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Rising Force - Genesis -  作者: J@
喪失編

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蘇る記憶

 目が覚めた時は既に夜になっており、時計は22時半を超えていた。

 有難い事に布団も既に新しく、先ほど嘔吐した痕跡も臭いもない。


 意識を失う前に見たニュース、本当は(れい)が殺された事を理解していたはずだった。

 頭の片隅では理解していたはずなのに、理解したくなくて、現実にしたくなくて、嘘だと言って欲しくて……。

 オレが出しゃばったから、やり方を間違えたから、失敗したから……。

 オレが余計な事をしなければ、麗は殺されなかったかもしれない……。

 この結果を招いたのは全部……オレ!?


 動悸が激しくなり呼吸が荒く苦しい。左手で酸素マスクを引き剥がす。

 苦しい! 苦しい! 喉も肺も焼けるように熱い! 水、水を!

 一気に噴き出す汗が目に入り、痛く霞む。

 テーブルの上に水の入ったコップが見える。


「グッ!」


 左手を必死に伸ばすが届かない。

 腰をずらして無理に体を捻ると、腹と肋骨が悲鳴を上げ激痛が走る。


「ガァッ!」


 自分の悲鳴と同時に、空間が一瞬震えた様な感じがした。

 なんだ? と、苦しさと汗で歪む顔で目をこじ開けながら手の先を睨んだ。

 カタカタとテーブル上のコップが振動する。

 あの時聞いた雷鳴にも似た地鳴りと共に病室は揺れ、ベッドがズレ動く。

 テレビや点滴のスタンドが倒れ、先ほどまで隣にあったテーブルは扉の前まで移動し、その扉も振動で半開きになる。

 揺れと地鳴りが静まり、ベッド上から手を伸ばしたまま、驚いたオレはそのままの姿勢で動けないでいた。


 思い返せば、強く降り止まなかった豪雨、怒り狂ったような轟雷、そして今の地震もそう。全てオレの想い、悲しみ、怒り、悔しさ、後悔、自責、そういった感情を映しているかの様で、不思議な感覚を覚える。

 伸ばしたままの手の先に何かが触れる。

 視線を移すと指先にコップがあり、先ほどの地震でよく倒れなかったなと思ったが、テーブルは扉の前にある。


「は?」


 身体を捻り、下の方に視線を落とすが何もない。

 伸ばしたままの左手をゆっくりと持ち上げ、視界をクリアにする。

 暗がりの病室の中、コップは重力に逆らいそこに静止したまま浮かんでいる。

 普通では考えられない事が起こっているのだが、水は月の光をキラキラと反射し、ゆっくりと波打ちながら回っている。そんな光と闇の幻想的なコントラストに魅入られる。


「綺麗だ……」


 零れた言葉を理解しているとでも言うかの様に、光と闇は明滅を繰り返し喜びを表しているように思えた。苦しかった呼吸は、いつの間にか忘れている。

 夜空に浮かぶ雲が月を隠して病室に影を落とす。


 ――パリーーンッ!!


 静まり返った病院のフロアに床に落ちたコップの破砕音が響き渡る。

 看護師さんが走って来て病室に飛び込んできた。


「どうしました!? 大丈夫で……え、何コレ!?」


 先程の地震であちこち散乱した備品を見て驚く看護師さん。


「なんか、さっきの地震で散らかったみたいです」

「えっ地震!? うそっ! 全く気が付かなかったんですけど地震なんてありましたか!?」

「えっ! いや、今確かに相当揺れて……」


 そんなオレを看護師さんは怪訝な目で見る。


「いや! ほんとに凄い揺れの地震が!」

「はいはい、わかりました。大丈夫ですよ。まずコレ片付けましょうか」


 動じないプロ意識に抗議の視線を向けながらも、今の出来事は一体何だったのか考える必要があると思考を巡らせていたら


「はい、終わりましたよ! 今度は暴れない様にお願いしますね」

「えっ、暴れてませんけど、と言っても、そもそもコレなんで無理ですよ……」


 手足のギプスを持ち上げた。


「あ……アレ? それも……そうね? うーん、まあ病院だから? そういうこともあるかな多分。ハハハ……」


 微妙に引きつった笑顔で扉を閉めて戻って行った。

 そういうこともあるってなんだよ?

 静かになった病室で、窓から空を眺めながら考える。

 オレとアルが麗を探しに出たのが金曜の夜。

 そして午前中に見たニュースでは今日を月曜日と言っていた。

 ということは、約二日半寝ていた!?

 いや、そもそもあの惨状からどうやってオレは生きて今ここにいるんだ?

分からない事が多すぎる。

 まずはニュースを見てもらったほうがいい。

 岩上さんが言ってた言葉を思い出し、テレビをつけてボリュームを下げる。


『いや、どう考えても無理があるでしょう?』

『でもですね、高校生一人、もしくは二人で犯人ら十数人をバラバラになるまで惨殺するっていうのはちょっとですね』

『聞いたところによると、一人は意識不明の重体で発見時は全身血まみれの状態、もう一人は頭を打って意識不明で発見時は雨に濡れているだけ、そこを考えると犯人らと対峙したのは一人と考えるのが妥当でしょう?』

『そこら辺の現場の状況を押さえまして、犯罪捜査の専門家にお話を伺いたいと思います。 先生、この事件一体どう捉えればよろしいのでしょうか』

『そうですねー、流石に犯人らの死因については謎が多いです。 例えば時速100キロで走っているトラックに正面から跳ねられる、または新幹線に跳ねられる、もしくは高層ビルから飛び降りる、などした場合に激しく飛び散った遺体になる事はあります。ですが現場は山の上で、ましてや屋内です』

『でしょう? なら何かしら超常の力が働いたと考えるのが一番辻褄が合うでしょう!』

『とは言いましても、現代科学で超常的な、それこそオカルティックな力というのは証明されていませんからね。私の見解としてはですね、事件当時の現場上空には激しい雷雲がありましたし、周辺住民への聞き込みでも物凄い雷だったと証言もあります。おそらく何らかの要因が重なってそこに落雷して吹き飛んだ、と考えるのが一番近いと思いますね』

『いや、だからそれも無理があるでしょうという話で!』


 茶番のような番組で事件の討論が行われていた。

 頭の中であの夜の場面が再生される。

 あの時、(れい)は目の前で喉を切られ、血を吹き出し全身を痙攣させ床に倒れた。

 オレは……あの時何をした?


 何度も繰り返し再生されるその場面に、吐き気が襲ってくるが必死に思い出す。

 トライアンドエラーのように、何度も何度も脳内で再生されるその場面に、思い出せ思い出せ思い出せと脳に強制する。

 脳内の奥深く、前頭葉の中心、後頭部のてっぺん、右側脳、左側脳。そして脳全体に稲妻が走る感覚に気を失いそうになる。

 乱数発生で隔たりが出る様に、突如、これでもかと真実を何度もオレに見せてくる。

 鼻血が流れ落ち、枕が赤く染まる。


 あの時、強烈な力の固まりが弾け飛び、犯人らは一瞬で飛び散った。

 オレは……掴んだ? 何を?

 脳が再度映像を見せる。

 強烈に願った? いや、念じた……そうなれと強烈に念じた。

 全員ぶっ殺すと、その為の力が欲しいと! 強烈に念じ、そして掴んだ。


 オレの中に眠っていた力が目覚めた。なんてそんなご都合な力は俺にはなかった。

 だから(れい)は殺された。

 今なら理解できる。きっとオレは「そうなった未来」を掴んだ。

 今、この時を起点に、未来は様々な選択肢を持っている。

 手に持つ振り子の糸の先で、自由に揺れる振り子の様に、その一瞬一瞬が別の未来を指している。


「オレは……オレに力がある未来を、あの瞬間掴んだってのか?」


 奇しくも、切っ掛けは(れい)の死という受け入れがたい事実と交換に。

 そしてその力を怒りにまかせて行使し、ヤツらを全員ぶっ殺した。


 運命は意地悪だ。俺が本当に欲したのは、無事に(れい)を取り戻す事だった。

 だがそれには力が足りなかった、何も成せなかった。

 その力を手にした時にはもう遅すぎた。

 オレは、(れい)という存在を失ったんだ。


「畜生……っ! 畜生……っ!」


 いくら悔しがっても、起きてしまった事象の書き換えなど出来るはずもなく、ベッドに拳を叩きつける事しか出来ない。悔し涙と血で枕が滲む。

 どんな形であれ、人を殺めてしまった事に一抹の気持ち悪さはあれど後悔などない。

 ただ、無力さに、苛立ちに、悔しさに、喪失感に胸が締め付けられ苦しくなった。

 テレビではまだ討論が続いている。


『だからね、そういうのを巷では超能力って呼ぶんですよ!』

ご覧いただき、ありがとうございます。


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