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Rising Force - Genesis -  作者: J@
喪失編

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超常の能力

 あの時掴んだ「何か」を境に、オレは変わった。

 自分の中に何か新しいものが芽生えた事は、何となく理解している。

 これは、感情の起伏や「想い」「願い」それと「欲望」に反応し現実に影響を及ぼす。

 簡単に括ってしまえば「思念エネルギー」という表現が一番しっくりくる感じがする。


 もう、傷つけられるのはいい加減ウンザリだ。

 だから、これからオレに敵意を向けてくる奴には、容赦しない事に決めた。

 大事なものを傷つけられない様、壊されない様。

 この力は、これ以上奪われない為のものだ。

 人間の限界を超える力、これが所謂「超能力」と呼ばれるものなのだろう。

 最近では「能力(ちから)」って言ってる。


 そんなこんなで学校に行かなくなってから引き籠ること約1か月。

 その間、天南さんと夜乃(よるの)さんから何回か連絡が来たが……。

 何をしていたかと言えば、食って、寝て、筋トレして、ネット動画で見た格闘技の真似事して、そして能力(ちから)を使う訓練をしていた。


 なんでそんなことをしているのかって?

 単純な話、(れい)の復讐の為に決まってる。その時の為だ。

 胸糞悪い奴らをぶっ飛ばして潰す。それ以外の理由なんて必要ない。


 そういえば、能力(ちから)を得てからケガや疲労の回復力が異常だ。

 包丁で指を切ったとしたら、通常であれば完全に回復するまで3週間も掛かるのだろう。だけど今のオレは1日、いや、数時間もあれば余裕で治る。とんでもない超回復力だ。


 この短期間で身体つきも随分ガッシリとなり引き締まった筋肉も付いた。退院直後の青白い様相はもうどこにもない。

 左瞼上から頬骨にかけて縫った傷跡と、縦に割れた唇の傷はなぜか今も残っているが、それも自分への戒め、これからやる事への誓いのようなものだと思う事にした。


 今でも時折あの深紅が夢に現れるが、日中起きている時の発作は殆ど無くなった。

 強く残っているのは復讐心といえば大袈裟かもしれないが、行き場のない怒りと、何もかも壊してしまいたいという衝動。

 とにかく胸糞悪い奴ら全員、グチャグチャに潰してやりたい。

 オレの中に、そういう沸々としたものが宿っているような感じだ。


 最近は毎日夕方に走る事が日課になっている。走ると言ってもランニングと言うべきか、能力訓練と言うべきか迷うが。

 お気に入りの黒いランニングウェアに着替え、上着のパーカーに付いたフードを後ろ指差され防止に被りランニングを開始する。能力は怒りや願望、欲望以外でも楽しいという気持ちの高揚感でも出やすいようだ。

 人目を気にしながらではあるがイタズラにスピードを上げてみる。踏み出しの一歩一歩に能力が乗り、あり得ないスピードが出た。


「アハハハハ! ヤバッ! クッソ早っ!」


 時速にして多分80km位は出てると思う。夜のオフィス街だから、目撃者なんていても左程問題にもならないだろう。精々、疲れてんのかなって勘違いされる程度だ。

 照明の消えてるビルにジャンプして壁を蹴る。空中で回転し着地してまた走る。普通の人間にはどうあがいても不可能な機動と軌道。グルグル回る視界に慣れないのが難点だが、これも繰り返し訓練すればいずれ克服出来るだろう。なにせ、能力で三半規管もパワーアップしてるし、尋常ではない回復力もある。酔ったところでなんのそのだ。

 地面を蹴り、ビルを蹴って、夜空の月に向かって跳躍する。


「ヒャッホォォーッ!」


 オレはそのまま病院へと向かった。

 とっくに面会時間は過ぎているのだが、上下真っ黒ウェアと素早すぎる動きで、誰にも見つかることなくアルの病室に辿り着いた。

 変わらず静かに眠っている様にしか見えないアル。オレはその隣に座り、最近の出来事、学校には行かなくなった事、筋トレを始めて随分見た目が変った事、そして能力についての事などを話して聞かせた。


「ごめんな、アル。必ず起こしてやるから、待っててな」


 そう語り掛け背中を向ける。


『ああ、待ってる』


 ふと、アルの声が聞こえたような気がした。

 振り返って顔を見たが、そんな事はなく、静かに眠ったままだ。


「じゃ、またな」


 窓を開け7階から飛び降り、駐車場に着地した瞬間にまた走り出した。

 どうせならこのまま朝まで走り続けてもいい。次の日の予定なんてない。

 何でも出来るんだ。


 能力のトレーニングにも進展があった。

 テーブルの上に空き缶を置いて、じっと見つめてどうしたいかをイメージする。

 例えば横殴りに()()()()()()()イメージでじっと見つめていると、段々とぶっ飛んでいくって感じが濃くなる。そしてそのイメージの強さが振り切れそうになると「カンッ!」ってぶっ飛んでいくのだ。

 同じ要領で手の中に()()()()()イメージでじっと見つめると「ヒュン!」と、ボールをキャッチする感じで手元に飛んでくる。病院でコップが空中に浮いていたのもこれと同じ事だったのかもしれない。


 ならイメージじゃなく強い「欲求」でも同じ結果が得られるかもと思い、身振りで手を振って缶を()()()()()()としたんだけど、これじゃイメージの延長だなと気付き、もっと感情的な時に無意識で()()()()と「欲求」しないと難しいようだ。

 料理でもゲームでも何でもそうだけど、とにかくスムーズに出来るまで何度も繰り返してやるしかないと思ってる。


 などと色々考えながらトレーニングしていたら腹が減って来た。

 たまには美味しいチャーハンが食べたい。オレが知る限りで最高に旨いのは「北京飯店」という中華料理屋。店内は汚いけど、ここのチャーハン以上に旨いチャーハンを食ったことがない。

 トレーニングウェアのままだが、オレは店の暖簾をめくる。


「こんばんわー」

「はい、いらっしゃいませー!」


 時間も遅いのでお客さんは少なく、カウンターに座って直ぐ注文する。


「えーっと、チャーハンと酢豚、あと餃子一枚お願いします」

「はーい! チャーハン1、酢豚1、餃子1でー!」


 いつもながら旨そうな匂いがして腹が減る。

 店内を見回すと座敷でスーツを着た男4人が、ビール片手に餃子をつまみ、何やら話している。

 聞き耳を立てずともその内容はどうしても聞こえてしまう。


「失敗の連続で上にも目を付けられたようだし、これから一体どうなるんだ?」

「どうもこうもねぇよ、上に見限られたら組なんて簡単に潰されるに決まってんだろ」

「そうッスよね、下っ端のオレらなんて、即追放か消されておしまいッスね」


 どこぞの反社構成員か? 組ってなんだ? それに「上」って言う言い回しがあの夜を思い出させる。偶然だけど、これは調べる必要があるんじゃないか?


「はい、お待ちどうさまー!」

「お! あざっす! いただきます!」


 まずは、美味しいものは熱いうちに食べないとね。醤と上湯の効いたジューシーなチャーハンと、甘酸っぱい絶妙バランスの柔らか酢豚。それと熱々の餃子を掻っ込む。うん、めっちゃ美味い!


「おばちゃん、ごちそうさまー!」


 店を後にし、周りに誰もいない事を確認して向かいのビル屋上にジャンプする。

 屋上から店の入り口をチェックし、先ほどのスーツ4人組が出てくるのを待つ事にした。


「さて、尻尾を辿ると何が出て来るかな」


 20分程待つと、店から4人組が出て来て黒塗りの車に乗って走り出した。

 オレは見つからない様に追跡を開始。ビルやアーケードの上を跳んで移動する。

 車は市街地の端っこにあるビルに入って行った。建物の看板らしきものは何も上がっていない。


「もしかしたら事務所? 組か?」


 見つからない様に駐車場を遠目から確認すると、黒塗りの車が5台見えた。


「最大で20人くらいは中に居るってことだよな」


 もしかしたら、(れい)を拉致して殺した奴らにも関係しているかもしれない。


「なら、締め上げて情報を聞き出して……潰すしかねーな」


 駐車場と正面入り口には監視カメラが設置されているのが見えるので、中に入るには屋上からか? そう思いジャンプで屋上へ移動し、指紋が付かないようウェア越しにドアノブを捻った。


 ――カチャ……キィー……


 おいおい、流石に屋上といえども、施錠していないのは不用心すぎるだろ!

 結構出入りする事があるって事か? 一応警戒を高めた。

 屋上の扉を入り、一つ下ると、表示は5Fと書いてあり、中は照明が消えているが結構広い会議室だということが分かる。特にこれといった物も見当たらず人もいなかった。


 4Fに降りると照明は消えているが先に進んでみる。木造の壁と扉が見える。どう見てもお偉いさんが使う部屋と思しき場所だ。

 扉の隙間から内部の光は見えないので、中にも誰も居ないと判断し扉を開けて入ってみる。

 暗くてよく見えなかったが、中は和室の作りで畳が敷かれてあった。ここにも誰もいなかったが、渋めのハットが下駄箱の上に置いてあったので拝借した。加齢臭がキツイけど、顔バレするよりはマシなので我慢してかなり深めに被る。


 3Fに降りようと階段に向かったら、下から人の話し声が聞こえる。しかもかなり憤った感じで声を荒げ怒鳴っている。何やら面白そうな感じがしたので、廊下に出る前にスマホの録音をスタートした。

 そっと階段を降り廊下に出てみると、会議室らしき所の高窓から照明が漏れている。中から結構大勢の気配を感じるので、そっと近づいて聞き耳を立てた。


「先日捕まった若いモン、いや馬鹿モン共が警察にヤクの情報を吐きよった! おかげで明日の朝からガサぁ入る情報が入ったわ!」


 ザワザワと会議室内にどよめきが起こる。


「オヤジ、いいっスか!」

「なんじゃ、許す」

「はい。捕まった若いもんが、勝手にどこぞからヤク手に入れて、勝手に使って、勝手に売り捌いてたって事にして全部おっ被せられませんか」

「それで済むならそれでええ。じゃが明日のガサはどう誤魔化すいうんじゃ? 今夜中に地下のモン全部運び出して臭いまで綺麗サッパリ出来るなら今すぐやれい!」

「それとオヤっさん、ガサ入る情報はどっからですかい」

「かなり握らせちょる奴が、刑事課と薬銃に何人かおる! そっからじゃ」


 なるほどなるほど、何とも香ばしい話が聞けた。スマホで録音していたのは正解だった。


「何にしろヤクの売り上げが見込めんとなると、上納金の目処が立たんくなる! そうなったらこの組も終わりじゃっつう事はよう分かっとるよな?」

「もちろんっス!!」

「なら今から必死こいてこのビルのモン全部運び出せい!」

「でも一体どこに運び込むんスか」

「んなもん使えるとこ全部使って散らばせ! まずは今やる事はそれじゃ!」


 よし、スマホの録音はこれで良し、ハットも深く被ったし大丈夫かな?


 ――ガチャッ!


 会議室のドアをおもむろに開けたら、全員一斉に驚いた顔を向けた。


「誰じゃお前っ!」


 茶色い作務衣を着て杖をついたじいさんがオレに言葉を投げる。

さっきまで怒鳴っていたのはこのじいさんか。周囲はざっと見ても30人近くいる。


「あ、出前持ってきたんですけど、どちら様ですかねー」

「阿保か! 誰じゃ出前なんぞ頼んだ奴は! 前に出てこい! ん? ちょっと待て。お前そのシャッポ! ワシのじゃろが!」


 なんだこのじいさん、割と面白いと思ってしまってニヤっとしてしまった。


「あ! コイツ! さっきメシ屋にいた奴ッス!」

「貴様! どこぞの手先でワシらを消しに来たんかっ! お前ら、コイツをとっ捕まえろ!」


 ワーっと一斉に椅子から立ち上がりオレに向かってくる。


「ああ、それは無理だ」


 オレは、全員()()()()イメージで睨み、手を横に振る。


「うあ゙ぁっ!」

「ぐガァッ!」


 全員壁際まで吹っ飛び、男の悲鳴が上がる。身体が団子状に折り重なる絵面が汚い。

 取り残されたじいさんが、トトトッと後ろによろめいて尻餅をついた。


「おっ、お前! 組織の人間かっ!? ワシらを使えんからと皆殺しに来よったんじゃな!」

「組織? 何だそれは?」

「しらばっくれるでないわ!! お前ら! 固まってないで行かんかい!!」


 うおーっ! という気合と共に、再度オレを捕まえようと飛び掛かってくる男共。


「だから無理だって言ってるだろ」


 ヒョイヒョイと躱しながら、後頭部や側頭部、後ろ首を強めに打って気絶させていく。


「反社組織だか何だか知らないけど、お前らはどの道終わりだよ」


 残りは数人の男共とじいさんだけ。ちょっとカマを掛けてみるか。


「明日の朝のガサ入れで、お前ら全員の身柄は拘束。それと地下にあるブツも全て押収されてお終いだ」

「く、くそがーっ! やられてたまるかーっ!」


 懐に手を突っ込み、それを引き抜くじいさん。

 室内に発砲音が響き、耳がキーンとなる。

 オレに向かって放たれた銃弾は意外に遅く、胸元や頭部に飛んでくるのがスローで見えた。

横移動でサッと躱すと、銃弾はオレの後ろの壁にめり込み弾痕を残す。


「フッ、これで寿命が明日の朝から今夜に縮まったな」


 爺さんの両腕と両足の骨が()()()イメージで手を振り下ろす。

 同時にゴキャッと嫌な音が鳴った。


「ぎゃあぁぁぁーっ!」


 床に崩れ落ち海老反るじいさん。


「年寄りの悲鳴は一層気色が悪いな、じゃ、残りのお前らも寝とけよ」


 高速移動で意識を刈り取り、男30名程が床に転がる気色悪い会議室が出来上がった。

 一応、警察に向けてその場に「地下に何やらあるらしいですよ」とメモを書き残して、オレは屋上に戻り、上からパトカーが向かってくる事を確認してその場を立ち去った。


「あ! 情報聞き出すの忘れたっ!」


 やりたかったことを帰宅後に思い出し、思わず声を上げる。それに、じいさんのハットを被ったままな事に気が付き、思わずゴミ箱に投げ捨てた。頭から加齢臭がする気がして、慌てて風呂に入って洗う。


 嫌な臭いも取れサッパリすると、さっき録音してきたスマホのデータをCDに記録して、警察署に投げ込んできた。勿論データのプロパティを調べてもオレに辿り着かないように加工済みだ。


 パトカーのサイレンは次の日の朝まで鳴り響いていた。

 後日、このなんちゃら組が壊滅した事、警察官数名が逮捕された事をニュースで知った。


「復讐はまだまだこれから。始まったばっかりだ」

ご覧いただき、ありがとうございます。


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