強化合宿二日目 開花
三人が倒れてから20分程も経っただろうか、何が起きているのか意見を出し合う。
「どうしてこうなったのかが分かりませんが、起因は間違いなくさっきのテレパシーで脳に干渉した事だと思います。私とリン先輩が残ったのであれば、既に能力に覚醒しているという共通点で理解できます。ですがアゲハちゃん……」
「あ! あのねアーちゃん! まだリンにしか話してなかったんだけど、実はあーしもついこの前覚醒しちゃいましたー! にゃはははっ! ビックリした? いやー、中々言うタイミングがなくてさー! 黙っててごめんね?」
「んなっ! アゲハちゃんまで!? いつの間に覚醒してたんですか!? 全く気が付きませんでした! リン先輩は知ってたんですね!」
「もっとサプライズ的に驚かそうと思ってたんだけど、晶にはバレちゃったな。そう、アゲハもオレたちと同じ能力者だ! しかも、単独で飛べるんだぜ! 能力的に言えば……」
「わーっ、待って待って! それ、あーしが言いたいやつーっ!」
なんてどさくさ紛れ的に、能力は飛行と身体強化って事を晶に話し「切っ掛け」について聞かれない様、勢いで乗り切った。
本当は、つい最近なんてもんじゃない。アゲハは誰よりも先に覚醒してたんだ。
ただ「中学二年の時に」って言ったら、それまで天南さんを騙してたみたいじゃないか。
アゲハはその事に悩み、オレにどう打ち明けたらいいのか相談してた。
そこに打ち明けたくない理由があったからだ。
アゲハは騙したんじゃない、頑張ったんだ。苦しさと一人戦ってたんだ。
二人で考えた結果、まぁ、晶に説明したような感じになったわけだ。
下手な嘘だけど、打ち明けて気が楽になるんだったら、それでもいいと思うんだ。
「これで合点がいきましたね! と言う事は、もしかしたら、もしかしますかね?」
≪多分、アーちゃんの予想で合ってると思うよー! リンも同じ考えじゃなーい?≫
「マジか! もう使いこなしてんじゃん!? いや、アゲハって本当に器用だよな! 」
「アゲハちゃんも私と同類で、どうかしてる部類ですね! 嬉しいです!」
そこ喜んでいいポイントなのか!?
「そういえば、私が覚醒した時は、何かエネルギーの固まりみたいな波動が出ましたけど、ちょっと違う感じですね」
「ああ、確かに。オレの時は物凄いエネルギーの爆発があったな。何が起こってんだ? まさかアルのように目を覚まさないまま……とかは勘弁してくれよ」
「どっちかって言うと、あーしが覚醒した時に似てるかもー」
そんな事を話していたら、ショウゴの身体の周りに淡い緑色と茶色の光が纏わり始め、明滅を繰り返した。ゴウっという音と共に、ショウゴから放たれた打ち付けるような波動が膨れ上がったと思ったら、一瞬で体内に吸い込まれ消えて行った。
「リン先輩……これって、もしかして」
「もしかしたら……もしかする、な」
「もう確定だろうねー! どんな能力なのか気になるーっ!」
だがショウゴはまだ目を覚まさない。
そこから更に10分程したら今度は天南さんに変化が現れた。
チカチカと瞬く星のような粒子が身体を纏い、明滅しながら膨張と収縮を繰り返す。天南さんの姿がブレたり、消えては現れを繰り返す。
「ちょ! コレ大丈夫なのか!?」
「わっ、わかりません! わかりませんけど、今コレに触れたりする方がマズイ結果になるような気がします! さちこ先輩を信じて待つしかないです!」
「ちょっとファンタジーな感じー? サッチ、こう見えても乙女だからなー」
膨張と収縮が収まるにつれ、身体の状態も安定してきた。最後にチカチカした粒子が急激に数を増やし衝撃波を放つ。ショウゴと同じで、粒子は一瞬で全て体内に吸い込まれて行った。
更に10分程も経過すると、ショウゴと天南さんが目を覚ました。
「……あれ? あたしどうなったの? なんか色んな所に行った気がするけど……」
「……俺は、気を失ってたのか? あまり覚えていないが、強くて優しい何かに守られていたような気が……」
「起きましたね! 寝てる間にリン先輩とアゲハちゃん、三人で話した結果……」
晶は簡潔に説明を始めた。
「先程のテレパシーにより、脳への干渉が行われ、能力を司る部分が活性化するに至る何らかの作用により、結果、さちこ先輩とお兄ちゃんは覚醒したと思われます。私やリン先輩、そしてアゲハちゃんが覚醒した際に起こった現象と似たような事が起きましたので!」
「「……は?」」
「そりゃまあ、あなた今から超能力者ですよ、なんていきなり言われたらそうなるよな」
「私は結構すぐ理解したと思うんですけど」
「あーしもアーちゃんと一緒! すぐ理解した派!」
そして二人には、何が起こったのか、晶から細かく説明がされた。
「何にしろ能力に目覚めたのは間違いない。ただ何が出来るのかは、これから時間かけて把握して理解していく必要があるだろうなー」
「あ、でもお兄ちゃんに関しては何となくですけど、私と同じ緑の光が混ざってたので、私と近しい何かだっていうのは想像つきますね。」
「アーちゃん賢い! やっぱ回復系かな?」
「多分、そういう類だと思います、少なくとも兄妹ですし!」
「俺に……回復能力……? あまりピンとこないな」
そのままショウゴは黙ってしまい考えふけってしまった。
「天南さんはどう? 気分は悪くなったりしてないか?」
「んー、ちょっと車酔いみたいな吐き気の感じはするけど、とりあえず大丈夫よ。それよりもアゲハよ! 覚醒してたんなら教えなさいよねっ! 多分、どっかのタイミングで驚かせたくてーなんていう理由だろうけど。で、どんな能力なの!?」
「にゃはははっ! ごめーんサッチ! タイミング狙ってたらアーちゃんにバレちった! 能力はねー飛行と身体強化って感じだよー。ちなみに背中にはイカした羽がっ! ほらっ!」
部屋の中で軽く浮かんで見せると、背中に生える蝶の羽。
「うわぁ……すごい綺麗……。アゲハってばホントのアゲハ蝶じゃん! めっちゃアゲハっぽいし凄く綺麗だよっ!」
「やっぱりアゲハちゃんはどうかしてる部類……! それにしても本当に綺麗です!」
「ありがとっ! そういわれると嬉しいもんだねーっ!」
「しかしさちこ先輩の能力は全く想像がつきませんね。キラキラも何だったのか不明ですし」
「んー、それなんだけどさ、何となくわかったかも? ちょっとだけどね?」
「マジで!? サッチもどうかしてる同盟入るー!?」
「マジですか! さちこ先輩もどうかしてる部類の仲間入りじゃないですか!」
「なんなのその、どうかしてる同盟って! それよりジュンタ君よ! 多分、あともう少ししたら……虹色……ファンシー……ポムッ? ……って何言ってるのあたし?」
「にゃはははっ、やっぱりサッチもどうかしてるなーっ!」
――プァー! ♪♬♩♫♬♩♫
「「……は?」」
突然鳴り響くラッパの音。それを合図にジュンタの身体がパステルカラー的な虹色の光を纏い始める。眠っているジュンタの周りにおもちゃの兵隊にしか見えないような人形が現れ、楽器を演奏しながらグルグル回り始めた。
更に、身体の上の空中に、小さいがスポットライトの様なものがいくつも現れてグルグル回転し演出する。
オレたちはその光景を呆気にとられながら見ている訳だが……。
おもちゃの兵隊がピタッと止まったかと思ったら、一斉にジュンタの方に向き直った。
――パンパカパーン! ♪♬♩♫♬ ……ポムッ!
再度鳴り響いたファンファーレと共に紙吹雪を散らし、破裂して消えた……。
そして虹色の光は部屋全体に広がり、やがて薄くなり消えていった。
その光景に皆、唖然となり硬直している。
そんな中、ジュンタが目を覚ます。
「……ん? あれ? なんで僕寝ちゃって……って、みんなどうしたの? 大丈夫!?」
お前が一番大丈夫じゃねぇぇー! って感じの声が廊下まで響くのであった。
「あっ、ほらっ! ジュンタ君が一番どうかしてるじゃない! ね? だよね!?」
必死で仲間を増やそうとしているのか、はたまた擦り付けようとしているのか。
その後何が起こったのかを皆でジュンタに説明し、どんな能力に目覚めたのか確認して、後で皆に報告するようにと皆から念を押されていた。
「僕が能力者、ですか? ……そうですか、……そうですか」
「って事はー! サッチの能力は『未来が視える』とか『予知』みたいな感じー?」
「んー、多分それに近い何かだろうとは思うけど……大体そんな感じかな? 今のところ」
「結局皆さん相当ヤバイ能力じゃないですか! 絶対バレないようにしないと危険ですよ!」
「「確かに!」」
「あー、えっと、一ついいか?」
「あ、お兄ちゃん、何か分かった?」
「ん、ああ。 ……腹減ったな」
「「ズコーっ!」」
思わず皆で王道のズッコケをやってしまった。
「あ! そういえば焼きイカが私を待っているのでした!」
「あっ、はいはいっ! あたしは焼きもろこしが!」
「じゃあ、僕も焼きイカを!」
「あーしも太くて硬い焼きイカーっ!」
「だろ? ちなみに俺は焼きそばだな」
「そもそもオレが倒れたばっかりに、一旦戻る事になって悪りぃ! ゴメン!」
「謝る必要なんてないわよ、リン。だって……ねぇ?」
「リン先輩がいれば大抵の事は大丈夫です!」
「合宿中の飲み食いはリンのオゴリって言ってたーっ! 買い行こーっ!」
「あっ! 早く行かないと売り切れちゃうみたいよ!」
「んなっ! そんなことまで分るんですか! さちこ先輩! 便利っ!」
「っていう映像が見えた、かな?」
「そんな事より急ぎましょう! 焼きイカが私を待っています!」
天南さんの言う通り、欲しかった食べ物は皆ギリギリで買えた。
海辺で食べる焼きもろこしと焼きイカは格別だね!
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