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Rising Force - Genesis -  作者: J@
プロローグ
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酷い夢

2024/08~2025/01 に執筆した処女作。

更に面白くしたいと思い、この度リメイクしました。

多くの人に楽しんで頂ければ幸いです。 

「とんだ邪魔が入ったな。面倒くせぇ、二人とも始末しろ」


 オレは、コンクリート剥き出しの床に、ボロ雑巾さながら半殺し状態で転がっている。

 額を伝う生暖かいドロっとしたものが目に入り視界を邪魔するが、周囲にはチンピラや暴力団崩れの輩が10人程。目の前には、椅子に縛られ目隠しと猿ぐつわをされている女性。

 オレは、誘拐されたこの幼馴染を無謀にも単独で助けに来て、何も出来ないまま見つかり、今はこのザマだ。

 好き勝手ボコボコにされたおかげであちこちの骨が折れ、情けなさと悔しさ、痛みと吐き気が胸いっぱいに込み上げてる。


「ま゙っ、待っデ! オレが人質にっ……なるガらっ! 彼女を、解放しデ、くださいっ!」


 無様な土下座の形を取りながらも、やっと出てきた情けない言葉。まともに喋る事さえ出来ないボロボロの状態。


「ん゙っ!? んん゙ーっ!!」


 声でオレだと判別したのか、驚いた彼女が猿ぐつわ越しに呻きながら体を揺らす。


「うるせぇんだよ、大人しくしてろや嬢ちゃん!」


 ガタイのいい男が彼女の顎下に手を回し、首を絞める。


「ヴェッ! ングッ!」

「お願いしバすっ!!」


 その光景と声に、頭に血が上って行くオレは、額を床に擦り付け懇願する事しか出来ない。


「クククッ! これはこれで面白れぇな。いいぞ? 殺すのはチョットだけ待ってやる。代わりに……そうだなぁ、命知らずなお前に世の中ってもんを教えてやるよ」


 オレと彼女を始末しろと言った奴がメガネをクイっと上げ、下種な笑みを浮かべる。


「いいかぁ? 俺らはこの嬢ちゃんを誘拐して莫大な身代金を貰う。んで、貰うもん貰ったらちゃーんと家に帰す……予定だった」


 予定だった? 始めから殺すつもりだったろうがっ!


「まぁ、俺らの上にもウザイのがいるからよ。折角手に入る大金も搾り取られるワケよ」

「……上だと? グボッ!」


 思わず声が出てしまい、脇に立っていた奴に思い切り蹴り上げられた。


「体張って苦労した俺らの取り分が一番少ないなんて、到底納得いかねぇよなぁ? 俺らだってバカじゃねぇし、もちろん腹だって立つ。ブチ撒けねぇと収まらねぇ。ならどうするよ?」


 なんで、オレは犯罪者の愚痴を聞かされてんだ?

 なんで、彼女がこんな残酷な目に合わなきゃいけないんだ!


「正解は、大金を手に入れたら俺らの顔を見た嬢ちゃんとお前は殺す。金は山分けしたら海外にでも散って後は遊んで暮らすだけだっ! ヒャーッ、ヒャッヒャッヒャッ! どうだ! 最高だろうがっ! いいかこれが世の中ってやつだ! 奪われる奴は一生奪われ続ける! 所詮、奪う奴が一番強ぇんだよ!」


 ふざけるなっ! 彼女とオレが何をした! 何故、奪われなきゃいけないっ!


「だから、俺らは奪う側になるってわけだ!」


 ならっ! 俺も奪う側になってお前ら全員ぶっ殺してやるっ!!

 ……オレに! オレに力さえあればっ!!

 沸騰する怒りで鼻血が床に滴り落ち、眼球が飛び出しそうになる。


「おいおいお前マジか! なんとかなるって感じの顔してるよなぁ?」


 起き上がろうと床に着いたオレの手がピクリと反応する。

 男はそれに気が付いたのか、口端を上げ嗜虐的な顔になる。


「面白れぇなお前……。ああそうだ、折角なんだからよ、どうせ死ぬならこの嬢ちゃんが殺されるとこしっかり目に焼き付けて、冥途の土産に持ってけよ! なっ! よし、そうしよう!」


 そう言うと、メガネの男は立てた親指で自分の首を横に引く。

 その言葉と動作に血の気が引き、震えた声が漏れる。


「あぁ……! ああぁぁ……っ!」


 プルプルと震えるオレの手が、彼女に向ってゆっくりゆっくり伸ばされる。

 満足そうに愉悦を浮かべ、高笑いする男。


「ヒャーッ! ヒャッヒャッヒャッ! 最高っ! お前最高っ!」


 彼女の首を絞めていた男の手にナイフが見える。


「嬢ちゃん、悪く思うなよ? 悪かったのはあんた自身の運のなさだ」


 彼女は何も抵抗出来ずに、ただ、ガタガタと震える。

 首筋にナイフの刃先が触れると、猿ぐつわの奥から小さな悲鳴が漏れた。

 椅子から床にボタボタと零れる大量の透明な液体は、ほのかに立ち上がる湯気と共にツンとしたアンモニア臭を漂わせた。


「や、やめ……っ! ヤメテくれぇぇぇーっ!!」


 彼女へと必死に伸ばす、何も変える事の出来ない手。なんの力もないオレの手。


「あ゙あ゙あ゙あ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァーっ!!」


 首横に深く突き立てられたナイフの刃先は、彼女の喉元を横一文字に切り裂いた。

 激しい血飛沫を噴き上げ、痙攣しながらゴボゴボッと口から赤い泡を吹き出し倒れ込む。


 オレはその血を全身に浴びながら、絶叫している事も気付かずに、ただ、必死に手を伸ばす。

 だが、深紅の血飛沫に染まったその手は、彼女に届く事はなく、ただ、虚しく空を掴んだ。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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