Side Story 発見 ~本栖 有~
「えっ! リンちゃん中に入っちゃったよ……」
俺、アルこと『本栖 有』は、茂みの中から雷頼りでリンちゃんの様子を伺っていた。
建物の周囲は全部確認してた様だから、少しなら近づいても大丈夫かな?
さっきみたいに見張りが立っている様子もないし。そもそも俺も近づかなきゃリンちゃんのピンチすら分からないからな。
「よし、ドアの前まで行って様子をみよう!」
預かった合羽を畳んでリュックに入れ、忍者走りでドア前に移動した。
元々そんなに親しい仲でもなかった。
高校って色んな知らん奴が集まるから、最初は同じ中学出身で固まったりしてた。でも、夏休み前頃になると、もう同じクラスの奴らとは結構仲良くなってた。もちろん女子とも仲良くなれたけど、所詮クラスメイト止まりの関係。高校生ともなると彼女欲しいって思うのは当たり前で、彼女持ちを恨めしそうに見る訳よ。
一年の頃から掴み所がないなぁと思っていたクラスメイトの天狗。今まで直接関わる事がなかったのも、建築科にいるお金持ちのお嬢様……どちらかと言えば小動物みたいな可愛い彼女『絹路 麗』といっつもイチャコラ見せつけやがって! と言うのが直接関わる事がなかった原因といえば原因かもしれない。そんな、妬みありきの目で見てたから、俺はリンちゃんを今まで知ろうとしてこなかった。
一年の夏休みの時に、新しくできたダチらと学校で肝試しやるべ! みたいなノリになって、深夜の学校に侵入した時の話。流れでリンちゃんと中学が同じだったって奴から、事故で両親亡くした事、一人暮らしで頑張ってる事、絹路さんの家とは昔からの親戚付き合いって事、二人は付き合ってない事とか聞いたんだ。ヤケに詳しくない? って聞いたけど同じ中学内じゃ有名な話なんだそうだ。
広く浅く友好関係を作ってる俺としては、それを機に仲良くなれるキッカケがないかなぁと気にかけてた訳だけど、未だにキッカケがないまま気が付いたら二年になってしまっていた。苦労してるのに頑張ってる奴とかって、えらく眩しく見えんのよ。コイツと仲良くなりたいなって思ってしまうのよ。きっと大人になってもいい友達でいられるっていうイメージというか、そんな感じ。
広く、浅く、皆と仲良く。まぁ、今の俺がそうなんだけど、ぶっちゃけつまらないんよ。友情なんて呼べない薄っぺらい表面上のやつね。ウンザリなのよ。親がコンビニ経営してるからか、皆に愛想良くしなきゃいけないって育てられてきた。勿論、表向きはそう振舞ってる、けど、俺の中身はそうすることを拒絶してる。でも俺はもっと熱くなりたかった。きっと、ワクワクしたかったんだ。
いつものようにコンビニで店番して、時間になったら閉めて、適当な時間に寝て、また明日学校へ行く。そんな毎日の繰り返しだった。今日は金曜の夜って事もあって、店閉めたら寝落ちるまでゲームでもしようって思ってた。
「ふぁーぁ、眠みぃー! 適当に廃棄の弁当でも食ったら店閉めよー」
外の天気が酷いこともあって客なんて誰も来ない、思わず独り言が漏れた。チーン! とレジ呼びのベルが突然鳴り、客なんて居ないと思ってたからびっくりしてイスから落ちそうになってバタバタしてしまった。
「いらっしゃいまー……えっ? 天狗!?」
思いがけない客というかクラスメイトでまたビックリした。
しかし突然「監視カメラみせてくれ!」って詰め寄って来るもんだから思わず頷いちゃったよね。いや別にダメとか嫌って訳じゃなかったし、というか本当は「何だろう」っていう好奇心の方が強かったんだ。天狗ってどんな奴? ってね。だから俺は本能に従ったんだ、ワクワクしたんだ。
打ち明けられた話で段々と見えてくる、朝の突然の留学の嘘と絹路さん誘拐の線。その足取りを追う天狗と監視カメラの映像。そして、これから何をしようとしているのかを。
正直、危ない橋だなと思った。でも、心はもう既に熱かった。天狗は頭も良く回転も早い奴で、けど、それよりも気持が先行する熱い奴だった。俺は惹かれたんだ。一緒に居たらきっと面白いって。
子供と大人、善と悪、許容と拒絶、何者でもない自分と何者にでもなれる自分。全てを排除し全てを内包するかの様な不安定さは、周りの人間を惹きつける。
今日、リンちゃんが突然店に来てから、まだ三時間も経っていないだろう。けど、一気に距離が縮まったという表現はしっくりこない感じがするのは、おかしな話、むしろこの感じが懐かしいとさえ思えたからだ。何を成し、何を遂げ、何処に行き着くのか。俺はそれが楽しみで仕方がない。
中に入ったリンちゃんの後を追い、ドア前に移動し中を覗き込んだら、奥から誰かが走ってくる音が聞こえ、揺れるライトが見えたから慌ててまた茂みに戻った。様子を伺ってたら、ライトを持った男たちが数人出てきて周囲を見回している。
リンちゃん見つかったなと思ったが、逆に言えばここがアタリだったって事。すぐさま警察に通報しようと思ったが、外に出ている奴らに見つかるわけにはいかない。動かず臥せって、いなくなるまでやり過ごすしかない。ごめんリンちゃん! もう少しだけ耐えてくれ、と念じていたら何かを打ち付ける音が聞こえ、それに続いて人の悲鳴の様なものも微かに聞こえた感じがした。そしたら外にいる奴らが中に急いで戻って行った。
今だ! と思いリュックからスマホを取り出し警察へ通報する。通報内容も内容だし、慌てていたからかなり不審がられたけど、さっきの外に出てた奴らと中にいるだろう人数も合わせて十人超はいる。そう通報出来たと思う。
「頼むぜ……優秀な日本の警察さん方」
そう言ってまた茂みから出てドアの前に移動したが、ドアは閉められてしまっていた。耳をくっ付け、中の様子を伺ってみようとした途端
――ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
物凄い金属同士のぶつかり合う音が聞こえて鼓膜が破れるかと思った。しばらく耳がキンキンしたが、収まった頃に再度耳をくっ付けて中の様子を伺った、けど中はシンとしている。音がしない様慎重に開けて中に入り込み、誰も居ない事を音で確認してマグライトで周囲を照らした。
荷物が崩れている所があったので、近寄ったら地面に結構な量の血痕があり「まさかリンちゃんの!?」と慌てて周囲を見回したが、それらしい人影は見当たらない。よく見ると血痕が点々と斜面を下り、さらに下にあるドアの向こうに消えていた。
ドアは人が通れる分に開いていたので、ライトを消し両手にバールを構えて進む。
奥から光が漏れていたので、そこに向かって静かにゆっくり歩を進めると、入り口に二人立っているのが見えた。心臓が跳ねそうにビックリしたが、しゃがんで隠れながら考えた。
ポケットからマグライトを取り出し、手に包んで光が漏れないようにして点灯させ二人が立っているドアの反対側に投げる。
――カーン! カンカンカン……ッ
「ん!? まだ誰かいるぞ!」
転がったライトは、俺とは反対側を上手く照らしてくれて、それに向かって二人がライトを手にして走って行く。俺はその背後から忍び寄り、二刀流バールで頭部側面を思いっ切り振り抜いた。
――ゴキョッ!
鈍い音とともに崩れ落ち、一気に二人を気絶させた。
「よっし! 俺結構やるじゃん! リンちゃん待ってろ今助けに行く!」
ドア側に向き直った途端、凄まじい衝撃波で建物の屋根も壁も粉々に吹っ飛んだ。垂直に立ち昇って行くでっかい火柱が見えたと思ったら、飛んできた破片が頭に直撃したのを最後に、視界が段々と暗くなっていき、俺の意識も徐々に薄れて行った。
未だ降り止まない雨と雷鳴に混じり、遠くでパトカーのサイレンが鳴り響く音が聞こえる。
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