強化合宿二日目 新たな仲間
合宿中のオレ達が泊まる旅館に突然やってきた女性『煌 星』
監視カメラに映り込んでしまったオレたちに偶然気が付き、宿泊場所を突き止め、証拠を持って現れた。
晶の不注意で、オレたちがその人物だと認めざるを得ない状態に。
そしてその突然の訪問者は今、オレたちが宿泊している部屋で横になっている。意識はまだ戻っていない。
「ごめんなさい! ごめんなさい! 全部私のせいです!」
「まあ待て、落ち着け晶。お前のせいなんかじゃないから」
「リンの言う通り、大丈夫だ! リンがいれば大抵の事は大丈夫なんだろ?」
「アーちゃん。多分遅かれ早かれ、いつかはこういう日が来てたんだろうからさー、気にしても仕方ないっしょー? ほら、いつものように元気だしてー!」
「でもー、でもー、ううっ! ほんっとうにごめんなさいっ!」
土下座の姿勢を崩さない晶の背中に手を置き、天南さんが言う。
「晶ちゃん、あたしが保証する。大丈夫、問題ないわ。その意味ももうすぐ分かるわよ」
「そう……なんですか……?」
やっと顔を上げた晶の鼻を天南さんがティッシュで拭く。
「んー、大丈夫、大丈夫だからねー、よしよし」
晶を胸に押し付け、頭を撫で落ち着かせるアゲハ。晶からは「むぐっ!」と若干窒息気味の声が漏れる。
「あ、そろそろかも! ちょっと端っこに寄った方がいいと思う!」
天南さんの忠告に従って彼女から距離を取る。
非常に細かい淡い青、緑、赤色をした光の粒子のように見えるものが大量に彼女を包む。
超高速から光速へと加速し、粒子は線になり超高音、超高周波を発した。
最終的に全ての光が彼女の頭の中に吸い込まれ、その現象は終わった。
「ね? 大丈夫だったでしょ?」
天南さんがニコっと笑うと寝ていた彼女が目を覚まし、頭を振って周囲を見回す。
「彼女は……、あたしたちの新しい仲間よ!」
「……ふぇ?」
車酔いのような気持ち悪さがするって事で、落ち着くまで彼女には横になってもらった。
彼女に起きた事、オレたちの事を説明する。
彼女の地頭も相当キレるようで理解が早く「なるほど」と飲み込んでいった。
「それで湯野浜に合宿に来てたって事なのね。にしても不用心にも程があるわよ?」
「確かに、それについてはオレも迂闊だった。まさかその一瞬映り込んだ映像から俺たちに辿り着くとは思わなかったけどな」
「むしろ私で良かったわね、以後注意なさい、本当に命取りになるわよ? ちなみに監視カメラに映り込んでた録画映像は削除しておいたから安心して」
「え! ちょっと!」
ジュンタが何か聞きたかったようだが名前が出てこない。
「キラでいいわよ」
「えーっと、キラさん! 後で僕にやり方教えてもらえませんか?」
「はぁっ!? あなたさっきハッキングは犯罪って言ってなかった? ……まぁいいけど」
「やった! ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「で? そのハッカーさんは私たちに接触してどうしようと言うんでしょうか? 一応、さちこ先輩が『新しい仲間』って言っていたので、それも含めたうえで答えてもらえますか」
晶が理由を問いただす。
≪確かに、晶の言う通りだ。オレ達は彼女が何者なのかを知らない≫
≪そうね、ならあたしからも質問してみるね≫
「キラさん、まずはあなたの事を話してもらってもいいですか? あたしたちはキラさんの事を知る必要があるので」
天南さんが最初に言った「新しい仲間」という表現が効いているのか、彼女はゆっくりと自分の事を語りだした。
「私さ。小さいときに親が離婚して母親に引き取られたんだけど、幼稚園の頃にお迎え待っても待っても親が来ない日があってさ。どっかの男と逃げたらしくて、結局その後施設に入ったんだ」
思っていたより重い出だしだった。
「んで、学校にあがってからも親なし、とかなんとか言われて悔しい思いしてさ。なんで私は他の人と違うんだろうって考えて、行きついた答えがお金がないってのが一番の原因だって。 そっから図書館行って本読んだり、ネットで調べたりして勉強してさ。アルバイトしてお金貯めて、株取引やり始めてコツコツ稼いだんだ」
相槌を打ちながら、彼女……キラさんの話を真剣に聞く。
「気が付いたら中学も卒業して、公立の高校に入った時には友達なんて誰もいなくて。笑えるよね。人並みになろうと頑張ったらお金はできたけど誰もいなくて、私独りぼっち。悔しいからそれもバネにしてさ、月収でサラリーマンの年収ぐらい稼げるようになって、ああ、私はもうこれでいいかなって。高校中退してからはネットとお金稼ぎに没頭したんだ」
「ちょ! ちょっと待ってください! 後で株取引で稼ぐコツ、レクチャーお願いできませんか!」
「ジュンタ先輩!? 少しは空気読みましょうよ!」
ズイと前に出てそういったジュンタの両肩を、晶が掴んで後ろに下がらせる。
「でさ、まあそしたら、やってることはご近所とか傍から見ればただの引きこもりニートなわけで。人と話す機会もなく、ただ淡々と機械的にお金稼いでたら、それはそれで段々と病んでもくる。今回の地震とかもそう。本音はザマぁって思いで海辺の監視カメラを覗いてた。そしたら奇妙な映像に当たっちゃって。最初は心霊映像かと思ったけど、興味が勝っちゃってさ。 どこまでも追いかけたらここまで来ちゃったってわけ」
「なるほど、そして私が誘導に引っかかってしまったと」
「まあ、そんな感じ。で、あなたたちは全員超能力者で、私も同じになってしまった?」
キラさんは自分が今に至るまでを説明し、何が起きているのか、まで追いついてきた。
「オレのことはリンって呼んでくれていい。キラさんの事、細かく話してくれてありがとう。 そして察しの通り、オレたちに接触してしまったことで、キラさんは能力に覚醒した」
「そう……なのね。で、私は今後どうすればいい? あなたたちに絶対服従を誓うとか? 逆らったら殺されるとか?」
天南さんが少し前に出てきてキラさんの手を取る。
「そんなこと言わないし、そんなことしないよ? あたしは……ううん、あたしたちはキラさんに仲間になってもらいたいの」
「仲間って……なんかの組織的なものに加入する意味合いで?」
「違うくてー、単にあーしらと友達になろうよって話ーっ!」
「こちらから強く迫りすぎて動揺しているんだな。単純に言えば、夜乃の言うとおり『友達になってくれ』って事だ」
アゲハとショウゴがなんか良さげな事言った!
キラさんはその言葉を聞いてから、少し俯いて肩をプルプル震わせ、そして畳にポタポタと涙を落した。
「えっ、ちょっ! なんで泣くしーっ!?」
キラさんは涙を零しながら少しずつ話始めた。
「……わ、私さ、ずーっと独りぼっちで、ほんと独りぼっちで。ホントはすごく寂しかったんだと思う……。だから、正直に言うね……。友達になってくれって言われて、すっごい嬉しくて……嬉しくて……」
そこまで話して、後は号泣してしまったキラさん。
状態が落ち着くまで、女性陣が側についていてくれたので、その間、何も出来ない男性陣は、キラさんにしてあげられる事はないかと話していた。
「あの、キラさんは、もし行けるならどこに行ってみたいですか?」
ジュンタがちょっとぼかしながら聞く。
「行きたいとこ? 突然ね……でも、そうね……もし行けるなら月……かな?」
「「月かーっ!」」
オレは海外、ジュンタは無人島、ショウゴは海の底って予想だったが全員ハズレた。
「え? 何、今の質問の意図ってなんだったの?」
キラさんが汲み取れずに困惑する。
「キラさん、私たちは何ですか?」
「え!? 何って、学生? 人間? だよね?」
「そうですけど、そうじゃなくて」
「……超能力者?」
「そうです! ということは?」
「……月に行ける……って事? ほんとに!?」
「あーしらもまだ行った事はないけどねー! けど、時間さえあれば可能だしー! 多分」
顔に元気が戻って来たように見える。
「さすがに距離がありすぎるし、オレたちもまだ行ったことがないから。確実に行ける……とは言えない、今はまだ……な。でも、その代わりと言っちゃなんだけど……」
オレは立ち上がり部屋の窓を開け外を見る。
「少し日も落ちてきた感じだし、ちょっとしたプレゼントをしようか」
振り返り、みんなを見回して言う。
「月にはまだまだ届かないが」
≪宇宙ならすぐ目の前にある 晶、キラさんにベールを≫
「えっ! やっぱりこれ、テレパシーィィィーっ!」
キラさんの話が終わる前に、部屋の窓から飛び出し一気に成層圏まで上がり、さらに速度を上げ外気圏まで突き抜けた。
「きゃぁぁぁぁーっ!」
キラさんの絶叫が終わる頃には、オレたちはもう宇宙に漂っていた。
「リン、流石にいきなりはびっくりさせちゃうってー! ね、アーちゃん」
「そうですよリン先輩、女性はもっと優しくデリケートに扱ってくださいね?」
「リンはもう少し、女性の扱いに慣れたほうがいいわよ!」
「あ、はい、すみませんでした」
怒られはしたが、視界に映る光景に言葉を失いながら、その美しいさまに魅入っているキラさんを見たら「ま、いっか」と思えた。
さっきとは違う涙が、キラさんの頬を伝い落ちていく。
オレは月に手を伸ばす、が、やはりまだまだ遠く感じる。
だが、さっきキラさんが言った「月に行ってみたい」という言葉は俺を強く惹きつけた。
「いつか、必ず……」
そう、月に向かい約束を呟く。
その後、問題なく地上に戻り、キラさんと連絡先を交換。
明日の午前中にまた落ち合うことにして帰っていった。
「ふうーっ、今日はえらく疲れましたね、精神的に」
ジュンタが肩でため息をつき畳に寝転がる。
「えーっと……まずはリンが倒れて、テレパシーに覚醒して、みんなが意識失ったと思ったら能力に覚醒して、海の底行って、能力の傾向が判って、戻ってきたらキラさんがいて、宇宙に飛んでーだもんねー! めっちゃ濃すぎーっ! 精神的にめっちゃ疲れたぁーっ!」
「私も精神的に疲れましたー」
「晩飯前にお風呂入りたいくらいよねー」
「お、それいいな! オレも風呂行くかな!」
結局皆で温泉に疲れを取りに行くことになった。
ジュンタが顔にタオルを乗せながら風呂に浸かり話す。
「今後はテレパシーを鍛えて、日常使い出来るようにしないとダメですねー」
「まぁスマホがあれば事足りるとは思うけど、そうだな、キラさん含め皆が日常使い出来るようになったら便利だよな」
「それなんだが、テレパシーって送れるのは言葉だけか? リアルタイムで今見ているものを共有したり、頭の中のイメージや映像とかも送れたら、受け取る側の情報量としては凄まじいものがあるだろうなと思ったんだが」
「……ショウゴって時たま天才だよな」
「その発想はありませんでした、ショウゴ先輩ナイスです!」
「そ、そうか?」
「あ、今ちょっとアイディアが閃きそう……、しばらく考え込んでもいいですか」
「お! もちろん! ジュンタの奇抜な発想、楽しみにして待つさ」
「はい! ありがとうございます!」
それからジュンタは黙って考え事を始めた。
風呂を上がり、一旦部屋に戻ってもジュンタはまだ考え込んだままだ。
「あ、キラさんから電話だ」
女性陣が反応素早くオレを見たが、何も悪い事をしていないのでそのまま電話に出る。
「もしもし、キラさん何かありましたか?」
「えっとね、明日の午前中早めに皆に会えないかしら? ちょっと、話さなきやいけない事が出来たわ」
「ちょっと待ってくださいね、今みんなに聞いてみます」
内容を伝えると、早めにチェックアウトすればいいんじゃないかって事になった。
「了解です、んじゃ合流場所はあとで送ってください」
「分かったわ、よろしくね。遅くに連絡してごめんなさい。」
「いえ、遠慮せずいつでも連絡してくれて大丈夫です。もう仲間なんだし」
「そうですよ! 私にはいつでもいいんで連絡くださいね!」
「取り留めのない話したい時はあーしがいるよー! オツでーっす!」
「あたしにだっていつ連絡してもいいんだから、ね! キラさん」
「あ、ありがとうはこっちのセリフよっ! ん、んじゃおやすみっ! 明日もよろしく!」
そう言って電話は切れたんだが、キラさんてあれか? 少しツンデレ入ってるか?
明日の朝は、早めのチェックアウトが決まった。
その夜、SNS「XVZ」にはこんな話題が投稿されていた。
「昨日の地震の後さ、深海魚が大量に水面に浮かんでたって父ちゃんが言ってた」
「うぇ、マジで!? ちょっと想像したらゾゾってなった」
「で、その魚はどうしたの?」
「父ちゃん、漁師なんだけど全部捕まえてきたらしい。大漁じゃー言ってた」
「メンタル強っ!」
「いやホント、最近変な事ばっか起きてるよな」
「確かに! ニュースも嘘多いし、信じられない事ばっかり」
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