顔合わせ
オレはアルが入院している病院に来ていた。
最近はアルの両親も面会に来る回数がめっきり減ったという話を看護師さんから聞いていたので、オレも監視されているだろう手前、夜に行動も出来ないので日中に見舞いに来るようにしていた。
最近起きた出来事、皆が能力に覚醒した事、ジュンタとキラさんのおかげで出来る事が各段に増えた事、そしてアイドルグループまで仲間にしてしまった事などを話した。
「あの事件から既に五か月、もうしばらくしたら半年か……あっという間だな」
寝たきりで筋力も相当落ちたのだろう、見た目が大分やせ細って頬のコケ具合が酷い。
「きっと、あとちょっとだ。目覚めさせるまで頑張れ! アル」
何も出来ない悔しさにグッと拳に力が入る。
「んじゃ、またすぐ顔見せと現状報告に来るよ」
看護師さんにアルの事をよろしく頼みますと一言添えて病院を後にした。
その後、新しく仲間になったアルテミスのメンバーをみんなに紹介する予定になっている。
オレ以外の仲間には直接予定場所に向かってもらったが、アルテミスの皆はオレが連れていく事になっているので、一旦ダミーとして建物が混み入った場所を経由し、高速移動からビルの上に移り、監視の目を撒いてから上空に飛んだ。
アルテミスの皆には手間をかけさせたが、最初は人目の付かないところと思い山の中腹にある「陣峰市民の森」の「ひょうたん池」に時間指定で集まってもらった。
「マスターはウチらをこんな人気のない所に呼び出して、何をするつもりなんだっちゃ?」
「きっと誰にも言えないイケナイ事をする為なの」
「じ、自分はいつ何をされてもいいいいいっすよ!?」
「明輝、言えてませんわよ?」
「安心して、もしイケナイ事をされるなら最初のターゲットはここあに決まりだし」
突然舞い上がる風に皆目を瞑る。
「そんなアホな真似する訳ないだろ? 皆カワイイのは認めるが、面倒毎はゴメンだ」
「ひゃぁ! ま、マスター!? いつからそこに!? いえ、どこから来たんですの!?」
「し、心臓に悪いんだぞ!?」
「いや、どっからって、上から?」
「なんで疑問系なんだっちゃ!」
「何でもなにも上は上だ。これから皆と顔合わせするが、一瞬だけ長距離移動するぞ?」
「一瞬だけ長距離っておかしくないっ!? っっかなのおぉぉぉーっ!?」
有無を言わさずベールを展開し、一気に雲の上まで上昇した。
「「ひぃやぁぁあーーっ!」」
超超高速で雲が後方に流れたと思ったら、今度は一気に下降し海面が迫る。
「「ぶ、ぶつかりゅぅぅーーっ!」」
物理的な水しぶきも殆ど上げずに海の底まで潜る。
「はい、到着! な? 一瞬だったろ?」
「「な、なななななっ!」」
「皆さん、先日はありがとうございました、ジュンタです」
平静を取り戻すように、ジュンタが落ち着いた挨拶をする。
「へぁ!? え、あ、ジュンタさん!? お、おはようございますっす!」
「び、びっくりしたにゃぁー!!」
「やっぱり誰にも言えないイケナイ事で正解だったの!」
「おはようございます、皆さまお初にお目に掛かりますわ!」
「ここあは、ここあだぞ!」
「……リン、事前説明なしにまた問答無用で飛んだでしょ? あたしは天南 さちこ、同年代だし、これから仲良くしてね」
「はいっ! よろしくお願いします!」
「い、いや、問答無用なんてことは……ない、ぞ?」
「なんで疑問系なんですか、まあ、リン先輩のやる事ですから大目に見てあげて下さい。私は御先 晶といいます、14歳、中学二年生です。よろしくお願いしますね、えーっと、お姉ちゃんたち?」
「「ぐはっ!」」
晶の所見殺し庇護欲全開挨拶に全員やられたもよう。
「あーしは夜乃 蝶羽だよーよろしくねー! ってかみんなカワイくてイイねーっ!」
「俺は晶の兄で|小吾だ、よろしくな」
「ああっ! 助けてくれたお兄さんなの!」
「あの時は本当に助かったっす! ありがとうございました!」
「アゲハちゃんじゃないけど、皆、若くてほんと可愛い子達ばかりね。私は煌 星よ、キラでいいわ、よろしくね。見た目は幼いけど、これでも一応21歳よ」
小柄 + ボーイッシュ + スレンダー + 美人 = 萌え
でも成立したのだろうか? 全員タイミングを合わせたかのように目を輝かせ
「はいっ!! キラお姉様っ!」
「おっ、お姉さまぁっ!? くっ! す、好きに呼べはいいんじゃないかしら」
つつがなくこちらの自己紹介も終わり、アルテミスの自己紹介もこの後淡々と行われた。
「あの、ちなみに私達は今どこにいるんでしょうか?」
「そうね、大体、日本から約100km程離れた日本海の海底1kmってところかしら?」
「1km? 前は300mとかじゃなかった?」
天南さんの言う通り、前回までは上に太陽光に照らされた海水が薄青く光っていた。
「海底1km……って、あれ? なんで明るいんだし?」
「僕の能力で照明を創り出してるからですね、こんな風に」
パパパパッ! と多数の球状ルームライトがオレ達の周囲に出現し、上にスポットライト、さらにクリスマスのようなカラフルな小さな照明までも現れて点滅する。
「なんならこんな事も」
超大型スクリーンにソファとテーブル、さらに音響まで創造され、スクリーンには先日オレとジュンタが見に行ったアルテミスのライブ映像が流れ、爆音で再生された。
「「えええーーっ!?」」
「一体何が起こってるんっすーっ!」
「こっ、これは凄いにゃぁーーっ!」
「先日見せて頂いた皆さんのライブを僕の記憶から再生してます」
「タっくん! めっちゃ腕あげてない!? ヤバすぎにも程があるしー! すっごー!」
「頑張って繰り返し特訓してたら、レベルが上がるように能力が強くなりましたね」
「あ、それは私も理解できるわ。使えば使うほど使い勝手が向上してきたもの」
「そう言えばオレもPACSの恩恵で攻撃に幅が出来たぞ」
「もしかして超新星爆発の連弾と散弾ですか! やりましたねリン先輩!」
「ああ、ちょっと実演してみてもいいか?」
「あっ、リン! もう地震は起こしちゃダメだかんねー?」
「流石にあれは、ちょっと調子乗り過ぎたよな」
「地震って……どういうことだし?」
「一か月ちょっと位前に大きな地震あったでしょ? あれ、リン君が放った超新星爆発っていう技のせいなのよ。まあそのおかげで私も今ここにいるんだけど」
「マスター! ちょっと見てみたいのっ!」
「爆発時に範囲を限定できるようになったからな、今度は大丈夫だ!」
俺は単発、連弾、散弾を3つの実演披露をすることになった。
「まずは単発で高威力の超新星爆発から!」
腕を上げ掌を上に向け火球を作り凝縮していく、赤から黄色そして蒼のエネルギーの集合体に変化していく。
「こ、これは! や、やばいのおぉーーっ!」
「だっ! 大丈夫なんっすかぁぁぁーー!?」
「大丈夫、リン先輩ですから、大抵のことは大丈夫です!」
「なんで大丈夫って二回言ったんですのーーっ!?」
「いくぜぇー! 超新星爆発!」
上げた腕を前方に降り下ろす、と同時に超超高速で射出されたそれは200m先で猛烈に爆発し凄まじいを通り越した轟音と光を発した。
「範囲は半径50mにしたけど、あれ地上でやったらカスすら残らないだろうな」
「「……」」
初めて見るとそういう反応になるよね、うんうん、満足。
けど、連弾と散弾は、女性陣のウケが悪かった。
「確かに花火みたいでキレイではあったけど、なら、私は本物の花火が見たいかしら」
「あたしもどうせなら本物の花火のほうがいいかなぁ?」
「確かに悪くはないですけど、私はどうせなら宇宙からの眺めのほうが好きですね」
「リン、あーしはどれも好きよ。全部綺麗だったよー!」
「アゲハの優しさが身に染みるーっ!」
「にゃはははっ! 当然だしょー? あーしはいつでもリンの味方だしー!」
あ、ジュンタとショウゴには好評でした。
紫電轟雷の方は扱いが難しいので色々考え中です。
「……って、宇宙? っす?」
「ああ、そもそもこんな海の底にいて気圧も寒さもない上に息出来るだろ? なら宇宙も同じで行けない理由はないよな?」
「はいはいはいっ! ボク行きたいなのっ!」
「「ぐはっ! ぼ、ボクっ子ぉ!」」
「ちょっ! 桜煌ちゃんカワイイーっ! ちょっとハグさせてーっ!」
「むぎゅぉっ……」
問答無用でアゲハにハグされ、宇宙に行くまでもなく窒息死しそうな桜煌。
「つ、ぷはぁっ! 何今のーっ! 圧倒的な弾力の暴力なのーっ! 抗えないのーっ!」
あれ? 天南さんと晶、キラさんが悶えてるんだが、ボクっ子にやられたのか?
「気を取り直して、宇宙行きましょう! リン先輩今すぐにっ!」
「そうよ! これは行かないと駄目なやつよ!」
「リン、宇宙にいこっ!」
「あ、はい」
オレはアルテミスの皆を連れて、他は各自で超超高速で外気圏までぶっ飛ばした。
「秒殺……だったっちゃ……」
「情緒も何もなかったっす……」
呆然として足元がおぼつかない様だが、周囲をキョロキョロ見回す。
「「うわぁーキレーーっ!」」
結果、宇宙はテンション爆上がりでした。
「これ、毎度毎度の儀式になってきてるわね、あたしはここ好きだからいいけど、たまに一人でも来てるし」
「あ、実は私も一人で来ることがあります! 眠れない夜にスマホ爆音で鳴らして飛ぶと気持ちいいですよ!」
「サッチもアーちゃんも、一人でとか寂しい事言わないであーし誘ってよー!」
「あら、私も今度やってみようかしら。ちなみに晶ちゃんのおすすめBGM教えて?」
「こんなとこで歌ったら気持ち良さそっすよねー!」
「確かにそうですわね! これは表現のイメージが広がりますわよ!」
「いっぺんここで歌ってみるかにゃ?」
「それナイスアイディアだぞ!」
「マスター、歌っても大丈夫なの?」
「まー問題ないんじゃないか? 折角だから、みんなに聞かせてやってくれよ」
「では僕が! えーっ、コホンッ! アマチュアではありますが、最近目立ってきた歌唱力抜群のアイドルグループ! 『Artemis』の皆さんです! どうぞー!」
「……昭和の歌謡ショーみたいな司会になったな」
ショウゴのツッコミに皆ズッコケた。
「き、気を取り直して、皆! 行くっすよーっ!」
「「おーーっ!」」
宇宙をステージに、地球と月を観客にして、彼女らは今ここに生きていると言わんばかりに声を上げる。
「華は香り」
「森は育み」
「人は焦れ」
「星は煌き」
「そして、月は輝く」
五人の声が共鳴する。
「我ら、Goddess of Purity 、 Undulation Resonance! Artemis !」
音のない宇宙。だが、どこまでも広がっていくような歌声に皆時間を忘れた。
「驚きました! まだ未発達ですが能力は本物ですね!」
晶が目を丸くして賞賛を送る。
「驚いたわ……この子たちもっと凄くなる。あたしたちと出会ったのは運命だったみたい」
「この声。波動の共鳴。まさにアルテミスって名前を冠するにふさわしいわ、凄い……」
キラさんがそのまま黙って考え事を始めてしまった。
「リンと一緒に居ると、ホント面白い事が次々と起こるねー! あーしより人たらしなんじゃないのリン。悪い女に引っ掛かりそーであーし心配だなー。なんつって、にゃはははっ!」
「僕も、何かまたすごいイメージが湧きそうな感じがそこまで来てます、これは楽しくなりそうです!」
「俺はあまり詳しくないが、ジュンタがアイドル好きになる理由が分かるな」
一曲歌い終わり、皆から拍手と賞賛が送られる。
「まだまだ未熟っすけど、今後ともよろしくお願いしまっす!」
「「よろしくお願いします!」」
「ねぇみんな。ちょっと、ものは相談なんだけど……」
キラさんが言葉を切り出し難そうに彼女らに声を掛ける。
「キラお姉様のお願いでしたらなんでもOKですの!」
「そうだにゃっ!! 断るって選択肢はないんだっちゃ!」
「否は存在しないなの!」
「そ、そう? えっとね、曲ってどうしてる? 自分たちで? それとも外注?」
「ホントは自分らで曲作りたいっすけど、作曲とか編曲とかは才能もスキルもなくて、泣く泣く外注してるっす」
「作詞まではなんとかなの!」
「皆で捻り出してるんだっちゃにゃ!」
「お金も掛かる事ですし、苦労してる部分ですわ」
「作詞で頭と時間使って、作曲でお金使って、溜まるのはストレスだけなんだぞ!」
「なるほど……で、そこで相談なんだけども、作詞・作曲を私に任せてみない? もちろん作詞もしてくれていいしアイディアも……」
「否はないの!」
「どんどん出してく……え?」
皆キラさんの方に姿勢を正して向き直り
「「よろしくお願いしますっ! キラお姉様!」」
「ふぇっ! こ、こちらこそよろしくお願いします! き、期待していいわよ! 伊達に引き籠ってなかったってとこ見せてあげるわ!」
「キラちゃん、さんそっち方面も行けちゃうの!? 能力もだけど素の才能もヤバーっ!」
「楽器の演奏は出来ないけど、DTMで打ち込みの作曲は沢山やってきたわ! まして私の能力ならこれまでの比じゃないわよ!」
「確かに! キラ姉の能力は別次元の凄さですから! 適材適所ってやつですね!」
「ふふっ、ありがとう晶ちゃん。もしかしたらお手伝いお願いしちゃうかも」
「ちなみにお姉様の能力ってどんな感じなのにゃ?」
「私は、電脳接続と思考加速の能力者よ」
「「……?」」
「ってなりますよね? 説明は僕から……カクカクシカジカ……ってことで思考加速は約一万倍です」
「「……!?」」
「もはや凄すぎて意味がわからないっす!」
「お、お姉様はやっぱりお姉様ってことが分かりましたわ!」
怒涛の流れでキラさんがアルテミスの曲を作るって事に決まりました。
「僕からも一ついいですか? さっきから考えてた事があるんですが」
「おっ、タっくんも隠し玉ー?」
「ジュンタさんのは、きっとまたヤバイやつに決まってます。PACSで学びました」
「た、確かに、ジュンタ君の想像力はヤバイもんね。でも期待しちゃうあたしがいるっ!」
「心構えはもう出来たし!」
「さあ来いにゃ!」
「では……、僕にPA、舞台装置、演出周りを任せてもらえませんか」
真剣な眼差しで皆に申し出るジュンタを見て、そういえばドルオタだった事を思い出した。
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