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Rising Force - Genesis -  作者: J@
事件編
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手がかり

 どうにも胸がざわついて落ち着かない。

 あれこれ悩むのはヤメだ。自分を納得させる行動をしよう。

 手早くシャワーを浴び、雨で濡れ冷えた身体を温める。

 買い置きしていた芋煮カレーパンを齧りながらPCの電源を入れブラウザを立ち上げた。


「まずは仙台空港から……っと。……は?」


 画面に表示された国際便は、ソウル、台北、大連のみ。

 仙台空港から他の空港を経由してドイツに飛んだっていう可能性もあるか?

 いや、それなら山形空港から羽田へ飛んだほうが楽だし早い。

 遠回りする理由が? いや、メリットが無いな。


 オレはただ、本当に留学したのだという確証が欲しかっただけだ。それならば納得もしただろう。

 ただ、頭の片隅に浮かぶその可能性を否定したかっただけなのかもしれない。

 フツフツと沸き立つ感情に反し、冷えていく思考。

 自分を抑えながら、さっきの出来事を頭の中で思い出す。


 おじさんの落ち着かない様子、噛み合わない会話、感じられた焦りと不安。

 おばさんの何かを伝えようとしてる動作、し過ぎる気遣い。

 突然すぎる留学、明日の約束をしたまま消えた(れい)、圏外で繋がらない電話。

 やっぱり普通じゃない……よな。

 何かしらの事件に巻き込まれたと考えた方が腑に落ちる。だとしたら何だ?

 頭の中で組み立てる。プログラムのようにロジカルに。

 そして、疑念は確信に至る。


「……誘拐? 攫われた!?」


 忽然と消えたのは? 誘拐されたから。

 突然留学したのは? 事件発覚を遅らせる為、偽装する様に脅されたから。

 電話が圏外なのは? 足取りを消すため。SIMカードを抜かれたから。

 大丈夫、大丈夫は? 身代金と引き換えに解放すると言われたから。

 少ししたら戻るは? 既に身代金の目処がついた、又は用意が出来たから。


 ただの思い込みかもしれない。でも、答えに辿り着いてしまったのかもしれない。

 (れい)の家に電話をかけようとしたが思い留まった。多分おじさんは警察に通報してないし、(れい)のじいさんにも誰にも言ってない。何故なら、(れい)のじいさんなら間違いなく警察に通報して最短で解決する選択をするはずだ。それに(れい)の家の中は静かすぎた。

 おそらく、身代金を渡して何事も無かったかのように解決したいんだろう。

 そこにオレが出しゃばったら、きっとおじさんは「何もするな」と言うはず。

 なら、どうすればいい? オレに何が出来る?


「……そうだ! そういえば!」


 以前、スマホが壊れたと言って(れい)がウチに来た時、PCに接続して修理した事があった。

 再セットアップをした時に、管理用のIDとパスを控えておいたはずだ。


「えっと、確かここら辺のフォルダに保存しておいたはず……あった!」


 スマホを管理・操作できるソフトを立ち上げ、IDとパスを入力しログインする。

 メニューには、欲しかった「現在位置検索」「移動履歴」が表示されている。

 迷わず「現在位置検索」を選択する。


『電源が入っていないか電波の届かない場所にある為、現在位置を取得出来ません』


 画面にはそう表示されたが、まあそうだろう、電話しても繋がらなかったんだ。

 だが「移動履歴」は誤魔化せないだろう。

 昨日、(れい)と学校で別れたのはチャイムが鳴って直ぐだったはず。

 検索対象範囲の開始日時に昨日の時刻を入力し、終了日時は空白。

 表示のデフォルト設定が30分間隔になっていたので、最小の1分間隔で検索する。

 画面上のマップに沢山の点が表示され、麗の移動履歴が確認出来た。


「よっしゃーっ!」


 学校に近いところにある点の方が古い時系列なので、ここがスタート地点。

 点は街中に向かっており、点と点の間隔から移動は自転車を使ったことが見て取れる。移動経路で点が沢山重なってる部分があるが、これはここら辺の店で買い物したって事だろうな。

 マップを拡大していくと、駄菓子屋、酒屋、肉屋、魚屋の順に移動している。

 駄菓子屋はいいとして、酒屋? チーズとかツマミか?

 こうやって移動履歴を辿ると、やっぱり明日の為の食材を買っている様に見える。

 翌朝には海外へ留学するって人間がこんな行動をとるはずがない。

 追っていくと、最後の方で急に移動速度が上がったとしか思えない履歴になった。


「は? 自転車で移動したにしては早すぎるだろ!? ……車か!」


 1分で1km程移動している、時速60kmから80kmの速度。

 更に追っていくと、街部から離れ市を出た後、隣町の山の方に向かっており、履歴の最後の方で少し点と点の間が狭まっている。


「直線道路で減速するって事は、ここら辺で曲がった?」


 マップで確認するとその先にはトンネルがあり、トンネルの横に山の上に行く脇道がある。

 最後の点の履歴は19時15分。

 オレの住んでいる市周辺は、周りを山が取り囲んでいる盆地の為、夕暮れになると一気に暗くなって見通しが悪くなる。

 ただでさえこの場所は民家も無く、薄暗がりで横道から山の上に行っても誰も気が付かないだろう。

 あまりにも当てずっぽうだが、今の俺には他に頼れる情報も成す術もない。


「頼れる情報……ちょっと待てよ?」


 点が車の移動速度に変わったって事は、そこで拉致されたって事じゃないのか?

 なんでこんな単純な事に気が付かなかったんだ!

 慌ててマップを確認し点の周辺を調べる。履歴時刻は19時ちょうど。

 点の道路斜め向かいにコンビニがある。この監視カメラに何か映っていないか?

 ダメ元で押しかけて、事情を話して見せてくれと頼み込むか?


「いや、悩むのはヤメたんだ! ダメで元々! 行くしかない!」


 なるべく夜間でも見つからず動ける恰好でと思い、黒のシャツに黒のパーカー、手にはハーフのレザーグローブ、カーキーのカーゴパンツに鉄板の入ったミドルのライダーブーツを履き、ズボンの裾を入れた。

 背中には、必要になるかもしれない物を入れた軽くて強いバックパックを背負った。

 外はまだ雨がかなり強く降っており、夕方ということをおいてもかなり暗く見通しが悪い。

 オレは、まだ乾ききっていない合羽をまた羽織り、ダメ元でコンビニまで自転車を飛ばした。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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