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Rising Force - Genesis -  作者: J@
Side Story

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Side Story 告白、そして ~夜乃 蝶羽~ 怒りと嘘と裏切りと2

 ある日の夜、下部組織に属する暴力団が半グレやチンピラ共を使い、BUGSに上納する資金確保の為に、身代金目的で誘拐を実行したと情報が入った。


 それに関連して幹部統括から私に命令が下る。得た資金が問題なく上納されるのかを見定めて顛末を報告するようにと。要は、その成否は関係なく、納められるべきものが納められれば問題がないという事だ。


「なんでこんな酷い雨の日に駆り出されなきゃいけないワケ!? マジ最悪! それに統括のあーしを見る目! 何アレ、めっちゃキショいつーの! ほんと、マジ無理!!」


 対象を拉致している建物上空で、黒蝶(こくちょう)のスーツに身を包んだ私は盛大に愚痴を零すが、全て暴風雨で掻き消された。ボディスーツのおかげで濡れることはないが冷えはする。早く帰ってお風呂で温まりたい。


「どーせ、何も起きたりしないんだからさー」


 そんな事を考えていたら、この大荒れの中、現場建物に近づく人間が二人。時折光る雷に照らされ、何となく同世代、高校生の男の子なのかもと思った。


「はぁっ!? なんでこんな危険な所に来てんのっ!? ちょっ、あっ、ダメ!」


 声を掛けられるはずもなく、そうこうしている間に一人が中に入ってしまった。


「どーしよ……」


 連れ戻す為に私が中に乗り込む訳にもいかない。正直困った。

 でも何故こんな時間に、こんな天候の中、こんな場所に来たの?

 いや、考えられる理由なんて一つしかない。きっと助けに来たんだ。


「え、でも捕まってるのって、どっかの悪いお金持ちのおじさんなんじゃ?」


 なら、何で私くらいの若い子が助けに来た? どういうこと? 何が起きてんの? 分からない事が多すぎる。そういえば、坂の途中に見張りが立っていたのを見た。何であの二人を見逃したのか、もしくは通したのか、確かめないと。

 

 そして私は、それが何かも分からないまま、天に立ち昇る凄まじい力の奔流を目の当たりにする事になる。


 白、紅、黄が織り交ざった複雑な橙色の炎。光の柱。

 全てが天に昇華する直前、膨れ上がった力の根源たる光は私を包み込んだ。

 瞬間、私の中に流れ込んできた激しい怒りと破壊の衝動。

 根本にあるのは、大切なものを守りたいという強烈な想い。

 どこまでも吸い込まれてしまいそうな深淵の優しさだった。

 私は思う。なんて甘く、なんて破滅的なのだろうと。

 きっと、その淵に立てば堕ちることは免れない。

 堕ちた先は焦がす炎か、蕩ける蜜か。

 抗えぬ引力は、甘美な誘惑をはらんで私を猛烈に惹きつけた。

 これは、誰?

 

 翌朝のニュースが教えてくれた答えに、テレビの前で茫然と立ち尽くす私。被害者3人は、私と同じ学校の同級生。悪い大人を手にかける事にはなんの躊躇いもない私だが、子供や未成年、まして同年代を手にかける事は絶対にない。死んでしまった昔の私に誓ってありえない。


 腸が煮えくり返る程の怒りが身体を震わせる。……何て事を。

 私は彼に、アマツに償わなければならない。

 事件に直接関与していた訳ではないが、私も組織の一員だ。責任はある。

 まず、出来る事として強引に組織を抜けた。

 だが、どうして彼に事情と贖罪を伝える事が出来ようか。

 私の中でどうにもならない感情が渦を巻き、徐々に大きくなっていく。

 そうだ! まずは彼を知ろう。そこからだ。

 

 友達のサッチ、本名「天南 さちこ」がアマツのお見舞いに行きたいと言う。けど、一人で行くにはちょっと勇気が何だとか、心構えが何だとか、ゴニョゴニョ言ってたから、これも巡り合わせなのかと思い、一緒について行くことにした。


 アマツはサッチと同じクラスだったので存在と顔、名前くらいは知っている。そこで私は、アマツと初めて会話を交わすことになり、気が付いてしまったんだ。あの夜、私を包み、強い感情を流し込んできた光は、アマツの強烈な想いだったのだと。そして、覚醒した能力者であり、あの光は彼であったことに気が付いてしまった。


 経緯は違うが、私達はよく似ていた。

 早くに両親を失い、今まで一人で生きて来たという人生。

 内に秘める強い怒り、悲しみ、復讐心。

 だからこそ私は、その心の奥底に「守りたい、愛したい、愛されたい」という渇望があることに気が付いた。何故なら私も同じだから。私達は良くも悪くも、よく似ているのだ。


 強烈に伝播してくる感情は、抗えぬ引力となって私を惹きつけた。

 私は、きっとこの先の未来で彼に溺れ、そして全てを捧げるだろう。

 唐突に、そんな気がした。

 

 組織はいずれ、彼が能力に覚醒した人間だという事に辿り着き、接触してくるだろう。だが、私はそれを許さない。許すわけがない、絶対に! そう考えた時に、既に心は決まっていたんだと思う。私は、地下組織BUGSを潰す! そしていつかは上部組織のWORMSさえも。


 事件から約三週間が過ぎた夜、私は再び夜空に消えた。

 組織時代に着用していた黒蝶のボディスーツは捨て、新しく紅を基調にして黒、黄、銀で意匠した艶やかなスーツを作った。頭部には復讐の意思を表した鬼の角を付けて。


 私は、もう黒蝶(こくちょう)じゃない。

 だから、この新しいスーツを着た時の私は何者でもなかった。

 ただの復讐者。

 

 それからほぼ毎夜、全国に散らばるBUGSの下部組織に襲撃をかける日々が続く。攻めると決めた拠点は一気に潰し、構成員は一人残らず命を刈り取った。だが、どれだけ死体の山を積み上げても、ニュースになるどころか噂にすらならなかった。間違いなく組織の強い圧力が掛かり、隠蔽を行ったに違いない。それならそれで、私としても動きやすい。今頃、闇に紛れる襲撃者の特定を、必死になって行っているのだろうと考えたら笑えた。

 

 ある程度のダメージは与えたと思う。とはいっても、世界規模の大きい組織。腐ってもそのその日本支部なわけだから、悔しいが私が与えた被害なんて1%にも満たないのだろう。だけど、今はまだこれでいい。じっくりと、そして確実に潰していくだけなのだから。


 これまでも、私の仕業だと分からないように、襲撃が規則的にならないように、タイミングを計られないように、充分に気をつけて行動を起こした。


 特に、戦闘において組織襲撃時は、私が得意とする打撃、投げ、関節、絞め技を封印。最初に襲撃した下部組織から押収した日本刀の類。これを使った斬撃、刺突へとスタイルを変更した。その結果、殺傷力が増し、殲滅速度が格段に向上。現場に流れる血の量も大量に増えた。今後はもっと不規則に行動しようと思う。組織が彼と私に辿り着かない様に、慎重に。


 ある日学校をサボり、何となくショッピングモール「アオン」へと出向く。これと言って何かを買いに来たわけでもなく、だた何となく人ゴミに紛れたくなった。


 キラキラした場所を行き交う人々は皆人間で、私一人、拭えない程の異物感を感じる。だが、そんなことはお構いなしに私は人間観察を続け、その場の雑踏に溶け込んだ。まるで、自分の中に蓄積した業、死の香りを薄めるように。


 ふと気が付くと、私と同じ様に異彩を放つ存在が視界に入る。思わず視線を向けてしまったが、なんという偶然なのだろう。私以上に異彩を放っていたのは彼だったのだ。考えるより先に、逸る心が彼に声を掛けてしまい、引っ込みがつかなくなった私の鼓動は早打ち、顔は火照り、普段より饒舌になった。


 彼と一緒に歩き、共有したほんの数時間、私は幸せを感じていたのだろう。楽しかったのだ。今までの人生で一番と思える程に私は人間だった。思うがまま自由に、感情豊かに生きてみたいと願い。好きな物を食べ、好きな事を話し、好きに笑い、好きに自己表現したかったあの頃。その願いは、今この瞬間叶い始めたのだと気が付いた。私には、溢れる感情を表現し、好きな事を話し、笑いかける相手が必要だったのだと、彼が気付かせてくれた。


 どこまでも吸い込まれてしまいそうな、その深淵の優しさに、私は溺れたい。たとえそれが、嘘と裏切りに満ちた私の人生を、彼に背負わせる事になるのだとしても。私は、彼を愛したい。彼に愛されたい。これはもう、抗えない引力なのだ。


 だから、私の人生全てを正直に打ち明けた。これが私の償い。


 私の人生は、怒りと嘘と裏切りに満ちていた。

 

 でも今はもう違う。私はアゲハ「夜乃(よるの) 蝶羽(あげは)」だ。


ご覧いただき、ありがとうございます。


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