだけど」
「+」の周りを小さい点が沢山動き出したかと思うと、インベーダーゲームのように「+」の中央に合わさった瞬間破裂し消滅していった。
「スナイパーですね。遠距離系っと」
「ドーラちゃんも面白いなぁー。遠距離系って結構レアだし重要だよねー?」
「まさか二人とも似た様な系統の覚醒とはな。面白いよな、流石結婚するだけあるな」
思わずポロっとこぼしてしまった。
「「結婚!?」」
知っていたオレとキラさんと天南さん以外、当然ながらみんな驚いた。
一応天南さんがフォローして、二人には絶対内緒にするようにお願いしておいた。
目が覚めた二人には、ジュンタから覚醒した能力の系統についての説明があり、寝ている間に作った、専用のPACSアイテムとCTLを手渡し、それについても説明をする。
まずはセオドラさんが器用に能力を発動させた。
手にはAWM然としたスナイパーライフルが出現。
「これは! AWMじゃないですか!? 父の実家の武器庫にスナイパーライフルが何本かあるのですが、AWMを見るのは初めてです! ちょっと感動してしまいました!」
「試し打ちと練習は今度場所を用意しますので、それまで待ってくださいね」
今にもセオドラさんが撃ちそうだったので、慌ててジュンタが釘をさす。
「おいおいマジかよ! こいつぁ渋い! デザートイーグルじゃないか!」
岩上さんも器用に能力を発動させ、現れたハンドガンに興奮する。
「岩上さんは二丁持ちできますよ。しかも能力の系統からして、ハンドガンからマシンガンまで、というかスナイパー以外ならイメージしたものが具現化出来るようです。逆にセオドラさんはスナイパーっぽい物なら何でもいけそうです。極端に言えば、照準のついたパチンコでも具現化出来そうです」
「マジか! なら……! ホントに出たよAPC9! しかも二丁!」
「あの、間違っても今撃たないでくださいね?」
二人ともガンマニアだったのか? 喰いつきが普通じゃないな。分かるけど!
「あ、そうそう。そもそも能力の発現をスムーズにするために僕が創造したアイテムがPACSですので、弾丸補充の必要はないです。熱も一切出ませんし、撃ちっぱなし可能です」
「「……は?」」
「ジュンタさん、それはリロードも必要がないという事でしょうか?」
「そもそもマガジンはダミーです。なのでリロードは一切必要ないですね。発射するタイミングに合わせて能力が弾丸を生成してますから。とはいっても本物の弾丸じゃないので発砲音も熱もありませんけど。あ、サイレンサーを付けて撃ったような音はすると思います。空気抵抗の関係で。スナイパーだって連射可能ですよ」
「マジかよ……」
「……とんでもない能力なのですね」
二人とも絶句している。
「身体強化での戦闘と飛行はアゲハさんと天南先輩、ショウゴ先輩から。テレパシーの訓練は晶さんとアルテミスの皆さんから受けて下さい。僕からのレクチャーはこのくらいですかね。 分からないことがあったらいつでも聞いてください、テレパシーで」
「よし、これで全員が自己防衛および戦闘可能になった。後は敵の拠点を見つけるのが先か、接触してくるのが先か、だな」
「そうね。もし不慮の事態が起きたら、迷わず一斉テレパシーで連絡するのを忘れないで」
「あーしは誰一人も失いたくないから、だから、マジで細心で注意してほしーの!」
「「了解!」」
いつも強気なアゲハが注意を促したことで、みんなが気を引き締め直した。
そして、今後の訓練はどのようにやるのか、アル奪還作戦を話し合っていたら、夜が明ける時間になってしまった。
まだ暗い内にと皆飛んで帰っていき、岩上さんとセオドラさんも自分の車で帰宅した。
オレは麗を殺した奴らを、アルを攫った奴らを、仲間に手を出す奴らを、絶対に許さない!
「リン、お疲れさま。はいお茶。あのね、ずっとあーしを庇ってくれてありがとう。嬉しい」
「オレは、自分がしたい様にしてるだけだよ。アゲハも一休みしたら一緒に寝ようぜ。今日は風呂キャンで、明日の朝、一緒に入ろ」
「賛成ーっ! ……リン。絶対にアル君助けて、そして、組織を完全に潰そう!」
「ああ、オレたちならやれる!」
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