表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rising Force - Genesis -  作者: J@
喪失編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/124

学校

 医者からは、完治まで最低でも5、6か月程は必要だろうと言われていた。

 だけど、2か月も経たずに自由に歩けるまでに回復し、退院する事になったのはいいが、突然の動悸や頭痛、眩暈、吐き気に襲われることもあり、かなり気は使う。


 気持的にはもっと学校も休みたい所ではある。お見舞いに来てくれた先生から「休みの期間が4か月に達する前に登校した方がいいぞ」と念を押されていた事もあり、今週の金曜日からまた学校に通う日々が始まる。

 でも本当の所、身体の怪我は治っても、内面は未だボロボロ。正直不安しかない。


 (れい)の事も整理がついておらず、お墓参りにも、もちろん(れい)の家にも顔を出せていない。

 そもそもどの面下げて顔を見せられるというのだ。

 ただ、アルの現状は天南さんと、夜乃(よるの)さん、それと岩上さんから聞いており、大きな怪我などはないが頭部に大きく衝撃を受けたようで、まだ意識が戻っていない。退院して直ぐにアルが入院している病院へ足を運んだが、運悪くと言ったらいいのか、アルの母親と鉢合わせをしてしまう。


「なんでウチの子がこんな目に遭わなきゃいけないの! アンタのせいよ! ウチの(ゆう)を返して! 二度と来ないで頂戴、このっ疫病神!!」


 病院中に響く大声でなじられ、集まった野次馬には「例の事件の子」「気持ちの悪い子」と白い目で見られ後ろ指を差された。当然の反応だ。巻き込んだのは俺なのだから。(れい)もアルもオレのせいでそうなったんだから。


 病院を退院して自宅に戻った時も、家の前に記者などが居てカメラとマイクを向けて来た。あまりの勢いに押され、すみませんとだけ言って家の中に逃げた。だけど、世間から奇異の目を向けられるのは仕方がない事だと諦めている。


 アルへの二度目の面会は、人目に付かない格好で面会時間終了ギリギリに行った。誰もオレとは気が付かなかったので、個室に入るのは簡単だった。幸い誰も付き添いがいなく、アルの隣に椅子を出して座る。


「遅くなってゴメン。色々お前にも迷惑かけたうえに、こんな状態にしてしまって。辛い思いをさせてしまって……」


 静かに眠っている様に見えるアルに、あの時何があったのかを話して聞かせる。

 数人ぶちのめしてやった事。やり返されあちこちボロクソにされた事。(れい)が目の前で殺されてしまった事。予期せぬ力でヤツらを皆殺しにしてしまった事。悔しい思い、苦しい思いを沢山話した。

 それと、アルがいないと少し寂しい、何としてでも目覚めさせてやるって事を話した。

 誰かが部屋に来そうな感じがしたので、また来ると言い残して病室を出た。



    ◇◇◇



 明日、久しぶりに学校へ行く。

 ぶっちゃけ、何の為に、何をしに行くのかすら忘れてしまった。


 体力も筋力もまだ中途半端にしか回復しておらず、それに精神的にもまだ酷いと言える。

 そんな状態で、これからの毎日をやって行けるのかも分からない。

 以前は出来ていた家事、好きだった料理は全く出来ず、毎日スーパーやコンビニの弁当で賄っている。

 そもそもしっかり顔を隠して行かなければ、どこかしらでヒソヒソと後ろ指をさされている気さえする。


 あの時負ったケガで、左目の瞼の上から頬骨まで傷跡というか、縫合跡が残っているし、下唇の右端にも、縦に割れた傷が残ったままだ。長い入院生活で体も顔も痩せて青白くなり、ハッキリ言って自分的にもかなり近寄り難い見た目になったもんだなと感じる。

 体力が戻ったら筋トレして、少しずつ前以上に戻さないといけないとは思っている。


 伸びすぎた髪は自分で切って整えた。

 そもそも理容室に行っても嫌な思いをして帰って来る羽目になるのはもう分かっている事だ。

 麗もアルもオレも、実際は被害者という立場なのに、世間はオレを加害者か何かという目で見る。

 本当に生きづらい世の中だって思う。

 ああ……明日が憂鬱だ。


「聞いたか? 今日からアマツ、学校来るんだってよ!」

「マジで? ヤバっ!」

「えっ、俺聞きたい事いっぱいあるわー!」

絹路(きぬじ)さん亡くなったっていうのにさ、よく学校来る気になれるよねー?」


 電気科はもちろん、他のクラスの教室内がザワついているのが廊下にまで聞こえて来る。物珍しさか、はたまたニュースや特番で取り上げられている渦中の人間だからか、後ろに人だかりを引き連れながら歩いて行く。各教室から騒ぎを聞きつけた野次馬が顔を出し、好き勝手に妄想や捏造を交え話のネタにする。そんな状態の中、頭痛と吐き気に耐えながら、顔色悪くもなんとか教室前まで辿り着き、ドアを開けた。


 ガヤガヤと騒がしかった教室内が静まり返り、一斉にオレに視線を向ける。そのほとんどは好奇の視線であり、オレにとってはこの先の展開が読める、そんな嫌な視線だ。HRまではまだ時間がある。これは避けられないだろうと覚悟して自分の席に座った。途端、ワッとオレの周りに人が集まり囲まれた。


「おい大変だったな! もう学校来ても大丈夫なのか?」

「アマツ君、顔色かなり悪いけど大丈夫?」


 思い思いに心配した声をかけてくる。


「おい! 何があったのか詳しく聞かせろよ!」

「ニュースとかで言ってるのって本当?」

「なぁ、今どんな気持ちよ!」


 不快な言葉も、もちろん聞こえてきた。

 予想してたから「まあなんとか」と、受け流す事は出来たけど、正直、かなり気分が悪い。四方八方から投げ掛けられる言葉と音が頭の中で反響し、頭痛と眩暈と吐き気でぶっ倒れそうだ。HRのチャイムに助けられ、具合の悪さを深呼吸でなんとか抑え込む。


 先生が教室に入ってきて思い出したが、教室に来る前に挨拶行くの忘れてしまったと視線を配る。先生はオレの視線に気付き「気にしなくていい」とでもいう様に軽く頷いた。


「はい、皆おはよう。言わなくても分かってると思うが、今日から天狗(あまつ)が学校に復帰だ。大変な事件の後でもあるから、無理を言ってストレスかけない様に気を使ってやってくれ。まあ、なんだ、絹路(きぬじ)の事は……気の毒だった。あまり悩んでも仕方のない事もある。今やるべきことに目を向けて、しっかりな」


 先生の言葉に一応頷きはしたが、(れい)はもうこの世にいないんだという事を再認識させられ、そこからは、襲ってくる吐き気と激しい動悸に耐えることで必死だった。

 お昼時間は教室内にいるだけで具合が悪かった。


「あ、あのさアマツ、良かったら少し外の空気吸いにいこ?」


 天南さんが誘ってくれて、何とか屋上まで行くことが出来た。

 お見舞い以来、距離が近づいた事もあり、気を使ってオレに声を掛けてくれたんだろう。


「まぁまぁ、座って座って!」

「あ、うん」

「少し目瞑ってさ、日向ぼっこしてから戻ろ?」


 そう言って天南さんは目を瞑って空を仰ぎ、背中を柵に預けた。

 オレも真似して空を仰ぎ目を瞑る。

 瞼越しに太陽の光が眩しく、聞こえて来る、風の音、鳥の声、街の音。

 さっきまでの具合悪さが少しずつ和らいでいく、静かで暖かで呼吸が出来る時間。

 天南さんは、何も聞かず、何も語らずにいてくれた。

 チャイムが鳴る。


「よし、戻ろっか!」


 クルっと反対を向いて屋内へ戻ろうとする天南さんの手を、オレは反射的に掴んでいた。


「えっ!?」


 びっくりした顔をしてオレに振り返る。


「……ありがとう、助かった」


 天南さんは、さっきまで浴びていた太陽のように眩しい笑顔だ。


「ううん、どういたしまして!」


 そう返すと、逆にオレの手を引っ張って教室まで走った。

 おかげで、午後からは少し楽に息が出来たと思う。


 学校終わりのチャイムが鳴り、なんとか復帰初日を終えることが出来たと安堵した。


「あたし、ちょっと用事あるから先に帰るね、じゃ、またね!」


 天南さんがオレに手を振ってくれたので、オレもそれに応え手を振る。

 まだ筋力が戻ってないから家に帰るのも一苦労だな、と思いながら腰を上げバッグを持つ。


「はー、いい気なもんだねぇー」


 そんなオレを見て、廊下から他のクラスの集団が言葉を投げて来た。

 またこの手の輩かと無視して帰ろうとしたら、行く手を阻まれさらに言葉を投げられる。


絹路(きぬじ)いなくなった途端に天南に乗り換えかよ?」

「こりゃ絹路(きぬじ)も浮かばれねぇよなー」

「ちょっとやめなよー、趣味悪すぎるってー」


 沢山の興味と悪意がオレに突き刺さってくる。


「……あん?」


 胸糞悪い内容に感情の蓋が外れ、集団に睨みを返し一言だけ返した。


「何イキがってんだ? アマツ。おめぇ気持ち悪ぃんだよ」

「どうやったか知らねぇけどさ、テレビで言ってる通り、アレ全員殺ったのってアマツなんじゃねぇの?」


 一瞬、脳裏にあの時の映像がフラッシュバックし、視界が深紅に染まったように見えた。


「そもそもお前が変にしゃしゃり出なかったら、絹路(きぬじ)、死なずに済んだんじゃねーのか?」


 ……もういい。

 感情が沸騰した瞬間、地響きを伴う低音と共に、見えない力が周囲を弾き飛ばした。

 教室の壁にはヒビが入り、窓は割れ、ドアが吹き飛び、黒板も真っ二つに割れ床に落ちた。

 オレを取り囲んでいた奴らも弾き飛ばされ、壁に激突し悶絶している。


「キャーっ!!」

「うわぁー!」


 悲鳴を上げながらへたり込む者、この場から逃げる者。パニック状態に陥っている。

 ああ、気持ちが悪い、心臓が苦しい、息が出来ない。

 視界に映る深紅の幻覚に、意識が朦朧としはじめる。

 呼吸が少し落ち着いてきて周囲を見回すと、学校から結構離れた所まで来ていた。

 近くに公園が見えたので、ブランコに座り空を仰ぎ深呼吸する。

 夕陽の紅が一面茜色に広がっていた。


「……そうか、どこまで行っても変わらないんだ。なら……何も考えなければ。……何も感じなければ」


 ……苦しくないんだ

 この日を境に、オレは学校に行くのをやめた。

ご覧いただき、ありがとうございます。


『 面白かった 』、『 続きが気になる 』と思った方は

「 ブックマーク登録 」や「 評価 」して下さると励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ