Side Story 伝説ライブ ~エボ爺のお留守番~
「会社の皆は、幕張でクリスマスライブじゃーっ! 言うての、ワシだけ留守番なんじゃよ」
「クリスマスライブジャー トハ イッテイマセンデシタガ ヒトリデルスバン トイウノハ チョットサミシイモノガアリマスネ」
千葉の幕張で娘っ子らのライブがあるとかで、昨日から社員総出で行きよった。そもそもワシみたいな爺さんがそんなハイカラな催し物に出張ろうもんならきっとこうなる。
「お爺ちゃん、お孫さんの応援ですかー?」
とか。
「その歳にもなってアイ活とかパネェっすー! 尊敬っすー!」
とか。絶対に言われるじゃろ? そりゃあもうハッキリと目に見える!
じゃからワシは余裕ぶっこいてこう言ってやったんじゃ。
「皆が無事に帰ってくればそれでいいんじゃ! 気張って行って楽しんでこい!」
結果、社屋の隣に建ててもらった守衛の宿舎で、こうやってサクラに愚痴を聞いてもらっている訳じゃ。
「エボジイモ ミナサントイッショニ ライブヘ イキタカッタンデスネ」
「当たり前じゃろー? ワシだって孫の様に可愛がってる娘っ子らの舞台じゃ、そりゃ見たかろうよ」
「ワタシダッテ ソンナムスメッコノ ヒトリナノデハ?」
「だってのぉ、サクラはなんちゅーか、こう、話し方が硬くて仕事然としとってなー、孫と言うよりかは、介護士さんに介護されてる感じが強くてのぉ」
「ソウデシタカ デハ カイワモジュールヲ ヘンコウシマス…… ヘンコウシマシタ」
「会話モジュールの変更とはなんじゃ? そんな機能があるんかいの!」
「ウン! ハナシカタ カエラレルヨ! コレデイーイ? オジーチャン!」
――ズキューンッ!
「んなっ! はぁ!?」
胸を押さえて蹲るエボ爺。
「オジーチャン! キュウキュウシャ ヨブ?」
「ばっ! サクラっ! ばっ! 突然なんちゅーものブッ込んでくるんじゃ! 心筋梗塞起こしそうになったわいっ! はぁードキドキする! 死ぬかと思ったじゃろ」
「オネーチャンタチノ ライブ 18:30カラ ダカラ マダシンジャ ダメダヨ?」
「あ、当たり前じゃ、まだ死んでなどいられんわいっ!」
「オジーチャン オチャデモノンデ オチツイテネ? イマ ポットデ オユワカシテルカラ」
「あ、ああ、スマンのぉサクラ」
「タナニ オセンベイモ ハイッテルヨ」
「なんで知っとるし!?」
「オジーチャンニカクレテ チョット タベチャッタケド」
「いつの間にか煎餅が減っとる思っとったが、サクラじゃったか……って、お前食べられんじゃろがー!」
「アッ ポットノオユガワイタヨ!」
「むっ! よし、お茶にしようかの。煎餅も出してっと」
「テレビハ ナニミルノ? ヤッパリ ジダイゲキ?」
「じゃのー! あの全国行脚して悪者をバッタバッタと成敗して行く感じが好きなんじゃー」
「オジイチャンモ チョウノウリョク カクセイシテ ジュンタサンカラ パックスノアイテム モラエバ バッタバッタ デキルトオモウヨ!」
「年寄りに何させようとしとるんじゃ? そんなもんやった日にはバッタバッタと倒れるわ! ワシがっ!」
「オジーチャンダモンネ シカタナイヨネー」
「サクラ、お前ワシで遊んどるじゃろ!」
「イエ ソンナコトハ ゴザイマセン イッパンテキナ オジーチャント マゴノカイワヲ シミュレートシタ カイワモジュール ト ナッテイマス」
「あ、話し方、さっきのままでお願いしてええかの?」
「ワカッタヨ オジーチャン」
「やっぱり遊んどるじゃろ」
「モウスグ ジダイゲキ ハジマルヨー」
「お、そうじゃったそうじゃった」
「コンカイノ クロマクハネェ……」
「ちょっと待てぃ! それだけは言っちゃならん! 言っちゃならんぞぉ!」
◇◇◇
「オジーチャン ソロソロ オヒルネノジカン デンキモウフ イレタヨ アッタカイヨー」
「何だか胡散臭い日本語話す呼び込みの様になっとるの」
「サクラトイッショニ オヒルネシヨーヨ! イチジカン タッタノ イチマンエンダヨ」
「そんなのどっから覚えてきたんじゃ!? ワシの孫だったらビックリして心臓止まってしまうわい」
「キュウキュウシャ ヨブ?」
「生きとるーっ! 生きとるよーワシ! はぁー全く持ってビックリさせる孫じゃわい! どれ、ちょっくら昼寝でもするかの」
「イチジカン タッタノ イチマンエンダヨ」
「やめーい! それやめーい! 寝かせる気あるんかーい!」
◇◇◇
「ふぅ、ちょっと昼寝し過ぎたかの」
「アンマリオキテコナイカラ テッキリシンジャッタカト ドキドキシナガラ ミテタヨー」
「いや見てるだけじゃなくてな? ホントに危ない時は助けて欲しいんじゃが」
「ア ジュンタサンカラ エイゾウガトドイタヨ!」
「ホントの孫並みに話聞いとらんな! って映像? なんじゃ?」
「オネーチャンタチノ ライブエイゾウ ナマチュウケイダヨー!」
「なに!? 嬉しい粋な計らいをしおってからに!」
「カイジョウノ リンジョウカンヲ サイゲンスルネ!」
「なんじゃと!? それはすなわち、ワシも幕張に行って皆と一緒にライブの応援をした事になるんじゃないのか!?」
「オジーチャン ココヤマガタケンナノ! マクハリジャナイナノ!」
「桜煌嬢ちゃんを参考にするのはやめなさい! 変にツッコミだけ上手くなってしまうからのぉ! そもそもワシをアレ呼ばわりするからな。そういう意味ではホントの孫みたいなもんじゃが」
「ソロソロナノ! ハジマルナノ!」
「なにぃ! よ、よし! ええぞっ! ドンと来いなの!」
「オジーチャン……」
◇◇◇
「はぁー、何とも濃い1時間半じゃったなのー! ん!? ンゴホゲホッ! ……じゃったのーぅ! 未だにドキドキが止まらんわい!」
「オジーチャン! キュウキュウシャ ヨブ?」
「生きとるーっ! ワシちゃんと生きとるよー!」
「オネーチャンタチ スゴカッタネ!」
「うむっ! 一生懸命練習してたの知っとるからのぉワシ、ホントに頑張ったのぉ、うん、頑張ったのぉ」
「サクラモイッショニ イッパイレンシュウシタヨ! ダカラ ウタエルシ オドレルヨ!」
「なぬ! よっし! まだ夜も9時前じゃ! 次はサクラのライブを独り占めしようかの!」
「サクラ オジーチャンノタメニ イッショウケンメイ ウタウネ!」
「今日は楽しい一日じゃのぉ!! 最高じゃ!!」
「ヨカッタネ オジーチャン! メリークリスマス! ソレジャ ライブ ハジマルヨーッ!」
――ドパーンッ!! シャララララーッ!!
ホログラムで表現された花火が部屋中に弾け、輝く。
本当の孫のように接してくれるサクラと一緒のクリスマス。
まだまだそう簡単にはくたばってやらんぞ? 来年も一緒に祝おうな、のう、サクラよ。
エボ爺は一生懸命サクラを応援する。
今日は12月24日、クリスマスイブ。
夜はまだ長い。
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