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Rising Force - Genesis -  作者: J@
誕生編

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戦いは始まったばかり

 あれから政府やらなんやら面倒臭い事柄が押し寄せたが、数日も経過すると少し事態も落ち着き始め、休める状態になった。

 そこで、やっとみんなにオレがこれまでどうしていたのかを話すことが出来た。

 何が起きて、どういう経緯で帰還するに至ったのかを事細かに。


 アストルミナの世界の事。

 師匠とイロハに救われた事。

 過去世界に飛び、(れい)を救った事。

 新たな世界、マルチバースワンが生まれた事。

 イチの事。


 アルの事例もあり、多少はこのとんでもない話を受け入れる下地はあったようで、みんなの理解は早かった。

 同じように、こっちの世界で起きた出来事も説明してもらい、情報の共有を行った。


 それからまた数日。

 色々あったけど、オレは(れい)の墓参りをした。

 オレが植えた7本のアイスランドポピーだが、どういう訳か(れい)に寄り添う様に、周り一面カラフルに咲き乱れていた。


 隣に腰を下ろし、これまでの出来事を沢山、沢山話して聞かせる。

 時折吹くそよ風が、相槌を打ち、そして笑いかけている様で、ちょっと涙が出そうになったけど、なんか嬉しかった。

 また沢山の話を持って聞かせに来るよと、約束をして手を合わせた。


 次に、オレにとってはほぼ6年越しの約束となった、バーベキューを社屋の屋上で行った。


「追加の肉買ってきたぞー! サガリにハラミ、カルビにザブトンにタンだ! いっぱいあるからしっかり食ってくれー!」


 こうして楽しんでる皆を見てると、なんとも感慨深いものがある。


「リン! 地球の肉、ウマすぎダろ!?」

「ああーっ! それウチが育ててた肉だっちゃーっ!」

「こっからここまではここあのタン塩なんだぞ!?」

「しっしっしっ! 葵育(あおい)恋焦(ここあ)、まダまダ甘いな! これは命を懸けた戦い! 腹に入っタものは返せない、食っタもん勝ちダゾ!」

「はいっ、イロハちゃん! 自分が焼いたお肉は自由に食べてくださいっす!」

(わたくし)が焼いたリブロースも最高に美味しいですわよ! イロハちゃん、アーンですわ!」

明輝(あき)のお肉も(かおる)のお肉も旨そうダな! 後でモフモフしていいゾ!」

「よっしゃぁーっ! (わたくし)の勝利ですわっ!」

「やったっす! モフリ権を賭けた勝負は自分の勝ちっすー!」


 異世界アストルミナからやってきた魔狼族のイロハ。

 社屋に部屋を貰ったイロハは、毎晩ゲートを通ってオレのベッドに潜り込んで寝るのが日課になっている。


 アイドルになる夢を叶えたArtemis(アルテミス)

 今後どこまでその名を響かせるのか想像もつかないが、世界中にお前らの可愛さと熱い歌をもっともっと知って欲しいと思う。


「ほらアル、いい感じに焼けたぞ! はい、アーン!」

「ちょっとタラ!? ボクが焼いたお肉が先なのーっ! ジャンケンで勝ったのはボクなのーっ!」

「待った待った、ケンカは無し! 俺は二人が居てくれるだけで嬉しいんだから、ね?」

「全く仕方のないヤツだ、昔のお前はこんなに軟派ではなかったんだがな。まぁ、甘いアルも悪くはないんだがな」

「本当なの! こんな美女を二人も侍らして! ちゃんと責任取るの!」


 コイツ抜きにはオレの人生を語れないだろう迄の親友になったアル。

 異世界アストルミナでアルと冒険者パーティを組んでいた凄腕魔法使いのタラ。

 元の世界に帰還してからアルを支えたArtemis(アルテミス)メンバーの桜煌(おうか)

 この3人が今後どうなるのかは、オレも非常に興味のある所だ。

 まあアルの事だ、何となくだけど、きっと2人とも幸せにしてしまうんだろうな。


「ロックさん、お肉もいいですけど野菜もちゃんと食べて下さいね」

「おお、ありがとう! 瀬尾(せお)さんが選んでくれたものなら何でも食べるさ!」

「あら、ビールが空になっていますわ。お酌しますね、はい、どーぞ召し上がれ」

「いやーこれは最高のビールだな! あっはっはっ、どうだっ羨ましいだろリン!」

「ついでに(わたくし)も……召し上がられます?」

「ブフォッ!? ゲホゲッホ! ウェッフォッ! なっ!? 瀬尾(せお)さん!?」


 元警察官のロックさんと元金融機関OLのセオドラさん。

 キラさんの設立した会社「ARTISTS JAM」に同日入社し、テンの未来視では将来結婚すると予言された2人だが、いつの間にか交際がスタートしたらしい。

 オレとしても喜ばしい事なんだけど、ロックさんが奥手というか純朴というかヘタレすぎる。オレの兄貴的立場を主張するなら、もっとこうビシっと男を見せて貰いたいもんだ。

 セオドラさんがグイグイ行ってくれるだろうから、心配はしてない。


「時に、ショウゴとジュンタは、彼女とかおらんのか」

「いやー、俺にはまだちょっと早いですかね。やっとこの会社に就職して働き始めたばかりですし、焦らず行きますよ。今は仕事が楽しくて仕方ないんです」

「僕も、こんなに素晴らしい仲間達に囲まれてしまうと、なんか目が肥えちゃいまして。普通のアイドルなんて一般人にしか見えなくなっちゃいました。ははははっ」

「ダイジョウブ フタリトモ ムカシヨリ マシニナリマシタカラ キット イイデアイニ メグマレルコトデショウ」

「いや昔よりマシって、サクラさん追い打ちかけるのやめてー、若干凹むから!」

「かっかっかっ! お主らは真っすぐ自分の信じる道を歩けば大丈夫じゃよ!」


 未だに女っ毛ゼロの硬派なショウゴは、この春「ARTISTS JAM」に入社し、ロックさんの下で頑張っている。

 出会った頃は軟弱だったジュンタも、昔の面影など無い程に身体も態度も成長し、オレから見ても大分イイ男に成長してきた。

 エボ爺は相変わらずだけど、何だか最近は少し若返ったかと思う位に活力に溢れている様で、凄く元気ハツラツだ。


「リン。向こうもすごく気になるけど、まずはあたしの食べて! はい、アーン!」

「リン先輩、私のカルビが一番美味しいに決まってます! ですので、アーンして下さい」

「リンくん。私にリンくんのサガリ、食べさせて欲しいな。アーン!」

「いや……流石にオレだって羞恥心くらいは持ってるぞ? それに……」

「ふーん、恥ずかしいんだー! ふーん」

「リン先輩、照れるのズルいです! 私も恥ずかしいです!」

「リンくん!? 恥ずかしいのは私も一緒なんだけど!?」


 いつもオレを気にしてくれて、この世界から消えてしまった時もずっと信じて帰りを待っててくれた、キラさん、天南さん、晶。

 3人が並々ならぬ好意を寄せてくれているのは充分伝わっている。

 もちろん嬉しいし、照れくさくもある。だからこそ、どう応えたら良いのか分からない。


 オレがディノポネラと戦った時に出来たゲート。

 あの時、アゲハは俺を助ける為に自らゲートに飛び込んだという。あの時、オレの名を叫び、手を伸ばしていたのはアゲハだったのだ。だが、アストルミナで目が覚めた時にはアゲハはどこにも居なかった。てっきり、元の世界でオレの帰りを待っているものだとばかり思っていたし、こっちはこっちで、アゲハはオレと一緒に居るものだと思っていたらしい。


 アストルミナにアゲハの影は無かった。と言う事は、ゲートの中に数多に存在する世界のどこかに行き着いたってことだ。

 みんなで探し出す方法はないのかと散々考えたが、過去に戻って改変すれば、また新たな世界線が増え、より複雑になる。根本的な解決には至らないだろうというのが、師匠とジュンタ、晶の意見だった。

 イロハは、見た事も聞いたことも無いゲート内の他の世界で、たった一人の人間を探し出すのは不可能。唯一の望みは、オレがこの元の世界に戻ってきたように、アゲハ自らがこの世界線に戻って来る他ないと言う。その点で言えば可能性はゼロじゃないって事だと慰めた。


 どうしたらアゲハを助けに行く事が出来るのか。日が経つにつれ段々と気が焦り始める。ジュンタは、時空を超えて指定した人物の座標にゲートを開くアイテムの創造に意気込む。天南さんは、未来視・過去視の力を強化していけば、特定の人物が今どこで何をしているか分かる様な透視能力が目覚めるかもしれないと意気込んだ。


 自分の頭と焦る気持ちを、一旦クールダウンしようと思って行ったバーベキュー。正直、焦る気持ちと現状の行動が乖離していくのを加速させてしまったようだ。だからといって、3人の好意を邪険にしていい理由にはならない。徐々に心が潰され、胸が締め付けられ、暗闇の世界に落ちて行く様な感覚の毎日だ。


 騒がしいはずの屋上バーベキュー。

 段々とみんなの声が遠くなっていき、意識が世界と断絶しそうな感覚に陥る。


 ――ジジッ……! ジジジジッ……!


 唐突に、空間が裂けるような音が聞こえたかと思うと、オレの目の前にイロハの能力とは違うゲートのようなものが開いた。


「なにっ!?」


 即座に戦闘態勢を取ったオレに追随し、皆が身構える。

 円形に開いたゲートの向こう側には空が見えた。だがこの世界の空じゃない。

 警戒を最大限に引き上げると、ゲートの向こう側から声が聞こえてくる。


「今度はどこに繋がった? 覗いても大丈夫かな?」


 どこか聞き覚えがあるが、だけど少し弱気な感じの声。

 ヒョコっと顔を覗かせた人物は二十代半ばの男女。妙に見覚えがある……?


「リンっ! タラっ! イチのニオイっ!」


 イロハが叫ぶと、ゲート向こうから男性が呼応して叫ぶ。


「イロハちゃん!? マジで!? やった成功だっ! ゼロ! ゼロっ!!」


 オレをそう呼ぶ奴なんて一人しかいない。

 マルチバースワンのオレ「イチ」だ。

 様々な説明をすっ飛ばし、イチはオレに叫ぶ。


「ゼロっ! 頼むっ! 力を貸してくれっ!!」


 単刀直入にそう告げたイチ。


「バカっ! どういう事かちゃんと説明しないと分かんないじゃない!」


 隣にいた女性に怒られ、頭をはたかれるイチ。


「ゼロ! このゲートはそう長くは持たない! キッチリ説明してたら閉じてしまう! 要点だけ言う! マルチバースワンの世界を救う為に、力を貸してくれないか!! 来るか否か、今すぐ決めてくれ! それと、ゼロが迎えに来てくれるのを待ってる人がいる!」


 こっちの世界に来るなら掴めと、イチはその手を伸ばした。

 それが誰なのか名前を聞く前に、オレはゲート向こうにいるイチの手を掴んだ。


「ちょっ! リン!」

「リンくん!」

「リン先輩っ!」

「リンちゃん!」

「「マスター!」」


 大丈夫なのかと問うアル。


「悩む必要なんてあんのか? オレを待ってる奴なんて一人しかいないだろ?」


 ゲートに飛び込もうとすると、何も言わず背中に飛びついたイロハ。


「リン、アタイがいないと困るダろ?」

「フッ……。だな!」


 オレは自分勝手な奴だって事をよく知ってる。

 それはこれからもきっと変わらない。


「当然こっちの世界も守らなきゃいけない。この会社も守らないといけない。それに学校がある奴も多い。実質動けるのはオレとイロハだ。師匠はアルの側にいてやってくれ。どの位、イチの世界で時を過ごすのか分からない以上、これがベストだ」


 天南さんと晶がついて行くとゴネたが、ショウゴとキラさんが引き止めてくれた。


「みんな、いつも勝手して悪りぃ! またしばらくの間こっちの世界は頼んだ。オレたちはイチの世界を救って大切なものを取り戻してくる! アル、強引だけどオレが決めていいか?」


 昔、どこかで聞いたようなセリフ。


「あははっ! 何言ってんだ。あの日の夜から捜索隊のリーダーはリンちゃんだよ。いいに決まってんじゃん!」


 変わらず同じ答えを返してくれるアル。


「俺の大切なもん見つけて来てくれたリンちゃんに、ダメだなんて言うワケないだろ? 今度はリンちゃんが自分の大切なもん取り戻す番だ! こっちの世界の事は俺たちに任せろ! 思いっ切り暴れてきなよ! イロハもリンちゃんの事頼んだぞ!」

「しっしっし! 任せろ!」

「ゼロ、そろそろゲートが閉じるぞ!」


 イチの声に頷き、掴んだ手に力を籠め、一歩を踏み出す。


「じゃあみんな、大事なもん取り戻すついでに、ちょっくらイチの世界を救ってくる!」


 オレは、また世界を渡る。


 オレは、天狗(あまつ) (りん)


 戦いは、まだ始まったばかりだ。

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