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Rising Force - Genesis -  作者: J@
誕生編

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102/124

ヒーロー_天南さちこ

    § 地下格納庫 さちこ視点 §


 突然の爆発で吹っ飛ばされ、真っ暗な穴の中を落下して行く。

 ロックさんがテレパシーで呼びかけて来るけど、意識が曖昧で返答出来る状態じゃない。

 フッと意識を持って行かれそうになるが、何とか体を捻って着地に備えた。


 かなりの距離を落下し、地面に身体を打ち付けた音が尋常じゃない。

 衝撃で破裂していないのが不思議なくらいだ。


「グハァッ!!」


 だが相当なダメージが入る。

 クソッ! 敵は!? ……流石にこんな深くまでは追って来ないかな。

 痛みで痺れる身体を捩り、寝返りをうって上を向くと、敵の機体が目の前まで迫っていた。


 「ヤバッ!!」


 激しい音と共に、あたしのすぐ横ギリギリに叩きつけられた真っ赤な機体。

 あっぶな……!? え、なに? 着地……じゃないよね。

 これは落下して来た? あたしと一緒に爆発で吹っ飛ばされた口か?

 なら、お願いだからしばらくそのまま気絶しててくれると有難い。


 呼吸を整え体力の自動回復を待つが、目を瞑ると眠ってしまいそうだ。

 無理やり目を開けて真っ暗な穴の上を見ていると、ボゥっと明かりが灯る。

 アレはなに? 段々大きくなってる様な、近づいて来てる様な。

 バシューッ! あれ? ロケット噴射みたいな音も……っ!? 敵だ!!


 直ぐに飛び退いて奥に移動しようとしたが、出来なかった。


 これはナニ!? 目に映るモノが二重にブレていく!

 敵が薄っすらと光って見える半透明の実体じゃない視界。それと本物の視界。

 こんな局面で一体何が起きたっていうの!? 敵はすぐそこまで来てるのに!


 本物の視界より数秒早く動く光の視界。

 あたしは……この光を知っている。

 未来視の時に見るキラキラの光、私を導いてくれる光、優しい光。

 うん、分かった。理解した!

 あたしの中の未来視が進化し、今、数秒先を見せてくれてるんだ!

 なら、あたしは負けないっ! 負けてたまるもんですか!!


 ギリギリまで引き付けて……今っ!!

 敵が機銃掃射を開始した瞬間を狙って、隣に落ちて来た機体を足場にし、暗闇の格納庫へと飛び退いた。

 同時に身体の表面を五色の光が走る。


「最っ高のタイミングっ!! ありがとうみんなっ!」


 感謝を零しながら、過去視が今しがた足場にした敵パイロットの記憶を見せて来る。


 ――誘拐され、大勢が捕らわれている空間に放り込まれた。

   次々と研究室の様な場所に連れていかれ、強制的に行われた洗脳。

   記憶を消され、この施設で生まれ育った偽の記憶を刷り込まれる。

   戦闘適正なしと判断され、以降オペレーター要員として従事する。


 何の罪も、何の関係もない人を攫い洗脳して駒にしていた!?

 何て事を……許せないっ!

 自分らの身勝手な理由で、他人の人生を奪っていいとでも思ってんのかっ!!

 その罪、あたしが絶対に許さない!!

 女の子1人の人生は、どんなものより価値があって尊いんだからっ!!


 怒りで感情のタガが外れたあたしは、だだっ広い場所の中央で仁王立ちする。

 遠くから、さっきのロケット噴射音が聞こえてきた。

 敵はあたしを発見したのだろう、少し距離を置いて出方を伺っているようだ。


「さっさと掛かって来なさいよっ! アンタの記憶も覗いてやるからさぁ!!」


 両手を前に突き出し、容赦なく撃ってくる敵。

 だが光が教えてくれる軌跡の通りに、激しいダンスを思わせる華麗なステップで全てを躱して見せた。

 敵はいくら撃とうが当たらない事を認識し、機銃掃射を止めそのまま距離を維持する。

 そして遅れて先ほどの2体が合流し3体になった。


 3対1? それがどうした。あたしは逃げも隠れもしないわよ。

 ジリジリと距離を詰めて来る敵。

 そして3体の敵は武器を抜き、フェンシングを彷彿とさせる構えで剣先をあたしに向けた。

 見た目は刺突型の細剣だが、その刀身はスパークを放っている。


「いいわよ、何使って来ても。けど、こっちから行かせてもらうわよっ!」


 超高速の左右移動で、残像を残し敵の視界から姿を消した。

 さあ、見せてもらうわよ! アンタらが本物か偽物か見極めてやるんだから!

 左の敵の背後に一瞬で移動したあたしは、パイロットに一番近いだろう胴部分に触れた。


 ――家族で旅行に行った先で誘拐され、父と母が殺された。

   私と幼い妹は知らない場所に連れて行かれた。

   その先には大くの子供たちが捕らわれていて、泣き叫んでいた。

   妹と離され、違う部屋に連れていかれ記憶を消された。

   そして偽の記憶を刷り込まれた。

   戦闘適正なしと判断され、以降オペレーター要員として従事する。


 さっきの子とは違う記憶だけど、似た様な記憶。

 また何の罪も、何の関係もない女の子をっ!! 胸くそ悪いっ!

 怒りでどうにかなってしまいそうだ。


 触れられた敵機体は慌てたのか、振り向き様に細剣を振り回して距離を取った。

 左右にいた2体が距離を取る代わりに、最初にあたしに追い付いた機体が距離を縮めて刺突を繰り出してくる。


 どんなに攻撃テンポを変えようがトリッキーな攻撃をしようが、見えているあたしに当てる事なんて出来るはずがない。

 相当なスピードで繰り出された全ての突きを躱し、懐に飛び込んで機体の鳩尾部分に強烈な拳を叩き込んでやった。

 鳩尾から胸元部分にかけ装甲が吹き飛ぶと、表情の無い仮面を被った敵パイロットが露出して見えた。

 距離を取っていた2体に何か命令を出したのか、自身が奥に下がる代わりに2体が前に出て来てカバーに入る。


 あたしは触れたパイロットの過去を視た。


 ――頭が切れ、優秀だったが家は貧しかった。

   故に様々な犯罪に手を染めお金を稼いだ。

   金に余裕が出来ると、今度は圧倒的な力が欲しくなった。

   そんな時、ディープウェブで地下組織と超常能力の存在を知った。

   自ら志願し構成員となるが、戦闘適正なしと判断。

   以降、自分が覇権を握る事を夢見てオペレーター要員として従事する。


「お前はぁ! アウトだああぁぁーっ!!」


 理由は分からないが、何故か涙が流れた。

 叫べば叫ぶ程、怒って感情を燃やせば燃やす程に。


 立ち塞がる2体を素早く躱し、奥に行った1体を追う。


 ――ヒュウウゥゥーン……


 どこかで聞き覚えのある高圧排気音と共に、さっきまでの軽い機銃音とは打って変わった、もっと重い音があたしを襲う。

 光の軌跡で見えてはいるが、今までの攻撃よりも速い!

 どうやら機体を乗り換えたみたいだ、マイクロミサイルまで飛んで来る。

 左右移動で躱しつつ、後方から追ってくる2体を障害物代わりに使わせてもらった。


 ちょこまかと逃げ回り、いつまでも仕留められないあたしに業を煮やしたのか、数十メートルはある高い天井まで飛び上がって広範囲に撃ってくる。

 見えた機体は、リンが消えたあの夜に見た敵と同じもの。

 頭の血管が切れそうな程熱くなり、衝動的にソレに向かって跳躍する。


「うあああぁぁぁぁぁーっ!!」


 一瞬、掃射が止まるとさっきの2体が飛んで来てあたしの跳躍を邪魔する。


退()いてっ!!」


 奥に浮かんでいる敵しか目に入っていないあたしは、2体からの強烈な回し蹴りを受け、地面に叩きつけられた。


「ガハァッ!」


 まだだっ! まだあたしは何も成し遂げていないっ! 絶対に負けたくないっ!

 あたしと上を飛んでる敵の直線上に、2体が割り込んで飛んで来る。


 だが、あたしはその2体に向かって「退()け」と必死に腕を振る。

 その行動を不思議に思ったのか、それとも言葉が通じたのかは分からない。

 2体はその場で止まった。


 あたしは必死に叫ぶ。


「逃げてえええぇぇぇーっ!!」



    § 地下格納庫 WORMS N‐26視点 §


『N‐19,26! そのまま敵に止めを刺せっ!』


 N‐9に言われるがまま、あたしと19たんは地面に叩き落とした敵に追撃をかけた。


 だけど……何? 敵が腕を振っている?

 まるで「逃げろ」「避けろ」とでも言っているかの様に。

 違和感、そう、言いようのない違和感。


『19たん待って! 様子がおかしい! 何か伝えようとしてるみたい。敵だけど、あんなに必死に!』

『26ちゃんどうした!? 待って、今、翻訳を通す! OK!』


 2人の耳に届いたのは、必死に叫ぶ意外な言葉。


「逃げてえええぇぇぇーっ!!」


 えっ、どういう事!? 今まであんなに激しい戦闘をしていた敵に向かって逃げてなんて。

 逃げる? 何から? ……後ろっ!?

 19たんとあたしは同時に後ろを振り返り、上を飛んでいるN‐9を見る。


 ――キュイイイィィィィーンッ!


 砲門の口に集まり出す光の粒子。


『アハハハハッ! このN‐9様が塵も残さず屠ってやるよっ! 愚図(ぐず)諸共なぁ!』

『な、何を言っているのですかN‐9! ()めて、()めて下さい!』

『N‐9!! さっきも26ちゃんをイジメてくれたなぁ! テメェを仲間だと思った事は一度もねえんだよっ! 今からお前は私の敵だぁ!! そいつをブッ放す前にテメェをブッ殺してやるっ!!』


 バックパックから激しくジェットを噴き出し、細剣を引き抜く19たん。


『女をナメてんじゃねぇぇぇーっ! N‐9! テメェみてぇなクソ野郎は今ここで死ねぇーっ!!』


 光の粒子は更に輝度を上げ、そのエネルギーを高めていく。

 今にも臨界に達しそうなギリギリのヒリつく感じを理解した時には、あたしは19たんの前に飛び出していた。


『19たん危ないっ!!』


 さながら大事なものを身を挺して庇う様に、自分の命を盾にして守るように。

 あたしは両手を広げN‐9に向き合った。


『んなっ!? 26ちゃん!!』

『いいぞっ! それでいいっ! そのまま消えて無くなっちまえ!! 全員きえ......』


 集積した光の粒子は臨界に達し、発射直前の輝きを放つ。

 その瞬間、後方からあたしたちを凄まじい勢いで飛び越して、N‐9へ向かって行く敵の姿が見えた。



    § 地下格納庫 さちこ視点 §


「させるかああぁぁーっ!!」


 感情のままに、自分の心に正直に動いた。

 理由は分からないけど、この2人を死なせたくないと思った。

 立場は敵だけど、敵じゃない。


「だって仕方ないじゃないっ! 助けたいって思っちゃったんだからぁぁーっ!!」


 跳べ! もっと高く!

 飛べ! もっと速く!

 翔べ! もっと強く!


 ベールを鋭角に!

 もっともっと(するど)く!

 全てを貫く程に!!


 力を貸して!! リン!!


『そのまま消えて無くなっちまえ!! 全員きえ......』


 ――チュンッ……


 瞬間、あたしは一筋の光となり敵を貫いた。


『......ろっ! ……ゴボッ! ゲハァッ!! なにっ!?』


 集積した光の粒子は行き場を失い、そのエネルギーは弾け飛ぶ。

 粉塵爆発の比ではない暴力で、地下格納庫のみならず数階層上までも粉々に吹き飛ばした。

 爆音、爆風、爆熱。飛び交う瓦礫、舞う粉塵。

 全ての力を吐き出してしまったあたしは、全ての暴力に無防備に晒された。


 無意識下で何度も何度もベールを張り直すが、もうその力も残っていない。

 でも、まだ死ねない。

 あたしには心残りが沢山あるんだ。


 途切れる意識は、やがて真っ暗になった。



    § 地下格納庫 WORMS N‐19視点 §


 見た事もない程の凄まじい爆発が起き、私達は爆風で地面に叩きつけられた。

 上から降り注ぐ瓦礫の雨。なんとか致命傷は避けられたようだが、衝撃と爆音で耳も頭も視界もまともじゃない。


『26ちゃんっ! 26ちゃんっ、どこっ!!』


 自分が言葉をちゃんと発せているのかすら怪しい。

 粉塵で視界は無いに等しく、メインモニターも既に機能していない。

 胸部アーマーもどこかに吹き飛んでいて、剥き出しの状態だ。

 耳は少しづつ音を取り戻し、細かい瓦礫が降り注ぎ地面を叩く音が分かる。

 仮面が邪魔過ぎて、剥ぎ取って投げ捨てた。


 少し離れた場所からガラガラッと瓦礫を退ける音が聞こえた。


『26ちゃん!!』

『うん、ここだよー! 何とか生きてるみたい』


 あちこちガタガタのクォンタムアーマーを動かし、26ちゃんへと駆け寄った。


『良かった……本当に良かった……生きててくれた』

『……さっきの、敵さんのお陰だね』

『うんうん、理由は分からないけど助けられた。26ちゃんと私を助けてくれた』

『うん、ゴホッ! さっき叫んでたもんね? 助けたいって思っちゃったんだからーって』

『うんうん、どんなに感謝しても返しきれない恩を受けてしまったね』

『あははっ、ゴホッ! ゴボッ! ゲヘェッ!』

『え! ちょっ!?』


 苦しそうにする26ちゃんの仮面を剥ぎ取った。

 大量に血を吐き出している。早急に治療が必要だ。


『26ちゃん!? 血がっ!!』

『ゲホッ、大丈夫。19たん残して死んだりしないから。それよりさっきの敵さんは……』


 粉塵で視界が悪い中、上空から薄い緑の光が舞い落ちて来るのが見えた。


『19たん! あれ! さっきの敵さんっ! お願い助けてあげて!!』

『分かったっ! 直ぐ戻るから! ここで休んでて!』


 緑色の光に向かって飛び上がったが、初めて見る26ちゃんの素顔が脳裏から離れない。

 私と同じ赤毛の髪、そしてグリーンアイ。

 どうしてこんなに気になるんだろう、どうしてこんなに大事に思うんだろう……。

 いや……今はやるべき事をやるだけだ。


 落下する緑の光にスピードを合わせキャッチし、抱きかかえながら26ちゃんの(もと)に戻った。

 ここは瓦礫も落ちて来て危険だからと、安全な場所に移動する。

 とは言っても、少し明かりのある広い格納庫の端に避難しただけだが。


『ほらっ! 26ちゃん、立てる?』


 私は機体からなんとか這い出して、26ちゃんを機体から引きずり出した。


『ふぅ、ありがとう。これで少し楽に息が出来るようになったよ。でもちょっとお腹をやっちゃったかな、結構痛いかも。あはは、うっ!』

『無理して喋んなくて大丈夫だからね。助けてくれた敵……ううん、恩人もちゃんとここに連れてきたよ』

『うん、19たんありが......』


 まだ仄かに緑の光に包まれているソレを見て絶句した。

 両手両足は吹き飛んだのか失っており、腹部は抉れ、頭部は半分程も欠損している。


『ヒッ!! 19たん……恩人さん、死んじゃった……の? あたし達を助けて死んじゃったの!?』

『嘘……でしょ!? この状態でまだ生きてるなんて!?』

『お願いっ!! 助けてあげて! ねぇっ! 19たん! 助けてあげて!!』

『……わかった、私に任せろ! 26ちゃん、キツイだろうが立って歩くぞ! 私の肩に掴まって』

『このくらい大丈夫! 負けてられない! あたし達を助けてくれたこの人を、今度はあたし達が助ける番だから!』


 私は緑の光を纏った恩人を抱え立ち上がった。

 何が出来るのかは分からないけど、私達は落ちて来た巨大エレベーターの穴に向かって歩き出す。


 後数メートルでエレベーターに到達だと思った時に、上から敵が飛んで来た。

 マズイと思ったが、ボロボロの私達にはもうどうする事も出来ない。

 私と26ちゃんはエレベーター内の壁に寄り掛かり、そのまま座り込んだ。

 もう1歩も歩けやしない。

 緑の光が弱まってきた恩人を抱えながら、敵が近づいて来るのをただ待つしか出来なかった。


「おいおい! 嘘だろさっちゃん! 死んでねーよなぁ!? ジュンタ!!」

「ええ、息があります! 信じられませんが、危ない状態ですがCTLのバイタルでは生きています!」


 ああ、そうだ、この人達に託そう……。それしかない。


「(英)Please help her. 」

( お願い、彼女を助けて )


 ……なんで私、英語なんか。ドイツ語しか、知らないはず……なのに……。


「大丈夫です! 必ず助けますから! 天南先輩も! あなた達も!」

「嬢ちゃんたち! さっちゃんを助けてくれてありがとうっ! ありがとうっ!」


 お願い、どうか恩人さんと26ちゃんを、助けて。

 私の意識はそこで途切れた。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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