お礼
どうしてこうなった?
オレ達は今、ライブが終わった出演者用の楽屋にいる。
ここに連れてきた怪しい恰好の女性は、すぐ戻りますと言って一旦部屋を出ていった。
他の出演者らももう既に退室済みらしく、今はオレとジュンタの2人で突っ立っている。
「ジュンタ……これどういう状況?」
「いや、僕にもさっぱり?」
ドアが開くと5人の女性が入ってきて、一斉に頭を下げた。
「その節は助けて頂きありがとうございましたっす!」
「なの!」「だにゃぁ!」「ですわ!」「だぞ!」
なんかえらく濃いキャラが出て来た!
と思ったら、さっきステージで見たアイドルグループの子達じゃないか?
ステージ衣装から私服に変わってるから、雰囲気が違って判らなかった。
「えっ! リン君、彼女らと知り合いだった?」
「は!? ジュンタの知り合いじゃないのか?」
「ほら、リーダー! やっぱり覚えてなかったの!」
「やっぱりここあの言った通りだったし」
「ぐっ、あの時は自分らまだ駆け出しだったっすから」
「前、飲み屋街で路上やってた時に助けてくれたっちゃ?」
「い、いや、路上生活してる若い女性を助けた覚えはないな」
「リン君、多分それ路上違いっ!」
「申し遅れました、私『一華 香』と申します。以前、夜間の路上ライブで活動をしていた際、悪漢に難癖をつけられ絡まれた所を助けて頂き、本当にありがとうございました。本日は、私共アルテミスのライブ中に貴方様を見つけまして、お引止めした次第です」
「「わ、分かりやすい!」」
「思い出した! オレが荒れてた頃に飲み屋街でショウゴが間に入ったトラブルの!」
「そっす!」
「えっとアイドル目指してるとか言ってた!」
「そうなの!」
「凄い恰好してたちょっと痛い五人組の!」
「「っ! ぐはっ!」」
「い、痛い所ついてきますわね。あの頃は必死だったのもありまして」
「ウチらなりに頑張ってたっちゃにゃぁ」
「既に過去! 今はいい思い出だし!」
「リン君、僕にも分るように説明を」
ジュンタに三か月ほど前にあった出来事を簡単に説明した。
「なるほど、で、今回僕達をここに引き留めたのはその時のお礼を言う為でしたか?」
「基本的にはそっす! まずきちんとお礼を言いたかったって事が一つと」
「ボクらに何かお返し出来るお礼はないか聞きたかったの」
「お礼って言ってもなぁ、オレの方は特段これと言って何も要求なんてないんだが」
オレは適当に断って帰ろうとしてたら、ジュンタがオレに耳打ちをしてきた。
「なら、さっき僕が言ってた事の確認をですね……」
「そう言えば、歌に能力が乗ってるとか言ってたか?」
「出来ればそれを確認したいんで、この場で一番得意な歌を目の前で歌ってくれってお願いしてもらってもいいですか」
「なんかクソ恥ずかしくないか!? むしろオレの罰ゲームじゃねーか!」
「大丈夫です! 今、能力判定と種類を計測するアイテム作りますから、お願いします!」
早速、後ろ手でスマホの様なアイテム端末を創造するジュンタ。
なにが大丈夫なのか理解できないが、仕方がないので役に徹する事にした。
「ならお願いというか、ちょっと確認させてもらいたい事もあるから、オレたちの目の前で一番得意な歌を歌ってもらうって事は可能か?」
「な、中々にSいの!」
「こっ、これは意外にレベルの高い羞恥プレイですわね」
「わっかりましたっす!」
「余裕だっちゃにゃぁ!」
「ここあの魅力がそうさせたんだし!」
キミら結構いい性格してるね。と余計な事は言わないようにオレは口を閉じよう。
「その前に、みなさん自己紹介をしてもらってもいいでしょうか。一応僕は八乙女 絢太、北高の一年、16歳です。そして彼は」
「天狗 䮼、18歳。つい先日まで工業の二年だったけど、自主退学した」
「自分らとタメだったんっすね! 自分はこのArtemisでリーダーをやってる南高二年の月野 明輝っす!」
「同じく南高二年の星川 桜煌なの」
「同じく南高二年、森 葵育だっちゃ!」
「私も皆と同じ南高二年の一華 香ですわ」
「神人 恋焦。ここあも皆と同じ南高の二年だぞっ!」
ジュンタが凄い勢いで、後ろ手にアイテム端末に情報を入力してる。
「ありがとうございます、では、この端末の画面に指を触れてから自分の名前をもう一回言って貰ってもいいでしょうか」
「これ、何だっちゃ?」
「面白そうな機械だし!」
「興味湧きますわね」
「まあ計測器といいますか、タネあかしはまた後で。歌ってもらってもいいでしょうか」
「了解したっす!」
「ま、任せろなの!」
ライブ同様に立ち位置を確認し、スマホで曲を流すと彼女らの雰囲気が一変する。
歌が始まる前のハーモニーの重ね合わせだけで既に浮遊感がある。
歌のパートが変わる度、メインボーカルが変わる度に違った感触を受け、高揚感、守護感、疾走感、万能感、幸福感など不思議な変化が感じられる。
ジュンタも感じ取っているらしく、アイテム端末を確認してる目が見開いてる。
「どっ、どうだったっすか! 自分らの歌は!」
「精一杯歌わせて貰いましたわ!」
「ライブも凄かったけど、目の前で聴くとハーモニーが強くて、不思議な感覚を覚えるよ」
「やっぱり僕の感覚は間違っていませんでした! 皆さんにどういう事か説明する前に、リン君ちょっとこっちへ……」
ジュンタが相談とばかりに端っこでコソコソ話を始める。
「この端末を見てください、この表示が……」
彼女らの歌声に乗る能力をこの端末で計測し、目に見えるようにしたらしい。
そして彼女らを仲間に引き込みたいというジュンタは、判断をオレに委ねてきた。
「オレの判断で皆に迷惑が掛かるようなら却下だが、ここは皆の意見を聞いてからだな」
ということで、テレパシーでみんなに聞いてみた。
≪その子たちってカワイイ? カワイイ子ならあーしは賛成ー!≫
≪へぇー、面白い子達見つけたわね。リン君がOKなら私は問題ないわよ≫
≪あたしも生でライブ見たかった! って、あの時の子達!? 偶然って凄いわね!≫
≪俺が介入した時のあの子達か! 元気にやってたんだな、リンがいいなら問題ない≫
≪だんだん大所帯になってきましたね。能力の事が公に漏れないように、より一層の注意が必要になってきますが、リン先輩とジュンタ先輩の判断であれば誰も異論なんてありませんよ。 というか私も生でアイドルのライブ見たかったです!≫
「概ね問題ないって捉えていいのかこれ?」
「た、多分そうですかね。僕らの判断に丸投げって感じですけど」
オレが感覚的に受けた感じだと、能力自体はまだまだ微弱なものだけど、ジュンタとキラさんがいるからそこら辺は問題ないとして、ジュンタが彼女らをどうしたいのか、どう扱うのかでオレの判断も変わってくる、かな?
「ジュンタは彼女らをどう扱いたいんだ? 多分、既に考えがあってオレを呼んだんだろ?」
「特にこれといった物があったわけじゃなかったんだけど、端末に表示されたのを見てアイディアは膨らみました。簡単にいうと彼女らは優秀なバッファーになれる素質があります」
「バッファーってゲームでよくある能力強化とかしてくれるアレか?」
「大体そんな感じです、僕らの後ろ盾やサポートって意味で」
「ジュンタにはいつも驚かされるな。返事は決まった、信頼してるぜ!」
オレは彼女らの方に向き直って伝える。
「仲間にならないか!」
そうカッコつけて言ったのに、それじゃなんの事か全くわからないだろうとジュンタに怒られた。結局、全部ジュンタにお任せになってしまった、すまん。
まず誰にも絶対に漏らしてはいけない話だという事を前提に、それを約束してもらった上でオレらは超能力者だって事をバラした。
「ま、マジっすか!」
「び、びっくりだにゃ!!」
「そんな事って現実的にあり得ますの!?」
「想像しうる事は全て現実に起こりうる事なの!」
「ここあの予想どおりだし!」
「え? 予想通りってどういうこと?」
「えっと、以前助けて頂いた時に人間離れしたスピードとパワー、技であっという間に相手を倒したのを見て『あれは間違いなく超な能力を持ったものの仕業』って断言してたっす!」
「……リン君、結構やらかしてましたね」
ジュンタがこめかみを押さえ頭を振る。
「わ、わりぃ、あの時は仕方なかったというか……はい、気を付けます」
そしてオレらは、キミたちの歌に同じような能力の片鱗を感じ、今日ここに来た事を伝え、そしてジュンタの端末で判明したことを説明した。
「月野 明輝さん、あなたは闘争力を。星川 桜煌さん、あなたは耐久力を。森 葵育さん、あなたは敏捷力を。一華 香さん、あなたは理解力を。神人 恋焦さん、あなたは幸運を。皆さんの歌声は、今言ったものを高める能力を秘めています」
「えっと、どういう事だっちゃ!?」
「ちょっとよく分かりませんわ」
「ふっ、想像しうる事は全て現実に起こりうる事なの! 大事な事だから二回言ったの」
「じゃ、簡潔に言うぞ。キミたちはオレらと同じ超能力者のタマゴだって事だ」
「……マジっすか?」
「マジなの?」
「マジかにゃ?」
「……冗談ですわよね?」
「マジかだしー!?」
「それを踏まえ、先ほどリン君が言った『仲間に』という事を検討してもらえませんか」
「仲間になったとして、ここあ達は何をすればいいんだし?」
「もちろんそこだよな。これを聞いてどう判断するかは任せる。ただNOだった場合はキミたち全員の記憶、今日オレ達に会って話した記憶を消させてもらう(出来ないけど)」
「了解したっす! 自分はいいっすよ!」
「ウチも了解だっちゃ!」
「もとより否は存在しないの!」
「そうですわね、これはチャンスですわ!」
「聞く聞かない関係なしに、ここあ達全員『仲間』になるってことだぞー!」
「そういう事っす!」
「そういうことなの!」
「……えーっと、一応話しておかないとマズイと思うので、僕から説明しますね」
ある地下組織を潰す為に手を貸して欲しい事。今後の能力に関するサポートはジュンタを始めとして仲間皆で行う事。後で場を設けるので仲間全員と顔合わせが必要な事。それと、これは人間の命を奪う戦いになる事。などを伝えた。
「そうなりますと……そうですわね、これからよろしくお願いしますわボス!」
「ボスよろしくなの!」
「よろしくお願いするっすボス!」
「ちょーっと待った! ボスって!? オレ同年代だぞ? 流石に恥ずかしいんだが!」
「なら、よろしくにゃマスター!」
「マスターよろしくだし!」
「では、以後マスターとお呼び致しますわ!」
「よろしくお願いするっすマスター!」
「もう決定なの、逃げられないの、よろしくマスター!」
「ちょ! 待て待て! ボスもマスターも……」
「リン君!」
「ちょ、あ、え? ジュンタまで?」
「多分、それ断ると次『ご主人様』になると思う……」
「フッ、いい勘してるにゃぁ……」
「くっ! 私としてはソコで落としたかったのですが」
「惜しかったの……」
「あっぶねぇーっ!」
結果を皆にテレパシーで連絡した。
≪あら、よかったじゃない? マスター? ……プッ、クククッ≫
≪私はどちらかと言えば『ご主人様』の方が好みですね、その方たち中々やりますね!≫
≪ならあーしがリンの事ご主人様って呼んであげよっかー! にゃはははっ!≫
≪わ、私はどうせなら『旦那様』って呼びたいかなっ!≫
≪んなっ! さちこ先輩ズルいです! なら私もっ!≫
≪お前ら、いい加減にーしろぉぉーっ!≫
めっちゃ揶揄われました。
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