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Rising Force - Genesis -  作者: J@
成長編

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32/124

告白、そして

「……前にさ、小さい頃から親に様々な虐待受けてたって話、したの覚えてる?」


 今回何があったのか、それを話すための前段が幼少まで遡るということは、ほぼアゲハの半生を振り返らないと説明が難しいという、相当根の深い問題だと理解する。


「ああ、もちろん覚えてる」

「あーしね、その頃からずっともう死にたくて。でも、自由に生きてみたいって願ってた」


 抱き着く身体が小刻みに震えており、当時の言い表しようのない感情が伝わってくる。


「そしたらね、中学二年の時、今のリンと同じように……覚醒したんだ。まるで神様が、自由に生きていいんだよって、そう言ってくれたんだと思った」


 アゲハが覚醒者!? オレと同じ能力者だったのか! ……いや、有り得ない事なんて存在しないだろ。オレもアゲハと似たような経験を経て、強く渇望した結果得た能力だ。

 そう言われれば思い当たる節がないわけでもない。オレがアゲハに能力を打ち明けた時、確かに素直に受け入れ過ぎていた。なるほど、そういう事だったのか、腑に落ちた。

 でも、どう返答したものか分からず、頭をポンポンと撫でた。


「でね、その時から……飛べるようになったんだ。見て……」


 アゲハの背中に、銀色の綺麗な縁取りと模様が入った、黒い半透明の蝶の羽が現れた。

 あまりの綺麗さに指先で触れようとするが、ホログラムのようにすり抜ける。オーラ的なものが可視化したのだろうか。


蝶羽(あげは)の名前と同じアゲハ蝶の羽……。綺麗だ……。これはもう、神様からの贈り物だな」

「それ……でね……。実母と義父、本当は自殺じゃないの。酔い潰れた所を空に連れ去って、落として……殺した……」


 思う所はあるが、何て言うか……理解出来てしまう。


「オレは、アゲハを責めたりしない。覚えてるか? 女子高生誘拐殺人事件。あの被害者はオレの幼馴染だった。オレとアルは助けに行って、結果、オレの目の前でその幼馴染は喉を掻っ切られて殺された。それを切っ掛けにオレは能力を得た。そして犯人共を全員、その場でミンチにして潰して……殺した。だからアゲハの感情は理解できる。責める事なんて絶対にない」


 ギュッと腕に力が入り、背中の羽がプルプルっとはためいた。


「それでね、お金がなかったのは本当だったから……悪い奴らから奪った。殺した親に対する行き場のない復讐心もあったと思う。違法薬物の取引現場とかに乱入してさ。それこそ億単位のお金。悪い事してるんだから報いを受けるのは当然でしょ? って。半分ヒーローか何かのつもりで悪い奴懲らしめて、お金奪ったの、沢山。中学三年、14歳の時の話」


 アゲハの口から漏れ出る、驚くほど濃い人生の告白。オレに許しを請うような告解。


「うん」


 オレは余計な口を挟まない様に注意して、相槌を打つ。

 まずは、アゲハの心の中に詰まっているモノを、全部吐き出させてあげたい。


「そして、ここからが私の懺悔と贖罪。……本当に話すのが怖いの。ごめんね。でもこれが今までの自分なの。ごめんね」


 アゲハはそれから何があったのか嘘偽りなく、正直にオレに話してくれた。

 派手に活動していた折、BUGSという地下組織関連の資金を奪ってしまった。それが切っ掛けで身元を特定されて捕まり、命と引き換えに、能力を組織の為に使う事で見逃された。

 それからは、その組織で飛行能力を使った監視、報告を主に行う事になる。


 下部に与する暴力団がチンピラを使い、組織に上納する資金確保の為に、身代金目的の誘拐を行ったと情報が入る。アゲハはその成り行きを監視し報告するよう命令を受けた。

 ここまでくると、流石にその先の予想がつく。きっと、アゲハは何も知らないまま、麗が殺されてしまった事件に関わった事になったのだろう。何度も「ごめんなさい」と謝り、嗚咽を漏らしながらも精一杯、誠実に話す姿で充分なまでに後悔が伝わってくる。

 後日、ニュースで被害者を知ったアゲハは、その日に強引に組織を抜けた。


 ずっと助けられなかった後悔が消えず、感情がグチャグチャになっていた。そんな時、天南さんがオレのお見舞いに行くと聞いて、まずはオレを知ろうと一緒についてきたのだそうだ。

 オレの人となりを知り、アルの状態を知り、後悔は更に膨れ上がり、居ても立ってもいられなくなったアゲハは、単身、組織への復讐を始める事になる。


 オレの事は、ほぼ一目惚れだったそうだ。あの夜、オレが放った光の柱に包まれたらしく、その時に感じ取った感情に猛烈に惹かれてしまったのだとか。

 オレと過ごすうちに、過去の後悔と組織への怒りが膨らみ続け、このまま見て見ぬフリは出来ない。こんな形のまま進んで行く先の未来に、自分の欲しい幸せはないと思い至る。

 そして、組織を完全に潰してからオレに打ち明けるつもりだった。それを贖罪として。


 この数週間で、全国に散らばる中継拠点十数か所。BUGS本部の中央部隊員含む組織構成員においては三百人以上。その命を刈り取ったのだと、震えながら話してくれた。

 大怪我は、思っていた以上に強い相手を襲撃してしまい、その時に負ったもの。

 そいつと直接の面識はないものの、倒し切れずに逃げられた為、もしかしたら正体がバレたかもしれない。でも、オレに迷惑をかけてしまうのが嫌だし、これは自分の贖罪だからと、最後まで一人で事を成すつもりだった。そんな時に、病院で鉢合わせてしまった。


 結局、オレに頼ってしまい、今ここに居ると、アゲハは語ってくれた。

 なるほど。その話を聞いたオレが、アゲハを罵り軽蔑し離れて行くのが怖かったのか?


「アゲハ……。お前の中に詰まってたモノは、それで全部か?」

「うん……これで全部。もう隠し事なんて何もない。全部話した。……幻滅、したよね」


 アゲハはまだオレの事をよく分かっていないのかもしれない。オレは一度絡んだら面倒臭い奴なんだ。それに、オレにとってお前は敵でも加害者でもない。


「もう忘れたのか? アゲハがオレに助けを求めた時、オレは何て言った?」

「えっ……一言『分かった』って……」

「そう、分かったって言った。オレを頼ってくれて嬉しかったよ。大丈夫、心配すんな! それに、オレとアゲハの目的、ターゲットは同じだ。一人より二人、二人より三人だろ! それに、今のうちに宣言しておく。オレは、麗を殺し、アゲハをいいように操って苦しめたその組織を完全に潰す! 誰一人として生かしておくつもりはない! オレの大事なものを害する奴らは、例外なく全て敵だ! その為に得た能力だ。アゲハ、今まで苦しい思いをさせてしまっててごめん! もう大丈夫、オレがいる! これからは二人で一つ。一蓮托生だ!」


 オレの言葉を聞いて、アゲハがまた泣きだしてしまった。


「ん、怖かったか? 大丈夫、オレはアゲハの傍にいるぞ? な?」

「うん……うん……」


 何故か更に泣かせてしまった。


「ああ、そうだ。大事な事、言い忘れてたよ」

「ん……、やっぱりサッチと浮気した? それともあの晶っていう可愛い子?」

「してねーよっ!! 今この流れでそういう冗談言えるのって、メンタル強すぎだろ! やっぱアゲハだよ! 悔しいけど可愛くて仕方ないっつーの。全く!」


 泣き顔がうれし泣きの笑顔に変わった。やっぱりアゲハには笑顔が一番似合う。


「アゲハ、おかえり!」

「ただいま、リン!」


 しばらく湯舟にも入らず、裸のまま抱き合っていたせいか、アゲハが身体をブルっと震わせる。オレは晶のベールが付与されたままなので、全然気が付かなかった。すまん。

 そうだな、アゲハにも常時ベールが付与されているのが好ましいな。晶に頼んでみよう。


 アゲハを湯舟に浸からせると、差し出される頭。オレはその頭を丁寧に洗い出す。

 相当、不眠不休で頑張っていたのだろう、三度目のシャンプーでやっと泡立った。

 その間、オレの方で起きた事を話して聞かせた。ショウゴに、天南さん、晶に、ジュンタ。

 晶の覚醒、能力について。ジュンタのおかげで能力が飛躍的に進化したこと。


「えっ! 宇宙まで飛べるのっ!? ヤバすぎ! あーしは雲の上で限界! 息吸えない!」

「晶に言って、アゲハにもベール付与してもらおう」

「うわー、それホント助かるー。こりゃサッチにも晶ちゃんにも頭が上がらないなー」

「そしたら二人で宇宙、見に行こうな!」

「行くっ! 行きたいっ! 人類初、宇宙デート!!」


 ガサついた髪をトリートメントでしっかり補修し終わり、二人で湯舟に浸かる。

 風呂の中でもアゲハはオレの太ももの上に乗り、上半身をオレに預けて安心してる。

 安心してるのは、アゲハの太ももの間から生えたオレのオレをコチョコチョと弄っているからだ。いちいちピクンと反応するオレのオレに、目を閉じながらニマニマと満面の笑顔を浮かべている。その手の悪戯も一向に収まらず、更に硬さと太さを増していくオレのオレ。


「ちょっ、アゲハさん!? なに安心しきった顔で寛いでらっしゃるんでしょうかー!?」

「だってさっきリン言ったもん。一連托生って。ならコレもあーしのなんだよー。んふふっ、リンと一緒だと思うと、すごく安心するんだーっ! いいでしょー!」


 いや、確かにイイけど。いや違くて、これはこれで収まりがつかなくて困る。


「一蓮托生なら、アゲハのコレもコッチもオレのって事でいいんだよなー?」

「うひゃっ! くっ、そーだよっ! ぜーんぶリンのだよー! だから好きにして?」


 これはダメだ。オレの理性は数週間ぶりにどこかへ吹き飛んでしまった。


「あはー、のぼせたーぁ! あつーぃ!」

「冷蔵庫にアイス買ってあるぞー、食べるか?」

「アイスっ! 食べるーっ!」


 お風呂での戦いは一回で収まらず、三……四回戦の延長の末、アゲハが熱さに負けた。

 アイスを食べて頭が冷えたのか、アゲハが何かを思いついた。


「あっ! あーし、いいアイディア思いついたかも!」


 こう見えても、結構強いんだよと言い張るアゲハ。そのアゲハが全然名前が売れていない敵を相手に苦戦したという。

 オレたちがターゲットに据えた組織は、思ったよりも分厚く、更に強い奴は相当多くいるのではないか。という考えから、皆の夏休みに合わせ、能力強化合宿をやろうという話が出る。

 確かに、ここで「大丈夫、問題ない」なんて姿勢でいたら、きっとどこかで躓くだろう。

 更なる強さを身に着け、きたるべき戦いの時に備えておかなければ。

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Side Story があります! 目次「 Side Story 」の章に掲載。

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