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Rising Force - Genesis -  作者: J@
事件編

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奔流

 エネルギーが弾け飛ぶ前に異常な収縮を見せるように。

 ベクトルが核へと集中していく超重力のように。

 そして、花開く超新星爆発のように。


 深紅に染まったオレの手は……空を掴んだ。


「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙ア゙゙ア゙゙ア゙゙あ゙ア゙゙ア゙あ゙ア゙あ゙ア゙゙ア゙あ゙ア゙あ゙ア゙゙ア゙あ゙ア゙ーッ!!」


 空間に存在する、光・闇・生・死・実・虚・縁・因。

 そういった考えうる全てのエネルギーが、あたかも握った拳に掴まれたように瞬間的に集中した。

 小さな小さな、だが計り知れない高密度な一粒の光。


 手の中に握られた光、エネルギーは認識出来ない程の速度で深紅を巻き込み弾け飛ぶ。

 クソな奴らを千切り、コンクリート壁を粉々に砕き、そして全てを吹き飛ばした。

 光は、奔流となって存在を誇示するかのように天を衝く。


 貫かれた黒雲は渦を巻くように霧散し、あんなに酷かった雷雨もどこかへ消えた。

 夜空には満天の星々が現れる。

 オレは、未だ深紅に染まった手で(れい)を抱き寄せ、そして意識を失った。



    ◇◇◇



 私はこの豪雨の中、夜の闇に紛れて上空から事の顛末を見てた。

 どこぞのあくどいお金持ちを、下部組織の反社集団が誘拐したのだ。

 その結果がどうなるのかを見定める為にね。


 暗さと雨で見え辛いが、対象を監禁してる建物に一人、後からもう一人、少年が中に入って行った。

 なぜ少年が? 途中の上り坂に一人見張りが立っていたはずなんだけど? と思い、見に行ったら白目を剥いて倒れていた。一応頬を叩いてみたが起きる気配はない。


「さっきの二人にやられた?」


 もう一度、建物の方に戻ろうとした時に、これまで見た事もない途轍もない爆発が起きた。

 爆発っていう音じゃなかったかもしれない。

 その衝撃波は坂まで届き、あまりの勢いに思わず私は坂を転がる。

 それほどの衝撃の後に、コンクリート片と屋根が頭上を飛んでいった。

 そして空に向かって一直線に橙色の炎、光の柱が立ち昇り、雲は一瞬でかき消され、あんなに酷かった雷雨までも吹き飛んでしまった。


「えっ! 一体何!? 上で何が起こったっていうの!?」


 空に飛び上がり現場を確認したが、建物も周辺の木々も全て吹き飛んでた。

 建物の基礎があっただろう場所は分ったが、誰の姿も見えない。

 自分がライトを持っている事を思い出して照らしたが、辺り一面血の海だった。


「うっわ……マジかー……」


 血の海には人だったかもしれない肉片らしきものも散乱していて、その中心に人の形を残した二人の姿が見えた。

 遠くからはパトカーのサイレンが幾重にも重なって聞こえてくる。


「あれ? 警察来るの早くない? あの少年が通報したのかな……?」


 足取りが残る事を考え、血の海の中に入って確認することはヤメておいた。

 惨状を見てもさっきのアレで生存者がいるって事はないだろうと思い、背中に黒い四枚の羽根を生やしてはためかせ、サイレンがする方角とは反対へ飛び立ちその場を後にした。

 資金調達の誘拐は失敗した事を組織に報告しないと。

 金曜の夜だってのに憂鬱になる。


「はぁー……。ダルっ! でもさっきのは一体……なんだったの?」



    ◇◇◇



「今日もあと少しで上がりっすね、酔っ払いの対応とか来ないでほしいっすね、先輩」


 私『岩上(いわがみ) (けん)』にそう話しかけるこいつは『鈴木(すずき) (けい)』生活安全課の巡査長だ。

 金曜日の夜になり、何事も起きませんようにと思いながら、起こってもいない事で愚痴を漏らす鈴木。


「そうも行かんだろ、こんなご時世だ、飲まなきゃやってられんだろうよ」


 鈴木と同じ生活安全課の警部補をしている私は見た目が厳つい上に名前も岩で余計に堅い。

 故に愛称はロックになったが、昔のドラマ「太陽にほえろ」に憧れて刑事になった経緯もあり、この愛称はそれっぽくて気に入っている。


「よし、上がったら俺らも一杯行くか?」

「マジっすか! ゴチんなります!」

「いや、給料貰ってるだろう、たまには自分で払えよな」

「そこはほら、自分が上に行ったら、そん時はその時の後輩にオゴるってことで」

「へいへい、調子のいいこって、んじゃキツいのオゴってやるから覚悟しろよー?」

「はっ! 善処します!」


 調子のいい時だけ敬礼しやがるなコイツは。

 正直、今日は嫌な胸騒ぎがして落ち着かない、何も起きなければいいが。

 そう頭に過った次の瞬間、事件発生を知らせる放送が入った。


『 こちら、警察本部からの緊急要請です。

  絹路(きぬじ) (れい)さん17歳が誘拐され、

  猿羽根山(さばねやま)頂上付近にある倉庫に拉致されていると情報が入りました。

  犯人は十数名。至急、出動してください。繰り返します―― 』


「うへぇ~、誘拐ってマジか。初動は一課っすかね?」

「まぁそうだろうとは思うが、さすがに数が多いな。多分……」


 言い切る前に内線電話が鳴る。


「はい、生活安全課、鈴木っす! ……はい、了解したっす!」

「応援要請か?」

「なんで分るんすか!」

「長年の勘ってやつだ。オゴりの一杯はまた今度な。出るぞ」

「うぃっす!」


 人が出払っていた一課に各課から応援が合流。

 パトカー8台、総勢30名程が出動する大変な騒ぎになった。


 通報者は誘拐された被害者と同じ学校に通う男子生徒。被害者の幼馴染が「もしかしたら犯罪に巻き込まれたのでは?」と思い、得た情報から推測した場所へ2人で真偽を確かめに行った。運がいいのか悪いのかアタリを引いてしまい、幼馴染の男子生徒が犯人に見つかり建物内へ連れて行かれた。という内容だった。


 犯人のおおよその人数を掴んでから通報したのは大したもんだが、危険を顧みない無茶な判断、行動をしたなと思った。だが、おかげで初動から人数を投入できるのは強みだ、ありがとう。心の中でそう呟いた。

 通常であれば市と隣町の境界にある河川の橋手前から「猿羽根山(さばねやま)」はよく見えるのだが、今は暗いうえに雷雨が酷くて全く見えない。

 私は、サイレンを鳴らし急行するパトカー内から、山が見える方に視界を向けた。

 突如、真っ暗な中に白ともオレンジとも赤とも呼べない色の発光した巨大な柱が立ち昇り、真っ黒な雲を一蹴する。

 前方に連なるパトカーの赤色灯が視界の下方で煌めいて、ある種幻想的な光景を醸し出す。


「なっ、何だ!? 何だアレは!」

「ちょっ! なんすかアレ!」


 爆発物にしてもあんなものは見たことも聞いたこともない。

 一体何が起こっているんだ!?


「とにかく現場まで急げ!」


 先程までの豪雨が嘘のように降り止んだ満天の星空の下、連なる赤色灯の光がその異常性を語っていた。


 投光器は持ってきていなかった為、パトカーのライトで現場を照らす。

 惨状を目の当たりにし、然しもの警察でも嘔吐する者、腰を抜かす者、息を飲んで立ち尽くす者が続出した。

 何だこれは……何が起きればこんな状態になる? 原因は一体何なんだ?

 私は懐中電灯を手に周囲を見回した。

 あちこちに瓦礫やら肉片が散らばっていて、見るのも当然のことながら、漂う濃厚な血の臭いが耐え難い。

 現場の周りを見ていくと、地面にうつ伏せになっている人影を発見した。


「誰かいるぞ! 1人発見した! 救急車を呼べ!」

「既に連絡済みです! 数分後に到着するものと思われます!」


 見た所、通報してきた学生か被害者の幼馴染っていう学生かのどちらかだろう。意識は無いようだが脈は……ある。


「脈はあるが意識は無いようだ」

「了解です、救急が到着したら申し送ります!」

「よし、ここは頼んだ!」


 血溜まりの中心へライトを向けると鈴木が立っているのが見えた。


「おいおい、これだから若いやつの怖いもん知らずってのは……」

「ここに2人! 人の形したの残ってるっす!」


 きっとこの場にいた警官は皆「人の形したの」とか言うなよと思った事だろう。

 数分して救急車が到着し、3名が病院に緊急搬送された。

 そこからは現場検証に鑑識に大変な騒ぎだった。

 事件を知った報道は夜明け前からヘリを飛ばしカメラを向けてくる。

 その報道根性たるや、エサに群がる蟲のようだった。


 日が上り、応援部隊の出番が終わり帰宅するがとてもメシなんて食えたもんじゃない。

 とにかく纏わりつく血の臭いと死の香りを洗い流すのに苦労した。


「嫌な胸騒ぎがする時はロクな事が起きねぇなぁ」


 愚痴を零し、ベッドに倒れ込み眠りについた。

 しかし、一体何がどうなればあんな惨状になるんだ?

 その奇妙さと異常さに、私の中の何かがざわつくのを感じた。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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