Side Story アルバイト ~瀬尾 ドーラ~
この Side Story は「夜乃 蝶羽」というキャラがまだ生まれていなかった初稿時のものです。
本編と若干の齟齬がありますが、それも含めて楽しんでいただけたらと思います。
先日のバイト帰りに思わず助けてしまったOLの『 瀬尾 ドーラ 』さんことセオドラさんと今度の木曜日に遊園地へ遊びに行くことになってしまった。
木曜日は平日では? と聞いたら先日の残業の代わりに休暇を貰えたらしい。
セオドラさんは車を持っているってことなので約束した時間に駅裏のロータリーで待ち合わせることにした。
「あれ? お礼で遊園地って言われたけど、どこまで行くんだろ?」
とりあえずお任せしておけばいいのかな? と軽く考えて準備し駅に向かった。
朝の通勤通学時間に駅裏で立っていると、学校の顔見知りに「あ、アマツだ!」ってバレそうになるのでヒヤヒヤする。
「あ! リン!? おはようーっ! どうしたの朝から駅裏にいるとか……って、結構オシャレしてない? どっかにお出掛けするの?」
まさかの天南さんに見つかってしまうという、アレだ、起こるべきことは起こるべくして起きる、みたいなやつ。
「あれ、リンじゃないか? 珍しいな、天南もおはよう」
「あ! ミサキ先輩もおはようー! あのね、リンがお洒落してどっか出掛けるみたいでー」
何と間が悪いことかショウゴまで合流してしまい、ただでさえ目立つ2人に不登校のオレがプラスされて更に目立ってしまっている。
「あー、あははは……、ちょーっとね出掛けるというか、合宿用の資金稼ぎに先日バイトした帰りに人助けしちゃって、その人がお礼をって事で」
何とか説明しようとしていたら
パッ! パーッ!!
車のクラクションが聞こえ、振り向いたらロータリーに入ってくるド派手な黄色のJeepラングラー。
このタイミングでこういうシチュエーションって、やっぱフラグ回収的なやつだよね?
案の定、車は俺が立っていた所で止まり、中からセオドラさんが降りてきた。
「リン様、おはようございます。 お待たせしてしまいましたでしょうか?」
「リン様!?」
「って!! 何この超絶ナイスバディな金髪美人は!? え! リン、この人とお出掛けするの!?」
「えっと、あははは、ま、まあそうなるね」
「はいっ! リン様には先日命を救われまして、本日はそのお礼をという事で。 それにこのような素晴らしい方をリン様とお呼びする以外、私、呼び方を存じあげません」
天南さんは何か返そうとしているが手と足と口がワナワナしてて言葉が出てきてない。
「今日はリンがお世話になります、事故など気を付けて楽しんで来てください」
「もちろんです! 私の命に代えてもリン様を無事お帰し致しますので、ご安心ください」
ショウゴが大人対応で上手くまとめてくれた、グッジョブ! ショウゴ! 心の中でサムズアップしておいた。
「遅くならないように帰ってくるから、帰ったら連絡するよ」
「わ、わかったわよっ! 帰ったら忘れないでちゃんと連絡しなさいよ!? 連絡遅かったらあたしから連絡するからね!!」
そう言いながらショウゴに腕を掴まれて学校へ引っ張られていく天南さんであった。
「リン様は良いご友人をお持ちですね」
「あはは、騒がしくもありますが、それが有難いというかむしろ助けられてます。 ありがとうございます」
「ではリン様、参りましょうか」
朝から金髪美女に迎えられ、ド派手な黄色のSUV車にエスコートされるオレに向けられる羨望と妬みの視線が痛いです。
◇◇◇
「セオドラさん、今日は遊園地って話でしたけど何処まで行く予定です?」
「はい、今日はリナワールドまで行こうかと思っていますが、お気に召しませんでしたでしょうか」
「あ、いえいえ、めちゃくちゃ楽しみですよ! 天気もいいですし遊ぶには最高ですね!」
「うふふっ、そうですね、お礼という口実ではありますが、寧ろ私へのご褒美のようになってしまいそうですね、今日は色々と楽しみましょう! リン様」
「はい、もちろん」
「それと、リン様は空を飛べはあっという間ですのに、狭い車での移動申し訳ございません。 なんだかこれも私へのご褒美になってしまいますね」
「流石に日中に空飛んだら大変な事になっちゃいますからね、車で助かります」
そんな他愛もない会話を楽しみながら2時間もかからずに遊園地に着いた。
平日にも拘わらず朝から結構な数のお客で賑わっていてビックリしたが、はぐれない様にとオレの左腕にガッシリと腕を回し、困った事にかなり胸を押し付けられている。
これは天南さんと同じくらいかそれよりも上か!? いや、天南さんのを触った事はないので見た目と主観で言っています。
ジェットコースター、ウォータースライダー、フライヤー、モノレールサイクリング、お化け屋敷、ゴーカートなどかなり沢山回って遊び、お昼ご飯も園内でチュロスとか甘い系がメインになった。
流石は大人の女性というか話し上手というか気遣い上手というか、この間のバイトじゃないけどホストが貢がれる感じってこういう感じなのか!? と思ってしまった。
最後は観覧車に乗って終わりにしようという事になり、ゴンドラに乗り込み上から見える風景を見てセオドラさんが言う。
「リン様にしがみ付いた格好ではありましたが、先日、助けて頂いた時に見た夜空の方が100万倍素敵でした。 リン様は昔からああいったお力をお持ちなのですか?」
と、うっとりとした目の中をキラキラさせながらオレを見る。
もう能力もバレてしまっているし今更かなと思い、事件の事から簡潔に説明した。
「まあ、リン様はあの事件の天狗様だったのですね、大変つらい目に遭われた事を掘り返す様な事を聞いてしまい申し訳ございません」
「いいえ、今はもう大分乗り越えましたし、それに今朝会ったような仲間にも恵まれましたし、大丈夫ですよ」
「そう言っていただけると助かります。 それと、今のお話を聞いて思い出したことをお伝えしなければと思うのですが、どうしましょう、お話したほうがよろしいでしょうか」
「どういった内容の話ですか? 今の話というと事件関係でしょうか?」
「はい、私、秘書という立場もありまして、一般の方の耳には入らないような話も耳にしてしまう事があります。 もちろん、普段はそういった耳にした内容は話したりする事は一切ないのですが、リン様は別といいますか、私の全てを捧げても良いと言いますか、寧ろ捧げたいという想いで一杯なのですが」
「せ! セオドラさん!?」
なんか今とんでもない事を口走ろうとしたぞ!?
「あ、あれっ!? す、すみません話が逸れました! そ、そうそう、事件絡みの内容なのですが、以前ウチの理事長に警察関係の方が挨拶でいらした際の話が聞こえて来たのですが『事件の犯人グループの背後に地下組織が関わっている事が判りましてな』と聞こえた事を思い出しまして、それだけなのですがお役に立てましたでしょうか」
それを聞いたオレは表情こそ変えなかったが、内心ドクン! っと心臓が跳ね、体中の血流が逆流しそうになる感じを覚えた。
「正直、オレも事件現場での犯人との会話から、背後に何か大きなものがある事は感づいていました、それが何かは分りませんでしたが、ありがとうございます有用な情報でした」
「少しでもリン様のお役に立ったようでなによりです。 今後、もしまた何か情報が入りましたらリン様にお伝えした方がよろしいでしょうか」
「いいんですか? それでセオドラさんに危険が及ぶようなら論外ですよ?」
「その時はリン様がまた守ってくださるのでしょう?」
「ええ、もちろんです、オレがセオドラさんの身の安全を保証します」
「ああっ! リン様っ!!」
観覧車の中で思いっきり抱き着かれてしまい、色々と当たる感触や匂いに男のオレとしては色々と硬直してしまった。
「あ、あの……セオドラさん」
「はい、リン様……」
「降り口に到着しましたよ」
「ん! なっ!」
係員さんと乗り待ちしてる客がガン見してくる中、顔真っ赤で降りるオレ達であった。
◇◇◇
リナワールドを後にしたオレ達は映画館に行き、何故かめっちゃホラーな映画を見たがそれが逆におかしく感じて終わってから笑ってしまった。
「リン様、まだお時間の方は大丈夫でしょうか? もし大丈夫でしたら一緒にお食事でも」
「そうですね、結構遊んだのでお腹減りましたね、セオドラさんは何か食べたいものありますか」
「リン様と一緒ならなんでも良いのですが、強いて言えば、あの……その……ラーメンが」
「えっ! ……あははははっ!! セオドラさんそんなに美人なのでまさかラーメンが出て来るとは思いませんでした、いいですね! オレも好きですよラーメン、行きましょう!」
「良いのですか! 嬉しいです、ありがとうございます! お恥ずかしい話、体形を維持する為に結構食べないといけないんです」
「そうなんですね、オレも料理が趣味なんで、しっかり食べてくれる人って好きですよ」
セオドラさんの目が今日イチでウルウルキラキラしてオレを見て来るのだが、オレは一体何をやらかしてしまったのだろうか!?
そしてセオドラさんお勧めのラーメン屋「龍上海」に行き、おすすめされるままラーメンと餃子を食べてきたが魚介系スープでクセがあるがとても美味しかった。
セオドラさんはラーメンとチャーハン、ニンニク抜き餃子、肉団子を食べてたが、一体その体のどこに消えたのか!?というくらいお腹は変わっていない。
お腹も一杯になり、そろそろ帰る時間ですねということで車に乗り帰路につく、が、セオドラさんがまたしてもトンデモ発言をしてきた
「リン様、今日はありがとうございました、お礼と言いつつ私へのご褒美になってしまいましたね。 帰られる前に最後のお礼と言っては粗末なんですが、どうぞ私を召し上がってからお帰りくださいませ。 今ホテルに寄りますので」
「えっ!! ちょちょ、ちょっと待ってセオドラさん! 流石にそれはマズイというかまだ早いというか」
「申し訳ございません、私ではご不満でしたでしょうか、今朝の彼女様と比べるとやっぱり若さで負けますものね……」
「いえいえいえいえ、そういう事ではなくというか今朝のは彼女ではなく友達! 仲間です仲間! オレは付き合ってる人なんていませんから!」
「!! それでしたら是非私と!! なんでしたらまずは身体の関係からでもよろしいのです、いいえ、リン様の所有物になれるのでしたらなんでもいいのです! どんな形でも、いつどんな時でもリン様のご要望とあればなんでも致します! 好きな様に使って下さって良いのです!!」
「ちょっと、ちょーっと落ち着きましょうセオドラさん! 気持ちはわかりました、オレもそんな事言われて嫌じゃないですというか凄く嬉しいですし正直好きな様に使ってみたい気も凄くあります!」
「はい!! 好きな様に使ってくださいませ!!」
「あ、いや、今のナシ……にするのは非常に勿体ないけど……そうだ! もう少しお互いを知ってからという事でどうでしょうか! まだほら! 会ったばかりですしオレ達!」
「そう、なのですか……? 私の方はもう準備も出来ておりますのに」
そう言って顔を紅潮させ太ももをモジモジしながら内腿を気にし、オレに上目遣いで視線を配る。
「ストーップ! ストップ! これ以上はオレの理性が持ちません!」
「理性など捨ててしまって、全てリン様の好きな様にして頂いて良いのですよ?」
「そ・れ・で・も! です! そう言う関係になるにしても、もっとお互いを知ってから、それに、セオドラさんはもっと自分を大切にしてください! 美人なんですからオレなんかじゃなくても選びたい放題でしょうに」
セオドラさんはほっぺを膨らまし「んムーっ」ってなってる、怒っているのか恥ずかしがっているのか。
「分かりました、リン様、今日の所は私の負けということで納得する事に致します。 ですが私諦めませんから、覚えておいてくださいね? それまで私の初めてはリン様の為に大事にとっておきますので」
「……え、初めてって? えっ!?」
そのまま帰りの車の中では2人して顔真っ赤だった。
駅裏のロータリーに「無事」到着した。
◇◇◇
「セオドラさん、今日はありがとうございました、とっても楽しかったです」
「はい! リン様に喜んでいただけて私も嬉しいです、次回は最後までしっかり召し上がって頂けますと、なお嬉しいです」
「あ、あははは、セオドラさんには敵う気がしませんね、焦らずいきましょう」
ということで今日の所はお開きとなった。
「じゃ、セオドラさんまた!」
「はい! リン様、是非また!」
クルっと後ろを向いて帰ろうとしたら
「あ、リン様」
と呼ばれたので振り返ったら、両ほっぺを掴まれて思いっきりキスされてしまった!!
思わず目を開けたままパチクリしてしまったが、顔がメッチャ近い!!
「!!!!」
ビックリし過ぎて硬直したけど、我に返った頃にはセオドラさんの唇はもう離れていて、真っ赤な顔をしながら手を振り車に向かっていた。
「これは……、今日の所は完敗だな」
耳をポリポリとし照れながら、オレも手を振って車が見えなくなるまでそこに立っていた。
気が付くと周りから羨望と妬みの視線が突き刺さっている事に気が付き、そそくさとその場を後にした。
初めてのキスは少しラーメンと餃子の匂いがした。
◇◇◇
「で? 随分遅いお帰りですことー!」
「帰りにラーメン食べて来たから少し遅くなったんだ」
「ホントかしらー? あんなスタイル抜群の美人と一日一緒に居て何にもないとか、嘘っぽーい!」
オレは今天南さんにセオドラさんとの事で責められている、いや、拗ねられている。
「なら今度、あたしとデートして? リ・ン・さ・ま!」
「リン様やめーーい!! わかった、わかった、オレの負け! 今度と言わずこれから夜空のデートにでもどうですか? さ・ち・こ・姫?」
「んなっ!! いっ、行きますー! 行きますよーだ! なら10時すぎ位にウチまで飛んできて、あたしの部屋2階だから窓から迎えに来て!」
「りょーかい、んじゃ後で迎えに行く」
という事で何故かオレは今朝の埋め合わせに夜空の散歩デートに行く事になってしまった。
「悪い気はしないけどな」
夜も10時になると外は暗いので黒い服装で飛べば誰にも気づかれる事もない。
コンコンッ!
天南さんの部屋の窓を軽くノックすると、カラカラッとゆっくり窓が空き天南さんが顔を出す。
耳のついた黒ネコさんパーカーに黒のスウェットズボン、黒ぶちの大きい丸メガネに髪は下ろした状態。
「んっ! んっ!」
と言って両手を前に出し抱っこしろのポーズをするので、オレは天南さんの両手を取ってフワリと夜空に浮く。
「今日は珍しいね、その恰好オレ好みっていうかとってもカワイイ! メガネも似合うじゃん!」
「えっへへー! でしょー? お気に入りなんだーこの黒ネコさんパーカーとメガネ」
「ってか良かったの? オレに部屋着なんか見せて」
「いいのっ! 夜にパジャマで夜空の散歩に連れて行かれるなんて、ピーターパンのウェンディみたい。 あ、リンがピーターパンね」
「あははは、そっか、なら目一杯夜空の散歩して楽しんで貰わないとだな」
「そうよ?」
そう言ってオレは一気に高度を上げ、街の明かりが綺麗だろう仙台市上空までひとっ飛びした。
上空は風が強くて会話が聞き取り辛かったが街の明かりは格別に綺麗だった。
「リン、連れてきてくれてありがとう……あたし……あなたが好きよ」
何か言ったと思うが、風音が邪魔をしてよく聞き取れなかった。
「え、なーにー? 風が強くて聞こえなかったー、ごめんもう一回言ってー」
「えへへへっ! やーだー!」
そう言う天南さんの笑顔は、足元に広がる街の明かりよりも眩しかった。
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