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Rising Force - Genesis -  作者: J@
成長編

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33/124

アルバイト

 皆の夏休みに合わせて強化合宿をやろうという話が出る。

 発案はアゲハで、計画主犯は晶。そして天南さんが巻き込まれた感じだ。

 なんでアゲハが? と疑問を投げ掛けられたが、前日の大怪我を晶に治してもらった際に、オレが仲間に引き入れる為に、全てを話した。という事にした。


 まあ、晶を引き込んだ時点で、誰も「NO」とは言えない事を前提とした、確信犯からの指令だ。オレとしては、これを機に皆仲良くなってくれると嬉しいと思う。

 しかし、アゲハの人たらし術は凄いものがある。晶なんて既に「アーちゃん」って呼ばれてるくらいだ。ちなみにオレが言うまでもなく、ベールもちゃっかり付与済みだ。流石!

 合宿を行う前まで、短期間ではあるが、それぞれで資金集めのバイトをすることになった。

 とは言ったものの、オレは学校に行っていないので、基本的に日中は時間を持て余していたりする。


「バイトかー、1回もやったことないんだよな」


 そうアゲハに漏らしたら、お金なら沢山あるから任せて! なんて言われたが、流石にそれはヒモっぽくて抵抗がある。寧ろアゲハの分もオレが稼いでみせる! と言ってしまった。

 言ったからにはちゃんと稼ぐつもりだが、如何せんどんな内容の仕事がしたいのか、してみたいのか。そしてオレに何が出来るのかが分からない。

 能力を使えば超高額な危ないバイトとかも余裕ではあるが……。


「うーん、そうじゃなくて、あくまでも普通の人が普通にこなせるバイトがいいよなぁ」


 そもそも合宿といっても、どこへ、何日間、一人当たり幾ら位の資金が必要、とか何も情報が無いあたりからすると……。


「行き当たりばったり合宿だろうなー」


 そもそも短期間のバイトだから日雇いで割のいいやつって事になる。

 うーん、分からん。街中でもブラついて色々見て回ってみるか。

 などと考えながら筋トレをしているが、オレ自身の超回復もそうだが、晶のベールが付与されたままなので、全くの疲れ知らずになっている。


「しかしオレも随分と変わったもんだな。取り巻く環境もだけど」


 感謝しなくちゃいけない人らを思い浮かべていたら、病院の先生が出てきた。


「あ、そういえばチタン合金のプレート、入れっぱなしだったな……」


 とりあえず支障はないし、病院に行って取り除くのもなんかなぁと思う。

 ふと良からぬアイディアが浮かんで来て、いや無理だろと自分で突っ込んでみたものの、一度出て来た考えは簡単には引っ込んでくれない。絶対アゲハの影響だと思う。

 まあ、体内でチタン合金を溶かして全身の骨と融合させる、というものなんだが。

 ベールがあるとはいえ、流石に体をいじくるのは躊躇というか勇気がいる。

 だけど物は試しだよなと、右手に入っているチタン製のボルトを()()()()小指の骨に浸透させる。


「あっつ! ……くないな? アレ? 何ともねぇ……」


 熱くも痛くもなんとも無かったという、まさかの結果に驚いた。


「優秀すぎるだろ晶のベール!」


 なら、やるしかないよなと覚悟を決め、体内のチタン合金を()()()、一気に全身の骨の隅々まで行き渡らせ浸透させた。

 歯を食いしばってやったのだが、あっさりと出来てしまった。

 あちこちの関節の可動、腕や足の曲げ伸ばしが非常にスムーズになり、骨の剛性が上がったことにより身体全体がレベルアップした感が半端ない。


「スゲーな! めちゃくちゃ快適だコレ!」


 とは言え、こんな無茶が出来るのはオレだけなので誰にも話せない。みんなに知られたらめっちゃ怒られるやつだこれ。

 そして後で気が付く「金属探知に引っかかる」「レントゲン不可」という事。


「ヤベっ。飛行機、乗れないじゃん」


 まあ、そもそも乗る必要もないのだが。


 オレは街に出てブラブラと歩きながら、何か割のいいバイトはないかと、キョロキョロ物色する怪しい人になっている。


「あ、リンさん! お久しぶりです! お疲れさまッス!」


 声がした方に顔を向けると、中腰で挨拶している集団。

 そう言えばあったな、チームR! 思い出して少し恥ずかしくなる。


「おう、お疲れさん」


 そう言って片手を上げ、立ち去ろうとしたが、気になって何となく聞いてみた。


「……で、みんなで何してんの?」

「え! リ、リンさんが声かけてくれるなんて! 俺、一生忘れないッス!」

「「俺も!」」


 どうなってんの? と思いながらも集団に近寄ってみた。


「今、オレらこう見えても仕事中なんス! 飲み屋とかクラブとか掛け持ちで呼びこみやってるんスよ!」

「へー、そうなんだ。……それって割りいいの?」


 面と向かってバイト探してんだよね、とは言えない雰囲気がある。


「普通は時給とかなんスけど、オレらのとこは、呼び込んだ客が店に落とした売り上げに応じてバックを貰える事になってます」

「なら全く呼び込めなかったら全く稼げないし、稼ぐなら青天井ってことか?」

「そうッス! 難しいッスけど、結構やりがいあるんスよねこの仕事」

「マジか、青天井ってのは夢があるな」

「ッスよね!? この際リンさんも一緒にどうッスか!!」


 周りの奴らは、リンさんに失礼だとか、命知らずだー、とか止めてる。


「やって……みようかな」

「マジッスか! うおーっ! リンさん居れば無敵だあー!」

「え、あ、いやオレこういうバイト初めてだからさ、最初何すればいいの? ってかゴメン、名前なんだっけ?」

「あ、俺は大野っていうんで『おーちゃん』でいいッス! んじゃまず事務所行ってバイトの登録手続きしましょう!」


 そういうことで、このおーちゃんにホストクラブ的なところに連れてこられた。

 スタッフは皆成人してる感じで20歳前半から中盤と若い。

 そういえばオレ17歳なんだが……いいのか? 飲み屋の呼び込みしても?


「先輩! バイト希望の知り合い連れてきたッス! よろしくお願いしますッス!」

「おお!? イケメンだな、名前と年齢は?」

天狗 䮼(あまつ りん)です。17歳」

「ふんふん、リン君、20歳っと。OK! んじゃ、早速呼び込みからやってみようか」


 なるほど、こういう感じで未成年が夜働いていたとかで摘発されるんだな。


「おーちゃん、オレはこれから客を店に呼び込めばいいのか?」

「そッスね! 声かけて脈ありそうなら店まで案内すればOKッス」

「そうなんだ、ならちょっと外ブラブラしてくるわ」

「あ、俺も一緒行きますッス! リンの兄貴、よろしくお願いしますッス」


 いや……、おーちゃんどう見てもオレより年上だよね? ちょっとぽっちゃりというか小太りだし。兄貴って。まあ悪い気はしないけど!

 とは言ったものの、知らない人にいきなり声をかけるってハードル高いな。

 そんなことを考えながらブラブラしていたら、仕事帰りの四人のお姉さん方とすれ違う。


「ちょっと、ちょっと待ってそこのお兄さん! 君めっちゃイケメンじゃない!?」

「わーぉ、ほんとだ君カッコイイね!」

「……あれ? 君どっかで会ったことないかな?」


 ナニ? 何なのこの逆ナンパ状態。


「さすがリンの兄貴ッスね! 声かける前に声かけられるとか、半端ないッス!」

「声かけるってなーに? 君たちどっかの店の呼び込みだったりするのー?」

「はい、オレ今日初めてのバイトで、今お姉さんたちに初めて声かけられました」

「え、マジ!? んじゃあたしたち君のお店に行こうかな!」

「それいいね! 私も君の……んー、名前なんて言うの?」

「あ、リンっていいます」

「リン君ね!  了解、よろしくねリン君!」


 流されるままお姉さん方をお店に案内することになってしまった。

 途中で変な奴らに絡まれてる五人組のお姉さん方を助けたら、付いてきた。


「リンの兄貴、今日呼び込み初日だってのに、この人数は半端ないッスよ! いやマジでもはや伝説ッスよこれ!」

「いやいや、たかだか九人くらいあるだろう? たまたまだよ、たまたま」


 騒がし過ぎる後ろの声に、だよな? と振り返る。


「なんじゃこりゃぁーっ!? 50人以上いるんじゃないか!? ……えっとー、みなさんこれからホストクラブに行くんですが、大丈夫なんでしょうかー!」

「「はーーいっ!!」」


 オレは、こういう世界のノリを知らないので、こんなもんなんだなと思うことにした。


「みなさーん、お店はこちらになりまーす! 混雑するかもしれませんが楽しんで行ってくださーい!」

「「はーーいっ!」」


 おーちゃんが先導してお店に入って行き、スタッフに状況を連絡したら、目が飛び出しそうになっていたらしい。まだ店内に入れていないお客が行列を作っている。


「兄貴! 兄貴も店の中でスタッフとして応対してくれって店長が!」

「なっ! え、お、おう! 分かった!」


 ごめんなさい、何にも分かりません!

 とにかく呼ばれたら席に座って適当に話して。また呼ばれたら移動して適当に話して。

 そしたらさっきよりも女性客増えて、正直ビビった。

 とにかく、あっちこっちに呼ばれまくって沢山の人と話して、気が付いたら深夜も二時。

 店内は酒と香水の匂いが充満してるけど、お客も大体帰って今は後片付けをしてる。


「おーい! 皆集まってくれるか。 今日の事で話がある」


 呼び込み含めスタッフ総勢で20名程もいた。


「今日は、この新人呼び込みリンのおかげで、なんと売り上げが1千万越えだーーっ!」

「うおーーっ!! リーン! リーン! リーン!」


 店内に響くリンコール。嫌ではないが……こういうのはあまり好きではない。


「と言う事で! 今日のMVPリンに10万円の報奨金をプレゼントだー!」

「「おおおおーーっ!」」


 え、これ貰っていいの? マジ? あ、こういうの結構好きかも!


「次に、意外や意外、今日の売り上げ貢献二位は、おーちゃんだ! 3万円プレゼントー!」

「「おーっ!」」


 ちょっと驚きが少ない気がするが、やったなおーちゃん!


「明日からもまたよろしく頼むぜー! 今日はお疲れさまでしたー!」


 締めの挨拶が終わり怒涛の数時間が過ぎた。

 気が付けば呼び込みバック分と報奨金で20万円以上稼いでました。

 誘ってくれたおーちゃんに内緒で3万円をお礼として渡したら、額に入れて一生飾るって、めっちゃ喜こんでた。

 帰り道で、当初の目的を思い出したオレ。


「あれ? これ合宿の資金集め、終わりでいいんじゃね?」


 明日もよろしく言われたような気もするけど、もういいかな。

 なんてったって、染み付いたニオイがキツイ!

 さっさと風呂入って寝ようと、街中を飛んで帰ろうとした所、叫ぶ声がした。


「ちょっと! なんですかっ! やめてくださいっ!」


 またか、という感じはしたのだが、助けないことには寝覚めが悪そうだ。

 声のする方に行ったら、三人の男が一人の女性を車に引きずり込んだっぽく、車が急発進して逃げたところだった。

 (れい)が拉致された時の防犯カメラの映像を思い出してしまい、一瞬で頭に血が上る。

 超高速で飛行し車の天井に張り付いて、そのままかなり上空まで飛び上がった。

 下に被害が及ばないよう、街外れ上空に移動する。

 車の中からは男共の叫ぶ声と、女性の悲鳴が聞こえてきた。

 ホントに胸糞悪い奴らってのは、何処にでも沸きやがる。

 車を空中に浮かべたまま、オレはボンネットに足をおろす。


「おい、お前ら、その女性を拉致して、一体どうするつもりだったんだ」


 男共は「ひぃあ゙ぁーっ!」とか「だっだっだっれ! だっだっ」とか、崩壊し過ぎなくらい後部座席に逃げている。

 オレは、シートの背もたれもろとも後部座席を()()し、女性を浮かしてオレの隣に引き寄せて保護した、女性はガタガタと身体が震え過ぎてるので、仕方なく抱き寄せる形になってしまったが。


「お前らみたいなクズは、生きてる価値なんて無いんだよ。……死んどけ」


 オレは、能力で無慈悲に車ごと男共を握り潰した。

 激しい破砕音がしたが、そんなの関係ない。

 女性はその光景を見ると、失禁してしまったのだろう。足を伝ったそれが大量に地上に向けて落ちて行き霧となる。そして気を失ってしまった。

 車のゴミは宇宙に向けて飛ばしたので、途中で燃え尽きた事だろう。

 深夜と言う事もあり、闇夜の空にカッっと光る光景を目にした人もいないだろう。


 女性を抱え公園に降りたオレは、女性をベンチに寝かせ、とりあえず起きるまで側にいた。

 しばらくして目を覚ました女性は、プルプルと震えており、オレから中々離れようとしてくれない。

 お姉さんの名前は『瀬尾(せお) ドーラ』だそうだ。父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフ。金髪、25歳、信用金庫で秘書をやっていると話してくれた。

 一応オレも名前を名乗った。

 仕事の都合でやっと退社し帰路についた所を、知らない変な人たちに絡まれたうえ、車に拉致され、そしてオレに助けられたみたい。


「助けて頂いて本当にありがとうございます。今頃どうなっていたかと思うと……。それと聞いてはいけないと思うのですけれども、えっと、アマツ君……いいえ、リン様は、ヒーローとか異世界帰りとかの超能力者……? なのでしょうか!」

「様!?」


 買い物に行って「お客様」と呼ばれた事はあるが「リン様」は流石に人生初だ。

 それに、妙齢の女性からヒーローとか異世界とか。そんな単語が出てくるとは思わなかったから、様呼びも相まって思わず笑ってしまった。


「あははっ、悪い奴は許せませんから。そうですね、まあそんなとこです」

「そうなのですね! ではっ! 是非今度お礼をさせて頂きたいのですけれども、ご迷惑でしょうか?」

「ええ!? 迷惑だなんて、綺麗なお姉さんからそう言われたら断れませんよ」


 普通ならそれとなくお断りするが、だが、このセオドラさんは日本人にあるまじき ボン、キュ、ボン! で今日見たどの女性よりもスタイルにメリハリがあるのもハーフだからか? 断れないよね。

 いやいや、そもそもオレにはアゲハっていう超カワイイ大事な彼女がいる。

 誘われても絶対に行ったりしない。うん。


「うふふっ、そうなんですね? では後日連絡致しますので、連絡先を頂戴してもよろしいでしょうか」

「あ、はい喜んで」


 オレは一体何を「喜んで」なのか!? これはアレだ! さっきのバイトのせいだ!

 その後何があったのかは、また別のお話。

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Side Story があります! 目次「 Side Story 」の章に掲載。

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