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Rising Force - Genesis -  作者: J@
成長編

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解氷

 夜間、オレはいつものようにアルの病室を訪れ、あの事件以降、自分が何を思い何をやってきたかを話していた。


(れい)とアルの復讐を果たす、と思う気持ちに今も変わりはない。ずっと独り修羅のまま、もっと鬼でいられれば、こうやってお前に愚痴を言いに来る事もないのにな。オレは、アゲハに寄り掛かっただけじゃなく、天南さんや、ショウゴ、その妹の晶まで巻き込もうとしてる。犯罪を犯せと、人の道を踏み外せと言ってるんだ。最低だよなぁ。よくドラマや小説とかで、復讐は悲しみを繰り返すだけ、だとか聞くけどさ。今ならその意味が分かるような気がする。でも、オレは決めたんだ。オレがやろうとしている事に関わるなら、躊躇せず巻き込んでやるって。その切っ掛けはアゲハがくれたんだけどな。やらずに後悔するくらいなら行動した方がいいんだって。自ら行動することでオレに示してくれた。だからオレは動くぞ! どういう結末になるかなんて全く予想付かないけど、オレは(れい)の復讐を果たす! そして必ずお前を目覚めさせる!」


 その目的を達成するためにも、まずは能力(ちから)を伸ばす事が必要だ。

 オレが能力(ちから)を得た事にはきっと何か意味がある。今はまだ分からないが、その答えが分かる時が来るまで、キッチリ鍛えておかないと。

 窓から身を乗り出し、星空の海に漂うボールのような銀月に手を伸ばし、グッと握る。


「必ずやり遂げてみせる」


 そう言い残し、夜空に向かって跳んだ。


 オレはその足で(れい)のお墓に向かう。

 今までは、どの面下げて顔向け出来るんだ、という思いから、墓参りには行けなかった。

 お墓の場所は、当時のニュースでどこのお寺なのかだけは把握していたから、行けば分るかと思い、お寺まで来てみたがお墓が無い。


「あ、これ、お墓は別の場所にあるパターンか」


 聞こうにも既に深夜なので無理。明日の朝早くにもう一度来て聞くことにした。

 そもそも、深夜にお墓に行くのは無理な事に気が付いた、流石に怖い。


 翌朝、久しぶりに早起きをして部屋のカーテンを開ける。

 窓からは変わらない姿を見せる杢蔵山(もくぞうさん)。その山頂から朝日が昇り始めていた。

 オレは、久々に朝日を浴びて背伸びをし、新鮮な空気を力一杯吸い込む。


「今日、行くから」


 一言、眩し過ぎる朝日に向かって語りかけた。

 まだ時間的に朝早いかなとも思ったが、お寺に伺ったら既に住職は起きており、お墓の場所を教えてもらった。


「朝早くからご苦労様です、きっと、あなたにとって良い一日になりますよ」


 と声を掛けて頂いた。

 数キロばかり離れた小山の高台にあると聞いたので、折角だから徒歩でゆっくり歩いて行くことにする。流石に朝から超高速で走って跳ぶわけにも行かないし。

 朝の時間帯的に、仕事へと出勤していく大人たち。行き交う車。列をなして学校に向かう小学生。横断歩道に立つ緑のおじさんおばさんたち。


 こうやって、当たり前の日常を見るのなんていつ振りだ? 様々な人が一生懸命生きている様を見ると、殊更自分が異質な存在である事を実感させられた。

 途中、早くから店を開けている花屋を見つけたので、お墓に行くのに手ぶらもないだろうと思い、立ち寄る事にした。


「おはようございます、いらっしゃいませー! どんな花をお探しですかー?」


 店内に入ると、明るく元気のいい挨拶が飛んできた。


「あ、おはようございます、早くからすいません。えっと、これからお墓参り行くんですが、安らかに眠れ、的な花言葉の花ってありますか?」


 何も考えずに店に立ち寄ったからか、どんな花がいいのか聞かれ、反射的に頭に浮かんだものを答えた。これはきっと、オレの心の奥底に眠っていた感情なんだろう。


「えーっと、そのままの意味の花っていうのは無いんですけどもー、似た言葉を持つ花はありますよ! アイスランドポピーって言いまして、ケシ科の多年草になります。今は白ですが、次第に赤になり、赤から黄色に変わります。お墓に活けるのには適してないとは思いますが、近場に植えるってのはアリだと思います。花言葉は、安らぎ・慰め・眠りで、合わせて『安らかに眠れ』になると思いますよ!」


 ものすごく丁寧に、判り易く教えてくれるのは有難い。


「なるほど、そうなんですね。じゃあそれを……7本下さい。それと、もしかしたら近場に植えるかもなので根はそのままでお願いします」


 そうお願いすると、花束の様に綺麗にラッピングしてくれた。

 朝から花束を手に道を歩く男に向けて、沢山の人が奇異の目を向けてくる。

 小学生に至っては、立ち止まって指まで差してくる。


「フッ、こういう感じも何だか懐かしいな。まあ慣れたもんだ」


 住職に教えてもらった小山の高台に着くと、適度に林に囲まれた、街の喧騒が遠くに感じる静かな風通りのいい場所だった。

 (れい)のお墓はすぐに分かった、というのも他のお墓に比べてかなり豪華だった。


(れい)は、あまりこういうのは好きじゃなかったと思うんだけどなぁ」


 そう言いながらお墓の前に立つ。


「遅くなってごめん。やっと来ることが出来たよ」


 花束を墓前に置き手を合わせる。

 あれから何があったのか、ゆっくりゆっくり、語って聴かせた。

 当然だが、(れい)はただ静かにオレの話を聴く。不思議と涙は出ない。

 お墓の周囲は花を植えても大丈夫そうな場所だったので、そこを掘って花を植える。

 自分でも何故7本にしたのかは分からなかったけど、こうやって植え終わると、まだ真っ白な花ではあるが、(れい)を彩っているようで気分がいい。

 最後に、また手を合わせ「また来るよ」と言い残しお墓を後にした。


 しばらくして、(れい)のお墓に向かう老人の姿があった。


(れい)、今日はいい天気じゃのぉ! 今、掃除して気持ちよくしてやるからな」


 そう言って、老人は(ほうき)と雑巾と水の入ったバケツを持って墓の前に立つ。

 気が付くと先日までは無かった花が七本、隣に植えられている。


「ほう、アイスランドポピーか。確か花言葉は……『陽気で優しい』だったか。お前にピッタリじゃのう、(れい)よ。しかし、一体誰が植えて行ったんじゃろな?」


 そう言いながら老人はお墓の掃除を始めた。


「そういえばもう一つ花言葉があったのぉ。確か『七色の恋』だったか。なるほど……来てくれたか、(りん)よ。こっちは大丈夫じゃ! お前はお前の人生を精一杯生きるんじゃぞ」


 老人は、気分良さげに豪快に笑いながら、花に水を与えた。



    ◇◇◇



 土曜日の朝、ショウゴから連絡が来た。


「もし時間があったら少し合わないか」


 特にこれと言って断る理由もないのでOKする。


「オレは全然大丈夫だ、なんならウチ来るか? なんの変哲もない普通の家だけど」

「ん、いいのか? お邪魔しても」

「ああ、場所は……」


 ということで10時頃にショウゴがウチに遊びに来ることになった。

 オレの家に誰か来るなんてアゲハ以来だし、男友達が来るなんて小学生以来だって事に気が付き、自分の交流の狭さにビックリした。


「ちょっと待て、アゲハ以来……あっ!」


 洗面所に置いてある2本の歯ブラシとか、アゲハ専用の物。女性の影が感じ取れるものが結構あちこちにある。流石にオレの部屋まで来ることはないと思うが、一応並べて置いてある枕も一つ、インテリアっぽく置き直してみたりした。


「とりあえず掃除、片付け、消臭、換気OK! だよな?」


 常になるべく綺麗にしていたとはいえ、誰かが来るとなると別の話。

 ちょっとズルというか、能力を使って超速で家中を綺麗にした。


「ま、大体こんなもんだろ」


 ――ピンポーン!


 予定よりちょっと早いが着いたようだ。


「エヘッ! 来ちゃった!」


 めっちゃ笑顔の天南さん、その斜め後ろにちょっとテレ顔の晶、そして最後尾で視線を逸らしているショウゴ。


「ショウゴ、おまっ……」

「い、いやこれには訳があってだな!」


 慌てて弁明するショウゴの言い訳は、最初は1人で来るつもりが、ちょっとうっかり晶に話してしまい。晶から天南さんに連絡が行き、結果3人になってしまったという事らしい。


「まーまー、こんな可愛い女の子が2人も来たんだから文句ないでしょ? ね?」


 まあ確かにそうではあるんだけど……。ショウゴだけだからと慢心しなくてよかったー。

 歯ブラシが2本ある! なんて見つかったら何を問われるのか、考えただけでたまったもんじゃない。

 とにかく上がってもらい3人をリビングに案内し、座ってもらった。


「リン先輩これ、ケーキ買って来たんで皆で食べましょー!」

「おお、美味そうだな! んじゃ飲み物入れるわ。コーヒーと紅茶どっちがいい?」

「俺はコーヒーで」

「あたしは紅茶で」

「私も紅茶がいいです」


 ケーキと飲み物を前にして、今日来た本音を聞き出す。


「で、ショウゴ。何でまた突然? なんかあったのか?」

「いや、これと言った用事があるわけでもないんだ。何か俺たちに出来る事はないか聞こうと思ってな。早い話が、皆、リンの力になりたいって事だ」

「そういう事!」

「そういう事です!」


 人の優しさってやつは、なんでこうも……。


「ったく、ほんとショウゴは面倒事に首突っ込むよな。ってか、この前も言ったけど伝わらなかったか? いいか、もう一回言うぞ。オレは(れい)とアルの仇を取る。それは、少なからず誰かの血が流れるのは避けられない事だろうし、たとえそれが悪人だとしても、死人が出るかもしれない。って言ったつもりだったんだが?」

「ああ、ちゃんと分かってる。俺たちの決心はあの時のまま変わっていない」

「その覚悟があるから、あたしたちが今日リンの家に来たって事、分かってよね!」

「そうは言うものの、きっとリン先輩には、何か考えがあるって事ですよね?」

「晶、鋭いな。ほんとにいいんだな? 今までの経緯も含めて、その考えってやつのソースも話してやる。後戻り出来ないぞ? もう一度聞く。ほんとにいいんだな?」


 オレは厳しい表情で、3人の意思確認をした。


「えっ、そ、そんな重い感じ? よ、よし! あたしはOKよ!」

「私は初めから全て受け入れてます! 大丈夫です!」

「俺は今更だな。問題ない」

「……分かった。今から話す事は、絶対に秘密厳守で頼む」


 オレと(れい)が幼馴染な所以から始め、誘拐に気が付いた経緯、追跡方法とアルとの出会い、発見しオレも捕まった事、そして何が起きたかを一気に話した。

 起きた出来事。事件の内容に言葉が出ない3人。


「そして、あの事件に関わった結果……俺にこういう能力が芽生えた」


 オレは手のひらを上にし、テーブルの上に置いてあったお菓子カゴの中のお菓子を、手のひらの上に()()()()、部屋中をグルグル飛ばし、そしてまた手のひらの上に()()()()、お菓子の袋をカゴへ戻した。


「ま、この能力を前提にした考えって事になるんだが」

「「ええぇぇぇーっ!?」」


 ショウゴと天南さんが今日一のビックリ声を上げたが、何故か晶は満足そうに頷いていた。

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Side Story があります! 目次「 Side Story 」の章に掲載。

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