打ち明ける
オレは、3人を巻き込む前提で、事件で何があったのかを話し、能力の事を打ち明けた。
ニュースや特番、巷で言われている雷説は誤りで、正しくは、オレが力を得た反動、暴走で惨事が起き、建物もろとも犯人どもが吹き飛んだのだという事実。
悪い奴らを汚掃除してたらチームRなんてもんが出来てた事。暴力団事務所を能力を使って壊滅させた事。事件の夜には既に人の命も奪っていたし、意識して能力で人を傷つけもした。
だけど、言い訳もしないし、悪い事をしたとも思っていない。少なくとも、オレは悪を裁く為、大切なものを守る為だけに能力を使う。そう一気に話した。
いや、アゲハの事は伏せた。オレ的にはアゲハが大事な人なんだと打ち明けたかったが、当のアゲハがどうしたいのかを優先したかったこともあり、今は伏せておいた。
「そんなこんなで、人助けしてるショウゴに偶然出会って、意気投合して連む様になった」
「そ、想像以上の濃さね! ちょっとあたしの常識が吹っ飛んだ感じ?」
「リンのあの人間離れした戦闘センスも、その能力と関係あるのか?」
「まあ、関係なくはないな」
なんでか、晶だけは頷きながらニッコニコの笑顔である。
「話してくれてめっちゃ嬉しい! 信用してくれてるんだって思えた。ありがとうね、リン」
「です、です! リン先輩は私のヒーローなんですから、強くて当然です!」
「まあ、そういう事だな。で、どうして全部話してくれる気になったんだ?」
ショウゴの疑問も当たり前で、なぜそんなリスクを冒してまで打ち明けたのか。
もちろん、遠慮なく巻き込むと決めたから、と言うもの本当だ。
でも理由はもう一つある。
「オレがこんな力を持ってしまった意味というか、何故っていうのは全く分からない。けど、オレが強烈にそれを望んだ結果だと思ってる。だからオレはこの力を、悪をぶっ潰す為に使うつもりだ。けど、オレ一人で訓練しても限界があってだな。つまり、あまり上手く行ってないんだ。だから、皆を信頼して協力をお願いしたい。どうやって訓練したらいいのか。アイディアとか、実際に訓練してるのを見てもらって、指摘とかして欲しいんだ。もっと強くなる為にオレに力を貸してほしい」
3人の目が、何を言っているんだ? とオレを見る。
これはどういう反応なんだ? 打ち明けたのは失敗だったか?
「……リン、あたしは絶対ずっとリンの味方でいるって決めたの! 何でも言ってよ!」
「もちろん俺は協力するぞ! その代わり、俺に実践的な戦闘の仕方を教えてくれ」
「私は始めからそのつもりです! リン先輩には本物のヒーローになって貰わないと!」
「そっか……なら、皆! よろしく頼む! オレを鍛えてくれ!」
今なんかよりもっと強く。たとえ戦車が相手でも、一撃で沈められる程に強くなりたい!
「なんだか楽しくなってきたじゃない! あたし頑張る!」
「私も色々調べて、必ずリン先輩のお役に立ちます!」
「だとしたら……そうだな。まず、今リンがやれる事を把握した方がいいんじゃないか? んで、それをどの位のレベルで使いこなせるのかを俺たちも知っておかないと、だろ?」」
「了解、なら今日は土曜日だし、夜に人のいないところでやるか。まずはそれを見て判断してもらえると助かる」
「じゃあ、いつものランニングの時間でいいんじゃない? 場所は?」
「人のいないオフィス街がいいんじゃないか? 土曜だし、まず人の目はないはずだ」
「むっ、お兄ちゃんにしてはいい考え! なら、私は動画撮りますね!」
「お、晶それいいな! んじゃ、一旦お開きで夕方18時に現地集合ってことで頼む!」
「おーっ!」
そろそろ夏も本番近くになり、日中の気温もかなり上がってきてる。だから運動するなら夕方以降からの一択だ。
集合場所に向かうまでに、駅周辺や街中を走っている人、散歩している人が目立つ。
やっぱり本格的に訓練するなら街中では無理がある。
「となると、やっぱり山とかそっちの方になるよな」
などと考えながら歩いていたら、集合場所が見えて来た。
既に3人が待っており、オレを見つけ手を振っている。
「早くないか? オレも少し早めに来たつもりだったけど」
「えー、だって、楽しみすぎて待ってられなかったって言うか、落ち着かなかったー!」
「です! リン先輩のカッコいいとこ撮影するのが楽しみで楽しみで!」
「……だ、そうだ」
まともなのはショウゴだけか? 2人を見てたら、肩の力が抜けてしまった。
「じゃ、ご期待通りカッコいいとこ見せないといけないな!」
「リン、ここら辺一帯に人がいないのは確認済みだ。いつでも大丈夫だぞ」
「了解! なら、まずは運動能力からいくぞ! 機動力ってやつだ」
「あたしはいいでもいいよ! しっかり見てるからっ!」
「私の方もいけます! ちょっとカメラ引き気味で撮りますね」
「かなり早いぞ。見逃し、撮り逃し注意だ」
軽く屈伸とストレッチをし、体操選手のように片手を上げスタートの合図をする。
「レディー……ゴーッ!」
ショウゴの掛け声と同時にダッシュをし、一気に現在の最高速度で周囲を行ったり来たりと駆け抜ける。大体、時速100kmくらいってとこか? もう少し行けそうだ。
ショウゴと天南さんの口が、開きっぱなしになっているのが見える。晶に至っては、驚くことにしっかりオレをカメラで追っているのが分かる。
「へぇー、やるじゃないか。これならどうだ? 付いてこれるか?」
7階建てのビルの屋上に向かって高々と跳躍したり、飛び降りたり。
ビルとビルの壁を蹴って飛び回り、アクロバットな高速立体機動からの、最後に体操の鉄棒技「ブレットシュナイダー」に複雑な回転を加えて着地を決めた。
「よっ……と! まあ、こんな感じだ! どうだ?」
と肩を回しながら感想を求める。
「……ビックリしたどころじゃないじゃない!! 何よ今のっ! リンだけズルイっ!」
「リン先輩はヒーローなんで当然です! というかこのくらい余裕です!」
何故か晶が胸を張ってドヤるっていう。
「ってか、よく今の動き、カメラで追えたなー晶。もしかして見えてた?」
「はい! ちょっと暗かったですけど、大体見えました!」
「マジで!? ちょ、晶ってどうなってんのショウゴ」
「うーん。ま、コレが晶だ」
説明諦めるの早ぇよ! 別の意味でビックリしたわ!
「んで? 天南さんも今のやってみたいだって? 三半規管がもたないと思うけどなっ!」
ニヤっと笑うが早いか、すかさずお姫様抱っこして、高速移動・高速機動で夜空の散歩に強制連行した。
「えっ! っちょ、まぁぁぁー……!!」
地面に着地すると、フラフラと左右に揺れながら地面にへたり込んだ天南さん。
「……っちょ、な、なにコレ? ……ジェットコースターどころじゃな……ウップ」
「次は? ショウゴ……」
「私行きたいです!」
「おっ! チャレンジャーだな。よぉーし、んじゃ晶もいくぞーっ!」
お暇様抱っこし、さっきと同じコースを体験して地面に戻る。
「なんていうか……すごい! 最高ですね! またお願いします!」
「マジか……アレで酔わないとか、スゲぇな晶」
「|晶ちゃんて、ホントどーなってんの!? あたし、ちょっと、ウッ……」
「よし、最後は俺だな」
「えっと……お姫様抱っこは流石に勘弁してくれよ? ショウゴはにおんぶで」
「あ、ああ、分かった」
おい、ちょっと残念な感じで返事すんのやめろ! とは言わなかったけど。
「じゃ、ショウゴは特別コースな!」
有無を言わさず、超アクロバットな特盛サービスをした結果……。
「……」
完全無言で地面に横たわるショウゴ。。
そんなショウゴを見て3人で爆笑し、ちょっと休憩。
「さっ! リン先輩! 次行きましょう次!」
俄然、やる気の晶が目をキラキラ輝かせて促す。
「じゃあ次は、空き缶使った訓練を見せる」
「了解!」
何だか、夜に集団で行動しながらカメラ撮影なんてしてると、心霊系の撮影でもしているのかと思われそうだ。
なんて事を口にしたら、天南さんと晶は、そういう話が好きらしく、実体験あるなら是非聞きたいと言ってきた。
「ほーう。なら今度、別の機会を作って話してやろうじゃないか。ちなみに実体験な」
「え、マジ!? 実体験は怖いんだけど……でも聞きたい」
「私、怖いの大好きです! 是非聞きたいです! 夏はやっぱりホラーですよね!」
「お、俺は、ちょっと……」
「あ、お兄ちゃんもそう言うの体験しちゃう体質だもんね? それも話してみたら? 多分楽しいと思うよ?」
「晶ちゃん……なんて恐ろしい子!」
「はははっ、それ鉄板のやつな! 天南さんがやるとそれっぽいね!」
そんなことを話しながら、ゴミ箱から空き缶を拾ってきて、地面に並べる。
「これから、この空き缶を使って能力を見せる。実際に体を使ってやれる事は、大抵再現出来るまでにはなった、こんな感じに」
オレは、空き缶に弾き飛ばすイメージをぶつけ、5本を弾き飛ばした。
「うわぁー! それドラマとか映画で見るやつ! カッコイイんですけど!」
「リン先輩、カッコいいです! いいのが撮れました!」
「いや、ホントに凄いな」
「てな感じで、この前お菓子を自由に動かしたように、操る事も出来る」
今度は、元の場所に戻すイメージで、散らばった空き缶を元の位置に戻した。
飛んで行った空き缶が、逆再生でもするかのように元の位置にスチャっと戻る。
「後は、まあさっき天南さんが言ったように、何かのドラマや映画で見たことがあるような感じで潰したり、割ったり、砕いたりとかで、いまのとこ全部だな」
「しかし、どれもこれも凄まじいとしか言いようがないな」
「ホント出鱈目な力ね。それ、ちょっとあたしも使えるようにならないかな? すごく便利そう!」
「何か少しだけ判ったような気がします! 判ったというか、理解した? というか」
「晶って、一体どうなってんの? ショウゴ」
「ん? 何だかついさっきも聞いたような感じがするセリフだな」
後で晶の考察を皆で聴いて考えようと思う。
「ってことで、今日はここら辺で終わりだな。晶、撮った映像って、後で見れるように加工出来るのか?」
「もちろんです! 任せてください!」
「晶ちゃん、何でも出来るの凄くない?、最近の中学生ってみんなこうなの?」
「いや、晶が特殊というか、変わっているだけだ。大丈夫、いつも通りだ」
「いつも通りなのかよ! じゃあ、出来上がりを期待して待つことにするか。それと、訓練のアイディアとかあったらよろしく頼むぞ! 皆、ありがとう、本当に」
「お互い様だ!」
「お互い様ね!」
「です!」
今後どうやっていくのかは、また後日となった。
さて、一体オレに何が出来るのか。これからが楽しみだ。
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Side Story があります! 目次「 Side Story 」の章に掲載。
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